2009年12月1日火曜日

*Those Children who act excessibly too much

【キレる子ども】

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こんな記事が、読売新聞に載っていた。
そのまま紹介させてもらう。

キレる子どもの背景には、「抑圧」がある。
その抑圧の恐ろしさを、改めてこの記事を
読んで知った。

つまり日ごろ、(いい子)でいる子どもほど、
心に別室を作り、その中に不平、不満を
押し込める。
それがときとばあいに応じて、突然、爆発する。

(心の別室)には、いわゆる(心の上書き)が
働かない。
ふつう心というのは、何かいやなことがあっても、
そのあと楽しいことがあると、上書きされ、
いやなことを忘れる。
しかし心の別室に入った思い出には、その
上書きが働かない。

だから何年も、あるいは何十年もたっている
にもかかわらず、それが爆発する。

「いい子ほど心配」という意味が、わかって
もらえれば、うれしい。

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++++++++++以下、読売新聞より++++++++++++

●無抵抗の教師殴るける、子供の暴力エスカレート

12月1日9時13分配信 読売新聞

 子供の暴力の4件に1件は、相手を負傷させるほどエスカレートしていた。文部科学省が30日公表した問題行動に関する調査は、暴力行為が過去最多を記録。内容も悪質化していた。

 今年9月、栃木県日光市の市立中学校。放課後の教室で、3年男子が女性教諭の顔などを殴り全治1週間のけがを負わせた。市教委によると、宿題の作文を書いておらず、その場で書くよう指導されただけで突然キレたといい、無抵抗の教諭を殴ったりけったりした。

 「意思疎通が下手で、言葉にする前に手が出る子供はますます増えている」。神奈川県の中学校の女性スクールカウンセラー(45)は話す。今回の調査で、同県は暴力行為の件数が9232件と全国最多だった。カウンセラーは、家庭の経済的な困窮を背景に、ストレスをため込んでいる子供が増えたと指摘。「ささいなことで感情を爆発させる子にそうした子供が多い」と話した。

 一方、学校がいじめを把握した件数は大幅に減ったが、山形県高畠町の会社員渋谷登喜男さん(57)は「いじめを把握できないのは、子供が本音を明かさないためです」と語る。

 高校2年だった長女の美穂さん(当時16歳)は2006年11月、校内で飛び降り自殺した。死後、美穂さんの携帯電話から、いじめを受け自殺を決意したことをうかがわせる本人の書き込みが見つかったが、県教委は「いじめは確認できない」とした。

 今回の調査で「いじめゼロ」だった学校は、個別面談や家庭訪問の実施率が低い傾向があった。学校側の責任を問い、県と裁判で争っている渋谷さんは、「教師が忙し過ぎて子供と向き合えていない。学校現場で心や命の問題がおろそかになっている」と訴えている

++++++++++++++++以上、読売新聞より++++++++++++++

【子どもとストレス】

●キレる子ども 

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キレる子どもについては、たびたび、
取りあげてきた。

その「キレる」という行為だが、通常の
「激怒」とは、いくつかの点で、異なる。

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 子どもでも怒る。激怒することはある。しかし「キレる」という行為とは、明確に、区別される。「キレる」という行為には、つぎのような特徴がある。

(1)突発的に錯乱状態になる。
(2)暴力行為に、見境がなくなる。
(3)脳の抑制命令が、欠落する。
(4)瞬間、別人のような鋭い目つきになる。
(5)キレる理由そのものが、明確ではない。

 順に考えてみる。

(1)突発的に錯乱状態になる。

 キレる子どもの特徴は、突発的に錯乱状態になること。その少し前から、ピリピリとした緊張状態がつづくことがあるが、暴れ出すときは、突発的である。瞬間、人格の変化を感じたと思ったとたん、「コノヤロー」と金切り声をあげて、相手に飛びかかっていったりする。

(2)暴力行為に、見境がなくなる。

 キレる子どものする暴力には、見境がない。ふつうの暴力には、(手かげん)というものがある。しかしキレる子どものする暴力には、その(手かげん)がない。全力をこめて、相手を殴ったり、蹴ったりする。

(3)脳の抑制命令が、欠落する。

 言動が、まるでカミソリでものをスパスパと切ったようになる。動きが直線的になり、なめらかさが消える。脳の抑制命令が欠落したような状態になる。当然、言葉もはげしいものになる。

(4)瞬間、別人のような鋭い目つきになる。

 その瞬間、子どもの顔を観察すると、顔色は青ざめ、目つきが別人のように鋭く、冷めたものになっているのがわかる。憎しみや怒りを表現しながら相手に殴りかかるというよりは、無表情のまま。ときに、そのあまりにもすごんだ顔を見て、ゾッとすることさえある。

(5)キレる理由そのものが、明確ではない。

 キレるとき、その理由が、よくわからない。A君(小3男児)は、順番を待って並んでいるとき、突然、キレて暴れ出した。近くにあった机や椅子を、ギャーッという叫び声とともに、手当たり次第、足で蹴って倒した。

 B子さん(小5女児)は、私が「こんにちは」と声をかけて肩をたたいたその瞬間、突然、キレた。私に向かって、「このヘンタイ野郎!」と言って、私の腹に足蹴りを入れてきた。ものすごい足蹴りである。私は、その場で、息もできなくなり、しばらくうずくまってしまった。

 C君(小4男児)は、問題を解いているとき、私がそれを手助けしてやろうと声をかけたとたん、キレた。「テメエ、ウッセー!」と叫んで、そばにあったワークブックで、私の頭を、つづけざまに、狂ったように叩きつづけた。

 こういうケースのばあい、私ができることと言えば、男児のばあいは、抱きかかえ、子どもを抑えることでしかない。しかし相手が女児のばあいだと、それもできない。両手でまるく、自分の頭をおおうことでしかない。子どもの世界では、おとなの私のほうが、やり返すなどというのは、タブー。(当然だが……。)

 こうした子どもを観察してみると、先にも書いたように、脳の抑制命令そのものが、欠落したような状態になっていることがわかる。脳の機能そのものが、異常に亢進し、狂ったような状態になる。

 原因のほとんどは、慢性的なストレス、日常的な緊張感、抑圧感の蓄積と考えてよい。それが脳間伝達物質の過剰分泌を促し、瞬間的に脳の機能が異常に亢進するためと考えられる。

 さらにその原因はといえば、脳の微細障害説などもあるが、家庭環境も、大きく作用していることは否定できない。

 子どもがこういう症状を示したら、親は、家庭環境を猛省しなければならない。が、こういう子どもにかぎって、親の前では、むしろ静かでいい子ぶっていることが多い。つまりそのはけ口を、弱い人や、やさしい人に向ける。

 だからたいていのばあい、私がそれを指摘しても、親は、その深刻さを理解しようとする前に、子どもを叱ったり、さらに子どもを抑えつけようとしたりする。これがますます症状をこじらせる。あとは、この悪循環。最後は、行き着くところまで行く。それまで気がつかない。

 対処法としては、過剰行動児に準ずる。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

以前書いた原稿より……

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●ストレス学説

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適度なストレスは、生活のスパイス。
それは常識だが、では「適度なストレス」
とは、どの程度のストレスのことを
いうのか。

称して、「はやし浩司のストレス学説」

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 適度なストレスは、生活のスパイス。それが、生活に、ある種の緊張感をもたらす。それは常識だが、では「適度なストレス」とは、どの程度のストレスのことをいうのか。それがわからない。

●正のストレス、負のストレス

 ストレス(生理的ひずみ)にも、2種類ある。たまたま、私は、それを同時に経験しつつある。

 来月(10月)から、数年ぶりに、言葉クラブをもつ。生徒も、5、6人、集まった。で、これが今、ある種の緊張感となって、私の心を包んでいる。これが正のストレス。

 一方、この先ずっと、私は、グループ・ホームへ入った兄のめんどうをみなければならない。ひょっとしたら、兄のほうが、私より長生きをするかもしれない。途中、いろいろな医療費も負担することになるだろう。それを考えると、気が重くなる。これが負のストレス。

 つまり前向きに、自分を発展させていくストレスが、正のストレスということになる。一方、袋小路に入ったように、先が見えないストレスが、負のストレスということになる。

 適度なストレスとはいうものの、正のストレスなら、まだ何とかなる。ここでいう、生活のスパイスになる。

 しかし負のストレスは、そうではない。それがいくら軽いものであっても、(重いものなら、当然だが)、心の内側にペタッと入りついて、その心を、重く苦しいものにする。

●住んでいる世界で異なるストレス

 心の広さというのは、千差万別。人によって、みな、異なる。

 井戸のような世界に住んでいる人は、小さな石ころが落ちただけで、それを大きなストレス(ストレッサー)にしてしまう。

 一方、大きな海のような世界に住んでいる人は、渦巻く台風のような風が起きても、平気。

 つまりは住んでいる世界、あるいはその人の心の広さによって、同じストレスでも、感じ方まで、異なってくる。

 それが正のストレスであれ、負のストレスであれ、事情は同じ。

 では、私たちは、ストレスに対して、どのように考え、どのように対処すればよいのか。

●ストレス学説 

 ストレスというのは、もともとは「圧力」を意味する(セリエ)。その圧力が、心理的負担になり、心理的反応を示した状態を、「ストレス」という。「生理的ひずみ」と考えると、わかりやすい。

 しかしそのストレスの受け方には、ここにも書いたように、個人差がある。たとえば同じストレス(圧力)でも、人によって、それを重圧に思う人もいれば、そうでない人もいる。そこで今では、ストレスに個人差、つまり個人変数を加えて考えるのが常識になっている(ラザラスとフォルクスマン)。

 同じストレスであるにもかかわらず、人によって個人差が出るのは、それぞれの人がもつ認知プロセスがちがうからと考えられている。わかりにくい言葉だが、要するに、その人が置かれた環境、心理状態、精神状態、経験などにより、その処理方法が異なるということ。

 たとえばある男性(40歳)は、こう言った。「オレは、借金がないと仕事をする気が起きない」と。

 また別の男性(40歳)は、こう言った。「オレは、借金に追われるようになると、仕事が手につかなくなる」と。

 同じ(借金)でも、それを受け取る側の認知プロセスによって、ストレスにするかしないかが決まってくる。こうしたストレスへの対処方法を総称して、「コーピング(coping)」と呼ぶ学者もいる。

●では、どうするか?

 ストレスと戦うためには、2つの方法が考えられる。ひとつは、そのストレスそのものと戦うという方法。もう1つは、自分の住む世界を、より広く、大きくすることによって対処するという方法である。
 
つまり心理的圧力となるような原因を取り除くのが、前者。広い海のような心をもち、小石が落ちたくらいでは、ビクともしない。そういう状態にもっていくのが、後者ということになる。

 で、私のばあいは、ストレスの原因となるようなストレッサー、とくに冒頭にあげた負のストレスを、心のどこかで感じたばあいには、できるだけ早い段階で、それを解消するように努めている。もともとあまりストレスに強い精神構造にはできていない。

 つぎに、できるだけ広い心を用意する。具体的には、さまざまな経験をすることによって、広い心をもつようにする。そのためには、情報が重要な役割をになうことが多い。そういう意味では、無知、無学は、ストレスの大敵と考えてよい。

 ほかに、たとえば、心の防衛機制に準じて、(1)合理化、(2)反動形成、(3)同一視、(4)代償行動、(5)逃避、(6)退行、(7)補償、(8)投影、(9)抑圧、(10)置換、(11)否認、(12)知性化という方法などがある。

どう反応するかは、もちろんそれぞれの人によって異なる。が、人というのは、それをストレスと感じたときから、それに長く耐える力は、あまりない。これは幼児のばあいだが、日中、ほんの5~10分間程度ストレスを感じただけで、精神疲労症状を起こす子どもは、少なくない。

 子どもによっては、頭痛、腹痛を訴えることもある。吐く息が臭くなったり、下痢症状を示すこともある。それが周期的に長くつづいたりすると、心をゆがめることも少なくない。神経症を発症したり、さらに情緒障害、精神障害に発展することも珍しくない。

 話が脱線したが、今、あなたが何かのストレスを感じているなら、まずその中身を知る。敵を知る。それがストレスと立ち向かう、第1歩ということになる。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 ストレ
ス、ストレッサー ストレス学説 正のストレス、負のストレス)

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ストレスについて、以前書いた原稿の
中から、いくつかを集めてみました。

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子どもが自慰をするとき

●ある母親からの質問

 ある母親からこんな相談が寄せられた。いわく、「私が居間で昼寝をしていたときのこと。6歳になった息子が、そっと体を私の腰にすりよせてきました。小さいながらもペニスが固くなっているのがわかりました。やめさせたかったのですが、そうすれば息子のプライドをキズつけるように感じたので、そのまま黙ってウソ寝をしていました。

こういうとき、どう対処したらいいのでしょうか」(32歳母親)と。

●罪悪感をもたせないように

 フロイトは幼児の性欲について、次の3段階に分けている。(1)口唇期……口の中にいろいろなものを入れて快感を覚える。(2)肛門期……排便、排尿の快感がきっかけとなって肛門に興味を示したり、そこをいじったりする。(3)男根期……満4歳くらいから、性器に特別の関心をもつようになる。

 自慰に限らず、子どもがふつうでない行為を、習慣的に繰り返すときは、まず心の中のストレス(生理的ひずみ)を疑ってみる。

子どもはストレスを解消するために、何らかの代わりの行為をする。これを代償行為という。指しゃぶり、爪かみ、髪いじり、体ゆすり、手洗いグセなど。自慰もその一つと考える。

つまりこういう行為が日常的に見られたら、子どもの周辺にそのストレスの原因(ストレッサー)となっているものがないかをさぐってみる。ふつう何らかの情緒不安症状(ふさぎ込み、ぐずぐず、イライラ、気分のムラ、気難しい、興奮、衝動行為、暴力、暴言)をともなうことが多い。そのため頭ごなしの禁止命令は意味がないだけではなく、かえって症状を悪化させることもあるので注意する。

●スキンシップは大切に

 さらに幼児のばあい、接触願望としての自慰もある。幼児は肌をすり合わせることにより、自分の情緒を調整しようとする。反対にこのスキンシップが不足すると、情緒が不安定になり、情緒障害や精神不安の遠因となることもある。子どもが理由もなくぐずったり、訳のわからないことを言って、親をてこずらせるようなときは、そっと子どもを抱いてみるとよい。最初は抵抗するそぶりを見せるかもしれないが、やがて静かに落ちつく。

 この相談のケースでは、親は子どもに遠慮する必要はない。いやだったらいやだと言い、サラッと受け流すようにする。罪悪感をもたせないようにするのがコツ。

 一般論として、男児の性教育は父親に、女児の性教育は母親に任すとよい。異性だとどうしても、そこにとまどいが生まれ、そのとまどいが、子どもの異性観や性意識をゆがめることがある。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 子供の性教育 性教育 子供の性 性 自慰 子供の自慰 自慰行為)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●子どものおねしょとストレス

 いわゆる生理的ひずみをストレスという。多くは精神的、肉体的な緊張が引き金になることが多い。

たとえば急激に緊張すると、副腎髄質からアドレナリンの分泌が始まり、その結果心臓がドキドキし、さらにその結果、脳や筋肉に大量の酸素が送り込まれ、脳や筋肉の活動が活発になる。

が、そのストレスが慢性的につづくと、副腎機能が亢進するばかりではなく、「食欲不振や性機能の低下、免疫機能の低下、低体温、胃潰瘍などの種々の反応が引き起こされる」(新井康允氏)という。こうした現象はごく日常的に、子どもの世界でも見られる。

 何かのことで緊張したりすると、子どもは汗をかいたり、トイレが近くなったりする。さらにその緊張感が長くつづくと、脳の機能そのものが乱れ、いわゆる神経症を発症する。

ただ子どものばあい、この神経症による症状は、まさに千差万別で、定型がない。「尿」についても、夜尿(おねしょ)、頻尿(たびたびトイレに行く)、遺尿(尿意がないまま漏らす)など。

私がそれを指摘すると、「うちの子はのんびりしています」と言う親がいるが、日中、明るく伸びやかな子どもでも、夜尿症の子どもはいくらでもいる。(尿をコントロールしているのが、自律神経。その自律神経が何らかの原因で変調したと考えるとわかりやすい。)同じストレッサー(ストレスの原因)を受けても、子どもによっては受け止め方が違うということもある。

つまり子どもによって、それぞれ認知プロセス(=ストレスに対する耐性)は異なる。

 しかし考えるべきことは、ストレスではない。そしてそれから受ける生理的変調でもない。(ほとんどのドクターは、そういう視点で問題を解決しようとするが……。)

大切なことは、仮にそういうストレスがあったとしても、そのストレスでキズついた心をいやす場所があれば、それで問題のほとんどは解決するということ。ストレスのない世界はないし、またストレスと無縁であるからといって、それでよいというのでもない。

ある意味で、人は、そして子どもも、そのストレスの中でもまれながら成長する。で、その結果、言うまでもなく、そのキズついた心をいやす場所が、「家庭」ということになる。

 子どもがここでいうような、「変調」を見せたら、いわば心の黄信号ととらえ、家庭のあり方を反省する。手綱(たづな)にたとえて言うなら、思い切って、手綱をゆるめる。一番よいのは、子どもの側から見て、親の視線や存在をまったく意識しなくてすむような家庭環境を用意する。

たいていのばあい、親があれこれ心配するのは、かえって逆効果。子ども自身がだれの目を感ずることもなく、ひとりでのんびりとくつろげるような家庭環境を用意する。子どものおねしょについても、そのおねしょをなおそうと考えるのではなく、家庭のあり方そのものを考えなおす。

そしてあとは、「あきらめて、時がくるのを待つ」。それがおねしょに対する、対処法ということになる。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 子供の夜尿症 おねしょ 頻尿 子どものおねしょ おねしょう)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●私のストレス発散法

 ストレス(生理的なひずみ、あるいは「気」のうっ積)で苦しんでいる人は、多い。実のところ、私は30歳~35歳のころ、偏頭痛で苦しんだ。年に数回、あるいはもっと多い頻度で、偏頭痛の発作が起きた。それこそ四転八転の苦しみを味わった。「頭を切ってくれ!」と叫んで、ふとんの中でもがいたことも多い。その苦しみは、偏頭痛を味わったものでないとわかるまい。

 もっとも当時は、偏頭痛に対する理解も治療法もなく、(あったかもしれないが、私が相談した医師は、別の診断名をくだしていた。ある大病院では、脳腫瘍と診断し、開頭手術まで予定した)、市販の薬をのんでは、ゲーゲーとそれを吐き出していた。そういう意味では、まさに毎日がストレスとの戦いでもあった。

 そんな中、やがて自分なりの対処法を身につけるようになった。

 まず第一に自分はストレスに弱いことを自覚した。そのため、ストレッサー(ストレスの原因)となりやすいものは、できるだけ避けるようにした。たとえば人と会う約束も、1日1回にするとか、など。あるいはスケジュールには、余裕をもたせるなど。

 つぎに、当然のことながら、治療法をさがした。たまたま東洋医学の勉強もしていたので、あらゆる漢方薬を試してみた。しかし結局は、そのうち、たいへんよく効く西洋薬が開発されて、それでなおるようになった。ただその薬は、のむと胃を荒らすので、できるだけのまないようにしている。

 が、最善の治療法は、汗をかくこと。ただし、偏頭痛がひどくなってからでは、汗をかくと、かえって……というより、運動することそのものができない。軽い段階で、思い切って汗をかく。

運動がよいことは言うまでもないが、その中でも、私のばあい、エンジン付の草刈り機で、バンバンと草を刈るのが効果的。一汗かくと、偏頭痛そのものが消える。だから「おかしい」と感じたら、あたりかまわず草を刈ることにしている。理由はよくわからないが、下半身は毎日、自転車できたえているため、走ったり、自転車にのっても、あまり汗をかかない。しかし反対に、上半身は、ほとんど鍛えていないので、草を刈るとその上半身を使うため、汗をかくのではないか……と、勝手にそう解釈している。

 今でも、少し油断すると、頭重が起きる。しかしそれは同時に、私の健康のバロメーターでもある。持病もうまくつきあうと、それを反対に利用することができる。「少し頭が重くなったから、仕事を減らせ」とか。そういうふうに、利用できる。

 この話は、子育てとは関係ないが、育児疲れや育児ノイローゼで、偏頭痛になる人も多いので、参考のために書いた。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●わずらわしい世界

 情報の時代というが、本当に、この世界、わずらわしい。昨夜も、居間でお茶を飲んでいたら、若い女性から電話がかかってきて、息子の電話番号を教えろ、と。私が断ると、「何を偉そうに!」と。勝手に他人の家に電話をかけてきて、「何を偉そうに!」は、ない。

 ひとり静かに生きることは、一見、楽なようにみえて、楽ではない。「一日」という時間帯をみても、ひとり静かでのんびりできる時間のほうが、少ない。つぎからつぎへと、いろいろな事件が起きる。そのほとんどは、向こうからやってくる。

できるなら、そういうわずらわしさから、解放されたい。しかし、それは死ぬまで、不可能だろう。ただ私のばあい、朝、5時ごろ目が覚めて、それから7時、8時まで、こうして原稿を書いているが、その時間ほど、「ひとり」でいられる時間はない。貴重な時間だ。しかし、それでわずらわしさが消えるわけではない。

 こうしたわずらわしさがあれば、それと戦うしかない。受け身になったとき、そのわずらわしさは、ストレッサーとなる。問題は戦い方だ。しかしひとたび情緒が不安定になると、それも簡単ではない。

子どものばあい、大きく分けて、三つのタイプに分かれる。(1)攻撃型、激情型、暴力型、(2)内閉型、オドオド型、萎縮型、(3)執着型、こだわり型、依存型。

思いついたまま書いたので、正しくないかもしれないが、要するに、大声を出して暴れるタイプと、グズグズして引きこもるタイプ、それにモノにこだわって、それを異常にこだわるタイプがある。

 おとなもそうで、私のばあいは、(1)の攻撃型と、(2)内閉型の間をいったりきたりする。精神状態がフワフワし、自分でもつかみどころがなくなってしまう。爆発しそうな自分を必死でこらえたり、反対に、電話に出るのも、おっくうになったりする。

あるいはときどき、(3)のモノにこだわるときもある。そういうときは、それまでほしかった高価なものを、パッと買ったりする。それで気分が晴れることもある。あとはカルシウム剤をたっぷりと飲んで、風呂に入って、よく眠る。「明日は明日の風が吹く」と、そう思いながら、床につく。

 昨日も一日、何かとわずらわしいことがつづいた。そのため朝なのに、少し頭が痛い。しかし考えても始まらない。「何とかなるだろう」と、自分をなぐさめながら、前に進むしかない。がんばりましょう。がんばります。では、みなさん、おはようございます。
(02-11-16)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●心のメカニズム

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少し不謹慎な話で恐縮だが、セックス
をすると、言いようのない快感が、脳
全体をおおうのがわかる。これはセッ
クスという行為によって刺激され、脳
にモルヒネ様の物質が放出されるため
である。しかしこういう快感があるか
ら人は、セックスをする。つまり、種
族を私たちは維持できる。同じように、
よいことをしても、脳の中で、同様の
変化が起きる? それについて考えて
みた。

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 まず、数か月前に私はこんなエッセーを書いた。その中で、私は「気持ちよさ」とか、「ここちよさ」という言葉を使って、「正直に生きることの大切さ」について書いてみた。

●常識の心地よさ 

 常識をみがくことは、身のまわりの、ほんのささいなことから始まる。花が美しいと思えば、美しいと思えばよい。青い空が気持ちよいと思えば、気持ちよいと思えばよい。そういう自分に静かに耳を傾けていくと、何が自分にとってここちよく、また何が自分にとって不愉快かがわかるようになる。

無理をすることは、ない。道ばたに散ったゴミやポリ袋を美しいと思う人はいない。排気ガスで汚れた空を気持ちよいと思う人はいない。あなたはすでにそれを知っている。それが「常識」だ。

 ためしに他人に親切にしてみるとよい。やさしくしてあげるのもよい。あるいは正直になってみるのもよい。先日、あるレストランへ入ったら、店員が計算をまちがえた。まちがえて50円、余計に私につり銭をくれた。道路へ出てからまたレストランへもどり、私がその50円を返すと、店員さんはうれしそうに笑った。まわりにいた客も、うれしそうに笑った。そのここちよさは、みんなが知っている。

 反対に、相手を裏切ったり、相手にウソを言ったりするのは、不愉快だ。そのときはそうでなくても、しばらく時間がたつと、人生をムダにしたような嫌悪感に襲われる。実のところ、私は若いとき、そして今でも、平気で人を裏切ったり、ウソをついている。自分では「いけないことだ」と思いつつ、どうしてもそういう自分にブレーキをかけることができない。

私の中には、私であって私でない部分が、無数にある。ひねくれたり、いじけたり、つっぱったり……。先日も女房と口論をして、家を飛び出した。で、私はそのあと、電車に飛び乗った。「家になんか帰るものか」とそのときはそう思った。で、その夜は隣町のT市のホテルに泊まるつもりでいた。が、そのとき、私はふと自分の心に耳を傾けてみた。「私は本当に、ホテルに泊まりたいのか」と。答は「ノー」だった。私は自分の家で、自分のふとんの中で、女房の横で寝たかった。だから私は、最終列車で家に帰ってきた。

 今から思うと、家を飛び出し、「女房にさみしい思いをさせてやる」と思ったのは、私であって、私でない部分だ。私には自分にすなおになれない、そういういじけた部分がある。いつ、なぜそういう部分ができたかということは別にしても、私とて、ときおり、そういう私であって私でない部分に振りまわされる。しかしそういう自分とは戦わねばならない。

 あとはこの繰りかえし。ここちよいことをして、「善」を知り、不愉快なことをして、「悪」を知る。いや、知るだけでは足りない。「善」を追求するにも、「悪」を排斥するにも、それなりに戦わねばならない。それは決して楽なことではないが、その戦いこそが、「常識」をみがくこと、そのものと言ってもよい。

●なぜ気持ちよいのか

 少し話が専門的になるが、大脳の中心部(大脳半球の内側面)に、辺縁系(大脳辺縁系)と呼ばれる組織がある。「辺縁系」というのは、このあたりが、間脳や脳梁(のうりょう)を、ちょうど包むようにフチどっていることから、そう名づけられた。

 その辺縁系の中には、認知記憶をつかさどる海馬(かいば)や、動機づけをする帯状回(たいじょうかい)、さらに価値判断をする扁桃体(へんとうたい・扁桃核ともいう)がある。

その扁桃体が、どうやら、人間の善悪の感覚をつかさどっているらしいことが、最近の研究でわかってきた。もう少しわかりやすく言うと、大脳(新皮質部)でのさまざまな活動が、扁桃体に信号を送り、それを受けて、扁桃体が、麻薬様の物質を放出する。その結果、脳全体が快感に包まれるというのだ。

ここに書いたケースで言えば、私が店員さんに50円のお金を渡したことが、扁桃体に信号を送り、その扁桃体が、私の脳の中で、麻薬様の物質を放出したことになる。

 もっとも脳の中でも麻薬様の物質が作られているということは、前から知られていた。そのひとつに、たとえばハリ麻酔がある。体のある特定の部位に刺激を与えると、その刺激が神経を経て、脳に伝えられる。すると脳の中で、その麻薬様物質が放出され、痛みが緩和される。私は23、4歳のころからこのハリ麻酔に興味をもち、一時は、ある研究所(社団法人)から、「教授」という肩書きをもらったこともある。

 それはそれとして、麻薬様物質としては、現在数10種類ほど発見されている。その麻薬様物質は、大きく分けて、エンドルフィン類と、エンケファリン類の二つに分類される。これらの物質は、いわば脳の中で生産される自家製のモルヒネと思えばよい。こうした物質が放出されることで、その人はここちよい陶酔感を覚えることができる。

 つまりよいことをすると、ここちよい感じがするのは、大脳(新皮質部)が、思考としてそう感ずるのではなく、辺縁系の中にある扁桃体が、大脳からの信号を得て、麻薬様の物質を放出するためと考えられる。少し乱暴な意見に聞こえるかもしれないが、心の働きというのも、こうして、ある程度は、大脳生理学の分野で説明できるようになった。

 で、その辺縁系は、もともとは動物が生きていくための機能をもった原始的な脳と考えられていた。私が学生時代には、だれかからは忘れたが、この部分は意味のない脳だと教えられたこともある。

しかしその後の研究で、この辺縁系は、ここにも書いたように、生命維持と種族維持だけではなく、もろもろの心の活動とも、深いかかわりをもっていることがわかってきた。そうなると人間は、「心」を、かなりはやい段階、たとえばきわめて原始的な生物のときからもっていたということになる。ということは、同属である、犬やネコにも「心」があると考えてよい。実際、こんなことがある。

 私は飼い犬のポインター犬を連れて、よく散歩に行く。あの犬というのは、知的なレベルは別としても、情動活動(心の働き)は、人間に劣らずともあると言ってよい。喜怒哀楽の情はもちろんのこと、嫉妬もするし、それにどうやら自尊心もあるらしい。

たとえば散歩をしていても、どこかの飼い犬がそれを見つけて、ワンワンとほえたりすると、突然、背筋をピンとのばしたりする。人間風に言えば、「かっこづける」ということになる。そして何か、よいことをしたようなとき、頭をなでてやり、それをほめたりすると、実にうれしそうに、そして誇らしそうな様子を見せる。恐らく、……というより、ほぼまちがいなく、犬の脳の中でも、人間の脳の中の活動と同じことが起きていると考えてよい。つまり大脳(新皮質部)から送られた信号が、辺縁系の扁桃体に送られ、そこで麻薬様の物質が放出されている!

●心の反応を決めるもの

 こう考えていくと、善悪の判断にも、扁桃体が深くかかわっているのではないかということになる。それを裏づける、こんなおもしろい実験がある。

 アメリカのある科学者(ラリー・カーヒル)は、扁桃体を何らかの事情で失ってしまった男性に、つぎのようなナレーションつきのスライドを見せた。そのスライドというのは、ある少年が母親といっしょに歩いているとき、その少年が交通事故にあい、重症を負って、もがき苦しむという内容のものであった。

 そしてラリー・カーヒルは、そのスライドを見せたあと、ちょうど一週間後に再び、その人に病院へ来てもらい、どんなことを覚えているかを質問してみた。

 ふつう健康な人は、それがショッキングであればあるほど、その内容をよく覚えているもの。が、その扁桃体を失ってしまった男性は、スライドを見た直後は、そのショッキングな内容をふつうの人のように覚えていたが、一週間後には、そのショッキングな部分について、ふつうの人のように、とくに覚えているということはなかったというのだ。

 これらの実験から、山元大輔氏は『脳と記憶の謎』(講談社現代新書)の中でつぎのように書いている。

(1)(扁桃体のない男性でも)できごとの記憶、陳述記憶はちゃんと保たれている。
(2)扁桃体がなくても、情動反応はまだ起こる。これはたぶん、大脳皮質がある程度、その働きを、「代行」するためではないか。
(3)しかし情動記憶の保持は、致命的なほど、失われてしまう。

 わかりやすく言えば、ショッキングな場面を見て、ショックを受けるという、私たちが「心の反応」と呼んでいる部分は、扁桃体がつかさどっているということになる。

●心の反応を阻害(そがい)するもの

 こうした事実を、子育ての場で考えると、つぎのように応用できる。つまり子どもの「心」というのも、大脳生理学の分野で説明できるし、それが説明できるということは、「心」は、教育によって、はぐくむことができるということになる。

 そこで少し話がそれるが、こうした脳の機能を阻害するものに、「ストレス」がある。たとえばニューロンの死を引き起こす最大の原因は、アルツハイマー型などの病気は別として、ストレスだと言われている。

何かの精神的圧迫感が加わると、副腎皮質から、グルココルチコイドという物質が分泌される。そしてその物質が、ストレッサーから身を守るため、さまざまな反応を体の中で引き起こすことが知られている。

 このストレスが、一時的なものなら問題はないが、それが、長期間にわたって持続的につづくと、グルココルチコイドの濃度があがりっぱなしになって、ニューロンに致命的なダメージを与える。そしてその影響をもっとも強く受けるのが、辺縁系の中の海馬だという(山元大輔氏)。

 もちろんこれだけで、ストレスが、子どもの心をむしばむ結論づけることはできない。あくまでも「それた話」ということになる。しかし子育ての現場では、経験的に、長期間何らかのストレスにさらされた子どもが、心の冷たい子どもになることはよく知られている。

イギリスにも、『抑圧は悪魔を生む』という格言がある。この先は、もう一度、いつか機会があれば煮つめてみるが、そういう意味でも、子どもは、心豊かな、かつ穏やかな環境で育てるのがよい。そしてそれが、子どもの心を育てる、「王道」ということになる。

 ついでに、昨年書いたエッセーを、ここに転載しておく。ここまでに書いたことと、少し内容が重複するが、許してほしい。

●子どもの心が破壊されるとき

 A小学校のA先生(小1担当女性)が、こんな話をしてくれた。「1年生のT君が、トカゲをつかまえてきた。そしてビンの中で飼っていた。そこへH君が、生きているバッタをつかまえてきて、トカゲにエサとして与えた。私はそれを見て、ぞっとした」と。

 A先生が、なぜぞっとしたか、あなたはわかるだろうか。それを説明する前に、私にもこんな経験がある。もう20年ほど前のことだが、1人の子ども(年長男児)の上着のポケットを見ると、きれいに玉が並んでいた。私はてっきりビーズ玉か何かと思った。が、その直後、背筋が凍りつくのを覚えた。

よく見ると、それは虫の頭だった。その子どもは虫をつかまえると、まず虫にポケットのフチを口でかませる。かんだところで、体をひねって頭をちぎる。ビーズ玉だと思ったのは、その虫の頭だった。

また別の日。小さなトカゲを草の中に見つけた子ども(年長男児)がいた。まだ子どもの小さなトカゲだった。「あっ、トカゲ!」と叫んだところまではよかったが、その直後、その子どもはトカゲを足で踏んで、そのままつぶしてしまった!

 原因はいろいろある。貧困(それにともなう家庭騒動)、家庭崩壊(それにともなう愛情不足)、過干渉(子どもの意思を無視して、何でも親が決めてしまう)、過関心(子どもの側からみて息が抜けない家庭環境)など。威圧的(ガミガミと頭ごなしに言う)な家庭環境や、権威主義的(「私は親だから」「あなたは子どもだから」式の問答無用の押しつけ)な子育てが、原因となることもある。要するに、子どもの側から見て、「安らぎを得られない家庭環境」が、その背景にあるとみる。さらに不平や不満、それに心配や不安が日常的に続くと、それが子どもの心を破壊することもある。

イギリスの格言にも、『抑圧は悪魔を生む』というのがある。抑圧的な環境が長く続くと、ものの考え方が悪魔的になることを言ったものだが、このタイプの子どもは、心のバランス感覚をなくすのが知られている。

「バランス感覚」というのは、してよいことと悪いことを、静かに判断する能力のことをいう。これがないと、ものの考え方が先鋭化したり、かたよったりするようになる。昔、こう言った高校生がいた。「地球には人間が多すぎる。核兵器か何かで、人口を半分に減らせばいい。そうすれば、ずっと住みやすくなる」と。そういうようなものの考え方をするが、言いかえると、愛情豊かな家庭環境で、心静かに育った子どもは、ほっとするような温もりのある子どもになる。心もやさしくなる。

 さて冒頭のA先生は、トカゲに驚いたのではない。トカゲを飼っていることに驚いたのでもない。A先生は、生きているバッタをエサとして与えたことに驚いた。A先生はこう言った。「そういう残酷なことが平気でできるということが、信じられませんでした」と。

 このタイプの子どもは、総じて他人に無関心(自分のことにしか興味をもたない)で、無感動(他人の苦しみや悲しみに鈍感)、感情の動き(喜怒哀楽の情)も平坦になる。よく誤解されるが、このタイプの子どもが非行に走りやすいのは、そもそもそういう「芽」があるからではない。
非行に対する抵抗力がないからである。悪友に誘われたりすると、そのままスーッと仲間に入ってしまう。ぞっとするようなことをしながら、それにブレーキをかけることができない。だから結果的に、「悪」に染まってしまう。

 そこで一度、あなたの子どもが、どんなものに興味をもち、関心を示すか、観察してみてほしい。子どもらしい動物や乗り物、食べ物や飾りであればよし。しかしそれが、残酷なゲームや、銃や戦争、さらに日常的に乱暴な言葉や行動が目立つというのであれば、家庭教育のあり方をかなり反省したらよい。

子どものばあい、「好きな絵をかいてごらん」と言って紙とクレヨンを渡すと、心の中が読める。子どもらしい楽しい絵がかければ、それでよし。しかし心が壊れている子どもは、おとなが見ても、ぞっとするような絵をかく。

 ただし、小学校に入学してからだと、子どもの心を修復するのはたいへん難しい。修復するとしても、四、五歳くらいまで。穏やかで、静かな生活を大切にする。
(02-11-23)

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 心をゆがめる子供 扁桃体 ストレスと子供 子供とストレス)


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ここまでの原稿に関連して、
以前にマガジンで配送した原稿を、送ります。
前に読んでくださった方は、とばしてください。

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●性善説と性悪説

 胎児は母親の胎内で、過去数10万年の進化の過程を、そのまま繰り返す。ある時期は、魚そっくりのときもあるそうだ。

 同じように、生まれてから、知能の発達とは別に、人間は、「心の進化」を、そのまま繰り返す。……というのは、私の説だが、乳幼児を観察していると、そういうことを思わせる場面に、よく出会う。

たとえば生後まもなくの新生児には、喜怒哀楽の情はない。しかし成長するにつれて、さまざまな感情をもつようになる。よく知られた現象に、「天使の微笑み」というのがある。眠っている赤子が、何を思うのか、ニコニコと笑うことがある。こうした「心」の発達を段階的に繰り返しながら、子どもは成長する。

 最近の研究では、こうした心の情動をコントロールしているのが、大脳の辺縁系の中の、扁桃体(へんとうたい)であるということがわかってきた。

たしかに知的活動(大脳連合野の新新皮質部)と、情動活動は、違う。たとえば1人の幼児を、皆の前でほめたとする。するとその幼児は、こぼれんばかりの笑顔を、顔中に浮かべる。その表情を観察してみると、それは知的な判断がそうさせているというよりは、もっと根源的な、つまり本能的な部分によってそうしていることがわかる。が、それだけではない。

 幼児、なかんずく4^6歳児を観察してみると、人間は、生まれながらにして善人であることがわかる。中に、いろいろ問題のある子どもはいるが、しかしそういう子どもでも、生まれながらにそうであったというよりは、その後の、育て方に問題があってそうなったと考えるのが正しい。

子どもというのは、あるべき環境の中で、あるがままに育てれば、絶対に悪い子どもにはならない。(こう断言するのは、勇気がいることだが、あえてそう断言する。)

 こうした幼児の特質を、先の「心の進化」論にあてはめてみると、さらにその特質がよくわかる。

 仮に人間が、生まれながらにして悪人なら……と仮定してみよう。たとえば仲間を殺しても、それを快感に覚えるとか。人に意地悪をしたり、人をいじめても、それを快感に覚えるとか。新生児についていうなら、生まれながらにして、親に向かって、「ババア、早くミルクをよこしやがれ。よこさないとぶっ殺すぞ」と言ったとする。もしそうなら、人間はとっくの昔に、絶滅していたはずである。

つまり今、私たちがここに存在するということは、とりもなおさず、私たちが善人であるという証拠ということになる。私はこのことを、アリの動きを観察していて発見した。

 ある夏の暑い日のことだった。私は軒先にできた蜂の巣を落とした。私もワイフも、この1、2年で一度ハチに刺されている。今度ハチに刺されたら、アレルギー反応が起きて、場合によっては、命取りになるかもしれない。それで落とした。殺虫剤をかけて、その巣の中の幼虫を地面に放り出した。そのときのこと。時間にすれば10分もたたないうちに、無数の小さなアリが集まってきて、その幼虫を自分たちの巣に運び始めた。

 最初はアリたちはまわりを取り囲んでいただけだが、やがてどこでどういう号令がかかっているのか、アリたちは、一方向に動き出した。するとあの自分の体の数百倍以上はあるハチの幼虫が、動き出したのである!

 私はその光景を見ながら、最初は、アリたちにはそういう行動本能があり、それに従っているだけだと思った。しかしそのうち、自分という人間にあてはめてみたとき、どうもそれだけではないように感じた。

たとえば私たちは夫婦でセックスをする。そのとき本能のままだったら、それは単なる排泄行為に過ぎない。しかし私たちはセックスをしながら、相手を楽しませようと考える。そして相手が楽しんだことを確認しながら、自分も満足する。同じように、私はアリたちにも、同じような作用が働いているのではないかと思った。つまりアリたちは、ただ単に行動本能に従っているだけではなく、「皆と力を合わせて行動する喜び」を感じているのではないか、と。またその喜びがあるからこそ、そういった重労働をすることができる、と。

 この段階で、もし、アリたちがたがいに敵対し、憎みあっていたら、アリはとっくの昔に絶滅していたはずである。言いかえると、アリはアリで、たがいに助けあう楽しみや喜びを感じているに違いない。またそういう感情(?)があるから、そうした単純な、しかも過酷な肉体労働をすることができるのだ、と。

 もう結論は出たようなものだ。人間の性質について、もともと善なのか(性善説)、それとも悪なのか(性悪説)という議論がよくなされる。しかし人間は、もともと「善なる存在」なのである。私たちが今、ここに存在するということが、何よりも、その動かぬ証拠である。繰り返すが、もし私たち人間が生まれながらにして悪なら、私たちはとっくの昔に、恐らくアメーバのような生物にもなれない前に、絶滅していたはずである。

 私たち人間は、そういう意味でも、もっと自分を信じてよい。自分の中の自分を信じてよい。自分と戦う必要はない。自分の中の自分に静かに耳を傾けて、その声を聞き、それに従って行動すればよい。もともと人間は、つまりあらゆる人々は、善人なのである。
(02-8-3)

参考文献……『脳と記憶の謎』山元大輔(講談社現代新書)
      『脳のしくみ』新井康允(日本実業出版社)ほか

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 性善説 ストレスとは ストレス学説)

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●キレる子供

【特集・キレる子ども】(1)


【キレる子ども】(再録)

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夏場になると、キレる子どもが
多くなる。

暑いせいか?

しかしそれだけとは言えない。

以前書いた原稿を、手なおして
して、ここに掲載する。

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●暴れまわる子ども(キレる子ども)

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アメリカのBLOGサイトに、こんな
相談があった。

預かっている子どもについての相談だが、
暴れまわって、困るという内容のもの。

Bulletin Board for EDSPC 753より転載。

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We have had custody of my 6 year old stepson for 9 months now, and I am truly worn out
and need help ASAP. I went to the school today to pick him up for a doctor appointment
(for his behavior & yes he is on medications for this)and upon seeing me in the hallway he became hysterical and ran in the oposite direction screaming. The principal and I caught up with him and he began punching, kicking, slapping, biting, and pulling several handfulls of my hair out of my head before the principal could restrain him. When he seemed calmed a bit i tried to calmly let him know that I was just picking him up for his doctor's appointment, at that point he kicked me in the face and continued to scream as loud as he could, disrupting several classrooms. The principal tried to carry him out to my vehicle, but once in he began kicking the daylights out of my car, he then got out and threw himself on the ground screaming. Please tell me what in the world to do and how should this be handled if it should occur at school again. The only facts we know about his life with his real mother is that she admitted in court to having heavily used methamphetamines daily throughout the pregnancy. I am not a teacher, but I fell terrible that the staff at his school had to go through this. He had an episode eight weeks ago where he did the same thing to his teacher that he did to me, I am in fearthat his abuse will only escalate. He is scheduled for a psych evaluation in Tacoma in 2 weeks, please give me advice for the mean time, we have 5 other well behaved children in our home, how do I keep them safe?

6歳の子どもを預かるようになって、9か月になる。私は本当に疲れた。今日も、ドクターの診察を受けるため、学校へ子どもを迎えに行った。

玄関で私を見るやいなや、子どもはヒステリックになり、反対方向へ走って逃げていった。校長と2人で、追いついたものの、殴ったり、蹴ったり、ひっぱたいたり、髪の毛を引っぱったりした。少し落ち着いたところで、今日は、病院へ行くだけだと話して聞かせた。

そのときも、私の顔を蹴り、大声で泣き叫び、いくつかの教室の授業を混乱させてしまった。どうしたらよいのか、どうか、教えてほしい。また学校で同じようなことが起きたら、どうすればよいのか。8週間ほど前も同じようなことをしたとき、このままエスカレートしたら、どうしようかと悩んだ。

彼は、タコマで、心理教育を受けることになっている。この間、どうすればよいのか、教えてほしい。私のところには、ほかにも5人の子どもを預かっているが、みな、行儀がよい。

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ある教育者からの返事

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It sounds like you are dealing with an extremely difficult situation. So far the other
suggestions posted by Dina and Bear should be helpful. I have two more techniques that
may be helpful for your stepson. One technique that you might want to try is creating a
behavior contract with your stepson. First, you can figure out what behaviors you would like to see him exhibit in school and at home. Some suggestions would be he needs to draw when he is feeling angry or he needs to follow directions the first time that they are given. Set a time frame for each time you or the teacher will be evaluating his behavior. Start small to encourage his success with the technique. You might want to say, if you can do this for 30 minutes you will receive a reward. And, keep track of whether or not he is exhibiting this behavior every 30 minutes. You will talk to him about what kinds of rewards he is willing to work for. If he loves to play with his toy trucks maybe you can use extra play time as a reward or getting to watch a favorite movie. It is important to figure out what rewards matter to him. You can find more information on using behavior contracting on this website. Go to the main behavioradvisor.com screen and you will find the link for contracts.

たいへん困難な状況にあると思う。先にコメントを書いた、DさんやBさんの意見も、役に立つでしょう。で、私は、役にたつであろう2つの技術をもっている。

1つは、まず試してみるべきことは、その子どもとの、(行動契約)を結ぶこと。まず、学校や家で、彼がどうあるべきかを、あなたがそれを具体的に頭の中で描いてみる。彼が怒っているときや、最初に指示に従う必要にあるとき、どうするかを決めるのもよい。それぞれのときに、時間のワクをつくれば、先生が、子どもの行動を(客観的に)評価するだろう。

もし30分以内にできれば、ほうびを与えるなどとする。30分ごとに、その契約が守れるかどうかを、観察する。またその子どもがどのようなほうびを求めているかを、子どもと話しあう。たとえばおもちゃのトラックと遊びたいとか、好きな映画を見たいというのであれば、それらをほうびとする。その子どもが何をしたがっているかを知ることが、重要。

このサイトで、(行動契約)についてのさらなる情報を、手に入れることができる。そちらを訪問してみたらよい。

The second technique that you might want to try is having your stepson self monitor his
own behavior. You will start out when he is calm to identify a behavior that you would like to encourage. Be confident in his ability to master this technique. It may sound unlike you, but give him excessive amounts of your confidence that he can master this behavior. Many children take their cues from the adults in their lives. Once you have figured out what behavior you will be working on, create a sheet with smily faces and frowning faces. At designated times, ask him to circle the smiling face if he is exhibiting this behavior or the frowning face if he is not. This will build his own motivation to exhibit appropriate behaviors.
And, celebrate when he is improving!!! I know this can be difficult to do, as some of the
improvements will seem small in relation to the problems; however, it is good for you and him to recognize when changes are occuring. It seems like you are really commited to helping this child and he is lucky to have such a
stable adult in his life. Good luck with this situation.

Keely

2番目の技術は、子ども自身の行動について、自己監視させること。子どもがあなたから見て、落ち着いていて、好ましい状態にあるときから、始める。この技術をマスターするための能力が子どもにあると、自信をもつこと。

子どもが自分で自分を管理できると、あなたが、(今のあなたには、そうではなくても)、自身をもっていることを、子どもに強く印象づける。多くの子どもたちは、彼らの生活において、おとなたちから、その手がかりを得る。どんな様子が望ましいかがわかったら、(ニコニコマーク)と(しかめっつらマーク)を描いたシートを用意する。

このことで、子どもに自覚を促す。そしてうまくいったときは、その子どもをほめたたえる。このことはむずかしいことは、わかっている。この問題に関しては、進歩は、少ないだろう。しかしあなたとその子どもにとって、変化が起きつつあることを気がつくためには、よい。その子どもにとって、あなたのような安定したおとなをもっているということは、すばらしいことだ。

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●子どもの過剰行動性について

 子どもの突発的な過剰行動性、いわゆるキレる子どもについては、いろいろな分野から考察が繰りかえされている。

 大脳の微細障害説、環境ホルモン説、食生活説など。それらについて、数年前に書いた原稿を、ここに添付する。

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【子どもがキレるとき】

●ふえるキレる子ども

 2000年、全国の教育委員会から報告された校内での暴力行為は、前年度より11.4%ふえて、34595件に達したことがわかった(文部科学省)。「対外的に問題の見られなかった子どもが、突発的に暴力をふるうケースが目立つ」と指摘。同省・児童生徒課は、キレる子どもへの対応の必要性を強調した(中日新聞)。

 暴力行為が報告された学校の割合は、小学校が全体の2・2%だったが、中学校が35・
8%、高校が47・3%にのぼった。また学校外の暴力行為は、小中高校で、計5779件だった。私が住む静岡県でも、前年度より210件ふえて、1132件だった。マスコミで騒がれることは少なくなったが、この問題は、まだ未解決のままと考えてよい。

 こうしたキレる子どもの原因について、各方面からさまざまな角度から議論されている。教育的な分野からの考察については言うまでもないが、それ以外の分野として、たとえば(1)精神医学、(2)栄養学の分野がある。さらに最近では(3)環境ホルモンの分野からも問題が提起されている。これは、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)が、子どもの脳に影響を与え、それが子どもがキレる原因の一つになっているという説である。以下、これらの問題点について、考えてみる。

(1)精神医学の分野からの考察

●躁状態における錯乱状態 

 キレる状態は、心理学の世界では、「躁(そう)状態における精神錯乱」と位置づけられている。躁うつ病を定型化したのはクレペリン(ドイツの医学者・1856~1926)だが、一般的には躁状態とうつ状態はペアで考えられている。周期性をもって交互に、あるいはケースによっては、重複して起こることが多いからである。それはそれとして、このキレた状態になると、子どもは突発的に攻撃的になったり、大声でわめいたりする。

(これに対して若い人の間では、ただ単に、激怒した状態、あるいは怒りをコントロールできなくなった状態を、「キレる」と言うことが多い。ここでは区別して考える。)私にもこんな経験がある。

●恐ろしく冷たい目

 子どもたち(小3児)を並べて、順に答案に丸をつけていたときのこと。それまでF君は、まったく目立たないほど、静かだった。が、あと一人でF君というそのとき、F君が突然、暴れ出した。突然というより、激変に近いものだった。ギャーという声を出したかと思うと、周囲にあった机とイスを足げりにしてひっくり返した。瞬間私は彼の目を見たが、その目は恐ろしいほど冷たく、すごんでいた……。

●心の緊張状態が原因

 よく子どもの情緒が不安定になると、その不安定な状態そのものを問題にする人がいる。しかしそれはあくまでも表面的な症状に過ぎない。情緒が不安定な子どもは、その根底に心の緊張状態があるとみる。その緊張状態の中に不安が入りこむと、その不安を解消しようと、一挙に緊張感が高まり、情緒が不安定になる。先のF君のばあいも、「問題が解けなかった」という思いが、彼を緊張させた。そういう緊張状態のところに、「先生に何かを言われるのではないか」という不安が入りこんで、一挙に情緒が不安定になった。

言いかえると、このタイプの子どもは、いつも心が緊張状態にある。気を抜かない。気を許さない。
周囲に気をつかうなど。表情にだまされてはいけない。柔和でおだやかな表情をしながら、その裏で心をゆがめる子どもは少なくない。

これを心理学の世界では、「遊離」という。「遊離現象」というときもある。心(情意)と表情がミスマッチを起こした状態をいう。一度こういう状態になると、教える側からすると、「何を考えているかわからない子ども」といった感じになる。

 その引き金となる原因はいくつかあるが、その第一に考えるのが、欲求不満である。欲求不満が日常的に続くと、それがストレッサー(ストレスの原因)となり、心をふさぐ。その閉塞感が、子どもの心を緊張させる。子どもの心について、こんな調査結果がある(98年・文部省調査)。

 「いらいら、むしゃくしゃすることがあるか」という質問に対して、小学6年生の18.6%が、「日常的によくある」と答え、59.8%が、「ときどきある」と答えている。その理由としては、

(1)友だちとの人間関係がうまくいかないとき……51.8%
(2)人に叱られたとき……45.7%
(3)家族関係がうまくいかないとき……35.5%
(4)授業がわからないとき……34.1%
(5)意味もなくむしゃくしゃするときがある……18.5%

また「不安を感ずることがあるか」という質問に対しては、やはり小学六年生の7.8%が、「日常的によくある」と答え、47.7%が、「ときどきある」と答えている。その理由としては、

(1)友だちとの関係がうまくいかないとき……51.0%
(2)授業がわからないとき……47.7%
(3)時間的なゆとりがないとき……29.3%
(4)落ち着ける居場所がないとき……22.4%
(5)進路、進学について……20.4%
 
 この調査結果から、現代の子どもたちは、およそ20人に一人が日常的に、いらいらしたり、むしゃくしゃし、10人に一人が日常的にある種の不安を感じていることがわかる。

●子どもの欲求不満

 子どもの欲求不満については、その原因となるストレスの大小はもちろんのこと、それを受け取る子ども側の、リセプターとしての問題もある。同じストレスを与えても、それをストレスと感じない子どももいれば、それに敏感に反応する子どももいる。そんなわけで、子どものストレスを考えるときは、対個人ではどうなのかというレベルで考える必要がある。それはさておき、子どもは自分の欲求が満たされないと、欲求不満になる。この欲求不満に対する反応は、ふつう、次の三つに分けて考える。

(1)攻撃・暴力タイプ

 欲求不満やストレスが、日常的にたまると、子どもは攻撃的になる。心はいつも緊張状態あり、ささいなことでカッとなって、暴れたり叫んだりする。母親が、「ピアノのレッスンをしようね」と話しかけただけで、包丁を投げつけた女の子(年長児)がいた。

私が「今日は元気?」と声をかけて、肩をたたいた瞬間、「このヘンタイ野郎!」と私を足げりにした女の子(小5)もいた。こうした攻撃性は、表に出るタイプ(喧嘩する、暴力を振るう、暴言を吐く)と、裏に隠れてするタイプ(弱い者をいじめる、動物を虐待する)に分けて考えることができる。

(2)退行・依存タイプ

 ぐずったり、赤ちゃんぽくなったりする(退行性)。あるいは誰かに依存しようとする(依存性)。このタイプの子どもは、理由もなくグズグズしたり、甘えたりする。母親がそれを叱れば叱るほど、症状が悪化するのが特徴で、そのため親が子どもをもてあますケースが多い。

(3)固執・執着タイプ

 ある特定の「物」にこだわったりする(固執性)。あるいはささいなことを気にして、悶々と悩んだりする(執着性)。ある男の子(年長児)は、毛布の切れ端をいつも大切に持ち歩いていた。最近多く見られるのが、おとなになりたがらない子どもたち。赤ちゃんがえりならぬ、幼児がえりを起こす。ある男の子(小5)は、幼児期に読んでいたマンガの本をボロボロになっても、まだ大切そうにカバンの中に入れていた。そこで私が、「これは何?」と声をかけると、その子どもはこう言った。「どうチェ、読んでは、ダメだというんでチョ。読んでは、ダメだというんでチョ」と。

 ものに依存するのは、心にたまった欲求不満をまぎらわすための代償行為と考えるとわかりやすい。よく知られているのに、指しゃぶりや、爪かみ、髪いじりなどがある。別のところで指の快感を覚えることで、自分の欲求不満を解消しようとする。

 キレる子どもは、このうち、(1)攻撃・暴力タイプということになるが、しかし同時に退行性や依存性、さらには固着性や執着性をみせることが多い。 

●すなおな子ども論

 補足だが、従順で、おとなしい子どもを、すなおな子どもと考えている人は多い。しかしそれは誤解。教育、なかんずく幼児教育の世界では、心(情意)と表情が一致している子どもを、すなおな子どもという。うれしいときにはうれしそうな表情をする。悲しいときには悲しそうな表情をする。しかし心と表情が遊離すると、ここに書いたようにそれがチグハグになる。ブランコを横取りされても、ニコニコ笑ってみせたり、いやなことがあっても、黙ってそれに従ったりするなど。

中に従順な子どもを、「よくできた子ども」と考える人もいるが、それも誤解。この時期、よくできた子どもというのは、いない。つまり「いい子」ぶっているだけ。このタイプの子どもは大きなストレスを心の中でため、そのためた分だけ、別のところで「心のひずみ」となって現われる。よく知られた例として、家庭内暴力を起こす子どもがいる。このタイプの子どもは、外の世界では借りてきたネコのようにおとなしい。

●おだやかな生活を旨とする

 キレるタイプの子どもは、不安状態の中に子どもを追いこまないように、穏やかな生活を何よりも大切にする。乱暴な指導になじまない。あとは情緒が不安定な子どもに準じて、(1)濃厚なスキンシップをふやし、(2)食生活の面で、子どもの心を落ち着かせる。カルシウム、マグネシウム分の多い食生活にこころがけ、リン酸食品をひかえる。リン酸は、せっかく摂取したカルシウムをリン酸カルシウムとして、体外へ排出してしまう。もちろんストレスの原因(ストレッサー)があれば、それを除去し、心の負担を軽くすることも忘れてはならない。

●子どもの感情障害

 ほかに自閉症やかん黙児、さらには小児うつ病など、脳に機能的な障害をもつ子ども、さらに近年問題になっている集中力欠如型多動性児(ADHD)は、感情のコントロールができないことがよく知られている。これらのタイプの子どもは、ささいなことがきっかけで、突発的に(1)激怒する、(2)興奮、混乱状態になる、(3)暴言を吐いたり、暴力行為に及ぶ。攻撃的に外に向って暴力行為を及ぶタイプを、プラス型、内にこもり混乱状態になるのをマイナス型と私はわけている。どちらにせよその行動は予想がつきにくく、たいていは子どもの「ギャーッ」という動物的な叫び声でそれに気づくことが多い。こちらが「どうしたの?」と声をかけるときには、すでに手がつけられない状態になっている。

(2)栄養学の分野からの考察

●過剰行動性のある子ども

 もう20年以上も前だが、アメリカで「過剰行動性のある子ども」(ヒュー・パワーズ・小児栄養学)が、話題になったことがある。ささいなことがきっかけで、突発的に過剰な行動に出るタイプの子どもである。日本では、このタイプの子どもはほとんど話題にならなかったが、中学生によるナイフの殺傷事件が続いたとき、その原因の一つとして、マスコミでこの過剰行動性が取りあげられたことがある(98年)。

日本でも岩手大学の大沢博名誉教授や大分大学の飯野節夫教授らが、この分野の研究者
として知られている。

●砂糖づけのH君(年中児)

 私の印象に残っている男児にH君(年中児)という子どもがいた。最初、Hさん(母親)は私にこう相談してきた。「(息子の)部屋の中がクモの巣のようです。どうしたらいいでしょうか」と。話を聞くと、息子のH君の部屋がごちゃごちゃというより、足の踏み場もないほど散乱していて、その様子がふつうではないというのだ。が、それだけならまだしも、それを母親が注意すると、H君は突発的に暴れたり、泣き叫んだりするという。始終、こきざみに動き回るという多動性も気になると母親は言った。私の教室でも突発的に、耳をつんざくような金切り声をあげ、興奮状態になることも珍しくなかった。そして一度そういう状態になると、手がつけられなくなった。私はその異常な興奮性から、H君は過剰行動児と判断した。

 ただ申し添えるなら、教育の現場では、それが学校であろうが塾であろうが、子どもを診断したり、診断名をくだすことはありえない。第一に診断基準が確立していないし、治療や治療方法を用意しないまま診断したり、診断名をくだしたりすることは許されない。

仮にその子どもが過剰行動児をわかったところで、それは教える側の内心の問題であり、親から質問されてもそれを口にすることは許されない。診断については、診断基準や治療方法、あるいは指導施設が確立しているケース(たとえば自閉症児やかん黙児)では、専門のドクターを紹介することはあっても、その段階で止める。この過剰行動児についてもそうで、内心では過剰行動児を疑っても、親に向かって、「あなたの子どもは過剰行動児です」と告げることは、実際にはありえない。教師としてすべきことは、知っていても知らぬフリをしながら、その次の段階の「指導」を開始することである。
 
●原因は食生活?

 ヒュー・パワーズは、「脳内の血糖値の変動がはげしいと、神経機能が乱れ、情緒不安になり、ホルモン機能にも影響し、ひいては子どもの健康、学習、行動に障害があらわれる」という。メカニズムは、こうだ。ゆっくりと血糖値があがる場合には、それに応じてインスリンが徐々に分泌される。しかし一時的に多量の砂糖(特に精製された白砂糖)をとると、多量の、つまり必要とされる量以上の量のインスリンが分泌され、結果として、子どもを低血糖児の状態にしてしまうという(大沢)。そして(1)イライラする。機嫌がいいかと思うと、突然怒りだす、(2)無気力、(3)疲れやすい、(4)(体が)震える、(5)頭痛など低血糖児特有の症状が出てくるという(朝日新聞98年2・12)。これらの症状は、たとえば小児糖尿病で砂糖断ちをしている子どもにも共通してみられる症状でもある。私も一度、ある子ども(小児糖尿病患者)を病院に見舞ったとき、看護婦からそういう報告を受けたことがある。

 こうした突発的な行動については、次のように説明されている。つまり脳からは常に相反する二つの命令が出ている。行動命令と抑制命令である。たとえば手でものをつかむとき、「つかめ」という行動命令と、「つかむな」という抑制命令が同時に出る。この二つの命令がバランスよく調和して、人間はスムーズな動きをすることができる。しかし低血糖になると、このうちの抑制命令のほうが阻害され、動きがカミソリでスパスパとものを切るような動きになる。先のH君の場合は、こまかい作業をさせると、震えるというよりは、手が勝手に小刻みに動いてしまい、それができなかった。また抑制命令が阻害されると、感情のコントロールもできなくなり、一度激怒すると、際限なく怒りが増幅される。そして結果として、それがキレる状態になる。

●恐ろしいカルシウム不足

 砂糖のとり過ぎは、子どもの心と体に深刻な影響を与えるが、それだけではない。砂糖をとり過ぎると、カルシウム不足を引き起こす。

糖分の摂取が、体内のカルシウムを奪い、虫歯の原因になることはよく知られている。体内のブドウ糖は炭酸ガスと水に分解され、その炭酸ガスが、血液に酸性にする。その酸性化した血液を中和しようと、骨の中のカルシウムが、溶け出るためと考えるとわかりやすい。体内のカルシウムの98%は、骨に蓄積されている。そのカルシウムが不足すると、「(1)脳の発育が不良になったり、(2)脳神経細胞の興奮性を亢進したり、(3)精神疲労をしやすくまた回復が遅くなるなどの症状が現われる」(片瀬淡氏「カルシウムの医学」)という。わかりやすく言えば、カルシウムが不足すると、知恵の発達が遅れ、興奮しやすく、また精神疲労を起こしやすいというのだ。甘い食品を大量に摂取していると、このカルシウム不足を引き起こす。

●生化学者ミラー博士らの実験

 精製されてない白砂糖を、日常的に多量に摂取すると、インスリンの分泌が、脳間伝達物質であるセロトニンの分泌をうながし、それが子どもの異常行動を引き起こすという。アメリカの生化学者のミラーは、次のように説召している。

 「脳内のセロトニンという(脳間伝達)ニューロンから脳細胞に情報を伝達するという、神経中枢に重要な役割をはたしているが、セロトニンが多すぎると、逆に毒性をもつ」(「マザーリング」81年7号)と。日本でも、自閉症や子どもの暴力、無気力などさまざまな子どもによる問題行動が、食物と関係しているという研究がなされている。ちなみに、食品に含まれている白砂糖の量は、次のようになっている。

製品名             一個分の量    糖分の量         
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー        
 ヨーグルト    【森永乳業】     90ml  9・6g         
 伊達巻き       【紀文】     39g  11・8g         
 ミートボール   【石井食品】 1パック120g  9・0g         
 いちごジャム   【雪印食品】  大さじ30g  19・7g         
 オレンジエード【キリンビール】    250ml  9・2g         
 コカコーラ              250ml 24・1g         
 ショートケーキ    【市販】  一個100g  28・6g         
 アイス      【雪印乳業】  一個170ml  7・2g         
 オレンジムース  【カルピス】     38g   8・7g         
 プリン      【協同乳業】  一個100g  14・2g         
 グリコキャラメル【江崎グリコ】   4粒20g   8・1g         
 どら焼き       【市販】   一個70g  25g          
 クリームソーダ    【外食】  一杯      26g           
 ホットケーキ     【外食】  一個      27g          
 フルーツヨーグルト【協同乳業】    100g  10・9g         
 みかんの缶詰   【雪印食品】    118g  15・3g         
 お好み焼き   【永谷園食品】  一箱240g  15・0g         
 セルシーチョコ 【江崎グリコ】   3粒14g   5・5g         
 練りようかん     【市販】  一切れ56g  30・8g         
 チョコパフェ     【市販】  一杯      24・0g       

●砂糖は白い麻薬

 H君の母親はこう言った。「祖母(父親の実母)の趣味が、ジャムづくりで、毎週ビンに入ったジャムを届けてくれます。うちでは、それを食べなければもったいないということで、パンや紅茶など、あらゆるものにつけて食べています」と。私はH君の食生活が、かなりゆがんだものと知り、とりあえず「砂糖断ち」をするよう進言した。が、異変はその直後から起きた。幼稚園から帰ったH君が、冷蔵庫を足げりにしながら、「ビスケットがほしい、ビスケットがほしい」と泣き叫んだというのだ。母親は「麻薬患者の禁断症状のようで、恐ろしかった」と話してくれた。が、それから数日後。今度はH君が一転、無気力状態になってしまったという。私がH君に会ったのは、ちょうど一週間後のことだったが、H君はまるで別人のようになっていた。ボーッとして、反応がまるでなかった。母親はそういうH君を横目で見ながら、「もう一度、ジャムを食べさせましょうか」と言ったが、私はそれに反対した。

●カルシウムは紳士をつくる

 戦前までは、カルシウムは、精神安定剤として使われていた。こういう事実もあって、イギリスでは、「カルシウムは紳士をつくる」と言われている。子どもの落ち着きなさをどこかで感じたら、砂糖断ちをする一方、カルシウムやマグネシウムなど、ミネラル分の多い食生活にこころがける。私の経験では、幼児の場合、それだけで、しかも一週間という短期間で、ほとんどの子どもが見違えるほど落ち着くのがわかっている。川島四郎氏(桜美林大学元教授)も、「ヒステリーやノイローゼ患者の場合、カルシウムを投与するだけでなおる」(「マザーリング」81年7号)と述べている。効果がなくても、ダメもと。そうでなくても、缶ジュース一本を子どもに買い与えて、「うちの子は小食で困ります」は、ない。体重15キロ前後の子どもに、缶ジュースを一本与えるということは、体重60キロの人が、4本飲む量に等しい。おとなでも缶ジュースを4本は飲めないし、飲めば飲んだで、腹の中がガボガボになってしまう。

 なお問題となるのは、精製された白砂糖をいう。どうしても甘味料ということであれば、精製されていない黒砂糖をすすめる。黒砂糖には、天然のミネラル分がほどよく配合されていて、ここでいう弊害はない。
 
●多動児(ADHD児)との違い

 この過剰行動性のある子どもと症状が似ている子どもに。多動児と呼ばれる子どもがいる。前もって注意しなければならないのは、多動児(集中力欠如型多動性児、ADHD児)の診断基準は、2001年の春、厚生労働省の研究班が国立精神神経センター上林靖子氏ら委託して、そのひな型が作成されたばかりで、いまだこの日本では、多動児の診断基準はないというのが正しい。つまり正確には、この日本には多動児という子どもは存在しないということになる。一般に多動児というときは、落ち着きなく動き回るという多動性のある子どもをいうことになる。そういう意味では、活発型の自閉症児なども多動児ということになるが、ここでは区別して考える。

 ちなみに厚生労働省がまとめた診断基準(親と教師向けの「子どもの行動チェックリスト」)は、次のようになっている。

(チェック項目)
1行動が幼い
2注意が続かない
3落ち着きがない
4混乱する
5考えにふける
6衝動的
7神経質
8体がひきつる
9成績が悪い
10不器用
11一点をみつめる

たいへんまたはよくあてはまる……2点、
ややまたは時々あてはまる……1点、
当てはまらない……0点として、
男子で4~15歳児のばあい、
12点以上は障害があることを意味する「臨床域」、
9~11点が「境界域」、
8点以下なら「正常」

この診断基準で一番気になるところは、「抑え」について触れられていない点である。多動児が多動児なのは、抑え、つまり指導による制止がきかない点である。教師による抑えがきけば、多動児は多動児でないということになる。一方、過剰行動児は行動が突発的に過剰になるというだけで、抑えがきく。その抑えがきくという点で、多動児と区別される。また活発型の自閉症児について言えば、多動性はあくまでも随伴的な症状であって、主症状ではないという点で、この多動児とは区別される。またチェック項目の中の(1)行動が幼い(退行性)は、過保護児、溺愛児にも共通して見られる症状であり、(7)神経質は、敏感児、過敏児にも共通して見られる症状である。さらに(9)成績が悪い、および(10)不器用については、多動児の症状というよりは、それから派生する随伴症状であって、多動児の症状とするには、常識的に考えてもおかしい。

ついでに私は私の経験から、次のような診断基準をつくってみた。

(チェック項目)
1抑えがきかない
2言動に秩序感がない
3他人に無遠慮、無頓着
4雑然とした騒々しさがある
5注意力が散漫
6行動が突発的で衝動的
7視線が定まらない
8情報の吸収性がない
9鋭いひらめきと愚鈍性の同居
10論理的な思考ができない 
11思考力が弱い

 このADHD児については、脳の機能障害説が有力で、そのために指導にも限界がある……という前提で、それぞれの市町村レベルの教育委員会が対処している。たとえば静岡県のK市では、指導補助員を配置して、ADHD児の指導に当っている。ただしこの場合でも、あくまでも「現場教師を補助する」(K市)という名目で配置されている。

(3)環境ホルモンの分野からの考察

●シシリー宣言

1995年11月、イタリアのシシリー島のエリゼに集まった一八名の学者が、緊急宣言を行った。これがシシリー宣言である。その内容は「衝撃的なもの」(グリーンピース・JAPAN)なものであった。

いわく、「これら(環境の中に日常的に存在する)化学物質による影響は、生殖系だけではなく、行動的、および身体的異常、さらには精神にも及ぶ。これは、知的能力および社会的適応性の低下、環境の要求に対する反応性の障害となってあらわれる可能性がある」と。

つまり環境ホルモンが、人間の行動にまで影響を与えるというのだ。が、これで驚いて
いてはいけない。シシリー宣言は、さらにこう続ける。「環境ホルモンは、脳の発達を阻害する。神経行動に異常を起こす。衝動的な暴力・自殺を引き起こす。奇妙な行動を引き起こす。多動症を引き起こす。IQが低下する。人類は50年間の間に5ポイントIQが低下した。人類の生殖能力と脳が侵されたら滅ぶしかない」と。ここでいう「社会性適応性の低下」というのは、具体的には、「不登校やいじめ、校内暴力、非行、犯罪のことをさす」(「シシリー宣言」・グリーンピース・JAPAN)のだそうだ。

 この事実を裏づけるかのように、マウスによる実験だが、ビスワエノールAのように、環境ホルモンの中には、母親の胎盤、さらに胎児の脳関門という二重の防御を突破して、胎児の脳に侵入するものもあるという。つまりこれらの環境ホルモンが、「脳そのものの発達を損傷する」(船瀬俊介氏「環境ドラッグ」より)という。

(4)教育の分野からの考察

 前後が逆になったが、当然、教育の分野からも「キルる子ども」の考察がなされている。しかしながら教育の分野では、キレる子どもの定義すらなされていない。なされないままキレる子どもの議論だけが先行している。ただその原因としては、(1)親の過剰期待、そしてそれに呼応する子どもの過負担。(2)学歴社会、そしてそれに呼応する受験競争から生まれる子ども側の過負担などが、考えられる。こうした過負担がストレッサーとなって、子どもの心を圧迫する。ただこの段階で問題になるのが、子ども側の耐性である。最近の子どもは、飽食とぜいたくの中で、この耐性を急速に喪失しつつあると言える。わずかな負担だけで、それを過負担と感じ、そしてそれに耐えることがないまま、怒りを爆発させてしまう。親の期待にせよ、学歴社会にせよ、それは子どもを取り巻く環境の中では、ある程度は容認されるべきものであり、こうした環境を子どもの世界から完全に取り除くことはできない。これらを整理すると、次のようになる。

(1)環境の問題
(2)子どもの耐性の問題。

 この二つについて、次に考える。

●環境の問題
●子どもの耐性の問題

終わりに……

以上のように、「キレる子ども」と言っても、その内容や原因はさまざまであり、その分野に応じて考える必要がある。またこうした考察をしてのみ、キレる子どもの問題を正面からとらえることができる。一番危険なのは、キレる子どもを、ただばくぜんと、もっと言えば感傷的にとらえ、それを論ずることである。こうした問題のとらえ方は、問題の本質を見誤るばかりか、かえって教育現場を混乱させることになりかねない。
(はやし浩司 キレる子ども 過剰行動性 突発的に暴れる子供 暴れる子ども)

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