●強化の原理
(ほめられる)→(ここちよい)→(やる気が出てくる)という、一連の心の動きを、「強化の原
理」(「強化原理」と呼んでいる人もいる)という。
最近の研究で、こうした(ここちよい感覚)は、脳の中でも、辺縁系と呼ばれる組織の中で、モ
ルヒネ様の物質(エンドロフィン系、エンケファリン系の物質)が放出されるためということが、
わかってきた。
昔は、この辺縁系という組織は、原始脳で、働きはないと考えられていた。「太古の昔には働
きはあったが、その働は、もうなくなってしまった」と。少なくとも私は、学生時代、そう習った。
しかしこれはとんでもない誤解だった。
知的な活動は、脳の中でも、大脳連合野全体でなされるが、基本的な感情は、どうやら辺縁
系がつかさどっているというのだ。
このことは、二つのことを意味する。
一つは、イヌや、ネコにも、感情はあるということ。たとえばイヌでも、ネコでも、何かをしたと
き、ほめてやると、やはりモルヒネ様の物質が放出され、ここちよい感覚を生み出すというこ
と。つまり彼らだって、気持ちよいのだ。
もう一つは、知的活動だけでは、感情は生まれないということ。たとえて言うなら、知的活動
は、コンピュータの働きに似ている。いくら恐ろしい文章を、ワープロに打ちこんでも、コンピュ
ータ自身は、少しもこわがらない。それと同じように、数学の問題を解くとか、作文を書くとかい
うのは、知的な活動だが、それ自体は、感情を生み出さない。
むずかしい数学の問題を解いたとき、「ああ、おもしろかった」と思うのは、脳の辺縁系の中
で、モルヒネ様の物質が放出されるためである。
(ただし、反対に、叱られたとき、不愉快になるのは、どういう働きによるものかは、私にはわ
からない。あちこちの本を読んでみたが、それについて書いたのは、なかった。これは私の不
勉強によるものか。そのうち、一度、調べてみて、わかりしだい、皆さんに報告する。)
そこでこの辺縁系が機能を失うと、感情そのものがなくなることも、考えられる。あるいはやる
気をなくしたり、感情をコントロールできなくなったりする。
しかし反対に、こうしたメカニズムをうまく利用すると、子どもを、前向きに伸ばすことができ
る。それを心理学の世界では、「強化の原理」という。
これは多分に、コンピュータの影響かもしれない。私は、二七歳くらいのとき、コモドール社の
PET2000という、コンピュータを買った。それ以来、もう三〇年近く、コンピュータとつきあって
いる。
そのためものの考え方が、どこかコンピュータ的になってきた。考え方がコンピュータ的にな
ったというよりは、人間の脳の働きも、そのコンピュータによく似ていると思うようになってきた。
(あるいは、同じなのかもしれない。)
とくに子どもたちを観察していると、そう思う。が、それはそれとして、もしコンピュータに感情
をもたせたかったら、もう一つ、コンピュータ内部に、感情をつかさどる部分を、新設すればよ
い。人間の脳にたとえていうなら、辺縁系に似た部分である。
処理をスムーズにできたら、コンピュータ内部で、コンピュータ自身が、ここちよく感ずる物質
を放出する、とか。そうすればコンピュータがそれを感知して、「ああ、楽しかった」と思うように
なるかもしれない。
ずいぶんと回り道をしたが、要するに、子どもを伸ばそうと考えたら、子どもの脳の中で、こ
のモルヒネ様の物質が放出するように、しむければよい。
方法は簡単。
子どもは、ほめれば、よい。すべては、そこから始まり、そこで終わる。つまり、じょうずにほめ
ること。これが子どもを伸ばす、秘訣の一つということになる。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司
強化の原理 子どものやる気 子供のやる気)
Hiroshi Hayashi++++++++May. 09+++++++++はやし浩司※
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