2009年7月6日月曜日

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子育て最前線の育児論byはやし浩司   09年 7月 6日
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メルマガ(6万3000誌)の中で、2008年度、メルマガ・オブ・ザ・イヤーに
選ばれました!

【1】(子育てのこと)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

●子どもを勉強に向かわせる法

子どもが学習机から離れるとき

●机は休むためにある

 学習机は、勉強するためにあるのではない。休むためにある。どんな勉強でも、しばら
くすると疲れてくる。問題はその疲れたとき。そのとき子どもがその机の前に座ったまま
休むことができれば、よし。そうでなければ子どもは、学習机から離れる。勉強というの
は一度中断すると、なかなかもとに戻らない。

 そこであなたの子どもと学習机の相性テスト。子どもの好きそうな食べ物を、そっと学
習机の上に置いてみてほしい。そのとき子どもがそのまま机の前に座ってそれを食べれば、
よし。もしその食べ物を別のところに移して食べるようであれば、相性はかなり悪いとみ
る。

反対に自分の好きなことを、何でも自分の机に持っていってするようであれば、相性は合
っているということになる。相性の悪い机を長く使っていると、勉強嫌いの原因ともなり
かねない。

●机は棚のない平机

 学習机というと、前に棚のある棚式の机が主流になっている。しかし棚式の机は長く使
っていると圧迫感が生まれる。もう一五年ほども前になるが、小学一年生について調査し
たことがある。結果、棚式の机のばあい、購入後3か月で約80%の子どもが物置にして
いることがわかった。

最近の机にはいろいろな機能がついているが、子どもを一時的にひきつける効果はあるか
もしれないが、あくまでも一時的。そんなわけで机は買うとしても、棚のない平机をすす
める。あるいは低学年児のばあい、机はまだいらない。

たいていの子どもは台所のテーブルなどを利用して勉強している。この時期は勉強を意識
するのではなく、「勉強は楽しい」という思いを育てる。親子のふれあいを大切にする。子
どもに向かっては、「勉強しなさい」と命令するのではなく、「一緒にやろうか?」と話し
かけるなど。

●学習机を置くポイント

 学習机にはいくつかのポイントがある。

(1)机の前には、できるだけ広い空間を用意する。 

(2)棚や本棚など、圧迫感のあるものは背中側に配置する。

(3)座った位置からドアが見えるようにする。

(4)光は左側からくるようにする(右利き児のばあい)。

(5)イスは広く、たいらなもの。かためのイスで、机と同じ高さのひじかけがあるとよ
い。

(1)窓に向けて机を置くというのが一般的だが、あまり見晴らしがよすぎると、気が散
って勉強できないということもあるので注意する。

 机の前に広い空間があると、開放感が生まれる。またドアが背中側にあると、心理的に
落ちつかないことがわかっている。意外と盲点なのが、イス。深々としたイスはかえって
疲れる。ひじかけがあると、作業が格段と楽になる。ひじかけがないと、腕を机の上に置
こうとするため、どうしても体が前かがみになり、姿勢が悪くなる。

中に全体が前に倒れるようになっているイスがある。確かに勉強するときは能率があがる
かもしれないが、このタイプのイスでは体を休めることができない。

 さらに学習机をどこに置くかだが、子どもが学校から帰ってきたら、どこでどのように
して体を休めるかを観察してみるとよい。好きなマンガなどを、どこで読んでいるかをみ
るのもよい。たいていは台所のイスとか、居間のソファの上だが、もしそうであれば、思
い切って、そういうところを勉強場所にしてみるという手もある。子どもは進んで勉強す
るようになるかもしれない。

(詳しくは、「はやし浩司の書斎」に具体的な配置図とともに、書いてあります。どうか、
ご覧になってください。)

●相性を見極める

 ものごとには相性というものがある。子どもの勉強をみるときは、何かにつけ、その相
性を大切にする。相性が合えば、子どもは進んで勉強するようになる。相性が合わなけれ
ば、子どもは何かにつけ、逃げ腰になる。無理をすれば、子どもの学習意欲そのものをつ
ぶしてしまうこともある。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司
 子供部屋 子供の学習環境 動機付け 子供部屋のあり方)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●子どもの個性を伸ばす法

教育が型にはまるとき
●「ちゃんと見てほしい」

 「こんな丸のつけ方はない」と怒ってきた親がいた。祖母がいた。「ハネやハライが、メ
チャメチャだ。ちゃんと見てほしい」と。私が子ども(幼児)の書いた文字に、花丸をつ
けて返したときのことである。

あるいはときどき、市販のワークを自分でやって、見せてくれる子どもがいる。そういう
ときも私は同じように、大きな丸をつけ、子どもに返す。が、それにも抗議。「答がちがっ
ているのに、どうして丸をつけるのか!」と。

●「型」にこだわる日本人

 日本人ほど、「型」にこだわる国民はいない。よい例が茶道であり華道だ。相撲もそうだ。
最近でこそうるさく言わなくなったが、利き手もそうだ。「右利きはいいが、左利きはダメ」
と。

私の二男は生まれながらにして左利きだったが、小学校に入ると、先生にガンガンと注意
された。書道の先生ということもあった。そこで私が直接、「左利きを認めてやってほしい」
と懇願すると、その先生はこう言った。「冷蔵庫でもドアでも、右利き用にできているから、
なおしたほうがよい」と。

そのため二男は、左右反対の文字や部分的に反転した文字を書くようになってしまった。
書き順どころではない。文字に対して恐怖心までもつようになり、本をまったく読もうと
しなくなってしまった。

 一方、オーストラリアでは、スペルがまちがっている程度なら、先生は何も言わない。
壁に張られた作品を見ても、まちがいだらけ。そこで私が「なおさないのですか」と聞く
と、その先生(小三担当)は、こう話してくれた。

「シェークスピアの時代から、正しいスペルなんてものはないのです。発音が違えば、ス
ペルも違う。イギリスのスペルが正しいというわけではない。言葉は、ルール(文法やス
ペル)ではなく、中身です」と。

●「U」が二画?

 近く小学校でも、英語教育が始まる。その会議が10年ほど前、この浜松市であった。
その会議を傍聴してきたある出版社の編集長が、帰り道、私の家に寄って、こう話してく
れた。

「Uは、まず左半分を書いて、次に右半分を書く。つまり2画と決まりました。同じよう
にMとWは四画と決まりました」と。私はその話を聞いて、驚いた。英語国にもないよう
な書き順が、この日本にあるとは! 

そう言えば私も中学生のとき、英語の文字は、25度傾けて書けと教えられたことがある。
今から思うとバカげた教育だが、しかしこういうことばかりしているから、日本の教育は
おもしろくない。つまらない。

たとえば作文にしても、子どもたちは文を書く楽しみを覚える前に、文字そのものを嫌い
になってしまう。日本のアニメやコミックは、世界一だと言われているが、その背景に、
子どもたちの文字嫌いがあるとしたら、喜んでばかりはおられない。だいたいこのコンピ
ュータの時代に、ハネやハライなど、毛筆時代の亡霊を、こうまでかたくなに守らねばな
らない理由が、一体どこにあるのか。

「型」と「個性」は、正反対の位置にある。子どもを型に押し込めようとすればするほど、
子どもの個性はつぶれる。子どもはやる気をなくす。

●左利きと右利き

 正しい文字かどうかということは、次の次。文字を通して、子どもの意思が伝われば、
それでよし。それを喜んでみせる。そういう積み重ねがあって、子どもは文を書く楽しみ
を覚える。

オーストラリアでは、すでに10年以上も前に小学3年生から。今ではほとんどの幼稚園
で、コンピュータの授業をしている。10年以上も前に中学でも高校でも生徒たちは、フ
ロッピーディスクで宿題を提出していたが、それが今では、インターネットに置きかわっ
た。先生と生徒が、常時インターネットでつながっている。こういう時代がすでにもう来
ているのに、何がトメだ、ハネだ、ハライだ! 

 冒頭に書いたワークにしても、しかり。子どもが使うワークなど、半分がお絵かきにな
ったとしても、よい。だいたいにおいて、あのワークほど、いいかげんなものはない。そ
れについては、また別のところで書くが、そういうものにこだわるほうが、おかしい。

左利きにしても、人類の約5%が、左利きといわれている(日本人は3~4%)。原因は、
どちらか一方の大脳が優位にたっているという大脳半球優位説。親からの遺伝という遺伝
説。生活習慣によって決まるという生活習慣説などがある。

一般的には乳幼児には左利きが多く、3~4歳までに決まるが、どの説にせよ、左利きが
悪いというのは、あくまでも偏見でしかない。冷蔵庫やドアにしても、確かに右利き用に
はできているが、しかしそんなのは慣れ。慣れれば何でもない。

●エビでタイを釣る

 子どもの懸命さを少しでも感じたら、それをほめる。たとえヘタな文字でも、子どもが
一生懸命書いたら、「ほお、じょうずになったね」とほめる。そういう前向きな姿勢が、子
どもを伸ばす。これは幼児教育の大原則。昔からこう言うではないか。「エビでタイを釣る」
と。しかし愚かな人はタイを釣る前に、エビを食べてしまう。こまかいこと(=エビ)を
言って、子どもの意欲(=タイ)を、そいでしまう。

(付記)

●私の意見に対する反論

 この私の意見に対して、「日本語には日本語の美しさがある。トメ、ハネ、ハライもその
一つ。それを子どもに伝えていくのも、教育の役目だ」「小学低学年でそれをしっかりと教
えておかないと、なおすことができなくなる」と言う人がいた。

しかし私はこういう意見を聞くと、生理的な嫌悪感を覚える。その第一、「トメ、ハネ、ハ
ライが美しい」と誰が決めたのか? それはその道の書道家たちがそう思うだけで、そう
いう「美」を、勝手に押しつけてもらっては困る。要はバランスの問題だが、文字の役目
は、意思を相手に伝えること。「型」ばかりにこだわっていると、文字本来の目的がどこか
へ飛んでいってしまう。

私は毎晩、涙をポロポロこぼしながら漢字の書き取りをしていた二男の姿を、今でもよく
思い出す。二男にとっては、右手で文字を書くというのは、私たちが足の指に鉛筆をはさ
んで文字を書くのと同じくらい、つらいことだったのだろう。二男には本当に申し訳ない
ことをしたと思っている。この原稿には、そういう私の、父親としての気持ちを織り込ん
だ。

(参考)

●経済協力開発機構(OECD)が調査した「学習到達度調査」(PISA・2000年調
査)によれば、「毎日、趣味で読書をするか」という問いに対して、日本の生徒(15歳)
のうち、53%が、「しない」と答えている。

この割合は、参加国32か国中、最多であった。また同じ調査だが、読解力の点数こそ、
日本は中位よりやや上の8位であったが、記述式の問題について無回答が目立った。

無回答率はカナダは5%、アメリカは4%。しかし日本は29%! 文部科学省は、「わか
らないものには手を出さない傾向。意欲のなさの表れともとれる」(毎日新聞)とコメント
を寄せている。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
日本人の型 型にはめる教育 子供の個性)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●子どもを勉強好きにする法

子どもがワークをするとき 

●西田ひかるさんが高校一年生

 学研に「幼児の学習」「なかよし学習」という雑誌があった。今もある。私はこの雑誌に
創刊時からかかわり、その後「知恵遊び」を10年間ほど、協力させてもらった。

「協力」というのもおおげさだが、巻末の紹介欄ではそうなっていた。この雑誌は両誌で、
当時毎月47万部も発行された。この雑誌を中心に私は以後、無数の市販教材の制作、指
導にかかわってきた。

バーコードをこするだけで音が出たり答えが出たりする世界初の教材、「TOM」(全10
巻)や、「まなぶくん・幼児教室」(全48巻)なども手がけた。

14年ほど前には英語雑誌、「ハローワールド」の創刊企画も一から手がけた。この雑誌も
毎月27万部という発行部数を記録したが、そのときの編集長の大塚K氏が、横浜のアメ
リカンハイスクールで見つけてきたのが、西田ひかるさんだった。当時まだまったく無名
の、高校一年生だった。

●さて本題

 ……実はこういう前置きをしなければならないところに、肩書のない人間の悲しみがあ
る。私はどこの世界でも、またどんな人に会っても、まずそれから話さなければならない。
私の意見を聞いてもらうのは、そのあとだ。

で、本論。私はこのコラム(中日新聞「子どもの世界」)の中で、「ワークやドリルなど、
半分はお絵かきになってもよい」と書いた。別のところでは、「ワークやドリルほどいいか
げんなものはない」とも書いた。

そのことについて、何人かの人から、「おかしい」「それはまちがっている」という意見を
もらった。しかし私はやはり、そう思う。無数の市販教材に携わってきた「私」がそう言
うのだから、まちがいない。

●平均点は六〇点

まず「売れるもの」。それを大前提にして、この種の教材の企画は始まる。主義主張は、次
の次。そして私のような教材屋に仕事が回ってくる。そのとき、おおむね次のようなレベ
ルを想定して、プロット(構成)を立てる。

その年齢の子ども上位10%と下位10%は、対象からはずす。残りの80%の子どもが、
ほぼ無理なくできる問題、と。点数で言えば、平均点が60点ぐらいになるような問題を
考える。

幼児用の教材であれば、文字、数、知恵の三本を柱に案をまとめる。小学生用であれば、
教科書を参考にまとめる。

しかしこの世界には、著作権というものがない。まさに無法地帯。私の考えた案が、ほん
の少しだけ変えられ、他社で別の教材になるということは日常茶飯事。こう書いても信じ
てもらえないかもしれないが、25年前に私が「主婦と生活」という雑誌で発表した知育
ワークで、その後、東京の私立小学校の入試問題の定番になったのが、いくつかある。

●半分がお絵かきになってもよい

 子どもがワークやドリルをていねいにやってくれれば、それはそれとして喜ばねばなら
ないことかもしれない。しかしそういうワークやドリルが、子どもをしごく道具になって
いるのを見ると、私としてはつらい。……つらかった。

私のばあい、子どもたちに楽しんでもらうということを何よりも大切にした。同じ迷路の
問題でも、それを立体的にしてみたり、物語を入れてみたり、あるいは意外性をそこにま
ぜた。たとえば無数の魚が泳いでいるのだが、よく見ると全体として迷路になっていると
か。あの「幼児の学習」や「なかよし学習」にしても、私は毎月300枚以上の原案をか
いていた。だから繰り返す。

 「ワークやドリルなど、半分がお絵かきになってもよい。それよりも大切なことは、子
どもが学ぶことを楽しむこと。自分はできるという自信をもつこと」と。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
子どもの学習 子供の学習 勉強嫌い 子どもの集中力 子供の集中力 学習指導 勉強
指導 学習机 はやし浩司 子供の勉強グセ 勉強癖 やる気 やる気論 子供を伸ばす
法 子供の伸ばし方 家庭学習 子供の方向性)


【2】(特集)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【心のキズ】

●子どものうつ病

+++++++++++++++++

うつ病の素因(遠因)は、満5歳から
10歳ごろまでに、つくられるという。

しかもその主なる原因は、離別体験だ
という。

つまり幼少期に親と離別体験を経験した
子どもほど、のちにおとなになって
から、うつ病(抑うつ状態)に
なりやすいということがわかって
いる。

もし今、あなたがうつ病、もしくは
うつ病的な傾向があるなら、まず、
自分の過去をのぞいてみよう。

それがあなたの心を守る第一歩となる。

++++++++++++++++

●幼少期の離別体験

 児童期の喪失体験が、子どもの抑うつ状態と、深く関係しているという(社会精神医学、
7;114―118)。

 いわく「10歳以前の両親のいずれかと死別体験、もしくは、分離体験という喪失体験
が、正常対象群(9%)に対して、患者群(39%)に有意の差をもって多く認められた。

 しかし抑うつ状態の診断下位群、抑うつ状態の臨床結果とは特異な所見を得られなかっ
た。

 さらに5~10歳までが、喪失体験が抑うつ状態の素因を形成するための臨界期であろ
うと推察した」と。

 わかりやすく言うと、こうなる。

10歳以前に、両親のいずれかと死別、もしくは分離体験をした子どもほど、のちにおと
のなになってから、抑うつ状態になりやすいということ。

 同じような報告は、イギリスのバーミンガム病院でも、報告されている(精神医学、2
8;387~393、1986)。

 精神障害のある39人の患者について調べたところ、「15歳以前で、12か月以上の離
別体験をもった人」は、そうでない人よりも、明らかに関連性があることがわかったとい
う。

 しかもこの報告で、興味深いのは、異性の親(男児であれば、母親、女児であれば、父
親)との離別体験をもった人ほど、「有意な差」が見られたという。

 さらに報告書は、こう書いている。

 「死別体験は家族歴の有無と、有意の関連を呈さなかったが、離別体験は家族歴の有無
と有意(exact probability test, p=0.026)の関連をもち、この傾向は、離別の対象が異性
の親である際に強いものであった。

 異性親からの離別を体験したものは、家族歴を有する20人のうち、7名(35%)で
あるのに対して、家族歴を有さないもの19名では、皆無(0%)であった。

 このことから、うつ病発症に関与していると考えられる幼少期の離別体験は、一部には、
家族員の精神疾患から発生したものである可能性が示された」(北村俊則)と。

 以上を、わかりやすくまとめると、こうなる。

(1)10歳以前に親との死別体験や離別体験をもった人ほど、うつ病になりやすい。
(2)異性の親との死別体験や離別体験をもった人ほど、うつ病になりやすい。
(3)家族のだれかに精神疾患があった人ほど、うつ病になりやすい。

 かなり乱暴なまとめ方なので、誤解を招く心配もないわけではないが、おおざっぱに言
えば、そういうことになる。そしてこうした調査報告を、裏から読むと、こうなる。

(1)10歳以前に、子どもに、離別体験を経験させるのは、避けたほうがよい、と。

 しかし実際には、たとえば親の離婚問題を例にあげて考えてみると、離婚(離別)その
ものが子どもに影響を与えるというよりは、それにいたる家庭内騒動が、子どもに影響を
与えるとみるべきである。バーミンガム病院での報告書にも、「死別体験は家族歴の有無と、
有意の関連を呈さなかった」とある。

 解釈のしかたにも、いろいろあるが、死別のばあいは、離婚騒動で起きるような家庭内
騒動は、起きない。

 だから離婚するにしても、(それぞれの人たちは、やむにやまれない理由があって離婚す
るので)、子どもとは無縁の世界で、話を進めるのがよいということになる。子どもの目の
前で、はげしい夫婦げんかをするなどという行為は、タブーと考えてよい。

 また、この調査結果は、もうひとつ重要なことを私たちに教えている。

 もし今、あなたがうつ病、もしくはうつ病的な傾向を示しているなら、その原因は、ひ
ょっとしたら、あなた自身の幼少期に起因しているかもしれないということ。(うつ病の原
因が、すべて幼少期にあると言っているのではない。誤解のないように!)

 そこであなたは、自分の過去を、冷静に、かつ客観的に見つめなおしてみる。

 しかし問題は、あなた自身が、そういう過去を経験したということではなく、そういう
過去があることに気がつかないまま、そういう過去の虜(とりこ)となって、その過去に
操られることである。

 そこでまず、自分の過去を知る。

 もしそのとき、あなたが心豊かで恵まれた環境の中で、育てられたというのであれば、
それはそれとして結構なことである。が、反対に、ここでいうような不幸な体験(親との
死別体験や離別体験)を経験しているなら、あなたの心は、何らかの形で、かなりキズつ
いているとみてよ
い。

 しかしそれがこの問題を克服する第一歩である。

 自分の過去を知り、自分の心のキズに気がつけば、あとは、時間が解決してくれる。5
年とか10年とか、あるいはもっと時間がかかるかもしれない。が、あとは、時間に任せ
ればよい。少なくとも、自分の(心の敵)がわかれば、恐れることはない。不必要に悩ん
だり、苦しんだりすることもない。

 うつ病にかぎらず、心の問題というのは、そういうものである。

 私自身の経験を書いたエッセーが、つぎのものである。

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●心のキズ

 私の父はふだんは、学者肌の、もの静かな人だった。しかし酒を飲むと、人が変わった。
今でいう、アルコール依存症だったのか? 3~4日ごとに酒を飲んでは、家の中で暴れ
た。大声を出して母を殴ったり、蹴ったりしたこともある。あるいは用意してあった食事
をすべて、ひっくり返したこともある。

私と5歳年上の姉は、そのたびに2階の奥にある物干し台に身を潜め、私は「姉ちゃん、
こわいよオ、姉ちゃん、こわいよオ」と泣いた。

 何らかの恐怖体験が、心のキズとなる。そしてそのキズは、皮膚についた切りキズのよ
うに、一度つくと、消えることはない。そしてそのキズは、何らかの形で、その人に影響
を与える。

が、問題は、キズがあるということではなく、そのキズに気づかないまま、そのキズに振
り回されることである。

たとえば私は子どものころから、夜がこわかった。今でも精神状態が不安定になると、夜
がこわくて、ひとりで寝られない。あるいは岐阜の実家へ帰るのが、今でも苦痛でならな
い。帰ると決めると、その数日前から何とも言えない憂うつ感に襲われる。

しかしそういう自分の理由が、長い間わからなかった。もう少し若いころは、そういう自
分を心のどこかで感じながらも、気力でカバーしてしまった。が、50歳も過ぎるころに
なると、自分の姿がよく見えてくる。見えてくると同時に、「なぜ、自分がそうなのか」と
いうことまでわかってくる。

 私は子どものころ、夜がくるのがこわかった。「今夜も父は酒を飲んでくるのだろうか」
と、そんなことを心配していた。また私の家庭はそんなわけで、「家庭」としての機能を果
たしていなかった。家族がいっしょにお茶を飲むなどという雰囲気は、どこにもなかった。

だから私はいつも、さみしい気持ちを紛らわすため、祖父のふとんの中や、母のふとんの
中で寝た。それに私は中学生のとき、猛烈に勉強したが、勉強が好きだからしたわけでは
ない。母に、「勉強しなければ、自転車屋を継げ」といつも、おどされていたからだ。つま
りそういう「過去」が、今の私をつくった。

 よく「子どもの心にキズをつけてしまったようだ。心のキズは消えるか」という質問を
受ける。が、キズなどというのは、消えない。消えるものではない。恐らく死ぬまで残る。
ただこういうことは言える。

心のキズは、なおそうと思わないこと。忘れること。それに触れないようにすること。さ
らに同じようなキズは、繰り返しつくらないこと。つくればつくるほど、かさぶたをめく
るようにして、キズ口は深くなる。

私のばあいも、あの恐怖体験が一度だけだったら、こうまで苦しまなかっただろうと思う。
しかし父は、先にも書いたように、3~4日ごとに酒を飲んで暴れた。だから54歳にな
った今でも、そのときの体験が、フラッシュバックとなって私を襲うことがある。

「姉ちゃん、こわいよオ、姉ちゃん、こわいよオ」と体を震わせて、ふとんの中で泣くこ
とがある。54歳になった今でも、だ。

心のキズというのは、そういうものだ。決して安易に考えてはいけない。

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●私の経験から

 私が、自分の過去を冷静にみるようになったのは、私が30歳もすぎてからのことでは
なかったか。それについて書いたエッセーが、つぎのものである。内容的に一部、ダブる
ところがあるが、許してほしい。4年前に書いた原稿である。

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

【自分を変えるために……】

+++++++++++++++++++++

あなたは本当に、あなたか? 
あなたは「私は私」と、本当にそのように、
自信をもって言えるか?

+++++++++++++++++++++

●私の不安発作

 ときどき、自分が夜の闇に吸い込まれていくように感じて、言いようのない不安に襲わ
れることがある。私は夜が苦手。子どものころから苦手だった。そういう不安に襲われる
と、この年齢(54歳)になっても、ひとりで寝ることができない。ワイフが床に入るの
を待ってから、自分もその床に身をすべらせる。

 夜が苦手になった理由は、父が酒乱だったことによる。私が4,5歳くらいのときから
父の酒グセが悪くなり、父は数日おきに酒を飲んだ。見さかいなく暴れた。ときにはそう
いう騒動を、おもしろおかしく見たこともあるが、私には恐怖だった。

父が酒を飲んで暴れるたびに、そして大声で怒鳴り散らすたびに、私と姉は、2階の奥に
あった物干し台の陰に身を隠し、それにおびえた。今でも、「姉ちゃん、こわいよ」「姉ち
ゃん、こわいよ」と声を震わせて泣いた自分の声を、よく覚えている。姉は私より、5歳
年上だった。

●心のキズにきづいたのは、三〇歳を過ぎてから

 しかし私がこうした自分の心のキズに気づいたのは、私が30歳を過ぎてからだった。
それまでは自分の心にキズがあるなどとは、思ってもみなかった。が、今から思い出すと、
いろいろな症状があった。

たとえば私は酒臭い人が大嫌いだった。近くにいるだけで、生理的な嫌悪感を覚えた。赤
い夕日が沈むのを見ると、ときどき不安になった。暗いトンネルに入ると、ぞっとするよ
うな恐怖感に襲われた。カッとなると、すべてを破壊してしまいたいような衝動にかられ
た。自分を消してしまいたいような衝動で、そのためときどきワイフに暴力を振るったこ
ともある。

父が母に暴力を振るっていたのを見たことがあるためか、自分の暴力は正しいと思い込ん
でいた。そして最大の症状は、ここに書いたように、夜がこわかったということ。

●不安発作の原因

 一度不安発作に襲われると、自分でもどうやって身を守ってよいのかわからなくなる。
たいていはふとんの中で、体を丸めて、ガタガタ震える。あるいはワイフの体にしがみつ
いて眠る。

しかしそれでも、なぜ自分がそういう発作に襲われるのか、理由がわからなかった。が、
ある夜のこと。私がワイフにふとんの中で、私の子どものころの話を語っていたときのこ
と。やがて話が父の酒乱の話しになり、暴力の話になった。そして姉と物干し台で震えて
いたときの話になった。そのときのことだ。突然、私はあの不安発作に襲われた。

 体がガタガタと震えだし、そして自分が夜の闇に吸い込まれていくのを感じた。そして
年甲斐もなく、大声で、「姉ちゃん、こわいよ」「姉ちゃん、こわいよ」と泣き出した。

ワイフは、私を自分の体で包みながら、「あなた、何でもないのよ」となだめてくれたが、
そのときはじめて私はわかった。私が感じる不安は、あの夜感じた不安と同じだった。そ
してそれはあの夜から始まっていたのを知った。

 赤い夕日が沈むのを見ると不安になるのは、そのころ父はいつも近くの酒屋で酒を飲ん
でいたからだ。いつだったか、父が真っ赤な夕日を背景に、フラフラと通りを歩いている
のをみかけたことがある。そのときの光景が、今でもはっきりと覚えている。

 また私が暗いトンネルが苦手なのは、暗闇がこわいということよりも、何らかの恐怖症
が形を変えたためと考えられる。子どもというのは、一度恐怖症になると、その思考プロ
セスだけは残り、いろいろな恐怖症に姿を変える。私のばあいも、暗闇恐怖症が、飛行機
事故で今度は、飛行機恐怖症になったりした。

●私の中の私でない部分

 が、ここで私の中に大きな変化が起きたのを知った。「私は私」と思っていたが、私の中
に、私でない部分を知ったとき、そのときから、本当の自分が見えてきた。私は、私の中
の別の私に動かされていただけだった。

たとえば私が酒臭い人を嫌うのも、赤い夕日が沈むのを見ると、ときどき不安になるのも、
また暗いトンネルに入ると、ぞっとするような恐怖感に襲われるのも、カッとなると、す
べてを破壊してしまいたいような衝動にかられるのも、すべて、私の中の別の私がそうさ
せていることに気づいた。これは私にとっては、大きな発見だった。この先を話す前に、
こんなことがある。

●子どもを見ていて……

 子どもを教えていると、それぞれの子どもが、何らかの問題をかかえている。問題のな
い子どもなどいないと言ってもよい。それほど深刻なケースでなくても、いじけたり、す
ねたり、つっぱったり、ひねくれたり、ひがんだりする子どもは多い。そういう子どもを
観察してみると、子ども自身の意思というよりは、何か別の力によって動かされているの
がわかる。もちろん本人は、自分の意思で行動していると思っているようだが、別の思考
パターンが作動しているのがわかる。

 原因はいろいろある。たいていは家庭環境や家庭教育。年齢が大きくなるにつれて、学
校という場が原因になることもある。私が印象に残っている女の子に、A子さんという子
ども(年長児)がいた。

ある朝、私が園庭でA子さんに、「今日はいい天気だね」と話しかけたときのこと。A子さ
んは、こう言った。「今日は、いい天気ではない。あそこに雲がある」と。そこでまた私が、
「雲があっても、いい天気だよ」と言うと、さらにかたくなな様子になり、「あそこに雲が
ある!」と。ものの考え方がどこかひねくれていた。

で、話を聞くと、A子さんの家は、父子家庭。ある日担任の先生がA子さんの家を訪れて
みると、父親の飲む酒ビンが、床にころがっていたという。

●いつ、それに気づくか?

が、問題はこのことではない。そういう「すなおでない性格」について、子ども自身がい
つ、どのような形で気がつくか、だ。が、このことも、問題ではない。問題は、そういう
自分であって自分でない部分に気がつくことがないまま、自分であって自分でない部分に
引き回されること。そして同じ失敗を繰り返す。これが問題である。

しかしなおす方法がないわけではない。まず、自分自身の中に潜む心のキズがどんなもの
であるかを、客観的に知る。

 私のばあいは、あの夜、ワイフの胸の中で、「姉ちゃん、こわいよ」と泣いたときから、
自分が変わったように思う。それまで心の奥底に潜んでいた「わだかまり」に気づくと同
時に、それを外に吐き出すことができた。

もっともそれですぐすべての問題が解決したわけではないが、少しずつ、そのときからわ
だかまりがこわれていった。同じような症状はそれからも繰り返し出たが、(今でも、出る
が……)、そのつど、なぜ自分がそうなるかがわかり、そしてそれに合わせて、症状も軽く
なっていった。

 そこで……

●自分を変えるために

(1)もしあなたが、いつも同じようなパターンで、同じような失敗を繰り返すようであ
れば、自分さがしをしてみる。どこかにおおきなわだかまりや、心のキズがあるは
ずである。

(2)あなたの過去に問題があることが問題ではない。問題は、そういう問題に気づくこ
とがないまま、その過去に振り回されること。ただし、自分の心の中をのぞくこと
は、こわいことだが、勇気を出して、それをすること。

(3)心の中のキズやわだかまりは、あなたを、無意識のまま、あなたを裏から操(あや
つ)る。ふつうは操られていることに気づかないまま、操られる。たとえば子どもへの暴
力など。親はとっさに暴力を振るうが、あとで「なぜそんなことをしたかわからない」と
いうケースが多いのは、そのため。

(4)しかしあなたが自分の中の、「自分であって自分でない部分」に気づけば、そのとき
から、この問題は解決する。同じような症状(反応)が出たとき、「ああ、これは私
であって、私でない部分」と

(5)自分自身を客観的にみる。あとは時間が解決してくれる。

 これは私の体験からの報告である。

(追記)

 こうした自分自身の体験を公開するのは、一方で、そういう自分と決別するためでもあ
る。自分自身を思いきってさらけ出すのも、ひとつの解決方法かもしれない。

なお私のばあい、それ以上に心がゆがまなかったのは、やさしい祖父母が同居していたた
めと考えられる。もうひとつは、近くに親類が何人かいて、私のめんどうをみてくれた。
ああいう家庭環境で、もし祖父母や親類が近くにいなかったら、今ごろの私は、どうなっ
ていたか……。それを考えると、ぞっとする。

そういう意味で、よく子どもの非行が問題になるが、私はすべて子どもの責任にするのは、
まちがっていると思う。

(02-9-29)
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
心の傷 トラウマ うつ病 離婚 離別体験 死別体験 子供の心理 バーミンガム病院 
恐怖症 はやし浩司 離別体験 うつ秒 心の問題)


Hiroshi Hayashi++++++++June.09+++++++++はやし浩司

●同一性の危機

万引き、自転車盗、薬物濫用、暴走、家庭内暴力、校内暴力、性非行、無断外泊、いじめ
を、非行という(会津若松警察書)。子どもは、(自分のしたいこと)と、(現実にしている
こと)の間に遊離感を覚えたとき、無意識のうちにも、その距離を、縮めようとする。子
どもの耐性にもよるが、それが一定の限界(個人差は当然ある)を超えたとき、子どもの
自己の同一性は、危機に立たされる。


●夢・希望・目的

夢・希望・目的は、子どもを伸ばす、三種の神器。これら夢・希望・目的は、(自分のした
いこと)と、(現実にしていること)が一致しているとき、あるいは、そこに一体感がある
とき、そこから生まれる。「ぼくはサッカー選手になる」「私はケーキ屋さんになる」と。
そしてサッカーの練習をしたり、ケーキを自分で焼いてみたりする。「プロの選手になる」
とか、「パン屋さんになる」とかいう目的は、そこから生まれる。


●子どもの忍耐力

同一性が危機に立たされると、子どもは、それを修復しようとする。(自分のしたいこと)
を、別のものに置きかえたり、(現実にしていること)を、修正しようとしたりする。ある
いは「したくないが、がんばってやってみよう」と考えたりする。ここで登場するのが、
忍耐力ということになる。子どもにとって、忍耐力とは、(いやなことをする力)をいう。
この忍耐力は、幼児期までに、ほぼ完成される。


●同一性の崩壊

同一性を支えきれなくなると、そこで同一性の崩壊が始まる。子ども自身、自分が何をし
たいか、わからなくなってしまう。また何をしてよいのか、わからなくなってしまう。「私
は何だ」「私はだれだ」と。「私はどこへ行けばよいのか」「何をすればよいのか」と。それ
は「混乱」というような、なまやさしいものではない。まさに「自己の崩壊」とも言うべ
きもの。当然、子どもは、目的を見失う。


●顔のない自分

同一性が崩壊すると、いわゆる(顔のない自分)になる。で、このとき、子どもは、大き
く分けて、二つの道へと進む。(1)自分の顔をつくるため、攻撃的かつ暴力的になる(攻
撃型)。(2)顔のない自分のまま、引きこもったり、カラに閉じこもったりする(逃避型)。
ほかに、同情型、依存型、服従型をとる子どももいる。顔のない自分は、最悪のケースで
は、そのまま自己否定(=自殺)へとつながってしまう。


●校内暴力

暴力的な子どもに向かって、「そんなことをすれば、君がみなに嫌われるだけだよ」と諭(さ
と)しても、意味はない。その子どもは、みなに嫌われ、怖れられることで、(自分の顔)
をつくろうとする。(顔のない自分)よりは、(顔のある自分)を選ぶ。だからみなが、恐
れれば、怖れるほど、その子どもにとっては、居心地のよい世界となる。攻撃型の子ども
の心理的のメカニズムは、こうして説明される。


●子どもの自殺

おとなは、生きるのがいやになって、その結果として、自殺を選ぶ。しかし子どものばあ
いは、(顔のない自分)に耐えきれず、自殺を選ぶ。自殺することによって、(自分の顔)
を主張する。近年ふえているリストカットも、同じように説明できる。リストカットする
ことで、自分を主張し、他人からの注目(同情、あわれみなど)を得ようとする。「贖罪(し
ょくざい)のために、リストカットする」と説く学者もいる(稲富正治氏ほか)。


●自虐的攻撃性

攻撃型といっても、2つのタイプがある。外に向って攻撃的になる(校内暴力)と、内に
向って攻撃的になる(ガリ勉、猛練習)タイプ。「勉強しかしない」「勉強しかできない」「朝
から寝るまで勉強」というタイプは、後者ということになる。決して、勉強を楽しんでい
るのではない。「勉強」という場で、(自分の顔)をつくろうとしていると考えるとわかり
やすい。近年、有名になったスポーツ選手の中には、このタイプの人は少なくない。


●自我の同一性
 
(子どもがしたがっている)ことに、静かに耳を傾ける。そしてそれができるように、子
どもの環境を整えていく。そうすることで、子どもは、(自分のしたいこと)と、(自分が
していること)を一致させることができる。これを「自我の同一性」という。この両者が
一致している子どもは、夢や希望もあり、当然、目的もあるから、見た目にも、落ちつい
ていて、どっしりとしている。抵抗力もあるから、誘惑にも強い。


●心の抵抗力

「私は~~をしたい」「ぼくは~~する」と、目的と方向性をしっかりともっている子ども
は、心の抵抗力も強い。外部からの誘惑があっても、それをはねのける。小学校の高学年
から中学校にかけては、その誘惑が、激増する。そうした誘惑をはね返していく。が、同
一性が崩壊している子どもは、生きザマが、せつな的、享楽的になるため、悪からの誘い
があると、スーッとその世界に入ってしまう。


●夢や希望を育てる

たとえば子どもが、「花屋さんになりたい」と言ったとする。そのとき重要なことは、親は、
それに答えて、「そうね、花屋さんはすてきね」「明日、球根を買ってきて、育ててみまし
ょうか」「お花の図鑑を買ってきましょうか」と、子どもの夢や希望を、育ててやること。
が、たいていの親は、この段階で、子どもの夢や希望を、つぶしてしまう。そしてこう言
う。「花屋さんも、いいけど、ちゃんと漢字も覚えてね」と。


●子どもを伸ばす三種の神器

子どもを伸ばす、三種の神器が、夢、目的、希望。しかし今、夢のない子どもがふえた。
中学生だと、ほとんどが、夢をもっていない。また「明日は、きっといいことがある」と
思って、一日を終える子どもは、男子30%、女子35%にすぎない(「日本社会子ども学
会」、全国の小学生3226人を対象に、04年度調査)。子どもの夢を大切に、それを伸
ばすのは、親の義務と、心得る。


●役割混乱

子どもは、成長するにつれて、心の充実をはかる。これを内面化というが、そのとき同時
に、「自分らしさ」を形成していく。「花屋さんになりたい」と言った子どもは、いつの間
にか、自分の周囲に、それらしさを作っていく。これを「役割形成」という。子どもを伸
ばすコツは、その役割形成を、じょうずに育てていく。それを破壊すると、子どもは、「役
割混乱」を起こし、精神的にも、情緒的にも、たいへん不安定になり、混乱する。


●思考プロセス(回路)

しかし重要なのは、「思考プロセス」。幼いときは、「花屋さんになりたい」と思ってがんば
っていた子どもが、年齢とともに、今度は、「看護婦さんになりたい」と言うかもしれない。
しかし幼いときに、花屋さんになりたいと思ってがんばっていた道筋、あるいは思考プロ
セスは、そのまま残る。その道筋に、花屋さんにかわって、今度は、看護婦が、そこへ入
る。中身はかわるかもしれないが、今度は、子どもは、看護婦さんになるために、がんば
り始める。


●進学校と受験勉強

たいへんよく誤解されるが、「いい高校」「いい大学」へ入ることは、一昔前までは、目的
になりえたが、今は、そういう時代ではない。学歴の権威を支える、権威主義社会そのも
のが崩壊してしまった。親は、旧態依然の考え方で、「いい大学へ入ることが目的」と考え
やすいが、子どもにとっては、それは、ここでいう目的ではない。「受験が近いから、(好
きな)サッカーをやめて、受験塾へ行きなさい」と子どもを追うことで、親は子どもの夢
をつぶす。「つぶしている」という意識すらないまま……。


●これからはプロの時代

これからはプロが生き残る時代。オールマイティなジェネラリストより、一芸にひいでた
プロのほうが、尊重される。大手のT自動車の面接試験でも、学歴不問。そのかわり、「君
は何ができるか?」と聞かれる時代になってきている。大切なことは、子どもが、生き生
きと、自分の人生を歩んでいくこと。そのためにも、子どもの一芸を大切にする。「これだ
けは、だれにも負けない」というものを、子どもの中につくる。それが将来、子どもを伸
ばす。


●大学生の問題

現在、ほとんどの高校生は、入れる大学の入れる学部という視点で、大学や学部を選んで
いる。もともと、勉強する目的すらもっていない。そのため、入学すると同時に、無気力
になってしまったり、遊びに夢中になってしまう大学生が多い。燃え尽きてしまったり、
荷おろし症候群といって、いわゆる心が宙ぶらりんになってしまう子どもも多い。当然、
誘惑にも弱くなる。


●自我の同一性と役割形成

子どもをまっすぐ伸ばすためには、(子どもがしたがっていること)を、(現在しているこ
と)に一致させていく。そしてそれを励まし、伸ばす。親の価値観だけで、「それはつまら
ない仕事」「そんなことは意味がない」などと、言ってはいけない。繰りかえすが、子ども
が、「お花屋さんになりたい」と言ったら、すかさず、「それはすてきね」と言ってあげる。
こういう育児姿勢が、子どもを、まっすぐ伸ばす基礎をつくる。

(はやし浩司 子どもを伸ばす 子供を伸ばす 自我の同一性 役割形成 思考プロセス
 子供の非行 子どもの非行 はやし浩司 子供を非行から守る 非行のメカニズム)


【3】(近ごろ、あれこれ)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

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