2012年2月11日土曜日

*Easy Japanese and Easy Accidents

【シイタケ事件】

●日本人とは何か?

●甘えの構造

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

 土居健郎が『甘えの構造』(1771)を著してから、40年。
日本人は、この40年間、何も変わっていない。
甘い。
一言で表現すれば、そうなる。
「みんなで渡れば恐くない」と。
あるいは、「だれかが何とかしてくれるだろう。
何とかなるだろう、と。

 あるいは、「これだけのことをしてあげたから、相手は感謝しているはず」、
「そこまではしなかったから、相手も、ほどほどのところで止めてくれるだろう」でもよい。

ともかくも、甘い。

その甘さが、今や、命取りになりつつある。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●原発事故

 3・11大震災。
それにつづく福島第一原発の事故。
それ以来、おおかたの人は、食べ物に気をつけている。
どう気をつけているかということは、ここには書けない。
が、気をつけている。

 そんな中、こんな言葉もよく目につくようになった。
「地産地消」。
つまり「地元でとれた食材を、地元で消費する」と。
あちこちのレストランなどに、この言葉がかかげてある。
遠回しな言い方だが、なぜそんな言い方をするのか。
それについても、ここには書けない。

 さらに回転寿司屋などでは、それぞれの魚の産地を表示するようになった。
「四国○○港産」「福井県○○港産」と。
なぜ、わざわざそんなことを表示するのか。
それについても、ここには書けない。

 が、こんな記事が、MSNニュースに載っていた。
まずその記事を紹介する。
あなたはこの記事を読んで、どう思うだろうか。
私はこの記事を読んで、「やはり……」と思った。

++++++++++++++以下、MSNニュースより++++++++++++++

MSN・NEWS(2012-02-10)

横浜市は9日、港北区内のスーパーで販売されていた袋入り乾燥シイタケから、食品衛生法の定める暫定基準値1キロ当たり500ベクレルの4倍を超える同2077ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。
すでに7袋が販売されており、市は出荷した加工業者のある静岡県に通報、販売したスーパーに回収を指示した。

 独自に調査した市民からの通報を受け市が9日に検査した。
高濃度のセシウムが検出されたのはスーパーチェーン「ビッグヨーサン」の綱島樽町店が販売していた、賞味期限が来年1月10日の乾燥シイタケの袋詰め「小粒どんこ」。
静岡県藤枝市の「大塚フード」が80グラムずつ袋詰めして出荷した同スーパーの専売品。
加工業者によると、乾燥シイタケの産地は主に岩手県という。

 スーパーによると、綱島樽町店では20袋を入荷し、うち7袋を販売。
ほか2店でも店頭に並んだが、購入者はいないという。

市によると、この乾燥シイタケをそのまま80グラム食べた場合の人体への被曝(ひばく)線量は、最も大きい0歳で0・003833ミリシーベルト。
13歳以上では0・0025724ミリシーベルトと推計され、水で戻した場合の放射性セシウム濃度は、おおむね10分の1になるとみられる。

 厚生労働省が来年度の施行に向けてまとめた食品中の放射性物質に関する新たな基準値案では、食品による内部被曝線量の限度を年間1ミリシーベルト以下としている。

++++++++++++++以上、MSNニュースより++++++++++++++

●産地偽装

 「産地偽装」という言葉がある。
ここに書いてある記事の内容も、それに近い。
もう一度、注深く、読んでみてほしい。
こうある。

(1) 横浜で、2000ベクレルの放射線量を超えるシイタケが売られていた。
(2) シイタケは、静岡県藤枝市の「Oフード」が80グラムずつ袋詰めして出荷した、同スーパーの専売品。
(3) シイタケの原産地は、「主に岩手県」。

 これら3つの事実を並べてみると、つぎのような事実が浮かんでくる。

(1)岩手県産のシイタケを、(2)静岡県の藤枝市で商品化し、(3)神奈川県の横浜市内のスーパーで販売していた。

 あなたはこの(流れ)を知って、何か、ウサン臭いものを感じないだろうか。
横浜に住む消費者の立場に立って、シイタケを買う自分自身を想像してみると、それがよくわかる。

 あなたは、たいていの人たちが、今、そうしているように、食べ物に気をつけている。
どう気をつけているか。
なぜ気をつけているか。
それについては、ここには書けない。

 しかし書こう元が「(静岡県)藤枝市」と書いてあれば、あなたは安心して、それを買うはず。
まさか、シイタケなる食材が、そんなにも遠く、全国を駆け回っているとは、だれも思わない。
もちろんあなたは思わない。
私も思わない。

 たとえばこの浜松市周辺でも、シイタケ栽培をしている農家は多い。
わざわざ岩手県から仕入れなくても、いくらでも手に入る。
藤枝市にしてもそうだろう。
横浜市にしてもそうだろう。

が、なぜか、そのシイタケは、岩手県→静岡県→神奈川県へと、移動している。
距離にすれば、岩手県から静岡県まで、約600キロ、静岡県から横浜までは、200キロ(地図上の直線距離)。

 なぜそんな複雑なルートを経て、シイタケが、横浜まで来たか。
たかがシイタケ。
それが、距離にして、計800キロ!
なぜか?
理由は、ここには書けない。
その(書けない部分)に、私はウサン臭さを感じてしまう。

●水で薄める?

 さらに……。
またまた出てきた珍説。
記事には、こうある。

『水で戻した場合の放射性セシウム濃度は、おおむね10分の1になるとみられる』と。

 水で戻せば、10分の1になる?
笑うというより、あきれる。
もしこんな論理がまかり通るなら、福島第一原発の放射性物質は、すべて海へ流せばよい。
海の水で薄めれば、何万分の1になる。
何億分の1になる。
何兆分の1になる。

 米にしてもそうだ。
茶葉にしてもそうだ。
水で薄めれば、濃度がさがる。……ということになる。

 シイタケというのは、水分を含んだ分だけ、おおきく膨(ふく)らむ。
それはその通り。
グラム当たりの放射線量は、たしかにさがる。
10倍に膨らめば、濃度は、10分の1になる。
しかしそれをそのまま食べれば、(量は10倍になる!)、体内に取り込まれる放射性物質の量は同じ。
どうしてこんなバカなことを言うのだろう。
エセ科学ならぬ、エセ数学。

●汚染

 かくして放射性物質を含んだ食物は、空気のようにジワジワと全国に広がっていく。
風に乗り、海流に乗り、そして人に乗って、全国に広がっていく。
防ぎようがない。
先日もこんなことを言う人がいた。
女性だった。

 「千葉に実家がありますが、子どもは連れていきません。
外出しても、家に帰ったら、毎回、すぐ風呂に入ります」と。

 が、私がこう言うと、その女性はそのまま黙ってしまった。
「だって、水道水が汚染されていたら、どうするのですか?」と。

 たいへん残念なことだが、空気が汚染されているということは、「水」も汚染されている。
100%、汚染されている。
そう考えてよい。

●被害はこれから

 だからといって、不必要に心配してはいけない。
私も、それを望んでいるわけではない。
が、私が判断するかぎり、日本人は、甘すぎる。
その甘すぎる部分で、日本人はさらなる危険を、自ら掘り起こしている。
たとえば原発事故にしても、問題は、何も解決していない。
被害が顕在化するのは、これから。

 原子炉の冷却化にしても、この先、それが20年、30年とつづく。
この先、何が起こるか?
起きるたびに、ひやひやして過ごす。
つい先週も、2号機の冷却水が、70度前後まで上昇したという。
私には、その意味がよくわからない。
わからないが、今の今も、何やらたいへんなことが起きているらしい。
そういう状態が、これからもつづく。

 私たちはそれでよいとしても、子どもたちはそうでない。
チェルノブイリの原発事故では、子どもたちに症状が現れ始めたのは、2年後から5年後。
ピークを迎えたのは、10年後。
日本もそうなる可能性は、きわめて高い。
政府もそれを知っている。
だからこそ、「被ばく研究所」なるものを、福島県内に建設し始めている。

●厳格化あるのみ

 私たち日本人は、そういう日本の近未来を、覚悟すべき。
またそれを前提として、今から行動を起こすべき。

 その第一。
食物の流通に関して、さらに厳格化すべき。
岩手県産のシイタケであれば、「岩手県産」であることを、明確にすべき。
MSNニュースには、当該商品の写真も載っている。
が、少なくとも表側のパッケージには、こうあるのみ。

「職人の技がxxxxx(判読不能)
 椎茸」と。
パッケージの下の方には、赤文字で何か書いてあるが、「岩手県産」という文字ではない。

 それを納得して食べる人は、構わない。
自己責任で食べればよい。
が、そうでない人にまで、半ばだますような方法で、食べ物を売ってはいけない。
そういう意味での、厳格化を、今から始める。

 これは風評被害とか、そういう生やさしいものではない。
5年後、10年後に、被害が顕在化したとき、今という時を悔やまないため。
そのための厳格化を今から、始める。

 逆のことを考えれば、それがわかるはず。
もし10年前に、原子力発電所を、もっと厳格な視点からながめていれば、今回のような事故は起きなかったはず。
過去を悔やむのは、一度でたくさん。
こりごり……。

 それとも日本人は、同じ失敗を、何度繰り返したら気が済むのか。
その一例が、今回のシイタケ事件ということになる。

 日本人独特の『甘えの構造』、40年たった今も、何も変わっていない。

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Hiroshi Hayashi+++++++Feb. 2012++++++はやし浩司・林浩司

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