2009年6月29日月曜日

*Delete the Brain

●使わない脳は退化する?

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XPパソコンのばあい、ときどきこんな表示が
画面に出たことがあった。

「デスクトップに、6か月以上、使われていないソフトが
あります。削除しますか?」と。

こういうのを、いらぬお節介という。
つまり「長い間、使っていないから、削除したほうが
いい」と。

もっともパソコンのばあいは、それでよいとしても、
脳のばあいは、どうか?

人間の脳の中でも、同じような現象が起きているという。
毎日新聞は、つぎのように伝える。

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 『……脳神経細胞同士の接続を正常に保つ働きをたんぱく質「Wnt」が持つことを、林悠(はやしゆう)・理化学研究所基礎科学特別研究員(元東京大大学院)ら、東大と九州大のチームが線虫を使い解明した。

哺乳(ほにゅう)類も同じメカニズムを持つと見られ、アルツハイマー病など脳神経変性疾患の理解につながると期待される。28日付の米科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に掲載された。

 人間は成長期に脳神経細胞同士が突起を伸ばして盛んにつながる一方、「刈り込み」という不要な接続の削除が行われる。アルツハイマー病やパーキンソン病は、刈り込みが過剰に起きて脳神経機能が阻害されることが一因と考えられている』(毎日新聞09年6月29日)と。

●接続の削除

 一個の脳神経細胞からは、数十万本という突起(ニューロン)が延びている。
その突起が複雑に接続しあいながら、脳は機能する。
それはよく知られた事実だが、その接続を、脳自身が、勝手に削除してしまうことも
あるという。
それを「刈り込み」という。

ヘ~~~エ!
知らなかった。

 要するに、使わない脳みそは、どんどんと刈り込みがなされ、コンピュータにたとえる
なら、そのままゴミ箱へと捨てられるということらしい。
コンピュータのばあいは、そのほうがハードディスクも身軽になり、動きも軽快になる。
しかし人間の脳について言えば、それは困る。
使わないといっても、5年後、あるいは10年後に、また使うことがあるかもしれない。
勝手に刈り込み、つまり削除されてしまっては、困る!

 で、今回、理化学研究所の研究員の人たちが、脳神経細胞同士の接続を正常に保つ働き
をたんぱく質「Wnt」が持つことを発見したという。
つまり「Wnt」が、刈り込みに対して、ブレーキの役目をするということらしい。
(「ブレーキ」というのは、私の勝手な判断によるもの。)
もし刈り込みが、どんどんと勝手になされたら、それこそ脳の中は、からっぽになって
しまう。

『アルツハイマー病やパーキンソン病は、刈り込みが過剰に起きて脳神経機能が阻害され
ることが一因と考えられている』ということだから、「脳が軽くなった」と喜ぶわけには
いかない。

●刈り込み

 しかしその「刈り込み」を実感として、感ずることが、このところ多くなった。
つい先日は、FLASH(動画編集)の編集の仕方を忘れてしまった。
一時は、それをよく使って、私のHPを飾った。

が、それから2、3年。
ソフトを立ち上げたあと、「どうだったか?」「こうだったかな?」の連続。
結局、マニュアル本を再度読みなおすハメに……。

 脳が勝手に、FLASHの使い方を、削除してしまったらしい。
で、その「刈り込み」に対して、「Wnt」というたんぱく質が、ブレーキのような
働きをするという。

 ……それに、このところパソコン相手の将棋で、けることが多くなった……。

 が、ここで新たな疑問。

 パソコンのばあい、たとえば私は今度、ハードディスクを1テラバイト(=1000
GB)のものに取り換えた。
が、1テラバイトといっても限界がある。
(おおざっぱに言えば、1時間分のビデオを1本収録すると、20~30GBもの容量が
減る。)
だから新しい情報を蓄積するときは、同時に、ハードディスク内から、不用な情報を
消していかねばならない。

 脳のばあいも、刈り込みがあるからこそ、そこに余裕ができるのではないのか?

●情報の洪水の中で……

 先日も長野県のある町にある、ある文豪の記念館を訪れてみた。
大正時代から昭和の初期に活躍した文豪である。

 私はそこに残っている文章を読んで、ア然とした。
へたくそというか、まるで意味のないエッセー。
しかも全集として本が並んでいたが、私の半年分の原稿量にもならない。
(現在、私は1か月で、500枚前後の原稿を書いている。
400字詰めの原稿用紙になおすと、2000枚近くになる。
単行本1冊が、約400枚前後だから、毎月5冊分の原稿を書いていることになる。)

 といっても、大正時代と現代とでは、情報の量そのものがちがう。
20年前とくらべても、ちがう。
20年前には、図書館通いが日課だった。
が、今は、インターネットを使って、必要な情報が瞬時、瞬時に調べられる。
が、その分、情報の量が、ケタちがいに多くなった。
それこそ毎日が、情報の洪水。
ドドーッと押し寄せてきては、ドドーッと去っていく。

 じょうずに情報をコントロールしないと、それこそ、情報の洪水の中で、
溺れてしまう。

●では、どうすればよいか

 が、ここで重要なことが一つある。
それは先の毎日新聞の記事をていねいに読むと、わかる。

 刈り込みには、必要な情報すらも削除してしまうということも含まれる。
それに新しい情報が入ってくるとか、入ってこないとか、そういうことには関係なく、
削除してしまうということらしい。

 パソコンにたとえるなら、私が現在使っている、ワード2007のソフトまで削除
してしまうということになる。
が、これは困る。
それがアルツハイマー病とか、パーキンソン病ということになる。

 そこでハタと、また考える。
では、どうすればよいのか、と。

 研究者たちの意見を拝借すれば、「Wnt」というたんぱく質を補えばよいという
ことになる。
が、脳には、フィードバックという作用もある。
余計な物質を脳の中に送り込むと、脳は、それを打ち消すための別の作業を開始する。
脳のメカニズムを単純に考えることは、危険なことでもある。

 となると、突起、つまりシナプスを、どんどんとふやすしかない。
このシナプスは、訓練によって、いくらでもふやすことができる。
つまり頭は、使えば使うほど、よくなる。
年齢にも左右されない。
言い換えると、毎日、数億本の突起が刈り込みされたら、それ以上の突起を、作れば
よい。

 ものごとは、前向きに考えよう!

 それにしても、「刈り込み」とは?
脳というのは、一生を通しても、そのうちの何分の1も使わないという。
だったらこんなお節介なことをしなくても、よいのではないのか。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て Hirosh
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