2010年3月22日月曜日
*Tranference of Emotion
●感情転移
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その相手に、別の人に抱いている
感情を転移する。
そしてその相手を嫌ったり、反対に、
慕ったりする。
これを「感情転移」という。
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●揺り戻し現象
教師と生徒。
ときどき私は教師にとって、「知識ある先輩」なのか、
それとも「親代わり」なのか、わからなくなるときがある。
生徒のほうが、私に(感情転移)をしてくる。
こうした現象が顕著に現われてくるのが、小学3~4年生。
思春期前夜の反抗期にさしかかるときである。
この時期子どもは、(幼児)と(おとな)の間を
行ったり来たりしながら、少しずつ、幼児性を自分の中から
削り落としていく。
私はこれを「揺り戻し現象」と呼んでいる。
「振り子現象」でもよい。
●D君
そのころ、子どもの中には、ちょうど父親に対するのと
同じような反抗的態度を示す子どもがいる。
さらに自分自身の父親に対する不満や不平を、私に
ぶつけてくる子どももいる。
5、6年前に、D君(当時小4)という子どもがいた。
そのときD君の両親は、別居状態にあった。
母親はこの浜松市に残り、祖父母と同居していた。
父親は、「行方不明」ということだった。
そのD君は、あからさまに私を嫌い、ときに暴力的な
態度で臨んできた。
私と、自分自身の父親とを、明らかに同一視していた。
それがよくわかったから、私は、D君が殴りかかって
きても、(たいした暴力ではなかったこともあるが)、
だまってそれを受け止めていた。
●奇妙な現象
そのD君だが、ある日、奇妙な現象が起きた。
レッスンが終わって、さあ帰るという時間になったとき
のこと。
あたかも私の寛容度を試すかのように、教室の備品を
壊し始めたのである。
鋭い目つきをしていた。
が、これは黙って見過ごすわけにはいかない。
私はD君をうしろから、抱きかかえた。
前から抱きかかえると、足蹴りをされる。
いくら小学4年生でも、前から足蹴りをされたら、たまらない。
D君は、それでも何とか私を足蹴りにしようともがいた。
しばらく格闘がつづいた。
が、こういうケースのばあい、ある時点で、きっちりと、
けじめを見せる必要がある。
教師というよりは、人間としてのけじめといってもよい。
しばらくはげしい足蹴りがつづいたのを見計らって、
今度は、私が反撃に出た。
うしろからD君を抱きかかえながら、私はD君の足を、
バシッ、バシッと、思いっきり蹴った。
本人も痛かったと思う。
私も痛かった。
が、D君は、私がまさかそういう行動に出るとは思って
いなかったらしい。
とたん、ウェーンと、子どもらしい泣き声をあげた。
見ると顔中を涙で濡らしながら、「痛いじゃないかア」と。
D君は私の腕の中で暴れるのをやめた。
おとなしくなった。
先に書いた「奇妙な現象」というのは、そのあと起きた。
私はそのままD君が、私の教室を去っていくものと
ばかり思っていた。
が、D君は、それまで見せたことのない、親愛の目で
私を見るようになった。
●陰性転移から陽性転移へ
それ以後、みなより早く教室へやってきては、学校での
できごとや、友だちとのやりとりを話してくれるようになった。
テストの話や、点数の話もしてくれるようになった。
「今度は(点数が)悪かったけど、つぎではがんばるから」とも。
それが望ましいことなのかどうかは、いまだによくわからない。
が、D君は、私に感情転移し、私を自分の父親と見立てていた。
それが私にもよくわかった。
この状態は、D君が教室を去る、小学6年の終わりまでつづいた。
あとで母親から聞いた話では、D君は、どんなときでも、
私の教室だけは休みたがらなかったという。
また学校では乱暴者と嫌われていたこともあり、私の教室だけが、
自分の居場所と考えていた、とも。
心理学的に説明すれば、最初D君は、私に対して、「陰性転移」
を繰り返していた。
憎悪、嫌悪、軽蔑、忌避、嫉妬、恨み、否定など。
自分自身の父親に対する感情を、そのまま私にぶつけていた。
が、足蹴り事件を境に、それが「陽性転移」へと変化した。
親愛、情愛、尊敬、親近、信頼、感謝、敬愛など。
わかりやすく言えば、それまでは私を「父親」と見立て、
自分や家族を棄てた父親を嫌っていた。
が、足蹴り事件のあとは、逆に、私を父親と見立て、
親愛の情をもつようになった。
似たような経験はいくつかしているが、……というより、
日常茶飯事的に起こるが、D君のケースのような顕著な
例は少ない。
これも教師と生徒ととの、ひとつの関係ということになる。
(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 BW はやし浩司 教師と生徒 感情転移 陽性転移 陰性転移 足蹴り事件)
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