2011年11月3日木曜日

*A boy who has few friends

●友だちのできない子ども

【ある相談を考える】

【Q】

  今年小学生になった娘が、友達が出来なくて困っています。
  自分から話しかけたり、笑ったりするのが恥ずかしくて出来ない・・・
  そうなんです。
  最近では、学校へ行きたくないと言い出しました。
  今の所、登校拒否にはなっていません。
  「友達の作り方」って、あるんでしょうか?

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

【A】

●友だち

 年齢的には、幼児期後期もすみ、児童期に入っています。
人格の核(コア)も、すでに完成しつつあるとみます。
つまり「この子は、こういう子」という(つかみどころ)ができているということ。
この時期に入ったら、鉄則はただひとつ。
「あるがままを認め、その上で、子育て(教育)を組み立てる」です。

 「友だちを作りなさい」式の人格を否定するような指導は、子どもをかえって崖っぷちに追い込んでしまうようなことになりかねませんので、注意が必要です。
子どもの立場で、それを考えてみればよくわかるはずです。

●自己認識力

 小学1年生には、まだ自分を客観的に観察し、判断する能力はありません。
それができるようになるのは、小学3年生以上です。
「自分には友だちが多い」「少ない」とかいう、判断はできないということ。

 そんなとき親から、「もっとみんなと親しくなりなさい」などと言われても、困るのは子どもということになります。
言い方をまちがえると、子どもは自信喪失から、自己否定、さらには心配しているような不登校児に……ということにもなりかねません。

●人間関係は、密度

 人間関係は、密度の問題です。
その密度は、横軸を「幅」とするなら、縦軸は「深さ」ということになります。
「広く浅く」が必ずしも、理想というわけではありません。
そうでなくても、日本の学校は、昔から「すし詰め教育」と揶揄(やゆ)されています。
少なくとも欧米の基準からみれば、そうです。
たとえばオーストラリアには、「エアー・スクール」というのがあります。
無線で勉強する学校です。

 週に1度ほど、近くの学校に集まり、スクーリングを受けますが、そのときでも全学年で、20~25人程度です。
そういうところの子どもが、どこかヘンかというと、そういうことはまったくありません。
さらにアメリカでは、ホームスクーラー(学校へ行かないで、家庭で教育を受けている子ども)が、推定で200万人を超えています。

 そこで大切なのは、「深さ」です。

 数は少なくても、その人と深く交際する、です。

●では、どうするか

 この時期、親ができることと言えば、各論でしかありません。
イギリスでは、『馬を水場に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない』と教えます。
子どもを馬にたとえるのは、日本では失礼な感じがしますが、イギリスではその逆です。
それはともかくも、各論です。

 たとえば子どもの友だちを呼んで、パーティを開くとか、反対に友だちの誕生日には、手作りのケーキを届けるとか、など。
コツは、親同士が仲よくなるつもりで、相手の子どもをその中に巻き込んでいきます。
つまりそれが「水場」ということになります。

●10人に1~2人

 実際には、集団にとけ込めない子どもというのは、10人に、1~2人(小学低学年児)はいます。

 たいていは、心が開けない子どもというように考えて対処します。
自分の心を開放し、ワーッとその中に入っていけないわけです。
しかしこのばあいも、子どもの問題というよりは、乳幼児期の母子関係に問題があったとみます。
発達心理学の世界では、「基本的信頼関係」という言葉を使って説明します。
つまり母子関係の不全ということになります。

 子どもというのは、絶対的なさらけ出し(=どんなことをしても許されるのだというさらけ出し)と、絶対的な受け入れ(=親は子どもがどんなことをしても、許すという受け入れ)の上で、基本的な信頼関係を構築します。
「絶対的」というのは、「疑いをいだかない」という意味です。

 このタイプの子どもは、(孤独)と(集団での苦痛)の間で、はげしく葛藤します。
(おとなでも、そうです。)
(さみしいから皆の中に入る)→(しかし神経疲労を起こしやすい)を繰り返す。
こうした現象を、ショーペンハウエルという心理学者は、(哲学者ではない)、「二匹のヤマアラシ」という逸話を使って説明しました。

 ある寒い夜のこと。
二匹のヤマアラシは穴の中で、身を寄せ合って過ごすことにした。
しかし近づきすぎると、互いの針で痛い。
しかし離れすぎると、寒い。
一晩中、それを繰り返した……というのが、『二匹のヤマアラシ論』です。

●親の姿勢

 なおこの相談を読んで、それよりも気になったのは、親の育児姿勢です。
「子ども自身はどうなのかな?」という視点が、ないのが気になります。
子どもが「友だちがいない……」と悩んだのでいるのでしょうか。
(友だちがいる・いない)は、ひょっとしたら、親の主観的判断ではないでしょうか。
あるいはひょっとしたら、子どもは、集団生活が苦手で(=いやで)、悩んでいるのかもしれません。

 中には、対人恐怖症であるとか、そういった心の問題(回避性障害、自閉症、緘黙症など)をかかえている子どももいます。
どれにしても子ども自身では、コントロールができない問題です。

 そういった問題を取りあげることもなく、頭から「どうすればいいか」を考えるのは、育児姿勢としては、危険です。
最近では、子どもに何か問題があったときは、「子どもは家族の代表」と考え、家族全体の問題として考えるようになってきています。
「子どもだけ何とかしよう」と考えるのは、危険というより、無謀です。

 「なぜそうなのか?」という視点で、ものを考えます。
「なぜ、そうなったか?」でもよいでしょう。
この親は、そういう視点で、子どもの問題を考えているでしょうか。
でないとするなら、過関心、過干渉ということになります。

●不登校児

 子どもがどの程度、集団から孤立しているか。
また心の問題が、どの程度なのか。
それがわかりませんから、ここでいきなり不登校児の問題を取りあげるのは、適切ではないかもしれません。

 「学校へ行きたくない」と子どもが言うようであれば、親はまず聞き役に回ってあげます。
子どもの立場で、「そうね」「そうだよね」と言ってあげるだけでも、子どもの心は軽くなるはずです。
まずいのは、「学校とは行かねばならないところ」と考え、親自身がもつ固定観念(古風な常識)を子どもに押しつけることです。

 ときにはズル休みも、よいでしょう。
私は自分の子育てで、そうしました。
平日に学校をズル休みし、動物園などへ連れていくと、どこもガラガラでした。
あのとき感じた解放感は、今でも忘れることができません。

●不登校は前兆をとらえる

 ジョンソンというイギリスの学者は、不登校、つまり学校恐怖症を3期に分けて考えています。
前兆期、パニック期、不登校期です。

 その前兆期に、子どもはさまざまな症状を示します。
頭痛、腹痛、脚痛、下痢、嘔吐などの身体的症状、ぐずりや、ふさぎこみ、グチ、無口、無言などの精神的症状などなど。
ほかにたとえば、食欲不振、不眠、早朝覚醒など。
こうした症状が慢性的につづくなら、要注意ということになります。

 が、もしそうでないなら、つまりただのグチとして、「学校へ行きたくない」と言うのであれば、よく子どもの話に耳を傾けてやることで、解決するはずです。

 ついでに言うなら、本当に行きたくないときは、「行きたくない」と直接的な言い方ではなく、「友だちがいじめる」とか、「学校の先生がこわい」とかなど、別の言い方をします。
子ども自身が、(行きたくない)という気持ちと、(行かねばならない)という気持ちのはざまで、葛藤するからです。
つまり自分の心をごまかしたり、正当化(合理化)したりします。

この葛藤が頂点に達したとき、パニック期を迎えます。
ある朝、突然、狂人のように暴れて、学校へ行くのを拒否する、など。

●あきらめる

 で、これが結論ということになります。
「あきらめる」です。
親としてできることにも限界があります。
一方、子どもには、子どもの世界があります。
今の段階で親ができることといえば、「温かい無視」と、「求めてきたときが与えどき」程度のことです。

 子どもが学校から、疲れて帰ってきます。
それがわかったら、家庭では、思う存分、羽を伸ばさせてあげます。
温かい無視というのは、それをいいます。

また子どもが何らかの形で、甘えてきたら、すかさず、ぐいと抱いてあげる。
たったそれだけのことですが、それで子どもは、落ち着くはずです。
「求めてきたときが与えどき」というのは、そういう意味です。

小学1年というのはそういう時期です。
言うなれば、野原を飛んでいた小鳥をカゴの中に、押し込めたような状態。
子どもにしてみれば、たいへんなストレスを感じて、当然です。

 そこで子どもはそのストレスを解消しようと、大きくわけて2つの反応を示します。

 ひとつは外放型(プラス型)。
もうひとつは、内閉型(マイナス型)。

 外放型というのは、暴れる、騒ぐ……という方法で、ストレスを発散する方法をいいます。
内閉型というのは、内に引きこもり、身の安全を図る方法をいいます。
相談の子どものケースは、内閉型ということになります。

 なおあまり情緒が不安定であるようなら、白砂糖を断ち、カルシウム、マグネシウム、カリウムの多い食生活に心がけます。
わかりやすく言えば、甘い食品や、肉類の多い献立から、海産物の多い献立に切り替えます。
それだけで子どもは、ぐんと落ち着くはずです。
1週間ほどで効果が現れてきますので、一度、試してみてください。

 最後に、「うちの子は、まあ、こんなもの」と、割り切り、繰り返しになりますが、あるがままを認め、その上で家庭教育を組み立てていきます。
けっしてオールマイティな子どもを求めないこと。
だれにも、得意、不得意があります。

 正直に告白しますが、私自身も集団行動が苦手です。
旅行でも、ワイフと2人だけで、のんびりとしています。
余計なことですが……。

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Hiroshi Hayashi++++++Nov. 2011++++++はやし浩司・林浩司
 


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