【子どもの盗癖】
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掲示板のほうに、こんな相談が届いている。
息子の盗癖についてのものである。
それについて、考えてみたい。
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【Rさんより、はやし浩司へ】(1)
はじめまして。突然のメールで、失礼します。昨年、静岡市YU中学校区の講演
会に出席させて頂きました。まさに今、トンネルの真っ只中にいるため興味深く
時に涙しながら聴かせて頂きました。有難うございました。
早速ですが長男のことについて相談します。小さいころから活発で元気だけが
とりえの子でした。それが中学に入った年の夏、部活動(テニス部)中に突然倒れる
ようになり病院で起立性調節障害と診断されました。朝、低血圧になり具合が悪
く午後からは嘘のように元気になるという症状で二学期はほとんど学校に行けず
に過ごしました。それをきっかけに部活動の先輩や同級生からいじめを受けるよ
うになり病気自体は三ヶ月ほどで治癒したのですが不登校になってしまいました。
それでも最初のうちは週に1、2日は登校できていましたし、体育大会や文化祭
など授業のない日は必ず参加していました。そんな生活が一年半続きましたが、
二年の三学期はとうとう始業式と終了式に参加しただけでした。ただ、三年にな
って四月末に修学旅行があるためか嘘のように登校し始めて無事修学旅行にも行
ってこられたときには本当に嬉しく思いました。
そんな思いもつかの間で五月からはまた、不登校です。今の生活は、朝具合が悪くご飯も
食べられず他の家族が出払ってしまうとパソコンに向かいオンラインゲームをほぼ一日中
やっています
夜になると明日は必ず学校に行くと言っていますがまたあくる朝になれば体調を崩す毎日の繰り返しです。学校に行かなきゃいけないことや高校にも行きたい希望を持っているのにいざ勉強となると集中できず学力は小六程度です。本人のやりたいこととやれることのギャップがあまりにも大きくて苦しんでいます。死にたいと洩らしたこともありますが自殺する勇気すらないと言います。今は廃人同様だと嘆きどうすればいいのかわからない状態です。
私たち親が出来ることはただ信じて待つことだけですか。今は生きていてくれさえすればいいぐらいに考えられるようになりましたが正直なところ苦しいです。来年以降のことを考えると・・・・病院に行くこともスクールカウンセラーに相談することも考えました
が息子は拒絶します。
とりとめも無く書き込んでしまってすみません。ただただ息子の笑顔が見たい
だけなのです。日に日に衰弱していくのがたまらないのです。どうか・・・よろ
しくお願いします。
【Rさんより、はやし浩司へ】(2)
こんにちは。昨日はご多忙中にもかかわらずお電話を頂きまして有難うございました。早速、仕事から帰った主人にも話しました。
一夜たち、今までに無く穏やかな気持ちで息子のことをみている自分がとても嬉しいです。家族四人で何気なく交わす会話の中に幸せを感じています。
まだまだ先は永いと思いますが私は私らしく元気に生きていこうと思います。先生と今出会えたことに感謝しています。そして貴重なお話をしていただけたことに感謝しています。本当にありがとうございました。
今度メールを送るときには心から笑って話せると思えます。では、また。
【Rさんより、はやし浩司へ】(3)
すみません。今度メールするときは・・・って言ったばかりなのにまた迷いを感じる出来事がありました。一体、どこまで試されるんだろうと。
実は、うちのお金が取られました!
私たちは、決して裕福な家庭ではありませんが何とか3年前念願のマイホームを手に入れました。当初は主人の両親と同居していました。今は、両親とは別居しています。
まだ、同居していたころ、最初の事件は起きました。
祖父の財布から1000円とりました。それから時々私のバックの中の財布から・・主人の貯金箱から・・とエスカレートしていきその度に警察につれてってくれだのもう二度としないだの死にたいだのと言い月々のお小遣いから少しずつでも返していくことで許していました。流石に3度目の時には、現金を鍵つきの箱(耐火金庫ではないけれど金庫と呼んでいる)に入れるようにし、もう無いだろうと思っていました。
本当に忘れていました。ここのところ穏やかに話ができるようになっていました。だから前々回の相談メールではふれることも無かったのですが・・・。昨日、いつものように買い物に行くとき金庫からお金を出そうとして先週銀行からおろしたお金が減っているのに気づき慌てた様子を見せると息子が「自分がとった」と言いました。
「金庫は組み立て家具なのでねじをはずして中身を出した」と。ショックでした。家中のお金をそこに入れていたから。いくら学校休んで時間があるとはいえそこまでするとは思っていなかったから。しかも今回は単位が万単位。主人がコツコツためていた500円貯金も、かなり持っていかれました。
何に使ったのかといえばパソコンのオンラインゲームの課金がほとんど。生活上では全く派手になるとかではないのでわからなかった部分もあるのですが金庫に入れておけば大丈夫と思っていたのが間違いだったのか・・・
信じたい・・・けど信じられない自分がいます。何度も同じ事を繰り返してその度に泣いて謝るけど苦しんでいるはずなのに何故また繰り返すのか。うちのお金が取れないと思ったとき、外に向かわないかという心配もあります。金額の大小ではないけれどやっぱり悔しいし悲しいです。こんなとき、どう対応したらいいのでしょうか。とりあえず今ある現金は今日銀行に持っていってもう家には置かないつもりです。
本当にスミマセン。とっても素敵なメールをいただいたのに・・・保存して辛くなったら読もうと思っていたのに何度読み返しても今、やさしい言葉が出てこない自分が情けないです。まだまだ母は未熟者です。でも、頑張りたいのです。どうしても息子を救いたいのです。よろしくお願いいたします。
【はやし浩司より、Rさんへ】
(Rさんには、直接、電話をかけました。
30分ほど、相談にのりました。
そのあとに送信したメールです。)
石原様へ
おはようございます。
人生は楽しいですよ。
いろいろなことがありますか。
子どもがいろいろ教えてくれるのです。
自分だけが最悪と思わないこと。
みんな外からはわからないだけ。
同じような問題をかかえて、悩んでいます。
あとは白い雲が流れていくように、
やがて落ち着きます。
あせらず、ここはおおらかに!
「あなたの分は、私ががんばってあげるからね」と、
やさしい言葉をかけてあげてください。
何でもない問題ですから……。
息ができる。
目が見える。
音が聞こえる。
そのすばらしさを、ゆっくりとかみしめましょう!
では、
また何かあれば連絡してください。
はやし浩司
【はやし浩司より、Rさんへ】
R様へ
こんばんは。
息子さんの盗癖は、本人自身でもコントロールできない種類のものと思われます。
アルコール中毒の人がアルコールを求めたり、ニコチン中毒の人が、タバコを
求めたりするのと同じ現象が、脳の中(視床下部→線条体)で起きていると
考えてください。
つまり条件反射的に脳の中で、勝手に反応が起きてしまい、自分でもどうしたら
よいのか、わかっていないのです。
ですから、ここは管理を徹底するという方法で対処しますが、この種の盗癖には、
さらに2番底、3番底がありますから、気をつけてください。
対処の仕方をまちがえると、さらにやっかいな盗癖(家の外での窃盗など)へと
つながっていきます。
今は、これ以上状況を悪くしないことだけを考えて、穏やかに、かつていねいに
息子さんと接してあげるのがコツです。
怒って、感情的になってはいけません。今こそ、親の理性が試されるときと思って
ください。
本来なら、どこかでカウンセリングのようなものを受けるのがよいのですが、
まだそういう制度そのものが、日本のばあい貧弱です。
とにかく感情的にならないこと。
温かい無視で息子さんを包みながら、家の事情などを、ていねいに説明されるのが
よいでしょう。
それでも盗癖がつづくようであれば、はっきり言いますが、ある程度の盗みには
目をつむりなさい。
この時期の熱病のようなものですから、数年もすれば落ち着いてきます。
どこの子どもも、みなしてますよ。
ざっとみても、3人に2人くらいはしているのではないでしょうか。
貯金通帳から盗んで使っている子どももいました。
しかも数百万円単位で使っていました(高校女子)。
ですから必要以上におおげさに考えないこと。
それがそのまま、たとえば、大きな事件につながるというふうには、考えては
いけません。
幼い時から、ほしいものを買い与えてきたツケが今、出ていると考えてください。
値段的には安いものだったかもしれませんが、息子さんは、それで自分の欲望を
満足させていたわけです。
それが今、表に出てきたというわけです。
つまりその責任は、あなた自身にもあるということです。
息子さんだけを見て、息子さんを責めても、それは酷というものです。
繰り返しますが、二番底、三番底が、まだあります。
「今が最悪」とは、思わないこと。
気をつけてください。
そのため、「直そう」とは思わないこと。
「これ以上、悪くしないこと」だけを考えて対処してください。
また悪い面ばかり見ないで、健康で、やさしい子どもですから、ここは子どもを信じて
みましょう。
またこんな程度の問題で、めげていてはいけません。
子どもは、上から見てはいけません。
下から見るのです。
昔の人は、こう言いました。
『上見て、きりなし、下見て、きりなし』と。
そこに子どもがいて、ここに自分がいる。
元気で、みながんばっている。
そこを原点にして、子どもの問題をながめます。
何度も言いますが、Rさんがかかえている程度の問題は、何でもありません。
「盗みたかったら、どうぞ」と。
「その分、私がまたがんばるからね」と。
今のところ、金額も、(子どもの額=少額)のようですから、あとは笑って、
『許して、忘れる』です。
いつか子ども自身が、自分のした行為を恥じるように、Rさん自身が、大きく
成長してみせます。
それが子育てのだいご味でもあります。
まずいのは、取り越し苦労に、ぬか喜び。
もう少し長いスパンで、子どもの問題に接してみてください。
「去年よりはよくなった」とか、いうようにです。
きびしいことを書きましたが、あとはひたすら管理、管理です。
私の息子の1人も、同じようなことをしたことがあります。
そのときは、金庫の中に、手紙を入れておきました。
「いくらでも、もって行け。
だけど、こういうことは、やめよう」と、です。
以後、息子は、ぴたりと盗みをしなくなりました。
では、
はやし浩司
2009年6月20日土曜日
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