●ゲーム脳(ゲーム中毒)
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この日本では、どうして「ゲーム脳」が
問題にならないのか。
「ゲーム脳」という言葉が悪いなら、
「ゲーム中毒」でもよい。
隣の韓国では、すでに10年以上も前から、
また最近では中国でも、「ゲーム中毒」の
若者たちが、問題になりつつある。
ゲーム中毒の子ども(若者も)を集めた
更正施設や、更正プログラムまで、用意
されている※。
が、この日本では、問題にならない。
「ゲーム脳」という言葉を使って、エッセーを
書いただけで、猛烈な抗議に嵐にさらされる。
ゲームの世界そのものが、カルト化している。
ゲームに日夜夢中になっている子ども(若者)は、
まさにその信者ということになる。
(ためしに、「はやし浩司」で検索してみるとよい。
私を、口汚く中傷しているサイトやBLOGがある。
そのほとんどが、ここでいう「信者」たちである。
私が書いた『ポケモンカルト』(三一書房)などは、
出版してから11年になるが、いまだに叩かれつづ
けている!)
が、日本人だけが特別ということは、ありえない。
日本人の脳みそだけが、韓国人や中国人と、構造が
ちがうということは、ありえない。
今の今も、この日本には、ゲーム中毒の子ども(若者)は、
いる。
日に、何時間も何時間も、ゲームに夢中になっている。
真夜中でも、ゲームに夢中になっている。
が、日本では、そういう子ども(若者)が、どういうわけか、
問題にならない。
考えてみれば、これほどおかしな話はない。
ここでは、別の角度から、「ゲーム脳」について
考えてみたい。
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●まねる(観察学習)
発達心理学の世界には、「観察学習」という言葉がある。
子どもは、教えられて学ぶことよりも、まわりを観察しながら、自ら学ぶことの
ほうが多い。
量的に、はるかに多い。
「学習効果」ということを考えるなら、またそのほうがはるかに効果的。
たとえば以前、何かにつけ、ツッパリ始めた子ども(小5男児)がいた。
言動が粗野になり、独特の目つきで、独特の話し方で話すようになった。
「ウッセー」「コノヤロー」と。
紫の地に、金色の刺繍をほどこしたコートを着てきたこともあった。
で、その子どもを、高校生の受験クラスに入れてみた。
高校生の間に座らせて、好きな勉強をさせてみた。
最初は、体をかたくしていたが、週を追うごとに、ぐんぐんと変化していった。
あとで聞いたら、高校生の中の1人を、自分の理想像のように思いようになったらしい。
その高校生は、野球部の部員だった。
その子どもは、日曜日など、こっそりとその試合の応援に出かけたりしていた。
家に帰っても、その高校生の話ばかりするようになった。
これは観察学習というわけではないが、その子どもは、まわりの様子から、
多くのものを学んだことになる。
それは「学ぶ」という行為というよりは、「まねる」に近い。
その「まねる」という行為を、「モデリング」という。
●自己認識能力
ものごとは常識で考えよう。
まだ判断力や自己管理能力がじゅうぶん育っていない子どもが、ゲームを相手に、
「殺せ!」「やっつけろ!」と叫んで、心によい影響を与えるはずがない。
こんな実験が知られている。
ある一定時間、暴力映画を見せた子どもは、その直後、行動が暴力的になるという
(バンデュラ、ほか)。
多くの研究者が、同じような実験結果を報告しているので、今さら改めて説明する
までもない。
つまり子どもというのは、そのつど環境の中で、自分を作っていく。
作られていく。
それもそのはず。
子どもが現実検証能力、つまり自分、あるいは自分と他者との関係、さらには自分の
置かれた立場を、客観的に判断できるようになるのは、小学3年生(9歳)以上。
それ以前の子どもには、その能力はない。
たとえば病院や図書館で騒いでいる幼児がいる。
そういう幼児に向かって、「静かにしなさい!」と叱っても、意味はない。
「騒いでいる」「迷惑をかけている」という意識そのものがない。
そういう行為がどういうものかさえ、わかっていない。
叱られたあと静かになるのは、こわいからそうしているだけ。
つまり小学3年生(9歳)以前の子どもに、その判断能力はない。
判断能力がないというよりは、思考力が未熟。
だからこの時期の子どもは、理性や知性を使って「学ぶ」ことよりも、周囲を
観察し、それを「まねる」ことによって、自分の思考パターンや行動パターンを
形成していく。
それがモデリングということになる。
●疑わしきは罰する
法律の世界では、『疑わしきは罰せず』という。
が、教育の世界では、『疑わしきは罰する』という。
なんでもあやしいものは、先手先手で、子どもの世界から遠ざける。
安全性が確認されるまで待っていたら、それこそ手遅れになってしまう。
ゲームにしても、しかり。
もちろん中には、良質なソフトもある。
そういうものまで、ひとまとめにして、「反対!」と、私は言っているわけではない。
しかし良質なソフトにまぎれて、悪質なソフトがあるのも事実。
そういう悪質なソフトまで野放しにしては、いけない。
有害とは証明できないかもしれない。
しかし少なくとも、安全と証明されたわけでもない。
だったら、遠ざける。
それくらいの配慮というか、子どもの世界に対する思いやりは、あって当然の
ことではないか。
……と私は書いている。
●付記
あるBLOGには、こうあった。
「(右脳教育を創始者の)SDも、(ゲームを批判する)はやし浩司も、
同じようなもの。
一度、この2人を、バトルさせてみたい」と。
SD氏(2009年死去)は、ゲームは、右脳の刺激になると説いていた。
そのSD氏と私も、同じ、と。
しかし(右脳教育)と(ゲーム脳)とは、どこでどう結びつくのか。
その右脳教育にしても、安全が確認されたわけではない。
むしろ幼児期においては、左脳教育(論理と分析)こそ、重要。
そうでなくても、映像文化に発達とともに、あえて右脳を刺激しなくても、
子どもたちは、じゅうぶん過ぎるほどの刺激を受けている。
反対に、今、静かにものを考える子どもが少なくなった。
頭に飛来した情報を、ペラペラと口にする。
しかし中身がない。
薄っぺらい。
子どもたちの世界が、バラエティ番組化している。
「これでいいのか!」と叫んだところで、この話はおしまい。
【補記】
私は、右脳教育には、懐疑的である。
10年以上も前から、そういう趣旨で、原稿を書いてきた。
その気持ちは、いささかもゆらいでいない。
「まちがっている」と言っているのではない。
「あえて必要ない」と言っている。
フォト化とか、直観像とか、いろいろ言われているが、安全が確認された
わけではない。
ある幼児教室の案内書には、こうあった。
「これからは、右脳教育を受けた子どもたちが、ゾロゾロと(東大の)
赤門をくぐることになるでしょう」と。
それから10年。
そろそろその結果が出ているはず。
もしSD氏とバトルするようなことがあれば、(天国なら天国でもよいが)、まず
そのあたりの資料を出してもらうところから始めたい。
(注※)
●ゲーム脳
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「ゲーム脳」というのは、大脳生理学上の
問題ではない。
「現象」の問題である。
「大脳生理学上、ゲーム脳というのはない」と
説く学者もいる。
その世界では神格化され、「つぎつぎと商品企画
が、もちこまれている」(某雑誌)とか。
結構な話だが、こういう学者は、つぎのような
現象を、どう考えるのだろうか。
産経新聞をそのまま転載させてもらう。
+++++++++++++以下、産経新聞より++++++++++++++
【産経新聞・10-02-08】
『・・・世界最大となる3億3800万人のインターネット人口を抱える中国で、2400万人の青少年がオンラインゲームやチャットにのめり込む(ネット中毒)に陥っている。中国青少年インターネット協会が8日までに発表した調査結果で明らかになった。
中国のネット人口のうち3分の1は、19歳以下の青少年が占めている。6~29歳の青少年7千人を対象に行われた調査結果によると、ネットに依存している青少年は2007年の9・7%から14%に増加。「ネット中毒」が社会問題化し始めた05年ごろは400万人程度で、4年間で6倍に増えた計算だ。娯楽の少ない発展が遅れている地域に中毒者が多いことも、特徴の一つに挙げられている。
中毒を誘因している一番の原因はオンラインゲームだ。「ネットを通じて何をしているか?」との問いに対し、47・9%が「ゲーム」と回答。2位の「アニメや映画、音楽のダウンロード」の23・2%、3位の「チャットで友達を作る」の13・2%を大きく引き離した。
中国では08年11月、人民解放軍北京軍区総医院が策定した「ネット中毒臨床診断基準」を公表し、ネット中毒を「繰り返しネットを使用することで一種の精神障害をきたした状態」と定義付けた。今回の調査でも、ネット中毒になっていない人の66・5%は「他人を殴るのは間違っている」と答えたのに対し、中毒者は48%にとどまった。
国際情報紙、環球時報(英語版)によると、中国青少年精神保健センターの創設者は「ネット中毒者の40%は、(不注意や衝動的な症状などが出る)注意欠陥・多動性障害といった精神疾患にかかっている」と警鐘を鳴らしている』(以上、産経新聞)。
+++++++++++++以上、産経新聞より++++++++++++++
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Hiroshi Hayashi++++++April.2010++++++はやし浩司
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