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子育て最前線の育児論byはやし浩司 10年 5月 12日
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メルマガ(6万3000誌)の中で、2008年度、メルマガ・オブ・ザ・イヤーに
選ばれました!
【1】(子育てのこと)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
【これからの日本の教育】
●伸びたゴム
++++++++++++++++++
「ゆとり教育」を見直し、今年の4月から、
教科書の厚さが、3割、ふえるという。
しかし一度伸びたゴムは、簡単には、
もどらない。
あるいはどうやって、もどすのか。
フィンランド・メソドと言われる「5つの
柱」を参考に、ここでは具体的に考えて
みたい。
++++++++++++++++++
●フィンランド・メソド
以前、TK先生より、「フィンランド・メソド」に関する資料を送ってもらったことがある(文科省資料)。
それによれば、フィンランド・メソドは、つぎの5つに分析される。
(1)発想力
(2)表現力
(3)コミュニケーション力
(4)批判的思考力
(5)論理力
順に考えてみる。
(1)発想力
発想力、つまりクリエイティブな考え方について、TK先生から先月、「どうすればいいか」というような質問をもらった。
で、ここでフィンランド・メソドをまねたのでは、パラドックスに陥ってしまう。
「発想力をどうすればよいか」と言いながら、フィンランド・メソドをまねる。
これでは「張り紙をするな」という張り紙を張るようなもの。
そこで自分なりに、具体的に子どもに与える(設問)として、考えてみる。
+++++++++++++++++
(問1)「食料が不足することで、どんな問題が起きるか、深刻な問題から順に、5つ書きなさい」
(問2)「それぞれの問題について、どんな解決方法があるか、3つずつ書きなさい」
+++++++++++++++++
(問1)「科学の進歩は人間にどのような恩恵を与えたか。重大な事実から順に、5つ書きなさい」
(問2)「科学の進歩は人間にどのような脅威と恐怖を与えたか。重大な事実から順に、5つ書きなさい」
(問3)「(問2)について、それぞれの問題を、ではどうすればよいか、3つずつ書きなさい」
+++++++++++++++++
(問1)「インターネットによってもたらされたメリットを、大きなメリットから、順に5つあげなさい」
(問2)「インターネットによってもたらされる、デメリットについて、深刻な問題から5つ、書きなさい」
(問3)「それぞれの問題について、解決策を3つずつ書きなさい」
+++++++++++++++++
以上、思いつくまま、オリジナルの問題を考えてみた。
つまりこれらの問題では、(基本的な常識)の中で、(推論)と(分析)を重ねながら、(論理的な解答)を考えていくことを、ねらいとしている。
言うまでもなく、発想力が何よりも、モノを言う。
(2)表現力
ここでいう表現力というのは、作文力ということになる。
頭の中に浮かんだ(抽象的概念)を、いかに(言葉として表現し)、他者に(適切に伝達できるか)によって、決まる。
そこでその(抽象的概念)の部分を、「絵」にしたり、「動画」にしたりする。
それを言葉として表現させる。
たとえば、
(問)「小鳥が死んで悲しんでいる子どもと、それをうしろから、心配そうにのぞきこんでいる友だちの絵」を見せる。
「この2人の子どもの気持ちは、どのようですか。このあと、2人はどんな会話をするでしょうか。またどんな会話をすれば、悲しんでいる友だちの心を、和らげることができるでしょうか。それを400字の作文にして、まとめなさい」
(3)コミュニケーション力
TK先生は、先日、アクティブ・ラーニング(能動的な学習)という言葉を使った。
英会話教室などでは、以前から使われている言葉である。
教室から出て、実際の現場での会話を通して、英会話を学ぶという方法である。
TK先生が言った意味とは少しちがうかもしれないが、日本の教育では、そういう意味でのアクティブ・ラーニングは、たいへん貧弱。
たとえばオーストラリアの小学校では、教師はつねに子どもたちを戸外へ連れ出し、そこで教育をしている。
日本ではそういう光景を、めったに目にしない。
そこでコミュニケーション力ということになる。
わかりやすく言えば、「共鳴性の養成」ということ。
常に相手の立場に立って、ものを考える。
そのためには、ドラマ(演技)性のある教育が望ましい。
言うまでもなく、欧米では、「ドラマ」という科目が、芸術のひとつとして独立している。
ドラマを通して、そのドラマの中の役者の(心)になりきる。
(問)「あなたは今、京都に向かって急いでいる坂本龍馬です。どんな気持ちで、どんなことをしようとしているか、わかりやすく400字で表現しなさい」
(注:欧米では、たとえばシェークスピア劇に登場する人物について、どういう気持ちなのかを、子どもたちに表現させている。)
(4)批判的思考力
(批判)はつねに(相対立した概念)から、相互に生まれる。
そこでたとえば、つぎのような問題が考えられる。
(問1)「あなたは死刑廃止論者です。目の前に死刑肯定論者がいることを想定して、相手を説得するには、どういうふうに言えばよいか、意見をまとめなさい」
(問2)「あなたは今度は、死刑肯定論者です。目の前に死刑廃止論者がいることを想定して、相手を説得するには、どういうふうに言えばよいか、意見をまとめなさい」
(5)論理力
(論理)は、(証明された事実)を組み合わせながら、段階を追って、目的とされた(結論)に帰結することをいう。
「三段論法」という言葉もある。
A=B、B=C、よって、A=C、と。
(証明された事実)というのは、科学性、普遍性、常識性をともなった事実をいう。
(問)「運動をすると、汗をかく。しかし寒い日には、汗をかかない。そこで寒い日に運動をすると、燃焼された体内脂肪は、どう体内で処理されていくと考えられるか。あなたの経験をふまえて、論理的にそれを説明しなさい」
++++++++++++++++
以上、5つの観点から、フィンランド・メソドを、私なりに考えてみた。
「私なり」というのは、日本の教育ではおろそかになっている部分という意味である。
つまり日本の教育は、「教え育てる」という部分は重要視する(TK先生、指摘)。
しかし「自分で独立して考える」という部分については、システムそのものが、まだ確立していない。
「学ぶ」=「まねる」が主体になっている(TK先生、指摘)。
が、これでは、日本の教育には未来はない。
(日本の教育)=(日本の未来)ということになる。
ゴールドマン・サックス経済調査部の予想によれば、2050年には、日本のGDPは、世界第8位に転落する。
(中国→アメリカ→インド→ブラジル→メキシコ→ロシア→インドネシアにつづく。
日本のGDP規模は、中国の10分の1程度。)
そういう近未来を前にして、日本が生き残る道は、ただひとつ。
「教育」しかない。
これは、本腰を入れて、私たちひとりひとりが、真剣に考え、取り組まねばならない問題なのである。
(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 BW はやし浩司 日本の教育 フィンランド・メソド 日本の将来 新しい教育 2050年の日本)
Hiroshi Hayashi+教育評論++April.2010++幼児教育+はやし浩司
●学力低下(Learning Ability of Japanese students)(2008年1月発表の原稿より)
+++++++++++++++
OECD(経済協力開発機構)が、06年度に、
15か国、15歳、約40万人を対象にした、
「生徒の学習到達度調査」結果が、このほど、
公表された。
それによると、日本の高校1年生(15歳)は、
前回2003年度にくらべ、読解力が、14位から、
15位。数学応用力が、6位から10位になった。
科学応用力も、2位から6位に後退した。
実施3分野すべてで、順位が低下。前回につづき、
高校生の学力低下傾向が、数字で示された形と
なった。(中日新聞07-12-5、要約)
The result of "student's ability of learning", which made 15 countries, 15 years old and
about 400thousand students done by OECD is announced on Dec. 5th 2007.
According to the result, Japanese the 1st grade (15 years old) in the high school was
compared with 2003 last time, and reading comprehension ability was downed from the
15th from the 14th.
The mathematical application ability was the 10th from the sixth prize.
The science application ability was downed in the sixth from the second prize, too.
All decreases in the execution in 3 fields .
It became clearer that the learning abiluity of Japanese students have been downed in
three fields.
++++++++++++++
●世界の子どもたちの学力(learning Ability of the youth of the wrorld)
(読解力)(Reading Ability)
1位 韓国(Korea)
2位 フィンランド(Finland)
3位 香港(Hong-Kong)
……
15位 日本(Japan)
(数学的応用力)(Math Application)
1位 台湾(Twaiwan)
2位 フィンランド(Finland)
3位 香港(Hong-Kong)
……
10位 日本
(科学的応用力)(Science Application)
1位 フィンランド(Finland)
2位 香港(Hong-Kong)
3位 カナダ(Canada)
……
6位 日本(Japan)
++++++++++++++
この結果を、小学5年生の子どもたち(6人)に話してみた。子どもたちは、読書につ
いて話し始めた。
I talked about this result to some six kids of Grade 5th of school. They started talking
about themselves.
驚いたことに、その中の2人が、1年に、300冊近くも本を読んでいることを知った。
300冊といえば、1日に、ほぼ1冊ということになる。
With my surprise I know two of them are reading 300 books per year. Almost one book a
day!
「どうしてそんなにたくさん読むの?」と聞いたら、「学校で、読書競争があるから」と。
中に1人、親から、読書時間を制限されている子どもがいることもわかった。その子ども
は、1日に、1時間までと決められているそうだ。
I asked them why you read so many books a year and one of them told me that there is a
class-competition of reading. Moreover I was surprised to know that one of them is
limitied to read books less than an hour a day!
読書は、あらゆる学力の基本である。社会科にしても、理科にしても、読書が基本。と
くに小学生のばあい、社会科は、社会科的な国語、理科は、理科的な国語と理解するとよ
い。
Reading is essential and we say in Japanese “reading is the pillar of education”. As for
socioloy and scienace, they are only parts of reading.
が、それだけではない。
But it is not all.
読書を日常的にしている子どもには、ある種、独特の(深み)がある。沈思黙考タイプ
というか、目つきが、いつも静かに落ち着いている。理知的というか、じっと周囲の様子
を観察しているといった雰囲気がある。
Those kids who read books in their daily life look different from those who do not. Those
kids who read more books have a kind of a very special mood and they give us an
impression of deep-thinking. They are more logical and even when we do our
conversation, they always try to observe things around them.
読書がいかに大切かは、今さら言うまでもない。欧米では、読書(reading)を、教育の
柱にしている。学校教育は、読書に始まり、読書に終わると言っても過言ではない。
It is no use to say that reading is so important. In western world, reading is one of the
most important subject to learn. School education starts from reading and it is
everything.
一方、読書をまったくと言ってよいほど、しない子どももいる。このタイプの子どもは、
どこか、軽い。中身がない。バラエティ番組の中のタレント風といった感じ。ものの考え
方が、表面的。直感的。よくしゃべる。小学5、6年生になると、その差がはっきりとし
てくる。
On the contrary there are some who do not read books at all. This type of kids also have
a kind of special mood. They are “light” in thinking and we feel no deepness in their
thoughts just like TV talents of cheap varaiety programs. They talk a lot. The difference
comes clear when they are about the age of thre grade 5th.
さらに日常的に作文をしている子どもは、ものの考え方が論理的。言葉の使い方そのも
のが、ちがう。読書、作文は、子どもの教育の(要=かなめ)と考える。
And also there are some who write things in their daily life. They are more logical and
when they talk they use more proper words to express themselves. Reading and writing
are the “pillar” of education, I am quite sure.
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司
Hiroshi Hayashi education essayist writer Japanese essayist reading writing learning
ability of the Japanese students)
Hiroshi Hayashi+教育評論++April.2010++幼児教育+はやし浩司
●わかりすぎるほど、わかっているが……
+++++++++++++++++
わかりすぎるほどわかっているが、あまりにも
わかりすぎているため、慎重に
ならざるをえない。
こういう場面に出会うことは、よくある。
+++++++++++++++++
●X氏(60歳)のケース
穏やかでない事件が、起きた。
X氏(60歳)の塀のコンクリート壁が、放火されたという。
見ると、塀の一部が、黒くこげていた。
その下には、枯れ草が燃えた痕跡が残っていた。
X氏はそれを見て、即座に、道路をはさんだ、
隣のY氏のしわざとわかった。
放火というのは、ふつうのいたずらとは、ちがう。
一線を画す。
そこでX氏は警察に連絡をした。
パトカーがやってきた。
しかしコンクリート壁ということで、そのまま警察官は
帰ってしまった。
Y氏によるX氏への、(いやがらせ)は、毎年のようにあった。
が、「証拠がない」という理由だけで、X氏は、何もできなかった。
言い忘れたが、Y氏は、何かの痴呆症にかかっていた。
言動がおかしくなって、すでに10年以上になる。
●子どもの世界でも……
盗癖のある子どもというのは、いる。
盗むのがうまいというよりは、人目を盗むのがうまい。
ちょっと油断したスキに、サッと盗んでいく。
加えて、ウソもうまい。
が、何年もつきあっていると、同じパターンでそれが起こるため、
その子どもの(しわざ)ということがわかる。
しかし証拠がないため、何も言えない。
いじめの世界でも、似たようなことがある。
もう15年になるだろうか。
いじめについて、こんな原稿を書いたことがある。
+++++++++++++++++++++++
●いじめの陰に嫉妬(中日新聞にて発表済み)
Jealousy often drive man and woman crazy and it is the same in the world of children.
陰湿かつ執拗ないじめには、たいていその裏で嫉妬がからんでいる。この嫉妬というのは、恐らく人間が下等動物の時代からもっていた、いわば原始的な感情の一つと言える。それだけに扱いかたをまちがえると、とんでもない結果を招く。
市内のある幼稚園でこんなことがあった。その母親は、その幼稚園でPTAの役員をしていた。その立場をよいことに、いつもその幼稚園に出入りしていたのだが、ライバルの母親の娘(年中児)を見つけると、その子どもに執拗ないじめを繰り返していた。手口はこうだ。
その子どもの横を通り過ぎながら、わざとその子どもを足蹴りにして倒す。そして「ごめんなさいね」と作り笑いをしながら、その子どもを抱きかかえて起こす。起こしながら、その勢いで、またその子どもを放り投げて倒す。
以後、その子どもはその母親の姿を見かけただけで、顔を真っ青にしておびえるようになったという。ことのいきさつを子どもから聞いた母親は、相手の母親に、それとなく話をしてみたが、その母親は最後までとぼけて、取りあわなかったという。父親同士が、同じ病院に勤める医師だったということもあった。被害にあった母親はそれ以上に強く、問いただすことができなかった。
似たようなケースだが、ほかにマンションのエレベータの中で、隣人の子ども(三歳男児)を、やはり足蹴りにしていた母親もいた。この話を、八〇歳を過ぎた私の母にすると、母は、こう言って笑った。「昔は、田舎のほうでは、子殺しというものまであったからね」と。
子どものいじめとて例外ではない。Tさん(小三女児)は、陰湿なもの隠しで悩んでいた。体操着やカバン、スリッパは言うに及ばず、成績表まで隠されてしまった。しかもそれが一年以上も続いた。Tさんは転校まで考えていたが、もの隠しをしていたのは、Tさんの親友と思われていたUという女の子だった。
それがわかったとき、Tさんの母親は言葉を失ってしまった。「いつも最後まで学校に残って、なくなったものを一緒にさがしていてくれたのはUさんでした」と。Tさんは、クラスの人気者。背が高くて、スポーツマンだった。一方、Uは、ずんぐりした体格の、どうみてもできがよい子どもには見えなかった。Uは、親友のふりをしながら、いつもTさんのスキをねらっていた。そして最近でも、こんなことがあった。
ある母親から、「うちの娘(中二)が、陰湿なもの隠しに悩んでいます。どうしたらいいでしょうか」と。先のTさんの事件のときもそうだったが、こうしたもの隠しが長期にわたって続くときは、身近にいる子どもをまず疑ってみる。
そこで私が、「今一番、身近にいる友人は誰か」と聞くと、その母親は、「そういえば、毎朝、迎えにきてくれる子がいます」と。そこで私は、こうアドバイスした。「朝、その子どもが迎えにきたら、じっとその子どもの目をみつめて、『おばさんは、何でも知っていますからね』とだけ言いなさい」と。その母親は、私のアドバイス通りに、その子どもにそう言った。以後、その日を境に、もの隠しはウソのように消えた。
【2】(特集)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
【不安について】(What is the Anxiety?)
●不安の構造
+++++++++++++++++++++++++
(こうしたい)(こうでありたい)という欲望や欲求。
その欲望や欲求に対して、障壁(障害)が現われたとき、
欲望や欲求は、不安へと変異する。
つまり障壁(障害)の一方にあるのが、欲望や欲求。
もう一方にあるのが、不安ということになる。
私たちは、日常的に、この不安にさらされている。
欲望や欲求が強ければ強いほど、不安は増大する。
そこで問題は、こうした不安を克服する方法は
あるかということ。
私のばあいを中心に、この問題について考えてみたい。
++++++++++++++++++++++++++
●不安の分析
大村政男氏は、不安の(因子)を、つぎの24項目に分けている(心理学、ナツメ社)。
この表は、そのまま、自己診断のひとつの方法として、応用できる(P157)。
〔身体的症候群〕
( )皮膚にできものができることが多い。
( )しばしば尿意をもよおす。
( )食欲不振なことが多い。
( )緊張すると汗が出がちである。
〔集中力欠乏〕
( )興味があれこれと変わりやすい。
( )じっとしておられないほど、落ちつきを失うことがしばしばある。
( )1つのことに気持ちを集中できないほうである。
( )待たされるといらいらしてしまう。
〔自信欠乏〕
( )一度決めたことでも、他人の意見ですぐ変わってしまう。
( )人生にいつも重荷を感じている。
( )自信がないために、ものをあきらめてしまうことがよくある。
( )自分はまったく役に立たない人間と思うことが多い。
〔赤面恐怖〕
( )なにかあると、顔がほてってくる。
( )人に会うのがおっくうなほうである。
( )大勢の人の前に立つと、赤面しがちである。
( )恥ずかしがり屋である。
〔睡眠障害〕
( )睡眠薬をのまないと、眠れないこともある。
( )うなされて目を覚ますことが、ときどきある。
( )よく寝言を言うと、言われる。
( )眠りがいつも浅いうような感じがする。
〔取り越し苦労〕
( )いつも緊張して生活している。
( )なにかにつけて心配しがちである。
( )他の人よりも神経過敏である。
( )不幸なことが起こりはしないかとしばしば心配する。
(以上、大村政男氏による、診断項目。)
●自己診断
大村政男氏の因子論(前述)を使って、自己診断をしてみる。
で、これは私のばあいだが、自分では基底不安型の人間と思っていたが、意外と該当項目
が少ないのに、驚いた。
〔身体的症候群〕〔集中力欠乏〕〔自信欠乏〕〔赤面恐怖〕の4項目まで、該当なし。
〔睡眠障害〕については、慢性化しているというか、昼寝が習慣化しているため、さほど
気にならない。
が、最後の〔取り越し苦労〕については、4項目中、ほぼ4項目とも、私に当てはまる。
私は日常的に緊張している(?)。
それに心配性(しょう)。
神経過敏なところもあるし、将来についてよく心配する。
大村政男氏の診断方法によれば、典型的な〔取り越し苦労〕型タイプの人間ということに
なる。
実際、よく取り越し苦労をする。
ひとつのことを心配し始めると、それが勝手にどんどんとふくらんでいってしまう。
が、あとになって、それが取り越し苦労だったことを知る。
そういうことは、よくある。
●では、どうすればよいのか
これは私のばあいだが、私はそういう弱点を、自分でもよく知っている。
そのためそういう状態になり始めたら、つぎのことに心がけるようにしている。
(1)重大な判断はくださない。
(2)ワイフに、自分の状態を聞く。
(3)ものを書いて、不安の中身を文章にして、たたき出す。
もちろん気分転換も重要。
趣味に没頭する。
現在は、畑づくりと、ミニ・ヘリコプター、それに映画。
週に1度は、近くの温泉旅館で、温泉につかるようにしている。
しかし何よりも重要なことをは、「今の私は正常ではない」と、自分に言って聞かせること。
不安が勝手にふくらみ始めたら、「正常ではない」と、何度も心の中で繰り返す。
その場を静かにやり過ごす。
というのも、脳のCPU(中央演算装置)がおかしくなってくるから、正常でないこと
に気づくのは、たいへんむずかしい。
おかしくなりながら、「これが本当の私」と思ったり、「他人が不安でないほうがおかしい」
と思ったりする。
ただ誤解しないでほしいことが、ひとつある。
私はいつもこうしてものを考え、パソコンを相手に文章を書いている。
それについて、「不安だから書いているのでは」と思う人がいるかもしれない。
が、これは楽しいから、そうしている。
不安だからしているのではない。
心の緊張感があるから、しているのでもない。
楽しい。
見知らぬ原野を散歩しているような楽しさである。
そう言えば、ワイフもときどき、こう言う。
「よくもまあ、毎日ものを書いていて、タネ切れにならないわね」とか、「毎日考えてばか
りいて、頭がおかしくならない?」とか。
タネ切れになることはない。
今でもそうだが、ひとつのことを書いていると、別のところからつぎつぎと、書きたいこ
とがわいてくる。
それに「頭がおかしくならない?」については、たぶん、そうはならないと思う。
むしろ逆で、頭の中をモヤモヤした状態のままにしておくと、かえってイライラしてくる。
「便秘のときの腹のよう」と、私はワイフによく言うが、それに似たような状態になる。
が、だからといって、私は不安に強いわけではない。
弱い。
だから若いころから、先手主義。
後手に回ったとたん、調子がおかしくなる。
その分だけ、よけいに不安になる。
つまり自分を、不安になるような状況に追い込まないようにしている。
……ということで、みなさんの参考になるかどうかはわからないが、私のことについて
書いてみた。
(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司
BW はやし浩司 不安の構造 不安の診断 不安神経症 強迫観念 不安とは)
++++++++++++++++
不安を考えるとき、同時に思いつくのが、
強迫神経症と不安神経症。
それについて書いた原稿をさがしてみる。
++++++++++++++++
●強迫性障害
一つのことに執着すると、そのことばかりが気になって、悶々と悩む。悩むだけならま
だしも、それが原因となって、日常生活に支障が出るようになることがある。これを「強
迫性障害」という。
ある女性(36歳)は、マンションの上の階の足音が気になってしかたなかった。夫は、
「聞こえない」「たいしたこない」と言ったが、その女性には、聞こえた(?)。たまたま
上の階の部屋と自分の部屋の間取りが同じということもあった。その女性には、音だけで
はなく、上の階の住人の生活ぶりまでが、すべて手に取るようにわかった。
が、そのうち、その女性は、「(上の階の人が使う)掃除機の出す音がうるさい」と言い
だすようになった。「掃除といっても、1日、1回程度なら、がまんできる。しかし1日、
5回は多すぎる、と。
その女性は、毎日、上の階の人がどのような騒音(?)を出すか、その内容と回数をノ
ートに記入するようになった。が、それだけではない。自分が買い物などで、家をあける
ときには、小学2年生になった息子に、その回数を数えさせた。
息子は、その女性(母親)が帰ってくると、「今夜は、掃除機が1回で、洗濯機が1回…
…」というように、報告していたという。
そしてある日、その女性はそれらの記録をもって、上の階の住人のところへ怒鳴りこん
でいった……。
そのあとどうなったかは、容易に想像がつくことと思う。
●ある学校で
実は、こうした強迫性障害は、教育の世界でも、よく経験する。数年前のことだが、あ
る小学校へ講演に行ったら、その学校の教師が、こんな話をしてくれた。
その学級で、「よい子は、みんな、仲よし。友だちも、多い」というような内容の、学級
通信を出した。
が、1人の母親が、これに猛反発した。たまたまその母親の子ども(小2女児)が、学
校でいじめにあい、仲間はずれにされていた。そのことを、その母親は、悩んでいた。
その母親は、校長に、「うちの子は、よい子ではないのか!」と。「よい子とは何だ!」「仲
よしって何だ!」「どうしてそれが学級の方針なのか!」と、くいさがった。
拡大解釈と被害妄想。一言で言えば、そういうことになるが、その母親の怒りは、それ
で収まらなかった。「子どもの人権問題だ」「名誉毀損だ」と。さらには「校長不適格」な
どとも言い出したという。つまりその母親は、その問題に固執するあまり、自分の姿を見
失ってしまった。
こうした強迫性障害の延長に、買い物依存症(女性に多い)や、パチンコ依存症、賭博
(とばく)依存症(男性に多い)がある。これらの依存症の人も、一つのことにこだわり
始めると、それが頭から離れなくなる。
●満足感を満たすため
たとえば買い物依存症の女性にしても、「それがほしい」と一度思いこむと、あとは、明
けても暮れても、考えることは、そのことばかりという状態になる。そして一度、それを
買うと、その満足感と同時に、解放感を味わう。あとは、この繰りかえし。
が、こうした強迫性障害の人に、悩みや苦しみがないかといえば、そうではない。
悶々と、そのことに執着している間は、ふつうの人以上に、悩んだり苦しんだりする。「気
になってしかたない」というのは、苦しみである。
またその問題が解決したからといって、実は、その苦しみから解放されるというわけで
はない。たとえば買い物依存症の女性にしても、そのあと、今度は、強い自責の念にから
れる。「どうして買ってしまったんだろう」と。
さらに病的になると、借金をしてまで、自分のほしいものを手に入れるようになる。こ
うなると、あとは、奈落の底! こうして破産していく人は、少なくない。
先の「掃除機の音がうるさい」と怒鳴りこんでいった女性のケースでは、当然のことな
がら、そのあと、上の階の住人とは、険悪な関係になってしまった。当然である。が、運
の悪いことに、上の階の住人は、そのマンションの中でも、指導的な立場にあった。以後、
その女性が、マンションの住民たちの間で、どのような扱いを受けたかについても、容易
に想像がつくことと思う。
で、そのあとのことだが、その女性と夫は、何度も、上の階の住人に謝罪に行ったが、
受けつけてもらえなかったという。
ただ一度、こうした強迫性障害になった人は、そのつど、テーマを変えて、同じ障害に
なりやすいと言われている。
そのときは、上の階の住人の出す騒音であっても、それが解決すると、今度は、外を走
る車の騒音になったり、ここにあげた、学校通信の文面になったりする。さらにそれが子
どもの教育におよぶようになると、ことは、深刻になる。
明けても暮れても、考えることは、子どもの成績ばかり……というようであれば、あな
たも、その強迫性障害を疑ってみたらよい。
(はやし浩司 強迫性障害 買い物依存症 依存症 育児ノイローゼ 強迫神経症 強迫
観念 強迫症)
【あなたの心診断―女性用】
つぎの項目のうち、いくつか当てはまるようなら、強迫性障害を疑い、子育ての場で、
子どもの心に影響を与えないように、注意する。
( )かつて、買い物依存症など、何かの依存症になったことがある。
( )ひとつのことが気になると、そのことばかり考えることがよくある。
( )子どもに問題が起きると、先生や、子どもの友人に、原因を求める。
( )かっとなると、見境なく行動してしまうことがあり、あとで後悔しやすい。
( )被害妄想をもちやすく、ものごとを何でも悪いほうに解釈してしまう。
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
●子どもの神経不安症
●情緒が不安定な子ども
子どもの成長は、次の四つをみる。(1)精神の完成度、(2)情緒の安定度、(3)知育
の発達度、それに(4)運動能力。
このうち情緒の安定度は、子どもが肉体的に疲れていると思われるときをみて、判断す
る。運動会や遠足のあと、など。そういうときでも、ぐずり、ふさぎ込み、不機嫌、無
口(以上、マイナス型)、あるいは、暴言、暴力、イライラ、激怒(以上、プラス型)が
なければ、情緒が安定した子どもとみる。
子どもは、肉体的に疲れたときは、「疲れた」とは言わない。「眠い」と言う。子どもが
「疲れた」というときは、神経的な疲れを疑う。子どもはこの神経的な疲れにたいへん
弱い。それこそ日中、5~10分、神経をつかっただけで、ヘトヘトに疲れてしまう。
●情緒不安とは……?
外部の刺激に左右され、そのたびに精神的に動揺することを情緒不安という。2~4歳
の第一反抗期、思春期の第二反抗期に、とくに子どもは動揺しやすくなる。
その情緒が不安定な子どもは、神経がたえず緊張状態にあることが知られている。気を
許さない、気を抜かない、周囲に気をつかう、他人の目を気にする、よい子ぶるなど。そ
の緊張状態の中に、不安が入り込むと、その不安を解消しようと、一挙に緊張感が高まり、
情緒が不安定になる。
症状が進むと、周囲に溶け込めず、引きこもったり、怠学、不登校を起こしたり(マイ
ナス型)、反対に攻撃的、暴力的になり、突発的に興奮して暴れたりする(プラス型)。
表情にだまされてはいけない。柔和な表情をしながら、不安定な子どもはいくらでもい
る。このタイプの子どもは、ささいなことがきっかけで、激変する。
母親が、「ピアノのレッスンをしようね」と言っただけで、激怒し、母親に包丁を投げつ
けた子ども(年長女児)がいた。また集団的な非行行動をとったり、慢性的な下痢、腹
痛、体の不調を訴えることもある。
●原因の多くは異常な体験
原因としては、乳幼児期の何らかの異常な体験が引き金になることが多い。たとえば親
自身の情緒不安のほか、親の放任的態度、無教養で無責任な子育て、神経質な子育て、家
庭騒動、家庭不和、何らかの恐怖体験など。
ある子ども(五歳男児)は、たった一度だが、祖父にはげしく叱られたのが原因で、自
閉傾向(人と心が通い合わない状態)を示すようになった。また別の子ども(三歳男児)
は、母親が入院している間、祖母に預けられたことが原因で、分離不安(親の姿が見え
ないと混乱状態になる)になってしまった。
ふつう子どもの情緒不安は、神経症による症状をともなうことが多い。ここにあげた体
の不調のほか、たとえば夜驚、夢中遊行、かん黙、自閉、吃音(どもり)、髪いじり、指し
ゃぶり、チック、爪かみ、物かみ、疑惑症(臭いかぎ、手洗いぐせ)、かみつき、歯ぎしり、
強迫傾向、潔癖症、嫌悪症、対人恐怖症、虚言、収集癖、無関心、無感動、緩慢行動、夜
尿症、頻尿症など。
●原因は、家庭に!
子どもの情緒が不安定になると、たいていの親は原因さがしを、外の世界に求める。し
かしまず反省すべきは、家庭である。
強度の過干渉(子どもにガミガミと押しつける)、過関心(子どもの側からみて神経質で、
気が抜けない環境)、家庭不和(不安定な家庭環境、愛情不足、家庭崩壊、暴力、虐待)、
威圧的な家庭環境など。夫婦喧嘩もある一定のワク内でなされているなら、子どもには
それほど大きな影響を与えない。が、そのワクを越えると、大きな影響を与える。子ど
もは愛情の変化には、とくに敏感に反応する。
子どもが小学生になったら、家庭は、「体を休め、疲れた心をいやす、いこいの場」でな
ければならない。アメリカの随筆家のソロー(1817~62)も、『ビロードのクッショ
ンの上より、カボチャの頭』と書いている。
人というのは、高価なビロードのクッションの上に座るよりも、カボチャの頭の上に座
ったほうが気が休まるという意味だが、多くの母親にはそれがわからない。わからない
まま、家庭を「しつけの場」と位置づける。学校という「しごきの場」で、いいかげん
疲れてきた子どもに対して、家の中でも「勉強しなさい」と子どもを追いまくる。「宿題
は終わったの」「テストは何点だったの」「こんなことでは、いい高校へ入れない」と。
これでは子どもの心は休まらない。
●子どもの情緒を安定させるために
子どもの情緒が不安定になったら、スキンシップをより濃厚にし、温かい語りかけを大
切にする。叱ったり、冷たく突き放すのは、かえって情緒を不安定にする。一番よい方法
は、子どもがひとりで誰にも干渉されず、のんびりとくつろげるような時間と場所をもて
るようにすること。親があれこれ気をつかうのは、かえって逆効果。
ほかにカルシウムやマグネシウム分の多い食生活に心がける。とくにカルシウムは天然
の精神安定剤と呼ばれている。戦前までは、日本では精神安定剤として使われていた。錠
剤で与えるという方法もあるが、牛乳や煮干など、食品として与えるほうがよいことは言
うまでもない。
なお情緒というのは一度不安定になると、その症状は数か月から数年単位で推移する。
親があせって何とかしようと思えば思うほど、ふつう子どもの情緒は不安定になる。ま
た一度不安定になった心は、そんなに簡単にはなおらない。今の状態をより悪くしない
ことだけを考えながら、子どものリズムに合わせた生活に心がける。
(参考)
●子どもの神経症について
心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害を、神経症という。子ど
もの神経症は、精神面、身体面、行動面の三つの分野に分けて考える。
(1)精神面の神経症……精神面で起こる神経症には、恐怖症(ものごとを恐れる)、強迫
症状(周囲の者には理解できないものに対して、おののく、こわがる)、不安症状(理
由もなく悩む)、抑うつ感(ふさぎ込む)など。混乱してわけのわからないことを言
ってグズグズしたり、反対に大声をあげて、突発的に叫んだり、暴れたりすること
もある。
(2)身体面の神経症……夜驚症(夜中に狂人的な声をはりあげて混乱状態になる)、夜尿
症、頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、睡眠障害(寝ない、早朝覚醒、寝言)、嘔吐、
下痢、便秘、発熱、喘息、頭痛、腹痛、チック、遺尿(その意識がないまま漏らす)
など。一般的には精神面での神経症に先立って、身体面での神経症が起こることが
多く、身体面での神経症を黄信号ととらえて警戒する。
(3)行動面の神経症……神経症が慢性化したりすると、さまざまな不適応症状となって
行動面に表れてくる。不登校もその一つということになるが、その前の段階として、
無気力、怠学、無関心、無感動、食欲不振、引きこもり、拒食などが断続的に起こ
るようになる。パンツ一枚で出歩くなど、生活習慣がだらしなくなることもある。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司
子供の情緒 情緒不安定 情緒が不安定な子供 子ども 情緒不安 強迫観念 心配性
不安神経症)
Hiroshi Hayashi+教育評論++April.2010++幼児教育+はやし浩司
●60歳以上、7割が不安(内閣府)
++++++++++++++++++
内閣府は4月2日(2010)、60歳
以上を対象に、「高齢者の日常生活に
関する意識調査」を実施し、その結果を
公表した。
それに対して、「将来の生活に不安を
感じるか」という問に対して、
71・9%が、「不安を感ずる」と回答。
5年前の前回調査より、4・0%もふえた。
++++++++++++++++++
●調査結果
調査結果を並べてみる。
(1)自分や配偶者の健康や病気……77・8%
(2)介護 ……52・8%
(3)生活のための収入 ……33・2%
さらに、
(4)不安をとても強く感ずる ……15・6%
(5)多少は感ずる ……56・3%、とつづく。
「60歳以上」といっても、前期高齢者と、後期高齢者(75歳以上)とでは、
不安に対する感じ方も、大きくちがうはず。
私ももうすぐ満63歳になるが、今のところまだ現役で働いていることもあって、
それほど強くは、不安を感じていない。
私なら、上述、(1)(2)(5)に、(レ)を入れる。
しかし今のような状態が、70歳以上になっても維持できるとは、思っていない。
つまりこの調査を、70歳以上の人にしぼって行えば、もっときびしい結果が出てくる
はず。
なお全体としてみると、(収入)が、ひとつのポイントになっているのがわかる。
収入のない人ほど、不安を強く感じている。
「家計が苦しいと感じている人の、90%以上が、将来の不安を訴えた」(中日新聞)と
ある。
●親子の断絶
義兄は、こう言った。
「親子で断絶している家庭は多いよ。
子どもの方は、親を負担に思っているから、ささいな理由をこじつけて、子どもは親から
去っていくよ」と。
「つまりね、親のめんどうをみたくないから、何か理由をさがして、親を棄てるというわ
け」と。
こんな例を話してくれた。
その家には、2人の息子がいる。
で、現在、父親は、独り暮らし。
宅地と農地(いつでも宅地化できる)の両方で、500坪の土地をもっている。
そこでその父親は、自分の死後、息子たちが言い争いをしないようにと、土地を均等に
2つに分け、その旨、2人の息子に伝えた。
が、これに長男が猛反発。
「均等は、おかしい!」「あんたのめんどうを近くでみてきたのは、オレだ」と。
そこで父親は、預金通帳や株券を見せ、「これはお前にやるから」と、長男をなだめた。
が、以後、長男は、家に寄りつかなくなってしまった。
二男も、家に寄りつかなくなってしまった。
長男と二男は、会ってもたがいに口をきくこともない。
つまり家族が、バラバラになってしまった。
●家族の耐性
「家族の耐性」が、弱くなった。
ちょっとしたことで、親子がバラバラになってしまう。
親の方はともかくも、子どものほうが、去っていく。
そして理由にもならないような理由を並び立てて、「私はあんな親のめんどうはみない」と。
ある男性(40歳くらい)は、親類の人にこう言ったという。
「もう何年も、電話一本もくれない」「親なら息子のことを心配して、『元気か』くらいの
電話くらい、してくれてもいい」と。
その男性の父親(75歳くらい)も、田舎で独り暮らしをしていた。
が、一度ころんで骨折してからは、寝たきりの状態になった。
そこで見るに見かねて、親類の人が、その男性に電話を入れた。
その返事が、これ!
つまり父親が息子に電話を入れなかった。
それを理由に、「私は、父親のめんどうをみる義務はない」と。
さらにひどい(?)話となると、こんなものもある。
息子が結婚するとき、親は、息子に土地と家を買い与えた。
息子は、1時間ほど離れたところにある都会に移り住んだ。
で、しばらくしてからのこと。
その息子の嫁から電話が入った。
「固定資産税の請求が来たが、どうすればいいか」と。
さらにひどい話(!)。
両親は年齢も年齢ということで、有料の老人ホームに入った。
もともと住んでいた家は、長男に明け渡した。
が、その長男。
毎月のようにその老人ホームへやってきて、生活費をせびっているという。
(これは、ほんとうの話!)
しかし今、そういう家庭がふえている。
ほとんどがそうでないかと思われるほど、多い。
こうした問題を考えるときの、キーワードが「依存性」。
一度、(保護)(依存)の関係ができると、保護する側は、ずっと保護する。
依存する側は、依存する。
依存性というのは、そういうもの。
が、それで終わらない。
依存する側は、「依存して当然」と考える。
つまり今では、最後の最後まで、「親は、死ぬまで、子どものめんどうをみるべき」と、
考える。
(親のめんどうではない。
子どものめんどうを、だ!)
そういう子どもが、ふえている。
そういう家庭が、ふえている。
++++++++++++++++
これについても、何度も書いてきた。
以前書いた原稿を、さがしてみる。
++++++++++++++++
【親バカ論】
●就職率50%
大不況。
目下、進行中。
大卒の就職率も、50~60%とか。
事務所の隣人は、個人でリクルートの会社を経営している。
その隣人が、こう言った。
「実感としては、50%前後ではないですかね?」と。
つまり大卒のうち、2人に1人しか、就職できない。
きびしい!
浜松市といえば、昔から工業都市として知られている。
HONDA、SUZUKI、YAMAHAなどの各社は、この浜松市で生まれた。
その浜松市でも、「50%」!
●親、貧乏盛り
『子ども大学生、親、貧乏盛り』という。
私が考えた諺(ことわざ)である。
それについては、何度も書いてきた。
で、子どもを大学へ送ることは、得か損かという計算をしてみる。
・・・といっても、学部によって、大きく、異なる。
医学部のばあい、勤務医になれば、勤務後2~3年目には、年収は2000万円を超える。
開業医になれば、月収は500万円を超える。
(月収だぞ!)
一方、文科系の学部のばあい、学費も安いが、その分、学歴も、ティシュペーパーのよ
うに軽い。
英文学部にしても、高校の教科書より簡単なテキストで勉強しているところは、いくらで
もある。
そんな学部を出ても、実際には、何ら、役に立たない。
全体としてみると、それなりの資格のともなった学歴であれば、得。
資格をともなわない、ただの学歴であれば、損。
その結果、就職率50%ということになれば、何のための苦労だったのかということにな
る。
●3人に1人が、高齢者
3人に1人が、高齢者。
そんな時代が、すぐそこまでやってきている。
現在、40歳以上の人は、老後になっても、満足な介護は受けられないと知るべし。
実際には、不可能。
となると、自分の老後は、自分でみるしかない。
つまりそれだけの蓄(たくわ)えを用意するしかない。
で、たいていの人は、「自分の子どもがめんどうをみてくれる」と考えている。
が、今、あなたが高齢になった親のめんどうをみていないように、あなたの子どもも、ま
たあなたのめんどうをみない。
60%近い若者たちは、「経済的に余裕があれば・・・」という条件をつけている。
「経済的に余裕があれば、親のめんどうをみる」と。
(この数字とて、ほぼ10年前の数字。)
実際には、みな、目一杯の生活をしている。
経済的に余裕のある人など、いない。
若い世代では、さらにいない。
●親バカ
こうして順に考えていくと、子どもに学費をかけることが、いかに無駄かがわかってく
る。
あえて言うなら、子どもを遊ばせるために、その遊興費を提供するようなもの。
が、何よりも悲劇なのは、そのためにする親の苦労など、今時の大学生にじゃ通じない。
当たり前。
「電話をかけてくるのは、お金がほしいときだけ」というのは、親たちの共通した認識で
ある。
むしろ逆に、(してくれないこと)を、怒る。
「みなは、毎月20万円、送金してもらっている」
「どうして結婚の支度金を出してくれないのか」と。
保護、依存の関係も行き過ぎると、そうなる。
保護される側(子ども)は、保護されて当然と考える。
一方、保護するほうは、一度、そういう関係ができてしまうと、簡単には、それを崩すわ
けにはいかない。
罪の意識(?)が先に立ってしまう。
どこか一方的な、つまり否定的な意見に聞こえるかもしれないが、こうして世の親たち
は、みな、つぎつぎと親バカになっていく。
●老後の用意
しかし私たちの老後は、さみしい。
蓄(たくわ)えも乏しい。
社会保障制度も、立派なのは、一部の施設だけ。
3人のうちの1人が老人という世界で、手厚い介護など、期待する方がおかしい。
となると、自分の息子や娘たちに、となる。
しかし肝心の息子や娘たちには、その意識はまるでない。
ある友人は、こう言った。
「うちの息子夫婦なんか、結婚して3年目になるが、嫁さんなど、来ても、家事はいっさ
い手伝わない。いつもお客様だよ」と。
別の友人もこう言った。
その友人の趣味は魚釣り。
そこで釣ってきた魚を、嫁に料理をさせようとしたら、こう言ったという。
「キモ~イ、こんなこと、私にさせるのオ?」と。
この話をワイフにすると、ワイフもこう言った。
「私の友だちのSさんなんかね、長男は、歩いて数分のところに住んでいるだけどね、毎
週、実家へ子どもたちを連れて夕食を食べに来るんだってエ」と。
で、私が、「食費はだれが出すの?」と聞くと、「もちろん友だちのSさんよ。長男たち
は、それで食費を浮かせようとしているのね」と。
さらに「料理は、だれがするの?」と聞くと、「Sさんよ。嫁さんは、デンと座っているだ
けだそうよ。たまに食器は洗ってくれるそうよ。でもそれだけ」と。
私が「ヘエ~~」と驚いていると、さらにワイフは、驚くべきことを口にした。
「それでいて、長男は、親のめんどうをみているのは自分と、思いこんでいるみたいね」
と。
私「親のめんどう・・・?」
ワ「そうよ。弟夫婦たちが実家へ来ると、兄貴風を吹かして、弟夫婦に、『お前たちも、と
きには、親のめんどうをみろ』って言ってるんだってエ」
私「あきれるね」
ワ「そうね。孫の顔を見せるだけでも、ありがたく思えというところかしら」と。
●何かおかしい?
何か、おかしい。
何か、まちがっている。
しかし今は、そういう時代と思って、その上でものを考えるしかない。
子どもたちというより、その上の親たちが、そういう世代になっている。
その親たちに向かって、「子育てとは・・・」と説いても、意味はない。
言うなれば、ドラ息子、ドラ娘になりきった親たちに向かって、ドラ息子論、ドラ娘論を
説くようなもの。
意味はない。
言い換えると、私たち自身が、「甘えの構造」から脱却するしかない。
「子どもたちに依存したい」「依存できるかもしれない」「子どもたちが世話をしてくれる
かもしれない」と。
そういう(甘え)から、脱却するしかない。
さらに言えば、「私たちの老後には、息子や娘はいない」。
そういう前提で、自分たちの老後を考える。
●私のケース
私の息子たちが特殊というわけではない。
見た目には、ごく平均的な息子たちである。
中身も、ごく平均的な息子たちである。
だからこう書くといって、息子たちを責めているわけではない。
しかしときどき会話をしながら、その中に、「老後の親たちのめんどうをみる」という発想
が、まったくないのには、驚く。
まったく、ない。
むしろ逆。
こう言う。
「相手の親(=嫁の親)は、~~してくれた」「どうしてパパ(=私)は、してくれないの
か?」と。
息子夫婦にしても、「家族」というのは、自分と自分たちの子どもを中心とした(親子関
係)をいう。
目が下ばかり向いている。
が、それはそれでしかたのないこと。
息子たちは息子たちで、自分たちの生活を支えるだけで、精一杯。
私たち夫婦だって、そうだった。
が、それでも、お・か・し・い。
●満62歳にして完成
・・・こうして親は、子離れを成しとげる。
(甘え)を、自分の心の中から、断ち切る。
そして一個の独立した人間として、自分の老後を考える。
というのも、私たちの世代は、まさに「両取られの世代」。
親にむしり取られ、子どもたちにむしり取られる。
最近の若い人たちに、「ぼくたちは、収入の半分を実家に送っていた」と話しても、理解で
きないだろう。
それが当たり前だった時代に、私たちは、生まれ育った。
が、今は、それが逆転した。
今では子どもの、その子ども(つまり孫)の養育費まで、親(つまり祖父母)が援助する。
それが親(つまり祖父母)ということになっている。
が、そこまでしてはいけない。
このあたりでブレーキをかける。
かけなければ、この日本は、本当に狂ってしまう。
(すでに狂いぱなし、狂っているが・・・。)
少し前も、私は「車がほしい」というから、息子に、現金を渡してしまった。
それで私たちは、H社のハイブリッドカーを買うつもりだった。
それについて、まずオーストラリアの友人が、「渡してはだめだ」と忠告してくれた。
義兄も、「ぜったいに、そんなことをしてはだめだ」と言った。
「息子のほうが、今までのお礼にと、新車を買ってくれるという話ならわかるが、逆だ」
と。
私も親バカだった。
息子たちに怒れるというよりは、自分に怒れた。
心底、自分に怒れた。
何日か眠れない日がつづいた。
が、それが終わると、私の心はさっぱりとしていた。
息子たちの姿が、心の中から消えていた。
はやし浩司、満62歳にして、子離れ完成、と。
それをワイフに話すと、ワイフは、こう言って笑った。
「あなたも、やっと気がついたのね」と。
(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司
BW はやし浩司 子離れ 親離れ 依存性 甘えの構造 甘え 子どもへの依存性 老
●親バカにならないための10か条
(1)必要なことはしろ。しかしやり過ぎるな。
(2)求めてきたら、与えろ。先回りして与えるな。
(3)一度は、頭をさげさせろ。「お願いします」と言わせろ。
(4)子どもに期待するな。甘えるな。
(5)親は親で、自分の人生を生きろ。子どもに依存するな。
(6)社会人になったら、現金は、1円も渡すな。
(7)嫁や婿の機嫌を取るな。嫌われて当然と思え。
(8)自分の老後を冷静にみろ。無駄な出費をするな。
(9)遺産は残すな。自分たちで使ってしまえ。
(10)少なくとも子どもが高校生になるころには、子離れを完成させろ。
何を隠そう、私も、その親バカだった。
「超」をつけてもよいほどの、親バカだった。
ハハハ……と笑って、ここはごまかす。
【3】(近ごろ、あれこれ)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
休みます。
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.みなさん、次号で、またお会いしましょう!
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2010年5月12日水曜日
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