●友だちから、孤立する子ども(中1)
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仙台市にお住まいの、KUさん(母親)から、
長男についての相談が届いています。
「学校で、友だちもできず、いつも独り」とか。
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【KUさんより、はやし浩司へ】
はじめまして。突然の相談ですみません。
息子のことで夫婦ともに悩んでいます。アドバイスお願いします。
今年4月から中学になり2か月が経ちましたが、友達もできず、教室ではいつも独りの
ようなんです。
息子は、「今のクラスは嫌、友だちになりたい子がいない」と言います。
私は、無理に友だちを作らなくても自然にできるよ。と考えています。でも、主人は、
嫌でも自分から積極的に話しかけて友だちを作れと考えています。
小学生のころは友だちもいましたが、その友だちが新しい友だちを連れてくると、
急におとなしくなり、黙り込んでしまったりします。
家族で外出した際に学校の友だちを見つけると隠れることもあり、そんな息子を見てつ
い叱ってしまったこともあります。
中学の今でも登校する時、偶然同じ学年の子と会っても挨拶すこともなく、避けるよう
に行ってしまいます。
先生に聞くと、学校では積極的に自分から動くことはなく、授業中もうつむいている
ことが多い、ということです。
そのせいか、先生からも注意されたり、やる気がないようなことを言われたみたいです。
自分に自信がないことがすべてなのかもしれない、自然に友だちができるということでも
ない。もっと自信をつけてあげなければ、と思っていました。
でも、これまで私は息子に口うるさく言いすぎたのかもしれません。
歯磨きしなさい・宿題しなさい・学校の用意をしなさい・早く起きなさい・塾の宿題
は?・・・・
(娘にはあまり言った記憶がない。お兄ちゃんが注意されるのを見て、自分もしなけ
れば・・・と思い、していたからかもしれません。)
息子は周りを気にするあまり、自分が見えていない。主人と話すときも自信がなさそ
うな小さな声でボソボソ話したり、黙り込んでしまいます。
主人がイライラして叱ることもあります。
私から見ると、人の話をちゃんと聞いて、自分の考えを人に伝えることが苦手なように
思えます。
アトピーも中学に入ってひどくなり、授業中も頭をかいたり、目をこすったりしてい
るようなので、薬を飲んで塗りなさいと言うのですが、私たちが言うまで塗りません。
下の娘は明るくともだとも多い方です。娘はお兄ちゃんのこと好きですが、周りの友
だちから「おとなしいお兄ちゃんやな」と、よく言われると言っています。
今、一番息子にとって楽しいのは部活の卓球です。
部活だけは毎日頑張って練習したり、家でも練習したりしています。
このままだと、集団生活ができず、高校・社会人になったときに必ず苦労するから、
いま私たちが夫婦で決めたことは、
私は息子にガミガミ言わず、学校のことは聞かない・言わない。
主人が息子と話すようにし、叱ったり、褒めたり、勉強を見たりしています。
今朝、息子は宿題・時間割をしないで、ダラダラしていたので主人に叱られていました。
いろいろと書きましたが、息子が自分から何でも興味を持って毎日楽しく、学校も友
達も部活も笑顔でできるには何をしてあげたらいいのでしょうか。
【はやし浩司よりKUさんへ】
●K君の問題点
息子さんの名前を、K君(中1)とします。
そのK君は、今、心の中で、こう叫んでいます。
「ぼくは、どうすればいいのだ!」「どこへ行けばいいのだ!」、とです。
親の過関心と過干渉で、K君の「私」(=自我)は、こなごなにされてしまっている(?)。
……いきなりきびしいことを書きましたが、症状としては、回避性障害、対人恐怖症、
あるいは軽い抑うつ状態が考えられます。
アトピーがひどくなったということですから、神経症も疑われます。
ほかにもあれこれ症状が出ているはずですが……。
しかし病名など、どうでもよいのです。
まずK君の今の状態を、あなたがすなおに受け入れてあげてください。
だれにでも、得意、不得意があります。
「Kにも、不得意なことがあるのだ」と、です。
またメールを読む範囲では、KUさんの夫は、かなり権威主義的なものの考え方を
しているような印象をもちます。
「男だから……」「長男だから……」「中学生にもなったのだから……」とです。
しかし遠因をさぐれば、KUさんとKUさんの父親の関係、さらにはKUさんの夫と、
母親の関係の不全が疑われます。
それと1、2歳しか離れていない妹さんも、この問題には、からんでいます。
もっとも濃密な愛情を必要とするときに、妹さんが生まれてしまった。
その結果、K君は、愛情飢餓、愛情不足、欲求不満の状態に追い込まれてしまった(?)。
赤ちゃん返りを起こす暇もなく、「お兄ちゃんだから……」と、親の身勝手な
『ダカラ論』をぶつけられてしまったことも考えられます。
K君のさみしさ、悲しさは、そのあたりから出発しています。
またここにも書いたように、KUさん自身が、KUさんの両親との関係がうまく
いっていなかったことも疑ってみてください。
とくに父親との関係です。
だから男児であるK君の育児に、いつも戸惑いを感じていたし、K君の立場で言うなら、
基本的信頼関係の構築に失敗したというわけです。
時期的には、0歳から2歳前後までです。
だからK君は、心を開いて、友人の輪の中に飛び込んでいくことができない。
それも実のところ、あなた自身が、心を開くことができなかったからです。
こういうのを世代連鎖といいます。
(妹さんとの人間関係はほどほどにうまくいっているようですが……。)
K君にしてみれば、つらい毎日です。
さみしいし、孤独だが、しかし人の間に入っていくと疲れる……。
それについて、親が、見るとはなしに見ながら、神経質にあれこれ言う。
干渉する。
「嫌でも自分から積極的に話しかけて友だちを作れ」とは!?
(ゾーッ! 実に乱暴な言葉ですね。暴言と言ってもよいでしょう。)
発達心理学的には、思春期に入り、自我の同一性をめざす時期に来ています。
(やりたいこと)と、(現実にしていること)を一致させる時期です。
が、K君は、それができないでいる。
役割混乱から、自我の不一致が起きている(?)。
K君にしてみれば、たいへん苦しいことです。
このことをしっかりと、理解してあげてください。
●では、どうすればよいか
「卓球が好き」ということですね。
だったら、ここは、思う存分、卓球をさせます。
応援します。
励まします。
時間と金(マネー)を、そこへ集中させます。
(ただしやりすぎないように!)
このタイプの子どもは、人間関係がうまく結べない分だけ、しかし(顔のない
自分)にも耐えられず、(1)攻撃型、(2)同情型、(3)服従型、(4)依存型
のうちの、どれかのパターンをとります。
今のK君には、卓球をすることが、その(顔)ということになります。
卓球を利用して、攻撃型に転ずれば、しめたものです。
(仮にK君から卓球を奪ったら、たいへんなことになりますから、くれぐれも注意して
ください。)
K君にしてみれば、卓球をしているときだけ、自分を忘れることができる。
また卓球をしているときだけ、自分を主張できる。
で、それをうまく利用すれば、K君は、今の状況(=同一性の危機)から、抜け出る
ことができます。
このあたりのことは、私は何度も書いてきましたので、(はやし浩司 自我の一致)
(はやし浩司 基本的信頼関係)(はやし浩司 基底不安)(はやし浩司 対人恐怖症)
などを、ヤフーで検索してみてください。
参考にしていただけると思います。
で、今度は、親子関係です。
(1)『ダカラ論』は意味がありません。
K君は幼いときから、「あなたはお兄ちゃんだから……」と、耳にタコができるほど、
言われつづけてきたように感じます。
とくに父親からです。
(KUさんの夫の父親を、観察してみてください。
KUさんの夫の父親は、かなりの権威主義者だったように推察されます。
また親が権威主義的であればあるほど、親子関係は断絶しやすくなります。
親が、親風(=悪玉親意識)を吹かせば吹かすほど、子どもは見た目には従順で、
おとなしくなります。
KUさんの夫と、夫の父親の関係は、見た目ほど、うまくいっていなかったと
思うのは、そんな理由によるものです。)
(2)暖かい無視を大切に
今どき、対人恐怖症など、何でもありません。
まともな人ほど、そうなります。
友だちの数にしても、多ければ多いほどよいというものでもありません。
それともKUさん、あなたには、友だちがいますか?
何でも話したり、相談にのってくれる友だちは、いますか?
私など、友だちといっても、数えるほどしかいません。
ワイフを含めて、2人とか3人とか、そんなものです。
つまり親の期待を、子どもに求めすぎないこと。
もしそれでも「友だちを!」と考えるなら、あなた自身が交際のワクを広くすれば
よいでしょう。
その輪の中に、子どもを巻き込んでいくのです。
心というのは、そういうものです。
つまりいくらあなたが親でも、子どもの心の中にまでは、入っていくことはできません。
だからここは、「友だちを作りなさい」ではなく、「お母さんも、集団が苦手よ。あなたも
つらい思いをしているのね」と、K君には話します。
そういう愛情で子どもを包んであげたあと、無視すべきところは無視します。
あせったところで、逆効果。
この時期、一度、このような症状を示したら、最低でも、今のような状態は、10
年続くと覚悟してください。
対処の仕方をまちがえると、20年どころか、それが引き金となって、引きこもったり、
家庭内暴力へと悪化します。
こうした問題には、必ず2番底、3番底があります。
KUさんは、「今が最悪」と思っているかもしれませんが、まだその下には、2番底、
3番底があるということです。
そのため、コツは、「今の状態を保つこと」です。
(K君は、今、親の前では、静かでおとなしいようですが、その一方で、不平、不満を
心の別室に、「抑圧」という形で、ため込んでいますから、注意してください。
耐えているのでもなければ、それだけ包容力があるからでもありません。
つらいこと、さみしいことを、心の別室に、押し込んでいるだけです。)
で、友だちにしても、1人、2人の友だちを大切に、また家族もそれを応援しながら、
それでよしとします。
それで十分ではないですか?
(3)一芸を伸ばす
先ほども書きましたが、ここは卓球に望みをつなげてください。
卓球がK君の(命)と思ってください。
今のK君から卓球を奪ったら、それこそ不登校程度ではすまなくなりますよ!
(脅かして、すみません。これもK君のためです。)
あとは子ども自身がもつ、自然治癒力を信じてください。
やる気についても、最近の大脳生理学では、カテコールアミンというホルモンが
作用していることがわかってきました。
K君の脳の中では、その分泌が何らかの理由で、阻害されているのかもしれません。
慢性的な抑うつ感が、ホルモンの分泌に変調をきたしている……。
だからあとは自然治癒力にゆだねるしかありません。
まだ成長期ですから、時間はそれほどかからないと思います。
コツは、繰り返しになりますが、「今の状態をこれ以上悪くしないことだけを
考えて、数か月単位で様子をみる」です。
(抑圧がひどいと、いつか爆発する可能性もあります。
母親父親に対して、「こんなオレにしたのは、テメーだろうがア!」とです。)
そんなわけで、「治そう」とか「直そう」などとは、考えないこと。
K君が苦しんでいたら、(まちがいなく苦しんでいますから)、今日、このメールを
読み終えたら、K君にこう言ってあげてください。
「ごめんね、K。
つらかったのね、K。
苦しかったのね、K。
さみしかったのね、K。
お母さんがあなたの苦しみをわかってあげなくて、ごめんね。
苦しかったのね。
友だちなんかいなくても、気にしてはだめよ。
うるさい友だちなんか、いないほうがいいのよ。
そのかわりにね、お母さんが、あなたの友だちになってあげるからね。
これからもずっと、いっしょに、仲のよい友だちでいましょうね。
ずっと、ずっと、友だちでいましょうね。
本当のところ、お母さんにも友だちがいないのよ。
だからあなたが私の友だちになってね」と。
あなたが負ければ、この問題は解決します。
負けることの美しさというか、すばらしさを、あなたも実感してみてください。
「私は親だ」という、おかしな親意識は、今すぐ、捨てなさい。
「私は親だ」という気負いも、今すぐ、捨てなさい。
対等の人間として、K君の横に立つのです。
その向こうには、すばらしい親子関係が待っていますよ。
応援します!
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て Hirosh
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2009年6月3日水曜日
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