2009年10月30日金曜日

*What is the Freedom in Education?

● CERN(サーン)(量子加速器※)

少し前、アメリカから帰ってきた三男が、声を高ぶらせてこう言った。
「S君(=二男の愛称)は、すごいことやってるよ、パパ!」と。

話を聞くと、インディアナ大学で、スパコンの技師をしているという。
そして今は、CERN(サーン)の研究員の1人として、働いている、と。
インディアナ大学といっても、端から端まで、車で2時間もかかるほど広い。
日本の常識では、ちょっと想像できない。

そこで二男は、世界中のスパコンをつなぎ、サーンからのデータを通信衛星で、受信。
その分析をしている。

そのことを今朝、二男にテレビ電話で話すと、いともさりげなく、「12月にスイスへ
出張で行ってくるよ」と。

ウィキペディア百科事典には、こうある。

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(注※)大型ハドロン衝突型加速器 (Large Hadron Collide、略称 LHC) とは、
高エネルギー物理実験を目的としてCERNが建設した世界最大の衝突型円型加速器の名称。スイス・ジュネーブ郊外にフランスとの国境をまたいで設置されている。2008年9月10日に稼動開始した。

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私はうれしかった。
どういうわけか、うれしかった。
私にはできなかったことを、二男は、している。
「自慢」とか、そういうことではない。
あの量子加速器の話は、前から聞いていた。
巨大なシステムで、総工費は、9000億円以上、とか。
「世界中の物理学者がスイスに集まりつつある」と、別のHPにはあった。
そういう研究の片鱗のその一部に、何と言うか、自分自身が加担できたような
うれしさである。

 二男には、幼児のときから、惜しみなくコンピュータを買い与えてきた。
私も好きだったこともある。
二男が小学生のときには、一台40~50万円が相場だった。
ベーシック言語を教えたのは私だったが、C++言語は、中学へ入るころには、
自分でマスターしてしまった。
また高校生のときには、コンピュータ・ウィルスが問題になり始めていた。
二男は、自分でワクチンをつくり、そのワクチンを、そのとき立ち上がり始めていた
ウィルス対策ソフトウェア会社に、送り届けていた。

 「無駄」という言葉は、あまり使いたくないが、「無駄にはならなかった」と。
ただ二男のばあいは、コンピュータもさることながら、作曲の才能のほうが、
すぐれていた。
二男が高校生のときに作曲、演奏した音楽を聴くたびに、そう思った。
そういう才能を伸ばしてやれなかった。
親として、何ともやるせない気持ちになったことは多い。

 が、今度、その(やるせなさ)を、二男は、吹き飛ばしてくれた。
「あの、量子加速器の件で、スイスへ行くのか?」
「うん、サーンだよ」と。

 サーン……全周27キロの円形加速器。
ときどき映画の中などでも紹介される。
これからは、それが紹介されるたびに、今までにない親近感を覚えるだろう。

 息子たちよ、ありがとう!
私はいつも、お前たちに励まされて生きている。
が、まだまだ、私は負けない。
老いぼれてもいない。
お前たち以上に、がんばってやる。
さりげなく。
そう、さりげなく、がんばってやる!

おやすみ!
(09年10月29日夜記)

【教育の自由論】

●何をもって「自由」というか?

 事実を書く。

 二男の嫁のデニーズは、主婦業をしながら、受験勉強。
07年に、日本でいう司法試験に合格してしまった。
独学である。

 で、当時、二男は、転職を考えていた。
アメリカでは、より大きなチャンスをねらって転職するのが、常識になっている。
そこで二男は、カルフォルニア州にある、グーグル社と、ラスベガスにある、
ウォール・マート社の2社のどちらかに、転職が決まった。

 カルフォルニアは、物価も高く、息子と娘の教育にもよくないと、ウォール・マート社
への転職を決めていた。

 が、そのとき、デニーズが全額奨学金付きの、司法試験に合格してしまった。
「自由に大学を選んでいい」と。

 そこでデニーズは、インディアナ州のインディアナ大学(通称、IU)に、決めた。
その大学のロースクールに入学。

 二男は、「デニ-ズ(妻)の夢をかなえさせてやりたい」と、転職をあきらめ、
自分もインディアナ州へ。
先にも書いたように、端から端まで、車で2時間もかかるような、広大なキャンパスを
かかえた大学である。

 で、就職先をさがしていると、運よく、同じ大学内のコンピュータ技師としての仕事
が見つかった。
当初は、コンピュータの保守のような仕事をしていたと思う。
が、そのうち、大学のスパコン(スーパー・コンピュータ)を扱うようになった。
で、それがさらに進んで、少し前は、「世界のスパコンをネットとつないで……」という
ような話になった

 が、今回は、とうとう、「サーン」という名前が、口から出てきた。
そしてそのために12月に、スイスへ出張で言ってくる、と。

 わかるかな?

 日本の教育システムの中で、こうした(登用)が可能か、どうか?
アメリカでは、力のある若い人が、学歴とか、職歴に関係なく、どんどんと登用され、
自分の道を登っていくことができる。
念のため、あとで、この原稿を、TK先生(東大名誉教授・元副総長)に送ってみる。
「日本では、こういうことが可能なのか」と。

 たぶん、TK先生の答は、「No」だろう。
派閥と、子弟制度で、がんじがらめになっていて、研究者ですら、身動きできないはず。
つまり、それが日本とアメリカの教育システムの(ちがい)ということになる。

 「自由」といっても、制度だけいじればそれでよいという問題ではない。
「意識」の問題ということになる。
その意識が整ってこそ、「日本の教育は自由化された」と、はじめて言える。

 その二男だが、大学を卒業するとき、「NASAでも通用する男」という推薦状を
もらっている。
が、デニーズとの結婚を優先させて、地元のアーカンソー州にある、ソフトウェア
開発会社に就職した。
その入社試験でのこと。
二男は自分が作った、宇宙モデルを見せたという。
それで就職が決まった。

 またコンピュータをつなぐという方法は、(今ではふつうになされているが……)、
二男が学生時代に開発したもの。
10台以上の古いコンピュータを回線でつなぎ、スパコンに似た仕事をさせるという
ものである。
一度、二男の大学を訪れたとき、その一部を見せてもらったことがある。

 二男はいつもこう言っている。
「パパ、コンピュータの世界では、不可能という言葉はないよ」と。
どういうわけか、その言葉が、耳に強く残っている。

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(追記)

 今朝(10月30日)、以上の原稿をTK先生に送ったら、さっそく返事が来た。

【TK先生より、はやし浩司へ】

林様:
ご丁寧なお便り有難うございました。私には CERN の位置づけがよく分かりませんが、兎に角すごいことのようですね。父親の資質を継いでよかったですね。素晴らしいことのようで、心からお祝い申し上げます。ご三男の方でしたっけ、航空士になろうとしておられたのは。三男は何をしておられますか。

私の婿のOYは、今月東京大学の工学部の教授になりました。ヴァージニア工科大学の教授でしたが、向こうで一億五千万ほどの研究費がつき、辞められないので、東京大学に60%、ヴァージニアに40%の兼任になります。日本での給料は向こうに比べて大幅に低いし、その上定年もありますので、大分迷っていましたが、結局兼任ということで決ったようです。

来週の「文化の日」には東大関係のTK研の卒業生が集まり、「TK会」を東京の学士会館でします。卒業生が皆よくしてくれますので、元気が出ます。

くれぐれもお元気で。

                       TK

デニーズさんで思い出しましたが、私の孫のMKは慶応大学法学部の4年生ですが、アメリカの law school に入ると言って、先日試験を受けました。いいところに入れるといいが、と決定を待っているところです。彼女は小学校の5年生まで向こうで育ちましたのでバイリンガルです。

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