【疑わしきは罰する】(はやし浩司 2012ー04-14)
●映画『バトルシップ』を見て、ダイワロイネットホテルに1泊
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
数日前、映画『スーパーチューズディ』を見てきた。
大統領選挙を裏側から描いた映画。
が、だれがどう見ても、あの映画は、クリントン元大統領がモデル?
あるいはクリントン元大統領のスキャンダルから、発想を得た映画?
映画を見ながら、そんなことを考えた。
主役の大統領候補は、アーカンソー州の州知事。
クリントン元大統領も、アーカンソー州の、元知事。
年齢設定も、ほぼ同じ。
「大統領といっても、あんなものだろうな」と思いながら、映画を見た。
で、今夜は、仕事が終わってから、『バトルシップ』を見てくる。
午後9時20分始まりの、深夜劇場。
帰りが遅くなるので、市内のビジネスホテルに一泊する。
帰りは、明日の朝。
楽しみ。
書き忘れたが、『スーパーチューズディ』は、星2つの★★。
ボケ予防には、よい映画。
が、あえて劇場まで足を運んでまで見るような映画ではない。
娯楽映画というよりは、将棋かチェスの名局をのぞくような映画。
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
●弱み
『スーパーチューズディ』は、大統領候補と、若い選挙参謀との間に繰り広げられる、確執と陰謀の映画。
最後は、若い選挙参謀が、大統領候補のスキャンダルを利用し、逆に大統領候補を操るようになる。
一見、ありえない映画に見えるが、現実には、ありえる。
ふつうの常識では考えられない世界だが、ありえる。
私の知人にこんな人がいた。
これから私がここに書くことは、内容的には、事実である。
●X氏
X氏。
職業は不詳としておく。
ただし当時、1日、100万円前後の現金収入のある、実業家だった。
名声もあった。
昼のワイドショーにも、よく顔を出していた。
年齢は、45歳前後(当時)。
住所は、某県の某市としておく。
現在、その遺族も、1人、その某市に住んでいる。
私は当時(1970年代の中ごろ)、そのX氏のゴーストライターをしていた。
ゴーストライターという職業(?)の中身については、もう少しあとに書くことにする。
それはともかくも、そのX氏が、ある夜、無免許で車を運転し、当時50歳くらいの女性を、横断歩道ではねてしまった。
そこでX氏は、そのままその女性を、知り合いの病院へ運んだ。
幸い、けがはたいしたことはなかった。
X氏は、示談で話をつけようとした。
私の記憶によれば、被害者の女性に、500万円という金額を提示したと思う。
(1970年代の中ごろには、500万円もあれば、家が1軒、買えた。
この金額については、事実。)
で、そのときX氏は、同時に、秘書をしていたY氏を病院へ呼びつけ、Y氏に身代りになるように頼んだ。
Y氏は、それに応じた。
そのあたりのいきさつには、いろいろあった。
話せば長くなる。
が、ともかくも、そういうことになった。
つまりこうしてX氏は、その女性には500万円を渡し、他方、Y氏に身代りになってもらうことで、自分が起こした交通事故を、闇に葬った。
●前科
それから30年あまり、たってからのこと。
ちょうど今から1年前。
X氏には、もう1人、運転手として使っていた秘書がいた。
この人物を、Z氏としておく。
私より、3~4歳、年上である。
そのZ氏と、偶然、本当に偶然、浜松駅で出会った。
「おや」「まあ」と。
そのあと、話がはずんだのは、言うまでもない。
私たちは、そのまま駅前のホテルのロビーに向かった。
で、そこで聞いた話は、こうだった。
Y氏は、X氏の身代りになり、そのあと、某市にある交通刑務所に入所した。
ちょうど1年間、いたそうだ。
どうして1年間になったかは知らないが、Y氏には前科があった。
それが刑を予想外に重くしてしまったらしい。
Y氏も、1年もいるつもりはなかった。
罰金刑程度ですむと思っていたらしい。
で、それについて、Z氏はこう話してくれた。
「そこでX氏はね、1年間服役してくれたら、土地付きの家を買い与えると約束したんだよ」と。
事実、その直後、X氏は、Z氏の妻に、土地付きの家を買い与えている。
私も一度だけだが、その家を訪ねたことがある。
映画『スーパーチューズディ』と比べると、何ともお粗末、かつチャチな話。
スケールも小さい。
が、現実には、そんな話もある。
(なお、念のために申し添えるなら、X氏は、私が30歳前後のとき、火災事故で死している。
また身代りで交通刑務所へ入ったY氏は、その後、詐欺商法に手を染め、数年間服役したあと、2000年ごろ、死去している。)
だから映画『スーパーチューズディ』を見て、「あんなことはありえない」と思う人も多いかと思う。
大統領候補ともあろう人物が、自分の弱みを握っている部下と、いっしょに仕事ができるだろうか、と。
あるいはその(弱み)にいつも、ビクビクしながら、仕事ができるだろうか、と、
が、現実には、できる。
その1例として、X氏の話をここに書いた。
●ゴーストライター
ゴーストライターというのは、その人物の幽霊(ゴースト)になり、原稿を書く。
自分の魂を削って、それをお金に換える。
が、そのとき、徹底した不文律がある。
ゴーストライターは、けっして、またどんなことがあっても、名乗り出てはいけない。
「魂を売る」ということは、そういうことをいう。
原稿を書く方法は、いろいろある。
インタビュー形式で話を聞きながら、本にまとめる。
いろいろな資料をまとめて、本にまとめる。
テープレコーダーに吹き込んだ声を、原稿に起こす。
あるいは他人の古い本を種本にし、別の新しい本を書く。
X氏は、生前、30冊近い本を書いた。
が、そのうち自分で書いた本は、ほんの数冊。
あとは、私のようなゴーストライターが書いた。
ゴーストライターは、私のほかにも、2人、いた。
映画『スーパーチューズディ』の中にも、大統領候補の原稿を書く男が登場する。
彼もゴーストライターということになる。
が、このゴーストライターという仕事は、直接、その人物の胸中に潜り込むことになる。
必然的にそうなる。
そのため、その人物の私生活そのものに、どっぷりとつかってしまうことも、少なくない。
その人物の、他人に知られたくない話まで、知ることもある。
……というより、またそこまで踏み込まないと、よい本は書けない。
私が、Y氏が、X氏の身代りになったという話は、そういう仕事をしている過程で知った。
(突如として、有名人なる人物(?)が、本を書いてマスコミの話題になることがある。
そうして出てきた本は、たいていは、ゴーストライターによって書かれたものと思ってよい。
あるいはまったく畑ちがいの人が、本を書くときもある。
それもそうだ。
なお現在は知らないが、当時は、ゴーストライターは、本1冊につきいくら……というようなお金のもらい方をした。
ときどき共著という形で、印税を折半することもあった。
あるいは「取材」という形で、2~3週間、海外へ旅行させてもらうこともあった。)
●映画『バトルシップ』
少し前、劇場から帰ってきた。
今、その近くにある、ダイワロイネットホテルの11階の1室にいる。
『バトルシップ』。
日米合作映画というよりは、くすぐったいほど、日本人向けの映画。
1人の日本人自衛官が、活躍する映画。
おもしろかった。
が、あの類の映画は、見飽きた。
宇宙人がある日、地球へやってくる。
それを地球人(人間)が、迎え撃つ。
大筋で言えば、そういう映画。
星は2つの、★★。
巨費を投じて制作した映画……ということだが、私にはよくわからない。
すごい映画とは思うが、「すごい」だけで終わってしまった。
理由がある。
もし本当に宇宙人がいるなら、あんな方法で、地球人を攻撃することはない。
攻撃するにしても、もっと別の方法を使うはず。
……そんなことをいろいろ考えながら見ていたら、興が冷めてしまった。
だから星は、2つ。
……ということで、今夜はここまで。
疲れた。
眠い。
(これは映画を見る人のための前知識。
念のため。
あの映画に出てくる宇宙人は、悪人ではない。
人間がしたのと同じ程度のことを、逆にしているだけ。
いきなり地球へやってきて、地球攻撃を始めるわけではない。
ある日突然、自分たちの住む惑星が、地球からの強力な電波で、破壊される。
物語は、そこから始まる。)
●4月14日
14日は、午前5時に目が覚めてしまった。
クーラーの風が、気になってしかたなかった。
それで目が覚めてしまった。
しばらくがんばってみたが、ギブアップ。
起きあがって、窓に向いた椅子に座った。
白湯を飲んだ。
カーテンを50センチほど開くと、白々とした朝の景色が飛び込んできた。
霧のような細かい雨が降っていた。
境目のない低い雨雲が、すぐ上まで迫り、地平線も、白くかすんでいた。
JR浜松駅は、すぐ目の前だが、この時間だと、動く電車もない。
静かな、それでいて殺風景な景色。
そんな風景をぼんやりとながめていると、ワイフも起きてきた。
同じ方向を見ながら、こう言った。
「あら、あんなところに赤い花が咲いている」と。
身を起こしてみると、中央分離帯のところどころに、赤い花が咲いていた。
「ツツジかな?」と、私は思った。
●都会生活
都会生活……一言で表現すれば、「隙間がない」。
ビルとビルの間は、1センチ単位で、仕切られている。
区切られている。
その分だけ、「遊び」がない。
ちょっと座って、寝転んで……ということができない。
人工的に植林された樹木も、ところどころに見える。
が、あくまでも人工的。
いかにも人工的。
何かの動物がいる気配は、もちろん、ない。
その余裕のなさが、息苦しくする。
都会に住んでいる人には、それがわからないかもしれない。
しかしこういうところに長く住んでいたら、人間性も、大きく影響を受けるにちがいない。
たとえばこのホテルの一室。
ガラス窓の外へ、一歩、足を踏み出すこともできない。
つまり他者との融合性がない。
言い換えると、人と人とのつきあいの中で生まれる、文化が育たない。
土着的な文化が育たない。
たとえばこの街中の中心部では、土日になると毎週のように、音楽会が開かれたり、物産店が並ぶ。
しかしいくらそれを繰り返しても、大地になじまない。
大地そのものが、ない。
今朝の雨のように、地面にしみこんでいかない。
それだけではない。
教育の世界には、「カプセル家族」という言葉がある。
小さなカプセルのような閉ざされた家庭環境で、子どもを育てると、育て方そのものが極端化する。
同じ過保護でも、行きすぎた過保護になるなど。
こうしたホテルに住むのもそうだ。
(ホテルに住む人はいないが……。)
ものの考え方が、極端化する。
その心配は、じゅうぶん、ある。
……やはり、私は田舎人間。
「住め」と言われても、とてもこんなところには、住めない。
こういうところに来てみると、それがよくわかる。
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
以前、中日新聞につぎのような記事を書いた。
「流産率が、39%」という原稿が、それである。
たいへんな反響を呼んだ記事である。
それが予想できたから、私は研究者本人から、
わざわざ研究論文を取り寄せ、この原稿を書いた。
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
●流産率が、39%
よく高層住宅の子どもに与える心理について、話題になる。
その影響はあるのか。ないのか。
それについては、こんなショッキングな調査結果がある。
妊婦の流産率について調べたものだが、10階以上の高層住宅に住む妊婦の流産率が、何と、39%もあるというのだ(東海大学医学部・逢坂氏、「保健の科学」第36巻1994別冊)。
6階以上では、24%、1~5階は5~7%。10階以上では、39%。
流・死産率でも6階以上では、21%(一戸建ても含めて、全体では8%)、と。
マンションなど集合住宅に住む妊婦で、マタニティブルー(うつ病)になる妊婦は、一戸建ての居住者の4倍(国立精神神経センター・北村氏)という調査結果もある。母親ですら、これだけの影響を受ける。いわんや子どもをや、と考えるのが妥当ではないのか。
●多い神経症的傾向
逢坂氏は、「(高層階に住む妊婦ほど)、妊婦の運動不足に伴い、出生体重値の増加がみられ、その結果が異常分娩に関与するものと推察される」と述べている(同論文)。
つまりこの問題は、妊婦の運動不足と関係があるというわけである。
が、問題はつづく。高層住宅の高層部に住む母親ほど、神経症的傾向を示す割合が、多いという。
集合住宅の1~2階で、10・2%であるのに対して、6階以上になると、13・2%にふえる。(一戸建てで、5・3%。)
さらに逢坂氏は、喫煙率も同じような割合で、高層階ほどふえていることを指摘している。
たとえば集合住宅の1~2階で、11・4%。3~5階で、10・9%、6階以上になると、17・6%。(一戸建てで、9・0%。)
●運動と心のケア
高層住宅というのは、高層になればなるほど、視野が広がり、開放感があると考えられがちである。
しかし実際には、ガラス1枚をへだてて、その向こうは、大絶壁。
そのため長く住んでいると、閉塞感が蓄積するのではないかと考えられる。
そこで高層階に住む人ほど、外出の機会をふやし、のぼりおりの回数をふやすなどの運動が必要ということになる。
子どもについて言えば、戸外活動を、より頻繁に行うということも大切かもしれない。
で、これは私のあくまでも個人的な実感だが、高層住宅だからといって、子どもに心の問題が起きるわけではない。しかしひとたび何か問題が起きると、高層住宅に住む子どもほど、症状は急速に悪化し、また立ちなおるのに、より時間がかかるように思う。
母親も、子どもも、決して、部屋の中に、とじこもってしまってはいけない。
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
この「流産率が、39%」を書くきかっけとなったのが、つぎの原稿である。
改めて、子どもの世界を別の角度から、考えなおしてみたい。
2000年ごろ書いた原稿なので、現状にややそぐわない部分もあるかもしれない。
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
●『疑わしきは罰する』(中日新聞発表済み)
今、子どもたちの間で珍現象が起きている。
四歳を過ぎても、オムツがはずせない。幼稚園や保育園で、排尿、排便ができず、紙オムツをあててあげると、排尿、排便ができる。
六歳になっても、大便のあとお尻がふけない。
あるいは幼稚園や保育園では、大便をがまんしてしまう。
反対に、その意識がないまま、あたりかまわず排尿してしまう。
原因は、紙オムツ。
最近の紙オムツは、性能がよすぎる(?)ため、使用しても不快感がない。
子どもというのは、排尿後の不快感を体で覚えて、排尿、排便の習慣を身につける。
このことをある雑誌で発表しようとしたら、その部分だけ削除されてしまった(M誌88年)。
「根拠があいまい」というのが表向きの理由だったが、実はスポンサーに遠慮したためだ。
根拠があるもないもない。
こんなことは幼稚園や保育園では常識で、それを疑う人はいない。
紙オムツをあててあげると排尿できるというのが、その証拠である。
……というような問題は、現場にはゴロゴロしている。
疑わしいが、はっきりとは言えないというようなことである。その一つが住環境。
高層住宅に住んでいる子どもは、情緒が不安定になりやすい…?
実際、高層住宅が人間の心理に与える影響は無視できない。こんな調査結果がある。
たとえば妊婦の流産率は、6階以上では24%、10階以上では39%(1~5階は5~7%)。流・死産率でも6階以上では21%(全体8%)(東海大学医学部逢坂氏)。
マンションなど集合住宅に住む妊婦で、マタニティーブルー(うつ病)になる妊婦は、一戸建ての居住者の四倍(国立精神神経センター北村俊則氏)など。
母親ですら、これだけの影響を受ける。いわんや子どもをや。
さらに深刻な話もある。
今どき野外活動か何かで、真っ黒に日焼けするなどということは、自殺的行為と言ってもよい。
私の周辺でも、何らかの対策を講じている学校は、1校もない。
無頓(とん)着といえば無頓着。無頓着過ぎる。
オゾン層のオゾンが1%減少すると、有害な紫外線が2%増加し、皮膚がんの発生率は4~6%も増加するという(岐阜県保健環境研究所)。
実際、オーストラリアでは,1992年までの7年間だけをみても、皮膚がんによる死亡件数が、毎年10%ずつふえている。日光性角皮症や白内障も急増している。
そこでオーストラリアでは、その季節になると、紫外線情報を流し、子どもたちに紫外線防止用の帽子とサングラスの着用を義務づけている。が、この日本では野放し。
オーストラリアの友人は、こう言った。
「何も対策をとっていない? 信じられない」と。
ちなみにこの北半球でも、オゾン層は、すでに10~40%(日本上空で10%)も減少している(NHK「地球法廷」)。
法律の世界では「疑わしきは罰せず」という。
しかし教育の世界では「疑わしきは罰する」。
子どもの世界は、先手先手で守ってこそ、はじめて、守れる。
害が具体的に出るようになってからでは、手遅れ。
たとえば紫外線の問題にしても、過度な日焼けはさせない。紫外線防止用の帽子を着用させる、など。あなたが親としてすべきことは多い。
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
ついでに『疑はしきは罰する』について
書いた原稿を、3作、載せる。
静岡県教育委員会発行の『ファミリス』という雑誌に、載せてもらった原稿である。
Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司
【1】
法律の世界では、「疑わしきは、罰せず」という。しかし教育の世界では、「疑わしきは、罰する」。
疑わしいものは、まず遠ざける。子どもに渡すものは、しっかりと安全が確認されてからでよい。そういう姿勢が、子どもの世界を守る。
●ゲーム脳
このところ、「ゲーム脳」という言葉が、よく話題になる。
ゲームづけになった脳ミソを「ゲーム脳」という。
このタイプの脳ミソには、特異的な特徴がみられるという。
しかし、「ゲーム脳」とは、何か。
『脳の中に、前頭前野という、さまざまな命令を身体全体に出す司令塔がある。
記憶、感情、集団でのコミュニケーション、創造性、学習、そして感情の制御や、犯罪の抑制をも司る部分である。
この司令塔が、ゲームや携帯メール、過激な映画やビデオ、テレビなどに熱中しすぎると働かなくなり、いわゆる「ゲーム脳」と呼ばれる状態になる』(日大大学院・森教授)と。
つまりゲームばかりしていると、管理能力全般にわたって、影響が出てくるというわけである。
このゲーム脳については、賛否両論があり、「ゲームをやっても脳が壊れてしまうことはない」と主張する学者(東北大学・川島教授)もいる。
が、私がここで書きたいのは、そのことではない。
●なぜ、抗議の嵐が?
この日本では、ゲームを批判したり、批評したりすると、ものすごい抗議が殺到する。
実は、私自身も経験している。
6年前に、『ポケモンカルト』という本を出版したときである。
上記の森教授らのもとにも、「多くのいやがらせが、殺到している」(報道)という。
考えてみれば、これは、おかしなことではないか。
ゲームにもいろいろあるが、どうしてそのゲームのもつ問題性を指摘しただけで、抗議の嵐が、わき起こるのか?
森教授らは、「ゲームばかりしていると、脳に悪い影響を与える危険性がありますよ」と、むしろ親切心から、そう警告している。それに対して、いやがらせとは!
●動き出した文科省
そこで文部科学省は、ゲームやテレビなどを含む生活環境要因が子どもの脳にどう影響を与えるかを研究するために、2005年度から1万人の乳幼児について、10年間長期追跡調査することを決めた。
この中で、ゲームの影響も調べられるという(「脳科学と教育」研究に関する検討会の答申)。
近く中間報告が、公表されるだろう。
が、しかしここで誤解してはいけないのは、「ゲームは危険でないから、子どもにやらせろ」ということではない。
「ゲームは、危険かもしれないから、やらせないほうがよい」と、考えるのが正しい。
とくに動きのはげしい、反射運動型のゲームは、避けたほうがよい。
【2】
●右脳教育ブームの中で
左脳は言語をつかさどり、右脳はイメージをつかさどる(スペリー)。
その右脳をきたえると、たとえば次のようなことができるようになるという(七田氏)。
ひらめき、直感が鋭くなる(波動共振)、
受け取った情報を映像に変えたり、思いどおりの映像を心に描くことができる(直観像化)、
見たものを映像的に、しかも瞬時に記憶することができる(フォトコピー化)、
計算力が速くなり、高度な計算を瞬時にできる(高速自動処理)など。
しかしこういう説に対して、疑問を投げかける学者も少なくない。目白大学の渋谷氏もその1人で、著書「心理学」の中で、こう書いている。
『なにやら、右脳のほうが、多彩な機能をもっていて、右脳が発達している人のほうが、すぐれているといわんばかりです。
一時巻き起こった、(現在でも信者は多いようですが)、「右脳ブーム」は、こういった理論から生まれたのではないでしょうか。
これらの説の中には、まったくウソとはいえないものもありますが、大半は科学的な根拠のあるものとは言えません』と。
●だから、どうなの?
ときどき、右脳教育の成果(?)として、神業的な能力を示す子どもが紹介される。
まさに神業。しかし「だからどうなの?」という部分がないまま、子どもにそういう訓練をほどこしてよいものか。
はたしてそれが能力と言えるのか?
昔、「一晩で百人一首を覚えたら、5000円あげる」と母親に言われ、本当に、一晩で暗記してしまった子どもがいた。
その子どもというのは、あの忌まわしい殺人事件を起こした、「少年A」である。
彼は専門家の鑑定により、「直観像素質者」という診断名がくだされた。
イメージの世界ばかりが、極端にふくらんでしまい、空想と現実の世界の区別がつかなくなってしまった子どもと考えるとわかりやすい。
●大切なのは、静かに考える子ども
右脳が創造性やイメージの世界を支配するとしても、右脳型人間が、あるべき人間の理想像ということにはならない。
むしろゆっくりと言葉を積み重ねながら(=論理)、他人の心を静かに思いやること(=分析)ができる子どものほうが、望ましい子どもということになる。
その論理や分析をつかさどるのは、右脳ではなく、左脳である。
で、今、その静かに考えることができる子どもが、むしろ減っているのではないか。
私は、個人的には、これだけ映像文化が発達しているのだから、あえて右脳を刺激しなくても、よいのではと考えている。
要はバランスの問題。右脳教育にせよ、左脳教育にせよ、いつもバランスを考えながらする。
【3】
●セロトニン悪玉説
「キレる子ども」については、諸説が飛び交っている。環境ホルモン説(シシリ-宣言、95年)に始まって、最近では、脳の微細障害説(上智大・福島教授)まである。
そのキレる子どもについて、昔から一因として指摘されているのが、「セロトニン悪玉説」である。
つまり脳間伝達物質であるセロトニンが異常に分泌され、それが毒性をもって、脳の抑制命令を狂わすという(アメリカ生化学者・ミラー博士ほか)。
アメリカでは、「過剰行動児」として、もう25年以上も前から指摘されていることだが、もう少し具体的に言うとこうだ。
たとえば白砂糖を多く含む甘い食品を、一時的に過剰に摂取すると、インスリンが多量に分泌され、それがセロトニンの過剰分泌を促す。
そしてそれがキレる原因となるという(岩手大学・大沢名誉教授、大分大学・飯野教授ほか)。
「脳内の血糖値の変動がはげしいと、神経機能が乱れ、情緒不安になり、ホルモン機能にも影響し、ひいては子どもの健康、学習、行動に障害があらわれる」(アメリカ小児栄養学・ヒュー・パワーズ博士)。
特徴としては、脳の抑制命令が変調するため、行動がカミソリでものを切るように、スパスパと鋭くなる。
小学生でいうと、突発的にキーキー声を出して、泣いたり、暴れたりする。
興奮したとき、体を小刻みに震わせることもある。
言動が、過剰になりやすいことから、「過剰行動児」(アメリカ)という。
●食生活の改善
そこでもしこういう症状が見られたら、まず食生活を改善してみる。
甘い食品を控え、カルシウム分やマグネシウム分の多い食生活に心がける。
リン酸食品も控える。リン酸は日もちをよくしたり、鮮度を保つために多くの食品に使われている。
リン酸をとると、せっかく摂取したカルシウムを、リン酸カルシウムとして、体外へ排出してしまう。
一方、昔からイギリスでは、『カルシウムは紳士をつくる』という。
日本でも戦前までは、カルシウムは精神安定剤として使われていた。
それはともかくも、子どもから静かな落ち着きが消えたら、まずこのカルシウム不足を疑ってみる。
ふつう子どものばあい、カルシウムが不足してくると、集中力がなくなり、筋肉の緊張感が持続できず、座っていても体をクニャクニャとくねらせたりする。
効果がなくても、ダメもと。「うちの子は、どうもキレやすい」と感じたら、海産物を中心とした献立に切りかえてみる。
その海産物(魚介類、海草類など)には、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどの94種類もの天然のミネラルが豊富に含まれている。
「肉よりは魚、チーズよりはワカメの入った味噌汁、菓子よりは干した小魚やコンブ」(マザーリング)を食べさせるとよい。
子どもによっては、たった1週間で、劇的に変化することもある。
【4】
●流産率が39%
よく高層住宅の子どもに与える心理について、話題になる。その影響はあるのか。
ないのか。
それについては、こんなショッキングな調査結果がある
。妊婦の流産率について調べたものだが、10階以上の高層住宅に住む妊婦の流産率が、何と、39%もあるというのだ(東海大学医学部・逢坂氏、「保健の科学」第36巻1994別冊)。
6階以上では、24%、1~5階は5~7%。10階以上では、39%。流・死産率でも6階以上では、21%(一戸建ても含めて、全体では8%)、と。
マンションなど集合住宅に住む妊婦で、マタニティブルー(うつ病)になる妊婦は、一戸建ての居住者の4倍(国立精神神経センター・北村氏)という調査結果もある。
母親ですら、これだけの影響を受ける。いわんや子どもをや、と考えるのが妥当ではないのか。
●多い神経症的傾向
逢坂氏は、「(高層階に住む妊婦ほど)、妊婦の運動不足に伴い、出生体重値の増加がみられ、その結果が異常分娩に関与するものと推察される」と述べている(同論文)。
つまりこの問題は、妊婦の運動不足と関係があるというわけである。
が、問題はつづく。高層住宅の高層部に住む母親ほど、神経症的傾向を示す割合が、多いという。
集合住宅の1~2階で、10・2%であるのに対して、6階以上になると、13・2%にふえる。(一戸建てで、5・3%。)
さらに逢坂氏は、喫煙率も同じような割合で、高層階ほどふえていることを指摘している。
たとえば集合住宅の1~2階で、11・4%。3~5階で、10・9%、6階以上になると、17・6%。(一戸建てで、9・0%。)
●運動と心のケア
高層住宅というのは、高層になればなるほど、視野が広がり、開放感があると考えられがちである。
しかし実際には、ガラス1枚をへだてて、その向こうは、大絶壁。そのため長く住んでいると、閉塞感が蓄積するのではないかと考えられる。
そこで高層階に住む人ほど、外出の機会をふやし、のぼりおりの回数をふやすなどの運動が必要ということになる。
子どもについて言えば、戸外活動を、より頻繁に行うということも大切かもしれない。
で、これは私のあくまでも個人的な実感だが、高層住宅だからといって、子どもに心の問題が起きるわけではない。
しかしひとたび何か問題が起きると、高層住宅に住む子どもほど、症状は急速に悪化し、また立ちなおるのに、より時間がかかるように思う。
母親も、子どもも、決して、部屋の中に、とじこもってしまってはいけない。
【5】
●紫外線対策を早急に
今どき野外活動か何かで、まっ赤に日焼けするなどということは、自殺的行為と言ってもよい。
中には、皮膚が赤むけになるほど、日焼けする子どももいる。
無頓着といえば、無頓着。
無頓着すぎる。
国立がんセンターの山本医師も、『海外旅行に行って、肌を焼いているのは、日本人の若者ぐらいです。
海外の皮膚がん研究者からは、「いったい日本は、どうなっているのだ?」と質問されることさえあります。
専門家にしてみれば、日本の若者がこぞって肌を焼く行為は、自ら命を縮めているに等しい行為なのです』(日経BP)と述べている。
紫外線で皮膚が傷つくわけだが、オゾンが10%の割合で減りつづけると、皮膚がんは、26%ふえ、紫外線が2%ふえると、皮膚がんは、3%ふえるとういう(UNEP99年)。
実際、オーストラリアでは、1992年までの7年間だけをみても、皮膚がんによる死亡件数が、毎年10%ずつふえている。
日光性角皮症や白内障も急増している。しかも深刻なことに、20代、30代の若者たちの皮膚がんが、急増しているということ。
そこでオーストラリアでは、その季節になると、紫外線情報を流し、子どもたちに紫外線防止用の帽子とサングラスの着用を義務づけている。
が、この日本では野放し。オーストラリアの友人は、こう言った。
「何も対策を講じていない? 信じられない」と。
ちなみに北極についても、1997年には、すでに30%も減少している。
●破壊される環境
日本の気象庁の調査によると、南極大陸のオゾンホールは、1980年には、面積がほとんど0だったものが、1985年から90年にかけて南極大陸とほぼ同じ大きさになり、2000年には、それが南極大陸の面積のほぼ2倍にまで拡大しているという。
北極についても、1997年には、すでに30%も減少している。
さらに2000年に入ってからは、地球温暖化の影響で、成層圏の水分や温度が変化。
極地方には、不気味なピンク色の雲が出現し、02年には、オゾンホールは、とうとうオーストラリアのタスマニアまで拡大。「上空オゾン層はさらに破壊、急拡大している」(NASA)という。
●疑わしきは罰する
法律の世界では、「疑わしきは、罰せず」という。しかし教育の世界では、「疑わしきは、罰する」。
子どもの世界は、先手、先手で守ってこそ、はじめて守ることができる。
害が具体的に出るようになってからでは、遅い。
たとえばここに書いた紫外線の問題にしても、警報が出たら、外出をひかえる。
過度な日焼けはさせない。
紫外線防止用の帽子、サングラス、長そでのシャツ、長ズボン着用させる。
サンスクリーンクリームを皮膚に塗るなど、あなたが親としてすべきことは多い。
Hiroshi Hayashi+++++++April. 2012++++++はやし浩司・林浩司
●帰宅
そろそろ帰宅。
ワイフが帰り支度を始めた。
が、私は何も手伝わず、こうしてのんびりと原稿を書いている。
そういう身分に感謝しながら、今朝のエッセーは、ここまで。
では、みなさん、おはようございます。
2012/04/14朝記
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Hiroshi Hayashi+++++++April. 2012++++++はやし浩司・林浩司
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