2011年10月26日水曜日

*E-Magazine (oct 26th 2011)

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 子育て最前線の育児論byはやし浩司     10月 28日号
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【1】(子育てのこと)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【小学1年生と2年生に、正負の数の計算を教える】(はやし浩司 2011-10-06)

●今週は、小1~2クラスでは、正負(+&-)の数の計算を教えました。
 たいへん恵まれた子どもたちで、全員が、ねらいどおり、計算できるようになりました。

(1)


(2)


(3)


【1】


【2】


【3】



Hiroshi Hayashi++++++Oct. 2011++++++はやし浩司・林浩司

【2】(特集)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


【3】(近ごろ、あれこれ)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

●小沢疑獄事件と4億円(天の声vs巨億の利権)2011/10/07記

+++++++++++++++++

★岩手県や秋田県では、公共工事の談合で
小沢事務所の了解がなければ本命業者には
なれない状況だったという(判決要旨)。

★小沢事務所の秘書から発せられる本命業者と
することの了解はゼネコン各社にとって
「天の声」と受け止められていたという
(判決要旨)。

★元公設第1秘書の大久保隆規被告は2002~03年
ごろから天の声を発出する役割を担うように
なったという(判決要旨)。

+++++++++++++++++

●問題のすり替え

 今日、小沢一郎氏は、「完全無罪」を主張した。
が、今回の裁判では、そもそも、争点がズレている。
私たちが知りたいのは、「4億円の出所」。
つまり「入り口」。

が、裁判では、その「出口」が争われることになった。
つまり使われ方についての手続きの違法性が争点になっている。
わかりやすく言えば、仮に有罪になっても微罪。
本来問われるべき収賄罪とは、罪の重さがちがう。

 つまり小沢一郎氏は、巧みに問題のすり替えをしている。
肝心の4億円の出所を伏せたまま、出口だけを取りあげ、「違法なことはない」(公判後会
見)と。
が、その「出口」もおかしい。
裁判官は、つぎのように判断している。

『……加えて、石川被告が4億円を同年10月13日から28日まで前後12回にわたり5銀
行6支店に分散入金したことなどは、4億円を目立たないようにする工作とみるのが合理的。
4億円を原資とする土地取得も、04年分報告書に載ることを回避しようと隠蔽工作をした
とも推認される』(判決要旨)と。

 仮にそれが罪でなくても、なぜ「4億円を同年10月13日から28日まで前後12回にわ
たり5銀行6支店に分散入金したか」について、小沢一郎氏は、説明する義務がある。
さらにここにもあるように、04年に土地代金を支払いながら、名義変更は、翌年の05
年に回している。

 私も、生涯において何度か土地売買の取り引きをしたことがある。
しかしこんなバカげた取り引きをしたことは一度もない。
小沢一郎氏は、代金を04年(10月)に払い、名義変更を05年(1月)にしている。
ふつう土地の売買においては、代金の支払いと同時に名義変更をする。
そうでもしなければ、買い手は不安でならない。

 それを裁判官は、「04年分報告書に載ることを回避しようと隠蔽工作をしたとも推認され
る」と判断している。
つまりもともと胡散(うさん)臭いお金だから、そういう小細工をした(?)。
だれしもそう考える。

●裁判では……

 今回の裁判では、小沢一郎氏は、無罪となる可能性はきわめて高い。
小細工を罰する法律はない。
「たまたま私はそうしただけです」と主張すれば、それ以上、小沢一郎氏の責任を追及す
ることはできない。
4億円についても、「私のお金」(公判後会見)と突っぱねるだろう。

 が、それで私たち国民が納得するかどうかというと、それはない。
私たちは納得しない。
私たちが知りたいのは、あくまでも「入り口」
4億円の出所。

 裁判官は、「岩手県や秋田県では、公共工事の談合で小沢事務所の了解がなければ本命業
者にはなれない状況だった」と断じている。
巨億の事業体である。
それが「天の声」として、長年に渡ってつづいていた。
もし裁判官が言っているとおりとするなら、4億円など、ハシタ金。
その10倍の40億円、さらに100億円と聞いても、私は驚かない。

 が、なぜか、検察側は、本命と言うべき贈収賄罪についての立件を断念している。
なぜか?

●もの言わぬ従順な民

 それにしても驚くべきことは、私たち日本人のもつ「従順さ」。
本来なら、もっと怒ってよいはず。
が、何も言わない。
何も行動しない。
怒りの声すら、あげない。

 いつの間にか、私たち日本人は、キバを抜かれてしまった。
自ら考えることすら、放棄してしまったかのようにも見える。
が、そんなのは美徳でも何でもない。
その先にあるのは、民主主義の崩壊。
いや、すでに崩壊している。

 日本は官僚主義国家。
こんなところで、へたに民主主義を補強すれば、自分たちの立場がかえって危うくなる。
国民を、「もの言わぬ従順な民」にしておくことこそ、肝要。
官僚とゼネコン。
この両者を癒着してくれる政治家こそ、彼らが望む政治家ということになる。
言い換えると、日本の民主主義は、ここまで地に落ちた。
今朝の小沢裁判の新聞記事を読みながら、そんなことを考えた。


Hiroshi Hayashi++++++Oct. 2011++++++はやし浩司・林浩司

●10月7日(2011)

●ジョブズ氏の死

 米アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズ会長が、死去したという。
56歳だったという。
私はこのニュースを知って、こんなことを考えた。
「その一方で、巨億の資産を投資で失い、自殺した人もいるのに……」と。

 たとえば、ドイツの億万長者アドルフ・マークル氏がいる。
彼は電車に飛び込み自殺している(2009年)。
たとえばシカゴ不動産競売業者のスティーブン・グッド氏がいる。
グッド氏は、ジャガーの赤いスポーツカーの中で銃で自殺している(同、2009年)。

その反対でもよい。

 仮に巨億の富を築きあげたとしても、死ねばおしまい。
この宇宙もろとも、この世から消える。
だったら、仮に巨億の富を投資で失ったとしても、自殺するのは、バカげている。
 
 今回の大恐慌においても、こうした自殺者は、この先、跡を絶たないだろう。
アドルフ・マークル氏やグッド氏のような著名人は別として、私の身近にも似たようなケ
ースはいくらでもある。
「事業に失敗して……」と。

 が、やはり死んだらおしまい。

●老後の資金

 この話と、「老後の資金」とどういう関係があるかと聞かれると、つらい。
老後というのは、言うなれば「死の待合室」に入るようなもの。
いくら「そうであってはいけない」と思っても、現実はそう。
(もちろんそれを悲観的に考える必要はないが……。)

 そんなとき、こう考える。
「あといくら財産があれば、いいのだろう」と。

 いろいろな経済誌が、退職後から(死ぬまでの)費用を試算している。
1人、1億円と言う人もいる。
2億円と言う人もいる。
が、公務員と蓄財に成功した老人をのぞけば、それだけの費用を用意するのは、不可能。
50代で、貯金額ゼロの人は、約30%もいるそうだ。
また60歳の定年退職時で、貯金ゼロの人は、50%もいるそうだ(F投信調査)。
どこかの証券会社が、そんな調査結果を公表している。

 が、その一方で、何十億円とか、何百億円とかいう財産を築きあげる人もいる。
冒頭にあげたジョブズ氏にしてもそうだろう。
足りなくても困るが、さりとて必要以上にあってもしかたないのが、老後の資金。
だから私たち夫婦は、現実的に、こう考える。

「財産がなくなったら、死のう」と。

 とりあえずは、今の仕事をできるだけ長くつづける。
「つづける」というよりは、「生き延びる」。
で、仕事ができなくなったら、残った財産で何とか「生き延びる」。
家と土地を売ることも、すでに視野に入れている。

 が、そのあとの生活設計が、私にはわからない。
わからないから、「ピンコロ」。
「できれば、ピンコロ」と。

●リチャード・マクドナルド

 投資に失敗し、自殺するのはバカげていると、私は書いた。
が、同時に、巨億の財産を築いたジョブズ氏を、私はうらやましいとは思わない。
世界のマスコミは、「世界の偉人」を失ったかのように書き立てている。
が、私はそうは思わない。
時流に乗っただけ。
もっとはっきり言えば、運がよかっただけ。

 あの程度の苦労をしている人は、いくらでもいる。
私もそうかもしれないし、あなたもそうかもしれない。
たとえばその一方で、こんな人がいたことを、あなたは知っているか。
リチャード・マクドナルドという人である。

 13年ほど前に(1998年)、89歳でなくなったが、あのハンバーガーチェーンの「マ
クドナルド」の創始者と言えば、だれでも知っている※。
が、当のマクドナルド氏自身は、早い時期にレストランの権利を別の人物(レイ・クロッ
ク氏)に売り渡している。
それについて生前、テレビのレポーターが、「損をしたと思いませんか」と聞いたときのこ
と。
マクドナルド氏はこう答えている。

「もしあのまま会社に残っていたら、今ごろはニューヨークのオフィスで、弁護士や会計
士に囲まれてつまらない生活をしていることでしょう。
(こういう農場でのんびり暮らしている)今のほうが、ずっと幸せです」と。 

(注※)リチャード・ディック・ジェイ・マクドナルド(Richard "Dick" J. McDonald、1
909年生まれ、1998年死去)

●金権教団

 要するに私たちは、意識的であるにせよ、無意識的であるにせよ、「金権」に毒されすぎ
ているということ。
皮肉な言い方をすれば、全人類、オール「金権教団」というカルト教団の信者。
自由貿易体制(資本主義体制)の中ではしかたのないことかもしれない。
が、大切なことは、そういう世界にあっても、自分を見失わないこと。
見失ったとたん、たとえば「自殺」という道を選んでしまうかもしれない。

 で、再び、ジョブズ氏の話。

 たまたま彼は病気で死んだ(失礼!)。
巨億の富の蓄財にも成功した。
言うなれば、この世界での大成功者ということになる。
が、もし彼が、その事業で失敗していたとしたら、どうだろうか。
こんな仮定をするのは許されないことだということは、よく知っている。
が、もしその事業で失敗し、無一文になっていたとしたら……。
彼はどうなっていただろうか。
自殺していなかったと言えるだろうか。
現在の今、どう評価されていただろうか。

●結び

 ずいぶんと回りくどい言い方をした。
が、私は最近、現在の自由貿易体制(資本主義体制)に、疑問を感じ始めている。
もちろんだからといって、共産主義がよいというのではない。
(どこかのBLOGに、「はやし浩司は共産主義者」と書いてあったが、それはウソ。
マルクス経済学など、見たことも読んだこともない。)
が、今の自由貿易体制(資本主義体制)は、個人的にみても、また国家的にみても、不公
平。
矛盾だらけ。

 その人が老後を安楽に暮らせるのに、2億円の費用がかかるとする。
しかしこの世の中、60歳で貯金ゼロの人が50%もいる半面、何十億円もの蓄財に成功
した人もいる。

 国にしても、そうだ。
そうたいして働きもしないアメリカ人が、世界の富をかき集めている。
何かが、おかしい。
狂っている。

 私は経済学者ではないから、これ以上のことはわからない。
またどうあったらよいのかもわからない。
が、モヤモヤとしたものだけは、心の底に滞留している。

 現代という世界では、ジョブズ氏のような人物を、「大成功者」と呼ぶのだが……。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

Hiroshi Hayashi++++++Oct. 2011++++++はやし浩司・林浩司

●『猿の惑星』(RISE of the Planet of the Apes)を観る(20110-10-07)

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 昨日から公開された『猿の惑星・創世記(ジェニシス)』を観てきた。
おもしろかった。
楽しかった。
星はもちろん4つプラスの、★★★★+。

 途中で何度も、「ナルホド!」と感心。
たとえば火星探査船が打ち上げられるシーンが、チラッと出てくる。
本当に「チラッ」とだけ。
しかし観る人が観ればわかる。
(ワイフは、第1作を観ていないので、気がつかなかった。)
それがあのチャールトン・ヘストン(第1作)演ずる、宇宙飛行士テイラーの搭乗した探
査船である。

 また主人公(?)の名前は、「シーザー」。
そのシーザーは、人間社会に飛び出すと同時に、真っ先に、メスのチンパンジーの救出に
向かう。
そのメスのチンパンジーの名前が、コーネリアス。
すべてが、矛盾なく、あの伝説的名作の『猿の惑星』(第1作)へとつながっていく。

 『猿の惑星(Planet of the Apes)』第1作は1968年に公開されている。
私が大学3年生のときのことである。
当時の私は、SFファンで、SF小説を片っ端から読みあさっていた。
そんな中、『猿の惑星』が公開された。
現代の若い人たちにすれば、観るに耐えない古い映画かもしれない。
しかし私に与えた衝撃は、大きかった。
最後のシーンで、自由の女神像が横たわっているのを見て、テイラー(宇宙飛行士)は、
そこが地球であったことを知る。
今でもあのとき感じた衝撃を忘れることができない。

 ともあれ、SF映画とわかってはいたが、「ナルホド」「ナルホド」と。
その「ナルホド」が楽しかった。
だから星は4つプラス。

++++++++++++++++++

●「週刊現代」&「週刊アスキー」

 ワイフが2階でDVDを選んでいる間、私は2冊の週刊誌を買った。
(その店では、1階が書店、2階がDVDショップになっている。)
「週刊現代」と「週刊アスキー」。
週刊現代のほうは、「年金一律5万円時代に」という見出しが気になった。
週刊アスキーのほうは、パラッとめくったとき、TOSHIBAの新型パソコンが目に留
まった。
それで2誌、買った。

 TOSHIBA R631/28D。
世界最薄、最軽量という。
OSがSSDから立ち上げる。
「休止状態から約10秒で復帰できる」とある。
最薄部で、たったの約8・3ミリ。
物欲がググーッと、線条体を刺激する。
パブロフの条件反射が起きる。

が、値段が、高い。
「予想実売価格、15万円前後」とある。

 パソコンの寿命は、使う目的にもよるが、長くて3~4年。
新しいOSが発売になれば、さらに短い。
よいのを買っても、すぐ無駄になる。
その3~4年で、どう使うか。
どう使い倒すか。
15万円もしたから……といって、床の間に飾っておく人はいない。

 並んでエイサーのASPIRE S3-2が紹介されていた。
こちらは、予想実売価格は、9万円前後とある。
厚さは13・1ミリ。
TOSHIBAとの違いは、5ミリ。
こちらなら値段を気にせず、使えそう。
 
●年金5万円時代

 週刊現代は、年金も、月額オール5万円になるという。
たったの5万円!
が、現状では、年金5万円時代になっても、文句は言えない。
少子高齢化。
この先何年かすると、1・2人の人が、1人の高齢者を支えなければならなくなるという
(週刊現代)。
試算によれば、2050年以後。
逆算すると、現在、現在25~26歳の人が、65歳になるころということになる。

 が、常識で考えても、不可能。
つまり満足な老人福祉など、とうてい不可能。
(現在の今でも、約2・6人の人が、1人の老人を支えている。)
これはかなり深刻な問題と考えてよい。
つまりこの先、子どもの教育どころではなくなってしまう。

 まず、自分の老後を心配する。
子どもの心配は、つぎのつぎ。
今でさえ、子どもに必要以上の教育費をかけるのは、バカげている。
収入に余裕があれば、自分の老後の資金として残しておく。

 ……ということになるが、それがますます日本の経済を萎縮させる。
景気を悪くする。
さらに少子化が進む。

 では、どうするか?

●ゴーストタウン

 話は変わるが、私とワイフは、先日、富士宮まで行ってきた。
富士宮焼きそばで有名な、あの富士宮である。
が、帰りは、そのもうひとつ北側にある西富士宮で電車に乗った。
おいしい店があるというので、西富士宮まで行ったのだが、店からは駅まで歩いた。
30分ほどの距離だった。

 そのときのこと。
私とワイフは、そのあまりのみすぼらしさに、驚いた(西富士宮のみなさん、ごめん)。
この言葉に語弊があるというのなら、「30年前のままだった」と言い換えてもよい。
「40年前のまま」でもよい。
とくに駅前の商店街が、ひどかった。
それなりに開いている店といえば、コンビニと飲食店。
あとはどこも、ガランとしていた。
「ここが日本か」とさえ思った。

 もうおわかりのことと思うが、日本は無駄なものばかり作っている。
第二東名を例にあげるまでもない。
浜松市の北を、東西に走ることになっているが、「ここまでやるか!」と思うほど、ものす
ごい工事。
町のビルのような橋脚が、山々を貫いて並んでいる。
日本の将来を考えるなら、そうしたお金があるなら、もっと別のことに使うべき。

 そう言えば、SUZUKI自動車の鈴木修社長も、こう言っていた。
「浜松市では、市営住宅の建設のために、(建設費だけで)、坪70万円もかけている」(2
011年10月)と。
坪70万円! 

上から下まで、こんなことばかりしている。
しかも官民の給料格差は広がるばかり。
すでに給料だけで、約2倍程度の開きがあるという(「週刊現代」)。

●行政改革

 あの中曽根首相が、行政改革を唱え始めて、もう何年になるだろうか。
行政改革……つまり官僚政治の是正。
が、その行政改革は、一向に進んでいない。
進んでいないばかりか、さらに悪化している。

 官僚とゼネコン、それに政治家、これら3者が一体となり、日本の経済を牛耳っている。
まさにやりたい放題。
つまりここにメスを入れないかぎり、日本に未来はない。
それがわかっていながら、日本はさらに無駄な「箱」ばかり作ろうとしている。

 いいか、読者のみなさん。
作るのは勝手だが、そのあと莫大な維持費がかかってくるのだぞ。
その維持費は、地方自治体、つまり私たちが払うことになるのだぞ。
わかっているのか!

 公共施設だけは、どこも、超立派。
庶民の家は、どこも、ボロボロ。

●お先真っ暗

 こう考えていくと、日本の未来は、お先真っ暗。
本来なら、今すぐにでも、不要な支出を減らし、人件費を減らし、子どもたち、
つまり未来の日本人にお金をかけるべき。
が、こうした常識は、もうこの日本では通用しない。
現在のギリシアのように、日本人も行き着くところまで行かなければ、気がつかない。
あるいは行き着くところまで行っても、気がつかない。
あのギリシアでは、連日、公務員によるストライキが、いまだにつづいているという。

●知的インチキ

 ところで最近読んだ記事の中でおもしろかったのが、ニューズウィーク誌(9・21)
の「知的インチキの見破り方」(P69)。
冒頭に、こうある。

『聖書はジョン・F・ケネディ・アメリカ大統領の暗殺を予告していた……そんな話をあ
なたは信じますか。
「9・11テロはユダヤ人の陰謀」とか、「いろいろ化石はあるけれど、世界の歴史は1万
年程度」という説は?

 答えがイエスなら、残念ながらあなたは、「知的ブラックホール」にのみこまれている可
能性が高い。

「知的ブラックホール」というのは、イギリスの哲学者スティーブン・ローが好んで使う
表現で、「人々をのみ込み、ろくでもないたわ言の奴隷に変えてしまう」精神的なできごと
をいう』(以上、ニューズウィーク誌)と。

 こんなことで張り合ってもしかたないが、私は「心のエアーポケット」という言葉を使った。
24年前に書いた、「家庭内宗教戦争」(山手書房新社)という本の中でのことである。
つまり「知的ブラックホール」にせよ、「心のエアーポケット」せよ、心の盲点というのは、
たしかにある。
ごくふつうの人が、ある日突然、あるきっかけで、その「穴」にスーッと落ちてしまう。
そしてその日を境に、とんでもないことを言い出す。

 カルト教団はそうした心の盲点をたくみに利用し、勢力を伸ばす。

●逆の知的ブラックホール

 が、逆のエアーポケットというのもある。
たとえば、2050年には、1・2人の人が、1人の老人を支えるようになるというのは、
「事実」である。
1+1=2というほどまで、明確な事実とはいいがたいが、それに近い事実である。
が、人々は、「何とかなるだろう」「どうせ、私たちには関係のないこと」と、心の隅に追
いやってしまう。
そこにある事実を、信じようとしない。
これなどは、まさしく、「逆のエアーポケット」ということになる。

 つまりインチキを信ずるのが、「知的ブラックホール」と言うなら、事実から目をそらす
のは、「逆の知的ブラックホール」ということになる。
一見、正反対の現象に見えるかもしれないが、中身は同じ。

●止まった時計

 今、私の頭の中では、TOSHIBAの新型パソコンと、少子高齢化問題が、行ったり
来たりしている。
それがユラリユラリと頭の中で揺れている。
あの西富士宮で見た光景も、頭から離れない。

……といっても、こうした町の衰退ぶりは、何も、西富士宮だけの話ではない。
最近見た中では、福井県の越前大野市もそうだった。
岐阜県の関市もそうだった。
全国いたるところで、見られる。

 「失われた10年」が、「失われた20年」になる。
本来なら、上海に立っている豪華な高層ビルが、富士宮市や大野市に立っていても、おか
しくない。
この20年間、日本の時計は止まったまま。
それが今度は、少しずつだが、逆行し始めている。

 重税につづく重税。
それだけでも、たいへん。
その上、この日本では、ありとあらゆるものが、法律によってがんじがらめに縛られてい
る。
最近知って驚いたのが、「人材派遣業界の現況」。

現在、人材派遣業は、土砂降りの不景気。
どん底。
一時、「派遣切り」が問題になった。
とたん、法による規制がきびしくなった。
とたん、大手の人材派遣会社の倒産がつづいた。

 そこへあの3・11大震災が襲った。
皮肉なことに、今度は、人材そのものがいなくなってしまった。
不景気がさらに追い討ちをかけた。
私の実家は、自転車屋だったが、今ではその自転車屋ですら、簡単には開けない。
床に油が一滴でも落ちていたら、商売ができない。
そんなしくみができあがっている。

●「不完全」という自由

 で、先日、H市の役人とこんな会話をした。
「どうして公共施設だけは、こうまで立派なのか」と聞いたときのこと。
その役人は、こう答えた。
「行政は、法の見本でなくてはならないのです。
その条件をすべて満たしていくと、どうしても、こうした建物にならざるをえないのです」
と。

 つまり「法的に」すべて、カンペキでなければならない、と。
結果として、たとえば耐震基準ひとつとっても、カンペキに守らなければならない、と。
つまりその分だけ費用がかさみ、立派になる、と。

 しかしこんなバカげたことをつづけていたら、この日本は、本当に破産する。
今では、リヤカーを引き、通りでモノを売ることさえできない。
小さな町で、観光ガイドを引き受けることさえできない。
自転車屋ですら、消防署の検査を受けなければ、商売をつづけることさえできない。
何からなにまで、カンペキ。

 が、その一方で、あの原子力発電所事故。
こまかいところでカンペキであっても、何の役にも立たない。
ゴミ屋敷の住人が、家の中の一部屋だけ、一生懸命掃除しているようなもの。
そんなことばかりしているから、日本は、ますます世界から取り残される。
よい例が、外資企業。

 現在東京証券所に上場している外資企業は、一桁台になってしまった。
(一時は、300社以上もあった!)
が、みんなシンガポールへ逃げてしまった。
理由は、言わずと知れた「翻訳料」。
外資企業は、すべての書類を一度、日本語に翻訳しなければならない。
それが重荷になった。
プラス規制、規則の許認可。

私たちが今、必要としているのは、「不完全」という自由である。

●老人村
 
 この3~4月、私はオーストラリアのボーダータウンというところに行ってきた。
そこでのこと。
私とワイフは、「Old Man’s Village(老人村)」というのを案内してもら
った。
仕事をしなくなった年金受給者たちが寝泊りする施設である。

 その施設を見たとき、「これでいい」と、私は最初に思った。
建物は、平屋のごくふつうの家。
二棟ずつくっついている長屋風。
それが緑の森の中に点在している。

 で、その老人村は、市の中心部からはやや離れているが、隣は幼稚園。
そのまた隣は小学校。
道をはさんで反対側には、日本でいう特別擁護老人ホーム。
そのホームにしても、日本の基準から見ると、実に粗末な建物である。
(日本の特別擁護老人ホームが、いかに豪華なものであるかは、すでにみなさんご存知の
通り。)

 もちろんカンペキにしなければならない部分は、カンペキにする。
それにも限度がある。
不必要な施設まで、カンペキにする必要はない。
さらに言えば、人間管理。

 役人というのは、ほんの少しでも不備があると、すぐ法の網をかける。
法の網をかけて、自分たちの権限を拡充する。
これがこの日本をますます小さくしていく。
それがわからなければ、こんな話がある。

●洪水

 アーカンソー州へ行ったときのこと。
その東端を、あのミズーリー川が流れる。
対岸が見えないほど、幅の広い川である。
その川は、ほぼ10年ごとに洪水を引き起こす。
多くの家々が流される。
それについて私が「どうして堤防を作らないのか」と聞くと、案内してくれたスミス氏(市
の役人)は、こう話してくれた。

 堤防を作れば、景観を損ねる。
莫大な費用もかかる。
その費用のことを思えば、そのつど、損壊した家々を補償したほうが、安くつく、と。

 アメリカでは、こうした被害が出ると、政府(+地方政府)は、現金で直接、住民にお
金を払う。
しかも即決で!
日本のように、ああでもない、こうでもないと、書類を書かせるようなことはしない。
そういうしくみができあがっているから、住民ものんきなもの。
「家が流されたら、また立て直せばいい」と。

 それを「自由」という。
本物の自由という。
が、この日本には、自由がない。
「仕組まれた自由」(尾崎豊)はある。
しかし本物の自由はない。

 なお現在、アメリカの公務員は、コンビニの従業員より給料が安いと言われている。
しかも首切りは、当たり前。

●自由の復権

 いつの間にか、日本は、たいへん「生きにくい」国になってしまった。
「住みやすい」というのとは、ちがう。
生きにくい。
息苦しさえ覚える。
その結果として、人々は、「もの言わぬ従順な民」へと、成り下がってしまった。
いまだに東京電力の本社に向かって、デモ行進ひとつ起きていない。
それをオーストラリアの友人に話すと、その友人は、こう言った。
「本当か? 信じられない!」と。

 自由とは、「自らに由(よ)る」こと。
その自由は、不完全な隙間から生まれる。
だから私は、こう叫ぶ。

 もう規制はたくさん。
資格も認可も許可も、たくさん。
それよりも、私たちの体をがんじがらめにしている、この鎖を解いてほしい、と。

●パソコンと「知的インチキ」

 今の今も、私の頭の中では、TOSHIBAのパソコンと、ニューズウィーク誌の記事
が、ユラユラと揺れている。

本当のことを言うと、このところ、ものの考え方が、どこか投げやりになってきている。
私の育児論の原稿にしても、あちこちでパクられている。
先日も、ある月刊誌を見たら、こうあった。

「不登校は前兆を見逃すな」と。

 私がは同じタイトルで、すでに12年前に、原稿を書いていた。
新聞にも発表した。
自分の本の中でも書いた。

 しかしどうせ死ねばおしまい。
実は、昨夜もワイフと寝る前に、こんな話をした。

私「なあ、お前、ぼくのほうが早く死ぬと思うけど、ぼくが死んだら、そんなにがんばら
なくてもいいから、早くおいでよ」
ワ「……うん」と。

 長生きをしたいという思いは、とっくの昔に消えた。
この日本への期待も、徐々に薄らいできた。
それよりもみなに迷惑をかけないうちに、あの世へ行きたい。

 今も週刊現代誌(10月22日号)をパラパラとめくってみた。
そこには仙台の横丁の話あり、雑談あり、エッセーあり、そして巻末には、ヌード写真あ
り。
私の残りの人生も、こうしてパラパラと過ぎていくにちがいない。
期待と幻滅の間を、ユラユラと行ったり来たりしながら……。

 ……とまあ、どうであれ、ともかくも今日も始まった。
これから山荘の道路わきの雑草に、除草剤をまかねばならない。
それが今の(一コマ)。
現実。
がんばるしかない。

これから村の収穫祭に呼ばれているので、行ってくる。

2011年10月8日朝記。
日曜日。


Hiroshi Hayashi+++++++Oct. 2011++++++はやし浩司・林浩司

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