【子育てブルース】
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子育ての世界にも、人には言えない、
悲しい物語が、山のようにある。
それを口にしたら、おしまい……という
ような話もある。
今朝は、そんな物語について、書いてみたい。
ただしここに書く子どもの例は、架空の
話と考えてほしい。
何人かの子どもを、1人の子どもに仕立てて
書いてみた。
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●問題児?
その子ども(小2女児)には、まったく、問題はない。
むしろ聡明で、思考力も深い。
性格もおだやか。
とくに数に鋭い反応を示す。
が、母親(Mさん)は、会うたびに、その子どもについて、不平、不満を並べる。
そのたびに、私は、それを否定する。
が、母親は信じない。
信じようともしない。
何か言えば、すかさず、それについて反論する。
「あそこが、悪い。ここが悪い」と
この世界には、「代理ミュンヒハウゼン症候群」という言葉もある。
自分の子どもをわざと病人にしたて、その子どもを、かいがいしく世話をしてみせる。
よくできた母親を演じてみせる。
「私は子どもを愛しています」と、口ではよく言う。
しかしその実、何も愛していない。
自分の心の隙間を埋めるために、子どもを利用しているだけ。
(「代理ミュンヒハウゼン症候群」については、「はやし浩司 代理ミュンヒハウゼン」
で、検索をかけてみてほしい。)
が、それに似た事件となると、……というより、それを薄めたような事件となると、
程度の差もあるが、ゴマンとある。
それについて、ある精神科医のドクターは、こう教えてくれた。
「そのタイプの親は、(母親であることが多いが……)、見るからに様子がちがいますから、
わかります」と。
「見るからに」という言葉を使えるのは、それなりに多くの例を見てきたから言える。
ふつうの人には、わからない。
が、たしかに様子が、ちがう。
へん?
おかしい?
どこか挙動が不自然で、母親らしい(なめらかさ)がない。
いつもピリピリしていて、心に余裕が感じられない。
●Mさん(37歳)のケース
ここに書いたMさんは、毎日のように娘(小2)の心配ばかりしている。
「学校の参観日で見たが、手をあげなかった」
「声が小さかった」
「せっかく先生にさされたのに、隣の子に、先に答を言われてしまった」
「忘れ物をした」
「宿題をやらない」と。
少しでも顔色が悪いと、すぐ病院へ連れていく。
花粉症だったのだが、「レーザーで焼いてもらう」とか、「扁桃腺を切ってもらう」とか、
そんな話ばかり。
その女の子で特徴的だったのは、母親が近くにいるときと、いないときとでは、様子が
まるで別人のようにちがったこと。
母親がいるときは、静かでおとなしかった。
表情も暗かった。
が、母親がいないところでは、明るく快活で、いつもニコニコ笑っていた。
母親は、「子育てでたいへんです」と言いながら、Mさんが学校から帰ってくると、
一瞬たりとも、M子さんのそばから離れなかった。
●バカなフリ
一方、大きな問題をかかえているにもかかわらず、それにまったく気づいていない親も
多い。
気づかないまま、子どもを叱ったり、説教したりする。
あるいは幼稚園の先生に、「どうしてでしょう?」を繰り返す。
が、幼稚園の先生に、診断権はない。
またそれが判断できるようになるまでには、10年単位の経験が必要。
病名を出すのは、はばかれるが、しかしわかるものはわかる。
わかるのであって、どうしようもない。
「~~障害」と言われる子どもたちである。
AD・HD児にしても、自閉症児にしても、私のばあい、会った瞬間にわかる。
が、もちろん病名を口にするのは、タブー。
タブー中のタブー。
わかっていても、わらないフリをして、……つまり無知なフリ、もっと言えば、
バカなフリをして、相談に乗る。
しかし、ここで問題が起きる。
●たとえばLD児
LD児、つまり学習障害と言われる子どもたちがいる。
症状は、みな、ちがう。
ちがうが、ある一定のワクの中で、定型化される。
読み書きのできない子ども、算数がとくに苦手な子ども、集中力に欠ける子どもなど。
が、平たく言えば、学習面において、著しい「遅れ」を示す。
最近の定説に従えば、脳の機能的な問題がからんでいるため、教育の世界で
改善を求めるのは、容易なことではない。
たとえば識字障害児と呼ばれる子どもがいる(注※)。
難読症、失読症が含まれる。
出現率は、10%前後と言われている。
10人に1人。
このタイプの子どもは、文字そのものを読み取ることができない。
そのためその影響は、あらゆる面に現れる。
が、親にはそれがわからない。
「算数の文章題を、読みまちがえてばかりいます」
「本を読みません」など。
そういう子どもをもつ親から、「どうしたら国語ができるようになりますか」という
相談をもらう。
指導の方法がないわけではない。
が、簡単には、できるようにならない。
そこであれこれ方法を教える。
が、1、2週間もすると、(たったの1、2週間!)またやってきて、こう言う。
「先生、効果、ありませんでした」と。
●X君
もう1人、記憶によく残っている子ども(中学・男児)に、X君がいた。
学校でも、評判の(?)子どもだった。
で、その子どもを含めて、自宅で、4~5人だけのクラスをもったことがある。
しかし半年もしないうちに、X君だけをのぞいて、みな、やめてしまった。
「あんなX君といっしょでは、いやだ」と。
小さな地域である。
小学生活6年間をともに過ごしている。
みな、それぞれ、それぞれの子どもの能力をよく知っている。
で、そのあとX君は、3年間、私の家に通ってくれた。
いつもひとりだった。
で、何とか、それなりの高校に進学していったが、それでX君が私に感謝したかというと、
それはない。
もともと勉強が嫌いだった。
やっと少し追いついたかと思っても、学校の勉強は、さらに先へと進んでいた。
つまり「親が行け」というから、私の教室に通ってきただけ。
毎週、毎週、重い足を引きずりながら、私のところへ来ていた。
それが私にも、よくわかった。
そういうケースもある。
●私の経験
私もいろいろな「波」を経験した。
ある時期は、市内でもゆいいつと言われる進学校の子どもたちばかりになったこともある。
また別のある時期は、いわゆる問題をかかえた子どもたちばかりになったこともある。
英才教育を試みたこともある。
2~3歳児の教育を試みたこともある。
30~40代のころは、幼稚園の年中児(4~5歳)から、高校3年生まで教えていた。
そういう「波」を無数に経験して、現在は、「なるようになれ」が、教育の基本になって
いる。
深く考えない。
子どものことだけを考えて、教える。
教えるというより、接する。
親の要求には、際限がない。
それに振り回されていたのでは、教育そのものが成り立たない。
が、このところ体力的な限界を感ずることが多くなった。
よく誤解されるが、教育は重労働である。
どう重労働であるかは、実は、あなた自身が、いちばんよく知っているはず。
たった1人や2人の子どもですら、たいへん。
それを30人とか40人とか、教える。
まともに接したら、目が回る。
その中に問題のある子どもが含まれていたら、なおさら。
さらに問題のある親が介入してきたら、……!
●親の欲望
ここで「親の欲望には際限がない」と書いた。
が、これは事実。
進学校にしても、自分の子どもがB中学へ入れるとわかってくると、親は、今度は
「何とかA中学へ」と言い出す。
A中学へ入れそうになると、今度は、「S中学へ」と言い出す。
また不登校児にしても、やっとのことで、午前中登校ができるようになると、
「せめて給食まで」となる。
給食を食べるようになると、「午後の授業も」と言い出す。
それに振り回される学校の教師こそ、えらい迷惑。
(「迷惑」という言葉には、語弊があるが……。)
私の教室で言えば、実のところ、問題をもった子どもほど、苦労する。
マンツーマンどころか、ワイフにも手伝ってもらって、2対1で教える。
が、そういう子どもがいると、ほかの子どもたちが、やめていく。
それでいて、その子どもが感謝するかといえば、そういうことは、絶対にない。
むしろいやなことをさせられたという、被害者意識をもってしまう。
こういう子どもは、「経営」ということを考えるなら、とても割に合わない。
(これ以上、これについて書くと、グチになるので、この話はここまで。)
●「お前を訴えてやる!」
親の無知と無理解。
独断と偏見。
傲慢とわがまま。
今では幼稚園でも、「入れていただけますか?」と聞いてやってくる親は、ほとんど
いない。
おけいこ塾なら、なおさらそうで、へたに「うちではお引き受けできません」などと
言おうものなら、親は、店で販売拒否にでもあったかのように怒り出す。
「どうしてうちの子は、入れてもらえないのですかア!」と。
私の教室のばあい、過去40年近く、入会を断わったことはほとんどない。
子どもに問題があるときは、その子どもに合わせて、2~3人のクラスを編成して、
指導する。
が、それでもこのところ疲れを覚えるようになった。
子どもの「質」が変わったというより、親たちの「質」が変わった。
子どもというより、親を見て判断する。
「この親の子どもは、教えられない」と判断したときは、入会を断わるようにしている。
子どもの問題点を、それなりに理解しているならまだしも、それがないと指導ができない。
10年ほど前だが、場面かん黙症の子ども(幼稚園女児)がいた。
このタイプの子どもは、集団の中では、貝殻を閉ざしたかのようにかん黙してしまう。
で、ある日、父親が参観にやってきた。
自分の娘の様子を見た。
ショックを受けた。
そのあとのこと。
その父親は電話口で、こう言った怒鳴った。
「貴様は、うちの娘を萎縮させてしまった。
訴えてやる。責任を取ってもらう!」と。
●教育ブルース
……こうして今日も、全国のあちこちから、子育てブルースが聞こえてくる。
どこか毒々しくて、それでいて、どこかもの悲しい。
みんな一生懸命しているはずなのに、どこかで歯車が狂う。
狂って、人の心をさみしくする。
できるならニヒリズムは、もちたくない。
しかしニヒリズムをもたずして、教育はできない。
親にしても、自分で失敗してみるまでは、それがわからない。
あるいは今の状態より、より悪くなって、それまでの状態がまだよかったことを知る。
最初は、ほんの小さな狂い。
それが加速度的に大きくなり、悪循環に悪循環が重なる。
気がついたときには、にっちもさっちもいかなくなっている……。
ではどうするか?
この問題だけは、親自身が、自ら気がつくしかない。
そのために自分で賢くなるしかない。
が、それを恐れてはいけない。
子育てには、その人の人生観、哲学、生き様すべてが集約される。
子育てを追求することは、その人の人生観を追求することにもなる。
奥は深い。
生涯のテーマとして、なんら遜色はない。
……とまあ、大上段に書いて、この稿はおしまい。
どうかみなさん、失敗にめげず、がんばってください!
(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 BW はやし浩司 子育てブルース)
(注※)難読症、失読症の症状
【幼児期】
Delays in speech
言葉の発達の遅れ。
Learns new words slowly
新しい言葉を学ぶのが遅い。
Has difficulty rhyming words, as in nursery rhymes
話す言葉がどこかぎこちない。ぎこちなさを感ずる。
Low letter knowledge
文字について能力が遅れる。
Letter reversal, ex: e b f p (normal)
鏡文字を書く。
【学童期】
Early primary school-age children(小学低学年児)
Difficulty learning the alphabet or in order
アルファベットを学ぶのが困難。
Difficulty with associating sounds with the letters that represent them
(sound-symbol correspondence)
その音を示す、文字と音を組み合わせるのが困難。
Difficulty identifying or generating rhyming words, or counting syllables in
words (phonological awareness)
文字を認識し、なめらかに文字を読むのが困難、あるいは単語の中の音節を数える
のが困難。
Difficulty segmenting words into individual sounds, or blending sounds to make
words (phonemic awareness)
単語をそれぞれの音に分離するのが困難。あるいは単語を作るため、音を混ぜるが
困難。
Difficulty with word retrieval or naming problems
言葉の訂正が困難、あるいはものと名前の結びつけるのが困難。
Difficulty learning to decode written words
表記文字を理解するのが困難。
Difficulty distinguishing between similar sounds in words; mixing up sounds in
multisyllable words (auditory discrimination) (for example, "aminal" for animal,
"bisghetti" for spaghetti)
単語の中の同じような音を区別するのが困難;たとえば「動物(どうぶつ)」を、「ど
うふづ」、「スパゲッティ」を「ビスゲッティ」と読むように、音節の多い単語の音
を混ぜてしまう。
【後期学童期】(小学、高学年児)
Older primary school children
Slow or inaccurate reading, although these individuals can read to an extent.
ある程度は読むことができるが、読むのが遅く、不正確。
Very poor spelling
綴りが苦手。
Difficulty reading out loud, reads word in the wrong order, skips words and
sometimes says a word similar to another word (auditory processing disorder)
大きな声で読むのが困難。前後の単語を入れ替えて読む、単語を飛ばす、あるいは
ほかの似たような単語に置き換えて文章を読む。
Difficulty associating individual words with their correct meanings
それぞれの単語を、正しい意味と結びつけるのが困難。
Difficulty with time keeping and concept of time, when doing a certain task
何かの作業をしているとき、時間を守るのが困難。時間の概念がない。
Difficulty with organization skills (working memory)
系統立てて作業するのが困難。
Children with dyslexia may fail to see (and occasionally to hear) similarities and
differences in letters and words, may not recognize the spacing that organizes
letters into separate words, and may be unable to sound out the pronunciation of
an unfamiliar word. (auditory processing disorder)
難読症の子どもは、文や単語の中の類似性や相違性を判断することができない。文
章の中の単語がスペース(空白)で区切られていることを認識することができない。
新しく出会った単語のようなばあい、それを発音することができない。
(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司
BW はやし浩司 失読症 難読症 識字障害 文字表出能力障害 Dyslexia Alexia
ディスレクシア アレクシア)
Hiroshi Hayashi+++++++July. 2010++++++はやし浩司
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