2009年11月5日木曜日

*Panic *The Unsinkable Sun

●パニック

昨夜、自転車で家に帰るとき、
今までにない経験をした。
時刻は、夜9時を回っていた。

信号が変わるのを待ちながら、ふと横を見ると、一人の
若い女性が、車の中で携帯電話を使っていた。

私「……」。

そのとき、止まった車の間を縫うようにして、
大通りの後方から、無灯火の自転車が、
道路を横切って来た。
信号が赤になる前に急いで……、ということらしい。

私「……」。

横を見ると、みな、停止ラインで、車を止めていない。
数メートル、はみ出た車。
数メートル、手前で止まっている車。
車間距離はまちまち。

私「……」

信号待ちと言っても、その交差点は、おかしな十字路。
間に川をはさんでいるため、幅が50メートル
近くはある。
左右の道のうち、左へ行く道は、途中で行き止まり。
右から来る車も、そこは一方通行になっている。

それを知っているから、信号を守る歩行者は、
ほとんどいない。
今度は、赤信号を無視して、ジョッギングしながら、
1人の若い男が、こちらに向かって走ってきた。

私「……」。

さらに近くの家から、一方通行の道を逆走して、一台の
車が猛スピードで、目の前を通り過ぎていった。

私「……」。

もうひとつ、何かあったが、思い出せない。
ともかくも、そういうことが、(瞬間)という
短い時間の間に、たてつづけに起きた。
とたん頭の中がパニック状態になってしまった。

その直後、私は、こう思った。
「いったい、この国は、どうなってしまったのか!」と。

おおげさに聞こえるかもしれないが、そう思った。
つまりひとつずつのできごとは、ささいなことでも、
それが短時間にたてつづけて起こると、それぞれが
頭の中で大きくふくらむ。
そしてその結果、「この国は!」と、なる。

こういう脳の反応を、どう理解したらよいのか。
私にはわからないが、おもしろい現象なので、
ここに書きとめておく。


Hiroshi Hayashi++++++++NOV.09+++++++++はやし浩司

●『沈まぬ太陽』(補記)

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 今朝、起きるとすぐ、「『沈まぬ太陽』vs
日本航空(JAL)」という原稿を書いた。
「あの映画は、日本航空(JAL)の名誉を
傷つけているという内容の原稿である。

それについて朝食のとき、ワイフに話すと、
「そうね、私もそう思う」と、あっさりと
同意してくれた。

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●一サラリーマンの左遷劇

 繰り返しになるが、労使問題がこじれ、そのはざまで翻弄される、一サラリーマン
の悲哀劇を描くだけなら、何も日本航空(JAL)を、あえて取り上げる必要は
なかった。
それに「左遷」「左遷」というが、当時の日本では、あの程度の左遷劇は、どこの
会社でもあった。
民間企業ではもちろんのこと、三公社五現業と呼ばれる団体でも、あった。
「窓際族」「単身赴任」、さらに「粗大ごみ」という言葉も、そのころ生まれた。

また海外勤務についても、商社などでは、一度海外に出たら、最低でも2年、
日本には戻って来られなかった。
短期出張(70年代の当時は、「単身赴任」という言葉は、まだなかった)の
「はしご」というのもあった。
短期出張は、単身が常識だった。
出張先から、さらにつぎの出張先へ飛ばされるのを、「はしご」と呼んでいた。
しかし商社マンのばあい、海外勤務は、出世コースと位置づけられていた。
(『沈まぬ太陽』の中では、懲罰として位置づけられていたようだが、そう決めて
かかるのもどうか?)

 私がいたあのM物産にしても、社員の7割が国内勤務、3割が海外勤務と
いうことになっていた。
「商社マンは、海外で活躍してこそ商社マン」、
「海外勤務は、夢」、
「海外勤務は、出世コース」と。
私たちは、みな、そう考えていた。

 つまり単なる左遷劇ドラマなら、何もあえて日本航空(JAL)を舞台にする
必要はなかった。

●だれが見ても、日本航空(JAL)

しかし日航123便の墜落事故を描くことによって、あの映画に出てくる国民航空
というのは、日本航空のことと、だれにでも、わかる。
しかもその墜落事故は、映画の中では、トップシーンの中に出てくる。
が、実際には、労使紛争につづく主人公の左遷劇は、その何年か前に始まっていた。
たくみに前後を逆にすることにより、日航123便の墜落事故が、あたかも日本航空
(JAL)の経営陣に責任があるかのような、ストーリー展開になっている。

 が、繰り返しになるが、あの映画は、基本的には、1人の社員の左遷劇を描いた
ものに過ぎない。
それにそのあとに起きた日航123便の墜落事故を、まぶした。
(映画の中では、「JAL123便」が、「NAL123便」となっていたが……。)

 そこで改めて問う。

 どうしてこの映画の中で、日航123便の墜落事故が出てくるのか?
また出さねばならなかったのか?
あたかも主人公の恩地が、被害者であるかのような立場で描かれているが、一歩
退いた世界から見れば、恩地は、社員そのもの。
もし会社に責任があるとするなら、恩地自身も、その責任を負う立場にある。

 またわざわざ「この物語はフィクションです」と断るくらいなら、ほかの事故でも
よかったし、まったく架空の事故でもよかったはず。
つまり一サラリーマンの左遷劇と、日航123便の墜落事故が、どうしても
私の頭の中でつながらない。

●日本航空(JAL)は悪玉?

 ゆいいつ「それかな?」と、記憶に残っているセリフに、こんな言葉があった。

「ニューヨークの高額なホテルを買い占めるお金があるなら、どうしてその
お金を、安全面に使ってくれなかったのだ」と。
日航123便の遺族の1人が、そう言って、恩地に詰め寄っていた場面である。
しかしそれとて、ホテルの買収の話。

 つまりあの映画は、日本航空(JAL)を悪玉に仕立てようと、無理をしている。
それはまるで昔のチャンパラ映画のようでもあった。
善人と悪人の色分けをはっきりする。
とくに悪人は、いかにも悪人でございますというような、稚拙な演技をする。

たとえば補償金交渉をする担当者。
実にわざとらしいというか、取ってつけたような演技。
あそこまで事務的に補償金交渉をする担当者はいない。

●疑問

 となると、ここで疑問は、振り出しに戻ってしまう。
「なぜ、日本航空(JAL)なのか」と。

 1985年といえば、「つくば‘85」(国際科学技術博覧会)(3月)のあと、
NTT、たばこ産業が、それぞれ民営化されている(4月)。
(日本電信電話公社が、日本電信電話株式会社に。
日本専売公社が、日本たばこ産業株式会社に、それぞれ民営化。
日本航空も、日航123便の墜落事故の当日、民営化を決議していた。) 

 さらに言えば、「なぜ、今なのか」と。
日本航空(JAL)は、現在、経営再建中で、たいへん困難な時期にある。
映画を観てもわかるように、労使問題といっても、それは社内という、
コップの中での話。
日航123便の墜落事故は、たしかに不幸な事故だったが、その事故と、
その前段階として描かれている労使紛争や主人公の左遷劇は、関係ない。

(関係があるなら、それをテーマにすればよい。
またそういう映画なら、話もわかる。
たとえば日航123便の墜落事故についても、圧力隔壁の破壊説のほか、
米軍によるミサイル誤射説、垂直尾翼の羽破壊説などもある。
ボイスレコーダーの一部は、いまだに未公開になっている、などなど。)

 まったく関係ない大事故をもちだし、労使紛争にまぶしていく。
あたかも労使紛争が、そのあとに起こる日航123便の墜落事故と関係あるかの
ように、である。

●表現の暴力

 しかしこれこそが「表現の暴力」。
確たる証拠もないまま、労使紛争と日航123便の墜落事故と結びつけていく。
そしてその上で、この物語は、「フィクションです」と断る。

 このあたりに、制作者や監督の、薄汚さを覚える。

 前にも書いたが、たとえば大統領の不正を追求する映画とか、そういったもので
あれば、問題はない。
大統領は公人である。
しかし日本航空(JAL)は、当時はいざ知らず、今は、一民間企業である。
株式も公開している。
そういう会社をターゲットに、こういう映画が許されてよいものか?

 観る人によっては、日本航空(JAL)に対して、悪いイメージをもつだろう。
みながみな、「これは映画」「フィクション」と、割り切ることができるわけではない。
観たまま、「日本航空(JAL)って、おかしな会社」と思うかもしれない。
もしそうなら、(実際、そうだが)、日本航空(JAL)は、本気で怒ってよい。

●制作意図がわからない

 要するに、あの映画は、(原作のほうもそうだろうが)、日本航空(JAL)を
中傷するためだけに作られた映画と考えてよい。
社内の労使紛争の理不尽を、ドラマ化しただけ。
それに日航123便の墜落事故をまぶして、ドラマを水ぶくれ式に大きくした。

 だから私はこう書いた。
「表現の暴力」と。

 ワイフは最後にこう言った。
「山崎豊子は、JALに、何かうらみでもあったのかしら?」と。
そう、何かうらみでもなければ、あそこまでの本は書けない。
日航123便の墜落事故で亡くなった犠牲者は、そのための(飾り)として
利用された。
犠牲者に同情するフリをしながら、物語のスケールを大きくするために、利用された。
しかしそれこそ、犠牲者への冒涜ということになるのではないのか。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 BW 日本航空 JAL123便 沈まぬ太陽 国民航空 NAL123)


Hiroshi Hayashi++++++++NOV.09+++++++++はやし浩司

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