2009年9月18日金曜日

*Successful Aging and Productive Aging

●離脱と活動

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先日、ある会場で、退職者を対象にした講演会があった。
その中で、講師(75歳くらい)が、こう言った。
「老後になったら、生活をコンパクトにすることが大切です」と。

「コンパクト」とは、つまり、「身辺の整理をし、住む世界を小さくしろ」ということ。
一理あるが、私は、ふと考えた。
「どうしてコンパクトにしなければならないのか」と。

つまりその講師の説いたのは、「離脱理論」のひとつということになる。
たしかにそういう部分はないわけではない。
行動範囲も狭くなる。
思考力も低下する。
運動能力も衰える。
それに合わせた環境づくりは、欠かせない。

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●「老齢」と「老化」

 私たちはみな、例外なく、歳をとる。
それを「老齢」という。
英語では、「エイジング(Aging)」という。
しかし「老齢」イコール、「老化」ではない。
歳をとったからといって、ジジ臭くなることはない。
ババ臭くなることはない。

 そこで登場するのが、離脱理論と活動理論。

 老齢期に入ったら、社会から離脱していく。
そのための理論が、「離脱理論」(カミング・ヘンリー)(「心理学用語」渋谷昌三)。

 一方、老齢期に入っても、それまでと同じように、あるいはさらに活動的に生きていく。
そのための理論が、「活動理論」(フリードマン・ハヴィガースト)(「心理学用語」渋谷昌
三)。

 日本でいう、「退職後は、庭いじりと孫の世話」というのは、まさに離脱理論ということになる。

●サクセスフル・エイジング

 しかし老齢期に入ったら、どうしてそれまでの生き方を変えなければならないのか。
渋谷昌三氏の「心理学用語」の中に、こんな参考になる表現がある(同書・かんき出版)。

(1) サクセスフル・エイジング(Successful Aging)(成功した老齢期)
(2) プロダクティブ・エイジング(Productive Aging)(生産的な老齢期)

 自分なりに、この2つを解釈してみたい。

 老齢期は、それまでの人生の積み重ねの結果としてやってくる。
その(結果)をみれば、成功・失敗が、わかる。
(どういう状態を成功といい、どういう状態を失敗というかは、それぞれに、いろいろな考え方がある。)
恐らくサクセスフル・エイジングというのは、それなりにのんびりと、優雅に暮らすことができる老後をいうのだろう。
「老化の過程にうまく適応して、幸福な老後を送ること」(同書)とある。

 それに対して、「老齢期こそ、もっと活動的に生きよう」というのが、プロダクティブ・エイジングということになる。

●プロダクティブ・エイジング

 プロダゥティブ・エイジングといえば、すぐさま頭に思い浮かぶのが、「統合性の確立」。これについては、たびたび書いてきた。
で、今回は、それはさておき、もっと日常的なレベルで、プロダクティブ・エイジングを考えてみたい。
つまりどうすれば、私たちは老齢期を、さらに生き生きと生きることができるか、と。

「高齢者が社会の中で、いかに生産的に生きるか」(同書)と。

 少し前、日本のおバカ首相が、こう言った。
「高齢者は、働くしか才能がない」と。
恐らく、「高齢者は、働くしか能(のう)がない」と言うべきところを、「才能」と言ったのだろう。
あの人の国語力は、小学生程度(?)。
「才能」でも「能」でもよいが、これほど私たちの年代の者を怒らせた言葉はない。

私たち自身が、「働くしか能がないので……」と言うのは、構わない。
もっと言えば、「国民年金など、アテにならないから、死ぬまで働くしかない」。
しかしそれを他人、なかんずく首相に言われると、腹が立つ。

 が、怒ってばかりいてはいけない。
私たちは、プロダクティブに生きてこそ、老齢期を乗り越えることができる。

●では、どうすればよいのか

 重要なのは、「社会」と、接点を保つこと。
仕事をするのがいちばんよいが、ボランティア活動、近隣づきあい、地域活動などなど。
その中から、(自分ができること)(自分がすべきこと)を見つけながら、それを昇華させていく。

 私のばあいは、仕事第一に考えている。
「社会」というより、「子どもたち」との接点を失ったら、私は私でなくなる。
それが自分でもよくわかっている。

 そのためにどうするか。
それが現在の思考、行動の原点になっている。
つまりその上で、原稿を書き、人生を考える。
こうしてパソコンに文章を叩き出すのも、そのひとつ。
書くのが楽しいというよりは、頭の中にあるモヤモヤを吐き出す。
吐き出したときの爽快感には、格別なものがある。

 それにもうひとつ目標がある。
こうして書くことによって、脳みその健康を維持する。
同時に、「精進(しょうじん)」。

 もともと私の素性はよくない。
自分でも、それがよくわかっている。
だからそういう自分に、言い聞かせるために書く。
「これをしろ」「これをしてはいけない」と。
一日でも油断すると、私の人間性は、即、後退に向かう。

 こうした方法が、みなに効果的とは思わないが、しかしそれぞれがそれぞれの環境の中で、プロダクティブ・エイジングを目指す。
そうすれば、若い人たちの私たちを見る目も変わってくるだろう。
同時に、社会に、大きく貢献できる。

 けっして老齢イコール、老化と考えて、自分自身までコンパクトにしてはいけない。

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●ニューロンとシナプス

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「脳のからくり」(茂木健一郎・新潮文庫)によれば、
脳の中には、1000億個のニューロン(神経細胞)があるという。
その1個ずつのニューロンから、細長いひものような神経突起が、
約1万本も伸びているという。
そしてその神経突起どうしが、「手をつないでいる部分」(同書)を、
シナプスという。
1000億個のニューロンが、1万本ずつの神経突起を伸ばしているから、
そのためシナプスの数は、なんと1000兆個にもなるという。

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(ニューロン)……(神経突起)……(シナプス)。

 わかりやすくチャート化すると、こうなる。
それにしても、1000兆個というのは、すごい!
こうしたニューロンが私たちの知覚、行動、思考をコントロールしている。

 で、興味深いことは、こうしたニューロンは、パソコンのメモリーと同じように、(プラス)(マイナス)の単純なスイッチでできているということ。
そういう点では、脳の構造とパソコンの構造は、たいへんよく似ている。
そこで計算してみよう。

 メモリーの基本的単位になっているのが、GB(ギガバイト)。
現在(2009)、2~4GBのSDメモリーや、USBメモリーが、1000円前後で売られている。

 1GBは、約11億バイト(10億7374万1824バイト。
1GBは、1024メガバイト。
つまり10の9乗。)

 数字が複雑なので、ここでは1GBを10億バイトとして計算してみる。
すると、人間の脳の中にあるシナプスの1000兆個を、10億個で割ってみると、人間の脳は、100万GBということになる。
(1000万÷10で計算すればよい。)
 
 100万GBというと、今では1テラバイト(=1000GB・10の12乗バイト)のハードディスクさえ売りに出ているから、その1テラバイトのハードディスクで計算してみると、こうなる。

 100万GB÷1000GB=1000!

 つまり1テラバイトのハードディスクを、1000個つなげると、人間の脳の中にあるシナプスと同じ数になる!
この1000個を、多いとみるか少ないとみるか?
意見の分かれるところだが、私は、「いよいよここまで来たか!」と驚く。

 1テラバイトのハードディスク(価格は、現在8000円前後)を、1000個つなげると、人間の脳と同じになる!
1000個というと、たいへんな数だが、しかし不可能な数ではない。
あと5年もすれば、10テラバイト、さらに10年もすれば、100テラバイトの記憶媒体が生まれるだろう。
そうなれば、小さな記憶媒体の中に、人間の脳をそのままコピーすることも可能になる。

 もっとも人間の脳のばあい、すべてのニューロンが活動しているわけではない。
実際、活動しているのは、3分の1程度とも言われている。
さらに今、意識している部分についていえば、数10万分の1とも言われている。
だから、仮に100テラバイトの記憶媒体が生まれれば、それでじゅうぶんということになる。

 もっとも神経突起は、言うなれば蜘蛛の巣状に脳の中で入り組んでいる。
それをひとつずつ取り出して、記憶媒体にコピーするというのには、別の問題もある。
しかしコンピュータに、人間の脳と同じ働きをさせることは、それで可能になる。
おもしろいというより、恐ろしい(?)。

 『脳のからくり』を読みながら、本文とは別に、そんなことを考えた。
(090918)

(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 BW はやし浩司 シナプス ニューロン 1GB 1TB)


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