2010年1月29日金曜日

*0~7 months Babies

●臨界期(0歳~7か月ごろ)

++++++++++++++++++

生後直後から、約7月前後までの期間を、
「臨界期」という。

この臨界期には、特別の意味がある。

++++++++++++++++++

●特別な時期

 哺乳動物の神経細胞は、外界からの刺激で大きく、機能を変える。
最近このことが、最近あちこちでよく話題になる。
とたえば人間にも、鳥類に似た、「刷り込み(インプリンティング)」があることがわかっている。
そのためこの時期に、とくに母子関係において、濃密な人間関係ができる。
が、その一方で、一部の神経細胞への刺激を遮断したりすると、その神経細胞は機能しなくなるとも言われている(注※)。
まさか人について、人体実験をするわけにはいかないので、あくまでも動物実験での話ということだが・・・。

 たとえば生後直後のマウスの片目を、何らかの方法で塞(ふさ)いでしまったとする。
するとその目は、やがて見るという機能を失ってしまう。
そればりか、ある一定の時期を過ぎると、今度は、その塞いでいたものを取り除いても、目の機能は回復しない。
視力は失ったままとなる。

 さらにこんな事実もある。
「野生児」と呼ばれる子どもたちが、今でも、ときどき発見される。
何らかの理由で、生後まもなくから人間のそばを離れ、野生の動物に育てられた子どもである。
インドのオオカミ姉妹(少女)が有名である。

 オオカミ姉妹のばあいも、そのあと手厚い保護、教育を受けたのだが、人間らしい(心)を取り戻すとはできなかったという。
つまり脳のその部分の機能が、停止してしまったということになる。
「停止した」というよりは、「退化してしまった」ということか。

 そういう意味で、「臨界期」には、特別な意味がある。
またそれだけにこの時期の子どもの教育には、重大な関心が払わなければならない。
近年話題になっている、乳幼児~1歳前後までの早期教育の科学的根拠も、ここにある。

 ほかにも乳幼児には記憶がないというのは、とんでもない誤解。
この時期、子どもは周囲の情報を、まさに怒濤のごとく記憶として脳の中に刻み込んでいる(ワシントン大学・メルツォフ教授ら)。

 さらに最近の研究では、あの乳幼児のほうからも、親に働きかけをしていることまでわかってきた。
つまり自らを(かわいく)見せ、親の関心を引こうとする。
乳幼児が見せる、あの「エンゼル・スマイル」も、そのひとつと言われている。
潜在意識、もしくは本能の奥深くでなされる行為のため、もちろん乳幼児がそれを意識的にしているわけではない。
一方、親は親で、そういう乳幼児の姿を見て、いたたまれない気持ちに襲われる。
「かわいい」という感情は、まさにそういう相互作用によって生まれるものである。
こうした相互の働きかけを「相互アタッチメント(mutual attachmennt)」という。

●さらに一歩進んで・・・

 臨界期の存在は、近年になってつぎつぎと発見されてきた。
今では、それを疑う人はいない。
常識と考えてよい。

 が、さらに研究は、一歩、進んだ。
「毎日・JP」は、つぎのように伝える。

『・・・生後直後の特別な時期「臨界期」の後でも、機能変化を起こすことを理化学研究所の津本忠治チームリーダー(神経科学)らが発見した。脳の成長の仕組みを見直す成果で、人間の早期教育論にも影響しそうだ。米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」で27日発表した』(10年1月)と。

 もう少し詳しく読んでみよう。

『・・・ チームは臨界期中と臨界期後のマウスで目隠し実験をし、大脳皮質の視覚野で、ものの細部を見る役目を担う「興奮性細胞」と、輪郭をとらえる「抑制性細胞」の活動を個別に計測した。結果、臨界期中マウスは両細胞とも、ふさいだ目側の反応が落ちた。臨界期後のマウスは興奮性細胞は変化しなかったが、抑制性細胞は臨界期中マウスと同様に反応が落ちた。抑制性細胞は臨界期後も機能が変わる証拠という。

 津本チームリーダーは「大脳は臨界期後も一定の発達が可能ということを示せた。マウスの視覚野での実験だが、人間を含む他の動物や脳のほかの機能でも同様の仕組みがあるのではないか。臨界期を人間の早期教育の根拠とする意見もあるが、それを考え直す契機にもなるだろう」としている』と。

 つまり臨界期に機能を失った脳の神経細胞でも、何らかの訓練をすれば(?)、機能を回復することもあるという。
「海馬などの一部の神経細胞以外は、再生されることはない」という定説をひっくり返す研究として、注目される。

●補記

 ただし神経細胞の再生を、そのまま喜んではいけない。
それでよいというわけではない。
もし脳の神経細胞が、ほかの細胞と同じように、死滅→再生を繰り返していたら、人間は性格、性質、人格など、こと「精神」に関する部分で、一貫性を失うことになる。
「10年前の私と、今の私は別人」ということになったら、社会生活そのものが混乱する。
従来の定説によれば、一度できた神経細胞は、死滅する一方で、再生しない。
だからこそ、私たちは、子ども時代の性格や性質、さらにはクセまで、おとなになってからも残すことができる。
20年前、30年前の知人とでも、安心して会話を交わすことができる。

 この論文でいう「再生」というのは、あくまでもごく限られた範囲での、しかも何らかの治療を目的とした「再生」と考えるべきである。

 さらに一歩進んでいえば、脳は硬い頭蓋骨に包まれている。
つまり脳ミソが入る容量には限界がある。
神経細胞だけを、どんどんとふやすということは、物理的にも不可能である。

(注※)
『思考など高度な機能を担う脳の「大脳新皮質」で、成体でも神経細胞が新たに作られることを、藤田保健衛生大、京都大、東京農工大などの研究チームがラットで見つけた。成熟した個体では脳の神経細胞が増えることはないと長い間信じられ、論争が続いていた。米科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」(電子版)に27日、掲載された。

 近年、記憶に関連する海馬や嗅(きゅう)覚(かく)をつかさどる部位で神経細胞の新生が確かめられたが、哺乳(ほにゅう)類などの高等動物ほど発達している大脳新皮質については明確な報告がなかった。

 藤田保健衛生大の大平耕司助教(神経科学)らは、人間の30~40歳にあたる生後6カ月のラットの大脳新皮質で、一番外側の第1層に、分裂能力を示すたんぱく質が発現した細胞を見つけた。頸(けい)動脈を圧迫して脳への血流を一時的に少なくしたところ、この細胞が約1・5倍に増え、新しい細胞ができた。

 新しい細胞は、形状から神経細胞と確認。第1層から最深部の第6層まで7~10日かけて移動する様子が観察できた。このラットを新しい環境に置いて活動させたところ、新しい細胞が活発に働いていることも確かめた。

 これらのことから、成体ラットの大脳新皮質には、やがて神経細胞になる「前駆細胞」が存在し、神経細胞が危機にさらされると神経細胞が生み出されて働くと結論付けた。チームは、ヒトでも同様の仕組みがあると推測している。

 神経細胞は興奮性と抑制性の両方がバランスよく働いているが、この新しい神経細胞は抑制性だった。大平助教は「薬などで前駆細胞の働きを制御して抑制性の神経細胞を作り出すことで、興奮性の神経細胞が過剰に働くてんかんや、一部の統合失調症の新たな治療法が見つかるかもしれない」と話す』(以上、毎日・JPより)と。

(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 BW はやし浩司 神経細胞 臨界期 はやし浩司 臨界期 乳幼児 乳幼児の記憶 刷り込み 神経細胞の再生 臨界期の重要性 早期教育 科学的根拠)


Hiroshi Hayashi++++++++Jan.2010+++++++++はやし浩司

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。