2012年5月20日日曜日

Talks with Mr. K

【過去の記事を読み返す】

●当たるも経済専門家、当たらぬも、これまた経済専門家

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

時には、過去の記事をほじくり返してみるのも、楽しい。
とくに、予想記事と呼ばれる記事は、楽しい。
結果は、「今」ということになる。
その「今」と読み比べてみる。
それが楽しい。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●経済

 今日(5月18日)、日本の株価は、大暴落した。
前日比、265円安。
週末観測で、7週連続の下落という。
Bloombergは、つぎのように伝える。
まず、それを読んでほしい。

『……5月18日(ブルームバーグ):

東京株式相場は大幅反落し、日経平均株価、TOPIXともことし最大の下落となった。
ギリシャ情勢の混乱が波及し、スペインの債務懸念が高まったほか、米国経済統計の低調でリスク資産圧縮の動きが鮮明化した。
対ドル、対ユーロでの円高も警戒され、輸出や金融を中心に東証1部33業種は全て安い。

TOPIXの終値は前日比21.62ポイント(2.9%)安の725.54、日経平均株価は同265円28銭(3%)安の8611円31銭。両指数は週間で米同時多発テロ前後の2001年9月以来、約11年ぶりに7週連続で下げた』(Bloomberg)と。

●ひどい!

 こういう記事を読むと、私はすぐこんなことを考える。
とくに今回は、そうだ。
ほんの数か月前には、ほとんどの経済学者たちは、口をそろえ、日本の株価は上昇しつづけると言っていた。

 いくら「当たるも~~、当たらぬも~~」と言っても、これはひどい。
数か月前の記事を探してみる。

●2か月前には、みな、どう書いていたか

以下、2012年3月14日、つまりちょうど2か月前の記事である。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

Seesaa 2012年03月14日より

●岡三オンライン証券チーフストラテジスト、IT氏

★日経平均、5月までに「震災前水準を回復」へ

『5月に向けて国内の年金基金の投資資金が流入するとみられ、日経平均は震災前水準(1万0434円)を回復。
目先の高値のメドである11年2月に付けた1万0891円を上回る展開になりそうだ。

★外国人投資家の買い意欲旺盛

外国人投資家の買い意欲は強く、欧米のヘッジファンドの買い戻しにとどまらず、米年金基金などの長期投資家の資金も動き出している。
年金資金を運用する機関投資家は、注文を平準化して一定期間続けて買うという傾向がある。
外国人は日本株を11年5月下旬から12月半ばまでに2兆円超売り越したが、そこから12年2月末までの買越額は1兆円を上回ったばかり。買いはまだ続くだろう』と。


●BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト、MR氏

★金融緩和で円高修正進む 上値メドは「1万1000円」

『FRBが実施した量的緩和第2弾(QE2)が効いてきた。
米景気回復が加速し、銀行貸し出しが増える好循環に入る兆しがある。
日米金利差が拡大し、円相場は1ドル=85円程度まで円安・ドル高が進みそうだ。
一方、欧州でも欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策が奏功し、債務問題は小康状態を保っている。
日経平均は4~6月に1万1000円台を回復し、年内の高値をつけるのではないか。


★(3月)14日の日本株の上昇はショートカバー(売り方の買い戻し)が主体だろう。
空売り比率が24%程度と高まっていたので、買い戻しの動きが強まった。
長期投資家は国内外ともに、今の日本株の上昇に乗り切れていない。
本格的に買ってくるのはこれから。復興需要も株高を後押しするだろう』と。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

 結果は、ハズレ!
デタラメと言い切ってよいほどの、ハズレ!
とくに記事を選んだわけではない。
ここに書かれていることは、おおかたの経済学者たちも言っていたこと。

 が、問題はそのことではない。
ハズレたことが問題ではない。
問題は、こうした経済学者たちの意見を鵜のみにし、今というこの時点で、大損をした人がいるということ。
どこの記事だったかは、忘れた。
しかしこんな記事もあったはず。

「日本株は出遅れ感が強い。
夏場にかけて、大儲けのチャンス」と。

●経済学

 つまりこんな予想なり、コメントなら、だれにでも書ける。
私のような素人にでも書ける。
つまり書かないほうが、まし。
そこらの霊能力者の予言のほうが、ずっとわかりやすい。

 言い換えると、それほどまでに経済学というのは、いいかげん。
と、同時に、魔物。
一寸先は闇という言葉がある。
それに近い。
さらに言えば、経済学者の予想ほど、アテにならないものはないということ。
とくにどこかの証券会社に籍を置いている人間の言うことには、さらにアテにならない。
耳を貸さないほうがよい。
それを書きたかった。

●若い女の子

 それにしても、ひどい。
「大損」といっても、財産を失った人も、多いはず。
途方に暮れている人も、多いはず。
さらに恐ろしいことは、こうしたまちがった情報を、証券会社の女の子(怒りの念をこめて、そう言う)が、もっともらしく口にすること。
「今が底値ですから、買い時ですよ」と。

 経済学の「ケ」の字も知らない。
人生経験の「ジ」もないような、女の子。
そういう女の子が、それなりの年配者を手玉に取り、自分の利益につなげる。

 私もバカだったから、あのバブルショックのあと、それまでに儲けた分以上の損を出してしまった。
リーマンショックのときは、さすがに、それほどまでの損はしなかったが、それでも損をした。
が、そのあとは、「賢明な損切り」で、難をのがれることができた。
具体的には、証券会社の女の子の言いなりには、ならなかった。

 ドバイショック(2009)、3・11大震災(2011)ショックを経て、私は現在、証券会社との付き合いは、すべて断ち切っている。
が、これは日本経済にとって、たいへんな損失と考えてよい。
自由主義貿易体制の中にありながら、日本人の私たち自身が、資本主義の基本に不信をいだいている。
だから昔から、こう言う。
「株屋」と。
子どものころは、「株屋」といえば、詐欺師の代名詞にもなっていた。

●自己責任

 この世界には、「自己責任」という無責任主義が平気で大手を振って、大通りをかっ歩している。
だれも責任を追及しない。
だれも責任を取らない。
すべてが、ナーナーですんでしまう。

 が、おかしなことに、いつも大損をするのは、庶民という個人。
今回の福島第一原発事故もそうだが、だれも責任を追及しない。
責任を取らない。
東京電力にいたっては、「私たちには責任はない」と、居直ってしまっている。
「私たちは、国の指導に従い、やってきただけです」と。

 本来なら、万死……つまり責任者の法的処分に値する事故なのだが……。

 ……ともあれ、ときどきこうして過去をほじくり返してみるのも、楽しい。
その1例として、ちょうど2か月前の記事を、読みなおしてみた。

 で、ふと今、こう思う。
先に紹介した、岡三オンライン証券チーフストラテジスト、IT氏や、BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト、MR氏は、自分の書いたことに、少しは責任を感じているのだろうか、と。


Hiroshi Hayashi+++++++May. 2012++++++はやし浩司・林浩司

【K君との会話】はやし浩司 2012-05-20

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

昨日、市内のホテルで、K君と食事をした。
K君は、メルボルン大学(オーストラリア)で、修士号(Master’s Degree)を取得したあと、現在に至るまで、モナーシュ大学(メルボルン)に籍を置いている。
大学の教官(インストラクター)を、総合的に指導する立場にある。
その場でのこと。
いろいろな話をした。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●ノーベル賞受賞者

 モナーシュ大学に、現在、ノーベル賞受賞者はいるかと尋ねると、「いない」と。
理由を聞くと、「受賞すると、みな、ほかの大学や研究機関に移ってしまう」と。
欧米では、学生はもちろん、教授たちも、よりよい教育(待遇)を求めて、大学から大学へと渡り歩く。
日本の大学で見るような、徒弟制度そのものがない。

 「インターナショナルハウス(メルボルン大学)には、毎週のようにノーベル賞受賞者がやってきて、泊まっていった」と話すと、「それは今でも、そうだ」と。
が、そのあと、K君は、こう言った。

「ヒロシは、あのノーベル賞という賞が、公平と思うか」と。

●ノーベル賞

 K君はいくつかの例をあげ、ノーベル賞の問題点をあげた。
まず推薦人制度。
それぞれの国には、推薦人が割り当てられている。
どういう基準で、だれが選ばれるか、だれも知らない。
その推薦人が、ノーベル受賞者をノルウェー政府に推薦する。

 つぎに今では、研究といっても、単独で研究する例は少ない。
複数以上の研究者が集まって、共同で研究する。
しかし賞を受けるのは、その「長」ということになっている。

 実際K君が知っている例でも、部下に研究を任せ、自分では何もしなかった研究者がノーベル賞を受けた例もあるという。
「日本でも、昔、SEという元首相が、ノーベル平和賞を受けたことがある」と話すと、K君は、笑った。

●知識人

 私は率直にこう言った。
「ぼくは、君がうらやましい。毎日、第一級の知識人(インテリジェントな人)と、接することができる」と。

 が、K君はこう言った。
「ヒロシ、インストラクター(教授たち)といっても、ほとんどが、頭がおかしい。君がうらやましがるような世界ではない」と。

私「しかし、ぼくはいつも、知識に飢えている。知識人に会う機会が、ほとんどない」
K「ぼくは大学にいても、いつも本ばかり読んでいる。今はインターネットがある。ヒロシも、そうすればいい」と。

 学生時代のK君は、毎日本ばかり読んでいた。
今でも世界中を回りながら、古本をあさるのが、K君の趣味にもなっている。
が、K君は、私の住んでいる世界を知らない。
あえて言えば、私の住んでいる世界は、砂漠のような世界。
一方、K君は、知識が水のようにこんこんとわき出る、オアシスのような世界に住んでいる。

 「知識」に対する基準、そのものが、ちがう。
「飢え」の感じ方、そのものが、ちがう。

●有名人

 たまたま私の前の席に、その世界では有名なスポーツ選手が座った。
年齢は30歳くらい。
妻らしき女性と、数人の家族が同席していた。
私がK君に、「あの男は日本でも有名な、プロ~~だ」と教えると、すかさず、K君はこう言った。
「バカ顔(no brain)に見える」と。

K「日本ではどういう人を、有名(famous)と言うのか」
私「正しくは、よく知られた人(well-known)と言うべきだったかもしれない」
K「商業主義の世界では、人は正しく評価されない」
私「そう。ぼくも、その意見に同感だ。この4月に、慶応大学に9000人の化学者が集まった。ぼくの知人がその場で、基調講演をした。が、この日本では、ただの一行も、またただの1秒も報道されなかった」
K「オーストラリアでも、そうだ」と。

 で、その一方で、商業主義に乗った人たちが、この日本では、「よく知られた人」となり、それを自分の名声や財力につなげていく。

●低進国

 「低進国」という言葉は、私が考えた。
「後進国」というのは、経済用語。
「低進国」というのは、文化用語。
この日本は、先進国かもしれないが、低進国。

 英語でどう表現したらよいか。
それが議論になった。
たとえば以前は、後進国と言った。
が、20年ほど前から、発展途上国と言うようになった。
だから「低進国では、まずい」と。
あえて言うなら、「文化的発展途上国(Culturally Newly-developing Country)」。

 「日本では、テレビへの露出度で、文化人が決まる」と話したら、オーストラリアでは、それはないと教えてくれた。
「社会への貢献度で決まる」と。

●ハーバード大学で講演?

 こんな話もした。

 もう20年ほど前のこと。
日本のある宗教指導者が、ハーバード大学で講演をしたという。
が、この話そのものが、「?」。

 外国の大学を少しでも知っている人なら、だれしも首をかしげる。
そこで私は、すかさずハーバード大学へ電話を入れた。

 もちろんハーバード大学といっても、広い。
会場となるような会館(ホール)は、いくつもある。
広い講義室を貸すこともある。
もちろん有料。
で、やっとそのホール(会場)を見つけた。

 で、電話で聞くと、「どこかの団体に貸したことはある」と。
「詳しくは文書で返事するから、文書で問い合わせてほしい」とも。

 そこですぐ私は手紙を書いた。
折り返し返事が届いた。
それにはこうあった。

 「在米のある団体に、会場(講義室の1室)を貸した。利用目的、内容は、大学としては、関知しない」と。

 が、この日本では、そういうことが堂々と宣伝に利用される。
あたかもハーバード大学に招へいされ、講演でもしたかのように装う。

 そんな話をK君にしたら、K君は、フンと鼻先で笑った。

●SKI

 話は家族、さらには遺産の話にも及んだ。
オーストラリアでも、息子や娘には遺産を残さない人がふえているそうだ。
それを、つまり、子どもに遺産を残さないことを、英語では、「SKI(スキー)」と言うと。

 「Spend the Kids’ Inheritance(子どもの遺産を消費する)」を略して、「SKI」と。

 私がどういう言い回しをするのかと尋ねると、「I am going to SKI.(スキーに行く=ぼくは息子や娘たちに財産を残さない)」と教えてくれた。

 オーストラリアでは制度として整っているから、息子や娘が親の老後の世話をするということは、めったにない。
K君自身も、国からの年金など、あてにしていない。
民間の保険会社に積み立てた私的年金で老後を、老人ホームで過ごすつもりという。

 SKI……おもしろい言い方なので、ここに記録する。

●忘却

 ほかにもいろいろな話をした。
が、数日もたつと、そのほとんどを忘れてしまう。
その場だけでも、2時間も話した。
が、こうして記録できることは、たったのこれだけ。
読めば、5分足らずの文章でしかない。
残りの1時間55分は、どこへ消えたのか。

 考えてみれば、これほど恐ろしい話は、そうはない。
2012/05/20記


Hiroshi Hayashi+++++++May. 2012++++++はやし浩司・林浩司

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