2010年6月27日日曜日

*Magazne July 16th





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子育て最前線の育児論byはやし浩司   10年 7月 16日
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選ばれました!

【1】(子育てのこと)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【親子の確執】

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母が死んで、もうすぐ2年目になる。
2年前に書いた原稿を読み直しながら、
今、こうして母を偲ぶ。

++++++++++++++++++++

(2008年3月の原稿より)

●今朝・あれこれ(3月3日)(March 3rd)

My mother was carried to a hospital by ambulance car, since she lost consciousness in
that morning. She received some medical checks but she recovered her consciousness
around that time. And in the next day I sent her back to the Center. In the car with my
mother, I thought a lot of things. My mother is me myself of 20 0r 30 years later.

+++++++++++++++

このところ母の容体が、よくない。
今年に入ってから、これで2回、
救急車で、病院へ運ばれた。
今朝は、朝食後、意識がなくなって
しまったという。

あわててかけつけると、母は、酸素
吸入器を口につけ、ハーハーと
あえいでいた。血圧は、90弱~70
前後。

母にしては、異常な低さである。
大声で声をかけると、意識はもどった。
つきそいの看護士の方が、「一時的
だといいですね」と言った。
母を見ていると胸が詰まった。

姉だけには連絡を……と思って
電話をかけたが、つぎの言葉が出て
こなかった。
「今朝まで、ちゃんと朝食をとって
いました」とのこと。
午後からはワイフに任せた。
私は自宅にもどった。

……この静けさは何か?
この穏やかで、やわらいだ気分は何か?
カーテンを見ると、白い光が、
木々の小枝の影を、くっきりと
映し出している。
その向こうで、隣の屋根瓦が、キラキラと
光っている。
風もない。
寒さも、やわらいだ。
ワイフからの連絡を待つ。
今の私には、それしか、することがない。
静かに、静かに、どこまでも、静かに。

+++++++++++++++

(3月5日)

幸い、母は、たいしたこともなく、
「様子見入院」だけですんだ。
で、病院に1泊して、翌日(=昨日)、センターに戻った。
帰りは、タクシー会社の、寝台つきバンだった。
そのバンの中で、いろいろ考えた。
センターでは、母は、(お荷物)に
なり始めているらしい。
今年に入って、寝たきりの状態がつづいている。
だからといって、センターの人を責めているのではない。
センターとしても、できることには限界がある。
それはわかる。
一方、病院側には、病院側の論理がある。
治療が目的。
「治る見込みのある患者を治すのが、病院の役目」。
どこかの医師も、そう言っていた。老人を預かる施設ではない。
とくに母のように、とくにどこかが悪いという
わけでもない老人は、患者ではない。
医師もこう言った。「何かあっても、延命措置は
取りません」「寿命ですから」と。
その日の午後には、心電図検査を予定して
いたが、私がキャンセルした。
私が「しても意味はないですね」と言うと、
医師も、すんなりと、「そうですね」と。
……私たちも、いつかは、母のようになる。
母のようになるのが、どうこうというのではない。
現在の母が置かれているのと、同じような、立場に置かれる。
そのとき、医師も含めて、周囲の人たちは、
私たちを、どう扱うか。
「いつ死んでも仕方ない」という扱い方をするだろう。
治療といっても、治療の方法すらない。
一方、たとえば病院に、1週間も入院していると、
センターのほうでは、母の居場所が末梢されてしまう。
そうでなくても、入居を待っている人は多い。
医師もこう言った。
「そうなったら、どこかのセンターに再入居する
しかないですね」と。
しかし今度は、そうは簡単にいかない。
再入居するのに、数か月待ちということになったら、
その間、母は、どこにいればよいのか。
「やはりセンターに戻してもらったほうがいい」という
ことで、母は、センターに戻してもらった。
老人介護、老人医療には、いろいろ問題があるようだ。
そんなことを帰りのバンの中で、考えた。
見た目には、スヤスヤと眠っている母を見ながら……。

+++++++++++++++

介護のコツは、介護のことを考えているときと、
そうでないときで、頭の切り替えを、しっかりと
すること。
仕事にもどったり、家庭にもどったりしたら、
介護のことは忘れる。母のことは、忘れる。
「死んだら、死んだとき」と。
なかなかむずかしいことかもしれないが、
そこまで割り切らないと、気苦労だけが倍加してしまう。
ものごとは、なるようにしかならない。
「なるようにしかならない」と自分に言い聞かせて、
心の中を、サッと洗う。
ところで、こんな話を聞いた。
参観に来ていた母親に、「親の介護もたいへんですよ」と、
私がふと漏らすと、その母親は、こう言った。
「私の夫なんかは、母(=夫の実の母親)を見舞ったことは、
めったにありませんよ」と。
その母(=夫の実の母親)というのは、入院して、2年になるという。
事故で頭をけがしてからというもの、認知症に
なってしまったという。
年齢を聞くと、その母(=夫の実の母親)は、まだ60歳とか。
私「若いのに……。60歳で、寝たきりですか……」
母「そうですね」
私「でも、また、どうして? どうして、2年も……?」
母「いろいろありましたから」と。
親子の間で、私には想像もつかないような確執があったらしい。
私「親子関係といっても、さまざまですからね」
母「そうですね」
私「……」と。

+++++++++++++++++++

それぞれの家庭には、それぞれの事情がある。
外からでは、ぜったいにわからない。
だからあなたがもっている(常識)だけで、
その家庭を判断してはいけない。
一方的な話だけを聞いて、判断するのも正しくない。
仏教の世界にも、「怨憎会苦(おんぞうえく)」という
言葉がある。
「憎い相手と会う苦しみ」という意味だが、
親子であっても、どこかで歯車が狂うと、そうなる。
親子であるがゆえに、その苦しみも大きい。
さらに兄弟、姉妹となると、憎しみ合っている人は、
ゴマンといる。
遺産問題、金銭問題がからんでくると、兄弟、姉妹でも、
それこそ、血みどろの争いになる。
そういう例も、これまたゴマンとある。
そういう相手と会う……それはまさに、「怨憎会苦」。
「四苦八苦」のひとつにもなっている。
では、どうするか?
そうしたトラブルから、いかにして自分を救出するか?
つまりは、相手が、サルかイヌに見えるまで、
自分を高めるしかない。
(言葉はキツイが、それくらいに思わないと、この問題は
解決しないので、そう書く。)
が、「サルだと思え」「イヌだと思え」と言っても、
それはむずかしい。
だから自分を高める。
芸術に親しみ、本を読み、教養のある人と話をする。
その結果として、相手が、サルかイヌに見えるまで、
自分を高める。
私のばあいも、同じような立場に立たされたことが、
何度か、ある。
そういうときは、心の中で、歌を歌っていた。
(一度は、思わず、口が動いてしまい、相手に
バレそうになってしまったこともあるが……。)
言いたい人には言わせておけばよい。
思いたい人には、思わせておけばよい。
相手は、サルはサル。イヌはイヌ。どうせその程度の人間。
人間と言うよりは、サルかイヌ。
あなたが相手にしなければならないような人ではない。
また「わからせよう」と思っても、ムダ。
それだけの知恵もない。頭もない。
あとは無視。適当につきあって、それですます。

++++++++++++++++++

こんな例を、ワイフが話してくれた。
「2年どころか、10年間、一度も、実の母親を
見舞っていない人もいるわよ」と。
その人を、Z氏(50歳、男性)としておく。
実の母親というのは、10年前に認知症になり、
今年85歳になるという。
「どうして、そうなったの?」と聞くと、ワイフが、
こう話してくれた。
ワ「もとはと言えば、Z氏が、今の奥さんと結婚するため、
家を出たのが始まりみたい。
1人息子だったのね。
そこでZ氏の母親が、猛反対。『結婚して家を出るなら、
今までお前にかけた、養育費を全部、返せ!』という
ことになったのね。
一時は、裁判沙汰にまでなったそうよ。
で、親子の関係は、それで切れてしまったというわけ」
私「養育費を返せというのも、ふつうではないね」
ワ「でも、そういう親も、多いわよ。私の知っている
別の人(=男性)なんか、いまだに実の親に、『お前にかけた、
学費を全部、返せ」と言われているそうよ。額は、
3000万円だってエ!」
私「でも、そんなことを親のほうが言えば、親子関係は、
おしまいだよ」
ワ「そうね。親もそのつもりではないかしら。Z氏の
母親にしてもそうよ。つまり親のほうから、先に縁を
切ってきたというわけ。だから、それでおしまい」
私「Z氏が家を出たというのも、わかるような気がする。
そういう親だから、家にはいたくなかったんだろうね。
つまりそういうことをしそうな親だということが、Z氏には
わかっていたんだよ」
ワ「そう、Z氏が家を出たから、親子関係が切れたのではなく、
すでに、Z氏が家にいるころから、切れていたのね。
それにZ氏の母親は、気づかなかっただけなのね」と。
表面的な部分だけを見れば、Z氏は、「子らしからぬ子」と
いうことになる。
事実、ごく最近まで、Z氏は、母親の兄(伯父)に、「お前は
親不孝者」と、ののしられていたそうだ。
Z氏の苦しみも、また大きい。……大きかった。
ワ「だから、今でも、Z氏は、実家の近くにさえ近寄らない
そうよ」
私「わかるね、その気持ち。とても、よくわかる」
ワ「Z氏にしてみれば、子どものときからの積み重ねも
あるから……。私の友だち(女性)にも、結婚して以来、
一度も実家に帰っていない人がいるわよ」
私「何年くらい?」
ワ「私より10歳くらい若いから、ざっと計算しても、
20年近くじゃ、ないかしら……」
私「20年ネエ~。よほどのことがあったんだろうね」
ワ「そうね……。よほどのことがあったんでしょうね」と。
そんなわけで、もし今、あなたが、どこかのだれかに、
その家の家庭問題であれこれ言っているようなら、
すぐやめたほうがよい。
あなたは気がついていないかもしれないが、
言われた人は、死ぬほど苦しい思いをしているはず。
あなたは親切心のつもりで言っているかもしれない。
もしそうなら、おカネを出してやったらよい。
それができないなら、だまっていること。
口を出すことくらいなら、だれにだって、できる!
ともかくも、これから母を見舞いに行ってくる。

++++++++++++++++++++++++はやし浩司

●親捨てる子ども(Son and daughters who abandon their parents)
 今でもある地方へ行くと、「親捨て」という言葉が残っている。「親のめんどうを見ない、親
不孝者」の人のことを、そう呼ぶのだそうだ。
 ただ単なる言葉だけの問題ではない。その地方では、一度、親捨てと呼ばれたら、親戚づき
あいができなくなるのは、もとより、近所の人たちからさえも、白い目で見られるという。現
実には、「郷里へ帰ることさえできなくなる」(ある男性からのメール)とのこと。
 その地方では、そういう形で、むしろ子どもを積極的に、自我群のもつ束縛の中に、組みこ
もうとする。それは自分自身の老後のためかもしれない。親を捨てた子どもをきびしく排斥
することによって、その一方で、自分の息子や娘に対して、「親を捨てると、たいへんなこと
になるぞ」と、警告することができる。
 が、それだけではない。
 「親捨て」のレッテルを一度張られた子どもは、その重圧感に、一生、悩み、苦しむことになる。 
 こんなメールが、Nさんという方から、届いた。

++++++++++++++++

●Y市のNさんよりメール
 
 Y市に住んでいる、Nさんより、母親(実母)についての相談があった。
 Nさんは、現在、31歳。2児の母親。
 Nさんの母親(実母)は、プライドの高い人で、人から、何か指摘されたりすると、カッとなり
やすい人のようである。そしていつも、夫(Nさんの実父)の顔色をうかがって、生活してい
るようなところがあるという。
 Nさんにとって、Nさんの生まれ育った家庭は、とても「暖かい家庭」とは言えなかったよ
うである。一度、Nさんが家出をしたとき、こんなことがあったという。Nさんが、高校生のと
きのことである。
 Nさんの母親は、Nさんを迎えにきたとき、Nさんに、「私がかわりに家出をするから、あな
たはもどってきなさい」と言ったという。その一件で、Nさんは、母親との信頼関係が、崩れた
ように感じたという。
 「私は恵まれた家庭に育っていない。しかし自分の子どもたちには、家族の温もりを教え
てあげたい」「幸福な気持ちで、生きてほしい」「どうしたらいいか」「また、両親に、もっと自
分たちのことを気づいてほしい。どうしたらいいか」と。

【Nさんへ……】

 エッセー形式で、返事を書いてごめんなさい。Nさんのかかえておられる問題は、広く、つまり
あちこちの家庭で起きている問題です。そういう意味で、エッセー形式にしました。どうか、ご理
解ください。

【家族自我群からの解放】

 「家族意識」には、善玉意識と悪玉意識がある。これについては、すでにたびたび書いてき
た。
 「家族だから、みんなで助けあって生きていこう」というのが、善玉家族意識。「家族とし
て、
お前には勝手な行動は許さない」と、家族同士をしばりあげるのを、悪玉家族意識という。
 この悪玉家族意識には、二面性がある。(ほかの家族をしばる意識)と、(自分自身がしば
られる意識)である。
 「お前は、長男だから、家を守るべき」「お前は、息子なのだから、親のめんどうをみるべき」
と、子どもをしばりあげていく。これが(ほかの家族をしばる意識)ということになる。
 一方、子どもは子どもで、「私は長男だから、家をまもらなければならない」「息子だから、
親のめんどうをみなければならない」と、自分自身をしばりあげていく。これが、(自分自身
がしばられる意識)である。
 問題は、後者である。
 それなりに良好な親子関係ができていれば、自分で自分をしばりあげていく意識も、それ
なりに、良好な親子関係をつくる上においては、プラス面に作用する。しかしひとたび、その親
子関係がくずれたとき、今度は、その意識が、その人を、大きな足かせとなって、苦しめる。
 ばあいによっては、自己否定にまで進む。
 ある男性は、実母の葬儀に出なかった。いろいろ事情はあったのだが、そのため、それ以
後、
自らに、ダメ人間のレッテルを張ってしまった。
 「私は親を捨てた、失格者だ」と。
 その男性の住む地方では、そういう人のことを、「親捨て」と呼ぶ。そして一度、「親捨て」の
レッテルを張られると、親戚はもちろんのこと、近所の人からも、白い目で見られるようになる
という。
 こうした束縛性を、心理学の世界でも、「家族自我群」と呼ぶ。そうでない人、つまり良好な
親子関係にある人には、なかなか理解しにくい意識かもしれない。しかしその意識は、まさ
にカルト。家族自我群に背を向けた人は、ちょうど、それまで熱心な信者だった人が、その信仰
に背を向けたときのような心理状態になる。
 ふつうの不安状態ではない。ばあいによっては、狂乱状態になる。
 家族としての束縛性は、それほどまでに濃厚なものだということ。絶対的なものだという
こと。親自身も、そして子ども自身も、代々、生まれながらにして、徹底的に、脳ミソの中枢部に
たたきこまれる。
 こうした意識を総称して、私は「親・絶対教」と呼んでいる。日本人のほとんどが、多かれ少
なかれ、この親・絶対教の信者と考えてよい。そのため、親自身が、「私は親だから、子どもた
ちに大切にされるべき」と考えることもある。子どもが何かを、口答えしただけで、「何だ、親
に向かって!」と、子どもに怒鳴り散らす親もいる。
 私がいう、悪玉親意識というのが、それである。
 ずいぶんと、回り道をしたが、Nさんの両親は、こうした悪玉家族意識、そして悪玉親意識
をもっているのではないかと、思われる。わかりやすく言えば、依存型人間。精神的に未熟な
まま、おとなになった親ということになるのかもしれない。Nさん自身も、メールの中で、こう書
いている。
 「(母も)、そろそろ自分の人生を生きることを選んで欲しいと、心から願っています」と。
 Nさんの母親は、いまだに子離れができず、悶々としている。そしてそれが、かえってNさ
んへの心理的負担となっているらしい。
 実際、親離れできない子どもをかかえるのも、たいへんだが、子離れできない親をかかえ
るのも、たいへんである。「もう、私のことをかまわず、親は親で、自分の道を見つけて、自分
で生きてほしい」と願っている、子どもは、いくらでもいる。

【親であるという幻想】

 どこかのカルト教団では、教祖の髪の毛を煎じて飲んでいるという。その教祖のもつ霊力を、
自分のものにするためだそうだ。
 しかし、そういう例は、少なくない。考えてみれば、おかしなことだが、実は、親・絶対教に
も、似たようなところがある。
 ……という話はさておき、(というのも、すでに何度も触れてきたので)、私も、すでに56
歳。その年齢になった人間の一人として、こんなことが言える。
 「親という言葉のもつ、幻惑から、自分を解放しなさい」と。
 子どもから見ると、親は絶対的な存在かもしれない。が、その親自身は、たいしたことがな
いということ。そのことは、自分がその年齢の親になってみて、よくわかる。
 多分、20代、30代の人から見ると、56歳の私は、年配者で、それなりの経験者で、かつそれ
なりの人格者だと思うかもしれない。しかしそれは、幻想。ウソ。
 ざっと私のまわりを見ても、50歳をすぎて、40代のときより、進歩した人など、一人もいな
い。人間というのは、むしろある時期を境に、退化するものらしい。惰性で生きるうち、その
範囲の生活的な技術は身につけるかもしれない。が、知性にせよ、理性にせよ、そして道徳観
にせよ、倫理観にせよ、むしろ自ら、退化させてしまう。
 わかりやすく言えば、歳をとればとるほど、くだらない人間になる人のほうが、多いとい
うこと。それはまさに健康や体力と似ている。よほどの訓練をしないと、現状維持すら、むず
かしい。
 これは現実である。まちがいのない現実である。
 しかし親に対する幻想をもつ人は、その幻想に、幻惑される。「そんなはずはない」「親だか
ら……」と。
 Nさんも、どうやら、そうした幻惑に苦しんでいるようである。
 だから、私は、こう言いたい。「Nさん、あなたの母親は、くだらない人です。冷静にそれを見
抜きなさい。親だからといって、遠慮することは、ない」と。
 ただ誤解しないでほしいのは、だからといって、Nさんの母親をどうこうと言っているの
ではない。親・絶対教の人にこう書くと、かえって猛烈に反発する。以前、同じようなことを
書いたとき、こう言ってきた人がいた。
 「いくら何でも、他人のあなたに私の母のことを、そこまで悪く言われる筋あいはない」
と。
 私が言いたいのは、親といっても、その前に一人の人間であるということ。そういう視点
から、親を見て、自分を見たらよいということ。親であるという幻惑から、まず、自分を解放
する。
 この問題を解決するためには、それが第一歩となるということ。

【親のことは、親に任せる】

 Nさんのかかえるような問題では、子どもとしてできることには、かぎりがある。私の経験
では、親自身に、特別な学習能力があるなら話は別だが、それがないなら、いくら説得して
も、
ムダだということ。
 そもそも、それを理解できるだけの、能力的なキャパシティ(容量)がない。おまけに脳細胞そ
のものが、サビついてしまっている。ボケの始まった人も、少なくない。
 さらにたいていの親(親というより、親の世代の年配者)は、毎日を惰性で生きている。進
歩などというのは、望みようもない。
 そういう親に向かって、「あなたの人生観はまちがっている」と告げても意味はないし、仮
にそれを親が理解したとしたら、今度は、親自身が、自己否定という地獄の苦しみを味わう
ことになる。
 つまり、そっとしておいてあげることこそ、重要。カルトを信仰している、信者だと思えばよ
い。その人が、その人なりに、ハッピーなら、それはそれでよい。私たちがあえて、その家の中に、
あがりこみ、「あなたの信仰はまちがっている」などと言う必要はない。また言ってはならな
い。
 この世界では、そうした無配慮な行為を、「はしごをはずす行為」という。「あなたはまちが
っている」と言うなら、それにかわる、(心のよりどころ)を用意してあげねばならない。そ
のよりどころを用意しないまま、はしごをはずしてはいけない。
 
 要するに、Nさん自身が、親自身に幻想をいだき、その幻惑の中で、もがいている。家族自我
群という束縛から、解放されたいと願いつつ、その束縛というクサリで体をしめつけ、苦しんで
いる。
 だから、Nさん自身が、まず、その幻想を捨てること。「どうせ、くだらない人間よ」「私が本
気で相手にしなければならない人間ではない」と。
 「親だから、こんなはずはない」と思えば思うほど、Nさん自身が、そのクサリにからまれてし
まう。私は、それを心配する。
 ある男性(50歳くらい)は、私にこう言った。
 「私の父親は、権威主義で、いつもいばっていました。『自分は、すばらしい人間だ』『私は、
みなから、尊敬されるべきだ』とです。しかし過去をあれこれさぐってみても、父が、他人の
ために何かをしたということは何もないのですね。それこそ近所の草刈り一つ、したことが
ない。それを知ったとき、父に対する、幻想が消えました」と。
 あえて言うなら、Nさんの母親は、どこか自己愛的な女性ということになる。かわいいのは
自分だけ。そういう自分だけの世界で、生きている。批判されるのを嫌う人というのは、たい
てい自己愛者とみてよい。自己愛者の特徴の一つにもなっている。
 幼児的な自己中心性が肥大化すると、人は、自己愛の世界に溺れるようになる。Nさんのメー
ルを読んでいたとき、そんな感じがした。

【お子さんたちのこと】

 Nさんは、子どもへの影響を心配している。「子どもたちに、幸福な家庭を見せてあげたい」
と。
 心配は無用。
 Nさんの子どもたちは、Nさんの子どもたちへの愛情の中から、自分たちの進むべき道を
見つけていく。つまりそうして子どもたちの将来を心配するNさんの愛情こそが、大切とい
うこと。
 たしかに子どもというのは、自分の置かれた環境を再現する形で、おとなになってから、
子育てをする。しかしそれは、決して、物理的な環境だけではない。
 もちろん問題がないわけではない。しかしどれも克服できる問題ばかり。現に今、Nさん
は、私にメールをくれることで、真剣に子どもたちのことを考えている。
 こういう姿勢があるかぎり、子どもたちは、必ず、自分の進むべき道を自分で見つける。
 大切なのは、「形」ではなく、「自分で納得できる人生」である。
 だから子どもたちに対する愛情だけは、見失わないように。

【改めてNさんへ……】

 以上、大急ぎで返事を書きました。あちこち何かしら言い足りないところもありますが、
参考にしていただければ、うれしいです。
 Nさんの問題をテーマにしてしまいましたが、どうか、ご了解の上、お許しください。x月x日
号を今夜配信しなければならないのですが、この数日、ほとんど原稿を書いていません。
 それでx月x日号の原稿とかねて、返事を書かせてもらいました。お許しください。
 では、今夜は、これで失礼します。未推敲のまま原稿を送ります。よろしくお願いします。

H


【2】(特集)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【伊良湖岬にて】

●伊良湖(いらご)

 浜松から豊橋へ。
豊橋から、渥美半島先端にある、伊良湖岬へ。
「いらごみさき」と読む。
が、どうして「湖?」。
たぶん、その岬を境に、名古屋港方面へ、大きな湖のように
なっているからではないか。
このあたりの人たちは、伊良湖岬より太平洋側を、「外浦」、
名古屋港寄りを、「内浦」と呼んでいる。
(まちがっていたら、ごめん!)

 浜松から豊橋まで、電車で40分。
豊橋から伊良湖まで、送迎バスで、70分。
今夜は、伊良湖ビューホテルで一泊。
同行者は、ワイフと長男。
3人で、1部屋。

 2010年に入ってから、何かにつけ、このところよくホテルに泊まる。
私という人間は、若いころからそうだ。
ひとつのことを始めると、連続して、同じことばかりをする。
こうして私の趣味や興味は、ある周期性をもって、つぎつぎと変化する。
木工にこり始めたら、木工ばかりをする。
模型にこり始めたら、模型づくりばかりをする。

で、今は、温泉旅行?
そんな感じ。

●北朝鮮vsブラジル

 浜松駅までは、車で来た。
車の中で、昨夜のワールドカップの試合が話題になった。
日本は、カメルーンを、1-0で、下した。
よかった。

 で、今夜は、何と北朝鮮とブラジルが対戦するという。
その北朝鮮。
何でも公設のトレーニング・ジムで、試合前の調整をしているという。
サッカー場を借りる費用がないためらしい。
しかしかえってそのことが、地元の人たちの同情を買った。
北朝鮮ファンがふえているとか。

 今夜の試合は、ホテルで見る。
もちろんブラジルを応援する。

●天安艦

 韓国の天安艦が、北朝鮮の魚雷によって爆破、沈没した。
最初から、どこのだれの仕業か、わかっていた。
わかりすぎるほど、わかっていた。
韓国政府も、それを感じたのだろう。
わざわざ多国籍の調査団を、組んだ。
調査の信頼性を高めるためである。

 で、予想通りというか当然というか、現場から、北朝鮮製の魚雷の本体が
見つかった。
モーター部とスクリュのー部が、一体となって回収された。
それが、輸出用に出していた北朝鮮の魚雷の設計図と、ピタリと一致した。
この時点で、だれしも北朝鮮の仕業と、100%、確信した。
が、ここからが、話がおかしくなる。
そこが北朝鮮。

●ウソも堂々と言われると・・・

 これまた予想どおり、北朝鮮は、シラを切った。
「北朝鮮とは関係ない!」と。
その上で、天安艦爆破は、アメリカと韓国による共同謀議によるものと
言い出した。
つまりアメリカと韓国が、北朝鮮を貶(おとし)めるためにしくんだ、
陰謀である、と。

 そして今回、国連での非難決議の動きが出てくると、すかさず北朝鮮は、
「韓国を火の海にする」とか、「我々の武器(=核兵器)は、飾りでは
ない」とか言って、韓国を脅した。
そればかりではない。
「自分たちは被害者だ」「調査させろ」と騒いだ。

●占星術

 何も韓国の肩をもつわけではないが、北朝鮮の言いがかりは、
常識の範囲を超えている。
バカげているというか、コメントするのも、疲れる。
本音の本音を言えば、アメリカにせよ、韓国にせよ、そしてこの日本にせよ、
北朝鮮など、相手にしたくない。
相手にもならない。
できれば、私たちに構わず、静かにしていてほしい。

が、そんなバカげた話でも、確信的に言われると、ときとして自分の判断が
狂うときがある。
よい例が、「占星術?」。

 どこかのオバちゃんがテレビに出てくる。
どこか意味ありげな雰囲気を漂わせている。
そのオバちゃんが、向かい合って座ったタレントの女性に、こう言う。
「あなたの背中には、ヘビがとりついている。
朝晩、背中を3回ずつ、シャワーで、しっかりと洗いなさい。
でないと、とんでもない災難がふりかかる」と。

 言われたタレントは、涙まで流して、震え上がる。
「ありがとうございます」と何度も言って、頭をさげる。

●宗教性

 私たちは北朝鮮の非常識な行為を笑う。
陰謀だかなんだか知らないが、「動機」そのものがない。
が、笑ってばかりはおれない。
それ以上に非常識なことを、日本人の私たちもしている。
テレビという天下の公器を使って、堂々とそれをしている!

共通性があるとするなら、「宗教性」。
宗教性にともなう妄信性。
妄信性が混ざりこむと、人は、いとも簡単に、白を黒と思い込み、黒を白と思い込む。
思い込んだまま、確信的に白を黒と言い、黒を白と言いだす。
言うほうはそれでよいよしても、聞くほうはたまらない。
あまりにも確信的に言われると、ときに聞いているほうは、訳がわからなくなる。
さらにそれが、公の場で堂々と主張されると、さらに訳がわからなくなる。

 天安艦は爆破された。
46名の水兵が死んだ。
こうした事実までも、「本当だったのか?」と、疑うようになってしまう。
その心理状態は、「背中にへびがとりついている」と言われた女性のそれと、
それほどちがわない。

●バスの中で

 豊橋から伊良湖岬までは、ホテルの送迎バスに乗った。
たまたま土砂降りの午後で、客は少なかった。
が、それでもバスに乗ったとたん、またまたあのおしゃべり。
今回の女性は、その中でも、横綱級の女性だった。

 年齢は67~8歳か?
よくしゃべるだけではない。
大声で、ときおり、(ゲラゲラ)というよりは、(ガラガラ)と、相手を
叩み込むように笑う。
片道70分の道のりだったが、その70分間、しゃべりつづけた。

●女性の脳みそ

 実に物知りの女性だった。
不動産の移転登記についての話をしていた。
その手続きについての話を、間断なくつづける。
となりの女性が、反論ぽいことを一言でも口にすると、語気を強め、
その数倍は話しつづける。

 自分ではかなり頭のよい女性と思っているらしい。
しかしよく聞いていると、自分の得意分野を話しているだけ。
相手の女性が別の話題に切り替えようとすると、すかさずそれを制する。
口を封ずる。
自分の話したいことだけを、一方的に話す。
が、誤解していることが、ひとつある。

 (情報の量)と(思考力)は、まったく別のもの。
その女性は、ある分野については、かなりの情報量をもっている。
それはよくわかる。
しかし思考力は、ゼロ!
が、そんな女性でも、会話の中では、こう言う。
「・・・私ね、よく考えるんだけど・・・」と。
何も考えていない。
そんな女性が、「考えるんだけど」と。

 そしてまたペラペラと話しつづける。

 私は何度かその女性の顔をのぞきこんだ。
が、目つきはまるで何かに取りつかれたかのよう。
うつろだった。
「死んだ魚の目」という言葉があるが、そんな目つきだった。

 ワイフは小声で、「疲れないのかしら?」と言った。
「ああいう人は、口先だけを使って話すから、疲れないよ」と。

 やがてバスは、小高い丘の上にあるホテルに向かって、ゆるい坂を
登り始めた。

●旅行記 

 旅行記なのだから、もっと旅行記らしい文章を書きたい。
これではぜんぜん、旅行記らしくない。
つい先日、志賀直哉の『城の崎にて』について書いた。
どうせ書くなら、志賀直哉が書いたような紀行文を書いてみたい。

 ……ここは渥美半島の先端。
伊良湖岬。
この岬を境に、外側は太平洋。
内側は、名古屋港へつづく内海。
が、今日はホテルは、深い霧に包まれていた。
眼下にかすかに湾の入り江が見える程度。
カメラのシャッターを何度も切る。
が、音だけがむなしく、室内で響く。
せっかく買った新しいカメラも、これではどうしようもない。

●3階のロビーにて

 夕食後、猛烈な睡魔に襲われた。
ベッドに横になっていたが、目を閉じたとたん、スーッと眠りの世界へ。
あわてて目を開け、歯磨き。
そして再びベッドへ。
時刻は午後9時ごろだった。

 目を覚ますと、真夜中。
午前0時を過ぎていた。
しばらくワールドカップ関連の番組を見ていた。
隣で眠っている、ワイフや長男が気になった。
私はパソコンを片手に、3階のロビーまでおりていった。
(この文章は、そのロビーで書いている。)

 が、どこにも電源コンセントがない!
しかたないので、ロビー脇にある、「スマイル・デスク」なるものを
借りることにした。
昼間はここで若い女性が、周囲の観光案内をする。
そのデスクの下に、電源コンセントがあった。

 で、そのデスクの上の観光MAPを見ながら、訂正。

 私が泊まっている、伊良湖ビューホテルは、伊良湖岬にあるのではない。
その手前、地図で見ると、1~2キロ?
またこの岬を境に、内側、つまり名古屋港よりの内海は、「三河湾」という。
知っていたが、忘れていた。

●田原市

 ついでに田原市について。
渥美半島を訪れるのは、15年ぶり(?)。
立派なバイパスもでき、通りからながめる家々も、「豪邸」が多い。
ワイフはバスの窓から、「このあたりは、お金持ちの人が多いのね」と言った。
私は、その変りように驚いた。
昔、息子たちと車でこのあたりまで来たときには、ずっと、田舎道といった
風景がつづいた。
が、観光MAPを見て、理由がすぐわかった。

 渥美半島は、「トヨタ自動車の工場」と化していた。
・・・と書くのは、おおげさかもしれないが、渥美半島から東へ、
そのまま進むと、隣接して、静岡県の湖西市につながっている。
その湖西市には、豊田佐吉の記念館がある。
このあたり一帯は、TOYOTAだけではなく、SUZUKIの
工場や下請け工場が、群をなして並ぶ。

 納得!

●『♪椰子(やし)の実』

 よく知られた歌に、『♪椰子の実』というのがある。
「♪名も知らぬ、遠き島より・・・」という歌詞の、あの歌である。
あの歌に出てくる「椰子の実」というのは、このあたりで見つかった
椰子の実のことだそうだ。

 目の前に張ってある観光INFOMATIONには、その詩碑があるらしい。
無料のシャトルバス乗ると、そこまで案内してくれるという。
このホテルから25分間の周遊シャトルバスで回れる距離というから、
それほど遠くはない。
出発時刻は、8時45分と、10時30分になっている。
「行くか、どうか?」。
少し迷う。

●真夜中のロビーで
 
 たった今、夜警の男性が1人、うしろを通り過ぎていった。
「こんばんは!」と声をかけると、「こんばんは!」と答えて、そのまま
反対方向へ、去っていった。

 クーラーがよくきいていて、心地よい風が、ロビーを吹き抜ける。
デスクの左前には、このあたりではよく知られている、手筒花火の手筒が置いてある。
竹を縄で巻き、その中に火薬を入れて、花火にする。
浜名湖周辺の村々では、どこでも祭りには、手筒花火をして見せる。
ときどき失敗したかのように、大音響とともに、ドスン!と、爆発
させてみることもある。
しかしあれは、ヤラセ。
わざとそうなるように、しかけてある。
観客は、その音を聞いて、そのつど、オーと歓声をあげる。

●伊良湖ビューホテル

 部屋の窓からは、伊良湖岬に至る半島が、そのまま見える。
高台のホテル。
ワイフが「晴れていたら、きっと海がよく見えるはずよ」と何度も言った。
霧の中でも、そのすばらしさは、容易に想像がつく。

 が、ホテル自体は、やや古いかな(?)といった印象をもった。
床のジュータンは、かなり疲れていた。
ヨレヨレといった感じで、表面はすり切れ、波を打っていた。
また部屋の中へ入ると、潮のにおいというよりは、どこかカビ臭いにおいが、
プ~ンとした。
部屋の中にあるバスタブは、ビジネスホテルのそれとはちがい、ふつうサイズ。
おとなでも、ゆったりと横になれる。
が、茶色いシミが浮き出て、やや不潔ぽい。
ロビーも含めて、天井も全体に低い。
建物としては、星は2つか、3つ。
しかし景色のよさが、それをじゅうぶん、カバーする。
景色のよさは、文句なしの、星5つ。
総合点としては、大浴場のよさを加え、星は4つプラスの、★★★★+。

 そう、大浴場がすばらしかった。
ただし外来の客も来ているらしい。
時間帯をうまくねらわないと、のんびり・・・というわけにはいかない。
またたまたま今日だけがそうだったのかどうかは知らないが、韓国人の
観光客が大挙、宿泊していた。
このあたりでも人気ホテルなのだろう。
夕食時も、2交代制で、ほぼ満席だった。

●『触らぬ神にたたりなし』

 今ごろ、北朝鮮vsブラジルの試合が行われているはず。
しかし私が先ほど見たところ、どこのチャンネルも、中継していなかった。
北朝鮮は、どこかで電波を盗んで、それを自国で流しているという。
が、もし日本も韓国も、北朝鮮の試合を中継しなかったら、どうなるか?
北朝鮮は、自国の試合すら、国内で流すことすらできなくなる。

 貧しいということは、そういうことか。
この5月に入って、餓死者が続出しているという(朝鮮N報)。
そしてつい数日前には、とうとう食料の配給も、止まったという。
「ついに・・・」と書くべきか。
それとも「とうとう・・・」と書くべきか。
(どちらでも、同じだが……。)

北朝鮮は、最後の悪あがきを繰り返している。
大切なことは、その悪あがきに巻き込まれてはいけないということ。
日本も、韓国も、ここは冷静に!
あんな国と心中するようなことはしてはいけない。
また『触らぬ神にたたりなし』。
北朝鮮の挑発に乗ってはいけない。

 古今東西、北朝鮮のような独裁国家は、最期は自己崩壊するか、
さもなければ、外に向かって戦争に打って出る。

●合宿

 若いころは、夏になるといつも生徒を連れて、合宿に行った。
それが楽しみのひとつだった。
が、友人が事故を起こした。
どこかの山の中でキャンプをしていたら、そこへ落石。
1人の女生徒(中学生)が、それで死亡した。
全国紙に載るほどの、何とも痛ましい事故だったが、そのためその友人は、
私塾を閉鎖することになった。
請求された賠償金が、3000万円!
30年ほど前のこと。
30年前の3000万円!

 その友人は私にこう言った。
「いくらボランティアでも、事故となれば、賠償責任を負いますよ」と。
法律でもそうなっている。

 たとえば隣に住んでいる女性が、その女性の子どもを預かってくれと
頼んだとする。
1時間でも、2時間でもよい。
その間にその子どもがけがでもしたら、その責任は、すべてその預かった
人が負う。
言い逃れはできない。
つまり他人の子どもを預かるというのは、そういうこと。
だから安易に、となりの子どもでも預かってはいけない。
合宿など、してはいけない。
するならするで、万全の準備をし、短期日の旅行保険にしっかりと
加入してから行く。

・・・ということで、私はその友人のアドバイスに従って、合宿はやめた。
以後、一度もしていない。
が、こういうホテルに泊まるたびに、「みなで合宿をしたら、楽しいだろうな」
と思う。

●篠島(しのしま)

 渥美半島の先端からは、篠島(しのしま)までのフェリーボートが出ている。
息子たちが子どものころ、一度、その篠島へ渡ったことがある。
夏の暑い日で、私たちはどこかの旅館に泊まった。
もう、35年近くも前のこと。
記憶の中の息子たちは、まだ幼児とか、小学生だった。

 その息子たちも、今は、遠くに住んでいる。
4月に入って、長男(別棟で同居中)とワイフの誕生日がつづいた。
しかし今では、簡単なメールだけ。
数日前は、三男の誕生日。
私たちは手製のカードを送った。
それについても、簡単なメールだけ。

「そういうものかなあ?」と思ってみたり、「そういうものだろうな?」と
思ってみたりする。
疑問とあきらめが、交互に胸をふさぐ。
プラス、何とも言えないさみしさ……。

 二男はインディアナ大学で、スパコンの技術者をしている。
スイスにあるCERN(量子加速器)の研究所から送られてくる情報を、そこで分析
している。
三男は、JAL(B777)のパイロットをしている。
みな、それぞれに忙しい。
『老兵は、静かに去るのみ(マッカーサー司令官)』か。

●電話が鳴った・・・

 たった今、フロントのベルが鳴った。
男性が、「はい・・・」「はい・・・」と、何やら答えている。
何かトラブルが起きたらしい。

 こういうときは、部屋に戻ったほうが、よさそう。
そのうち注意されるかもしれない。
北朝鮮vsブラジル戦の結果も、出ているはず。
時刻は、午前1時30分。
明日は晴れるとよい。
きっとすばらしい景色が、眼下に広がるはず。

 そうそう長男は、最近、旅行に行くたびに画材道具をもってくる。
窓の外の景色を、部屋から描いている。
自分なりの旅の楽しみ方を、身につけたようだ。

 ・・・しばらくすると、あたりがあわただしくなってきた。
まず酔っ払っているのか、呂律(ろれつ)の回らない男性が、、
大きな声でワーワーと騒ぎながら、ロビーの中へ入ってきた。
その男性の前後を、ホテルの従業員が2人、同行していった。
ていねいに応対する従業員。
怒鳴り散らす客。
こういう風景は、見ていても、不愉快。
ここで一旦、部屋に戻ることにする。

●再び、部屋へ

 部屋へ戻ると、ワイフと長男は、熟睡していた。
私はバッグから、睡眠剤と精神安定薬を取り出した。
それらを何等分かして、舌の上でかんで溶かした。
こうして薬をのむと、効き目が早い。
量も、少なくてすむ。

 やがて再び睡魔が襲ってきた。
脳みそが勝手に乱舞し始めた。
おやすみ!

(翌日は、前日とはうって変わって、すばらしい晴天!
太平洋と三河湾が、眼下に一望できた。
その様子は、新しいカメラに収めた。
無料マガジンの7月号のはじめで、このとき撮った写真を紹介する。)

2010年6月16日記


(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 
BW はやし浩司 伊良湖 渥美半島 伊良湖ビューホテル)


【3】(近ごろ、あれこれ)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


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