2011年9月1日木曜日

*In order to know yourself better

●自分を知る

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ほとんどの人は、「私のことは
私がいちばんよく知っている」
と思っている。
しかしその実、自分のことは、
まったくわかっていない。そう、
自分で思いこんでいるだけ。
よい例が、「病識」。「私は病気で
ある」という意識があることを、
病識という。
精神疾患の世界でも、この病識
のあるなしで、病気の軽重が
決まるという。
同じように、心理学の世界には、
「メタ認知」という言葉がある。
自分の思考プロセスを客観的に
知り、それを意識化することをいう。
「なぜ、私はこう考えるのか」と。
考えている内容ではない。なぜ、
そのように考えるか、そのプロセスを
意識化することをいう。
さらに哲学の世界では、「汝自身を
知れ」が、究極の目標になっている。
精神医学、心理学、そして哲学の
世界で、それぞれ言っていることは、
みな、同じ。
つまり、「私を知ること」は、それほど
までにむずかしい。
……それでもあなたは、「私のことは
私がいちばんよく知っている」と、
言い張ることができるだろうか?

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 たとえば若い女性が、胸や太ももをあらわにした服を着たとする。その女性にしてみれば、それが流行であり、そのほうが自分に似合うと思うから、そうする。
 そこでさらに、店にでかけ、あれこれ迷いながら、自分に合った(?)服を買おうとする。そういう女性に向かって、「どうしてそういう服を買うのですか」と質問しても、意味はない。その女性はその女性なりに、懸命に考えながら、色やデザインを選んでいる。
 が、もしその女性が、こう考えたらどうだろうか。
 「私はフロイトが説いたところの、イド、つまり性的エネルギーに支配されているだけ」と。
 そう、その女性は、無意識の世界からの命令によって動かされているだけ。そしてその命令は、種の保存本能に根ざしている。胸や太ももをあらわにするのも、結局は、(男)という異性をを意識しているからにほかならない。が、もちろんその女性には、その意識はない。

私「男を意識するから、そういう服を着るの?」
女「男なんて、関係ないわよ。ファッションよ」
私「ファッションって?」
女「自分に似合った服を選んで、身につけることよ」と。

 つまり精神疾患でいうところの「病識」が、その女性には、まったくないということになる。「私は正常だ」「ふつうだ」と思いこんでいる。しかし若い男性にとっては、そうではない。あらわになった胸や太ももを見ただけで、性的な情欲にかられる。女性には、その意識はなくても、男性は、そうなる。
 「どんな服装をしようとも、女性の勝手」というわけにはいかない。
 もっとも、その女性が、性的エネルギーにすべて支配されていると考えるのも、まちがいである。動機の原点に、性的エネルギーがあるとしても、そこから先は、(美の追求)ということになる。ファッションショーに、その例を見るまでもない。

 しかしそのつど、もし私たちが、自分の思考プロセスを、客観的に認知することができるようになったら、またそういう習慣を身につけることができたら、自分の見方が大きく変わるかもしれない。それを心理学の世界では、「メタ(高次)認知」という。
 たとえばこの私。毎日、ヒマさえあれば、こうしてパソコンのキーボードをたたいている。実際には楽しいから、そうしている。頭の中の未知の世界を探索するのは、ほんとうに楽しい。毎日、何か、新しいことを発見することができる。

 が、なぜ、そうするかというと、そこからが、「メタ認知」の領域ということになる。哲学の世界でいう、「私自身を、知る」という世界ということになる。
 基本的には、大きな欲求不満があるのかもしれない。あるいは心のどこかで女性という読者を意識しているのかもしれない。さらに言えば、(生)に対して、最後の戦いをいどんでいるのかもしれない。フロイトは、「性的エネルギー」という言葉を使ったが、弟子のユングは、「生的エネルギー」という言葉を使った。

 「性」も「生」の一部と考えるなら、私は、今の自分が、その生的エネルギーによって支配されているということになる。
 その生的エネルギーが姿を変えて、私を動かしている。それを知るということが、つまりは、メタ認知ということになる。「私自身を知る」ということになる。

(補記)
 子どもの世界をながめていると、メタ認知というものが、どういうものか、よくわかる。
 たとえば心理学の世界にも、「防衛機制」という言葉がある。自我が危機的な状況に置かれると、子どもは、(おとなもそうだが)、その崩壊を防ぐために、さまざまな行動に出ることが知られている。
 たとえば学習面では目立たない子どもが、スポーツ面でがんばるなど。非行や暴力、つっぱりも、その一部として理解されている。
 が、当の本人たちには、その意識はない。「私は私」と思って、(思いこんで)、そういう行動を繰りかえす。
 相手は子どもだから、ここでいうメタ認知を求めても、意味はない。心を知り尽くした心理学者でもむずかしい。あのソクラテスですら、「汝自身を知れ」という言葉にぶつかってはじめて、「無知の知」という言葉を導いた。
 しかしメタ認知は、同時に、他人をよく知る手助けにもなる。
 出世主義に邁進する人も、金儲けに血眼になっている人も、あるいはスポーツの世界で華々しい成果をあげている人も、心のどこかで、何かによって動かされている。それが手に取るように、よくわかるようになる。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 メタ認知 認識 病識 汝自身を知れ 汝自身を、知れ)

Hiroshi Hayashi++++++++AUG.09+++++++++はやし浩司

●空腹のメカニズム(メタ認識・メタ認知)

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昨夜、床につく前、猛烈な空腹感
に襲われた。
「パンでも食べようか……」と思ったが、
やめた。
そういうときの空腹感は、幻覚の
ようなもの。
朝、起きると、空腹感は消える。
今までの経験で、それがよくわかって
いる。
それに寝る前に食べると、肥満に
つながる。

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 人間の空腹感は、(ほ乳動物もみなそうだが)、2つの相反する作用によって決まるということがわかっている。「食べたい」という作用と、「食べたくない」という作用である。「食べたい」という作用が、「食べたくない」という作用よりも強くなったとき、空腹感が起きてくる。順に考えてみよう。
 大脳の視床下部に、血糖値を感知するセンサーがある。一般的には、血糖値がさがると、そのセンサーが機能し、空腹感をもたらすと考えられている。
 しかし空腹感のメカニズムは、そんな単純なものではない。私の例で、考えてみよう。
 たとえば昨夜、私は寝る前に、猛烈な空腹感に襲われた。人間には、(ほ乳動物はみなそうだが)、ホメオスタシス効果というのがある。「ホメオスタシス」というのは、人間内部の生理的環境を一定に保とうとする機能を総称したもの(付記、参照)。
 もっともわかりやすい例が、食欲である。体内のエネルギーが不足してくると、生理的バランスを一定に保つために、ホメオスタシス効果が機能し始める。それが食欲につながる。

 猛烈な空腹感に襲われたのは、血中の血糖値がさがったため。それを大脳の視床下部のセンサーが感知した。それが猛烈な空腹感へとつながった。
 しかしならば、朝になると、どうしてその空腹感が消えるのか? 血糖値は、昨夜のままのはず。あるいは睡眠中に、ホメオスタシス効果が機能して、血糖値を調整したのか。その可能性は、ある。あるが、どうも合点がいかない。血糖値だけで、食欲の有無は、決まるのか?

 この謎を解くカギが、拒食症や過食症の患者にある。
 食欲……正確には、「摂食行動」というが、その摂食行動は、2つの相反する作用によって、決まるという。ネズミの実験だが、ネズミの視床下部の外側野に電気刺激を与えると、摂食行動が活発化し、反対にその部分を破壊すると、摂食行動が停止するという(春木豊氏「心理学の基礎」)。

 が、反対に、その視床下部の外側野に隣接した、腹内側核を刺激すると、摂食行動が起きなくなり、反対にその部分を破壊すると、摂食行動が止まらなくなり、ネズミは過食し始めるという(同)。
 わかりやすく言えば、視床下部の外側野と、それに隣接する腹内側核が、たがいに相反した機能をもちながら、人間の食欲を調整しているということになる。以上の話を、もう一度、まとめると、こうなる。

(1) 視床下部の外側野……(刺激すると)→(摂食行動が起きる)
               (破壊すると)→(摂食行動が停止する)

(2) 視床下部に隣接する腹内側核……(刺激すると)→(摂食行動が起きなくなる)
                    (破壊すると)→(過食が始まる)   

 脳の機能も外部からの刺激で、変調しやすい。ここに書いたマウスの実験では、脳の一部を破壊することによって、摂食行動の変化を確かめたが、機能が変調しても、同じことが起きると考えるのは、ごく自然なことである。 

 たとえば拒食症の人は、視床下部の外側野の機能が、低下した人ということになる。一方、過食症の人は、腹内側核の機能が、低下した人ということになる。(かなり乱暴な書き方で、ごめん!)

 で、私のばあいは、どうか?
 昨夜、猛烈な空腹感が、私を襲った。原因として考えられるのは、夕食を、一気に食べたこと。つまり短時間で食べた。
 短時間で食べたため、血糖値が、急激に上昇した。それと並行して、(ややタイムラグ=時間的なズレはあるが)、インシュリンが分泌された。昨夜は、それがやや多めに分泌されたらしい。

 結果、血糖値はさがったが、インシュリンは、血中に残って、さらに血糖値をさげつづけた。そのため寝る前に、私は、低血糖の状態になった。それを大脳の視床下部にあるセンサーが感知した。そしてその信号を、視床下部の外側野に伝えた。
 私は猛烈な空腹感に襲われた。
 しかし私は、それをがまんした。一連のメカニズムがわかっていると、がまんするのも、それほどつらいことではない。「この空腹感は、幻覚」と自分で自分に、言って聞かせることができる。

 眠っている間に、ホメオスタシス効果が機能した。体内の生理的バランスを調整した。結果として、朝起きたとき、空腹感は消えていた。
 ……というように、自分の欲望や行動を、客観的に意識化することを、「メタ認知」という。人間がもつ認知力の中でも、最高度のものである。少し前、ワイフが、「それ(=メタ認知)ができたからといって、それがどうなの?」と聞いた。私は、それに答えて、「メタ認知ができるようになれば、さらに自分がよくわかる。自分で自分をコントロールできるようになる」と答えた。

 以上、「空腹のメカニズム」。おしまい!

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 空腹のメカニズム 過食症 拒食症 ホメオスタシス メタ認知 視床下部 外側野 腹内側核 はやし浩司 メタ認識)

(付記)
ホメオスタシス……「平衡状態」「定常状態」の意。生物が環境のさまざまな変化に対応し、生物体内の形態的、生理的状態を安定な範囲に保ち、生存を維持する性質。アメリカの生理学者のキャノンが提唱(国語大辞典)。

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Hiroshi Hayashi++++++++AUG.09+++++++++はやし浩司

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