2012年2月10日金曜日

*Dementea

●認知症(アルツハイマー病)とその周辺の人々

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ハラハラしながらの10年間だった。
それほど強く意識したわけではない。
しかしいつも心の壁に、ぺったりと張りついていた。
「私はだいじょうぶか?」と。

とうとう私の知人のHさん(70歳・女性)が、
アルツハイマー病と診断された。
私も「おかしい?」とは感じていた。
が、現実に身近にいる人がそう診断されると、
ズシンと心に重く響く。
「明日は我が身」と。

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●初期症状

 初期症状について、専門サイトは、つぎのように書いている。

★「健康インフォネット・HP」より

(1)自己中心的で頑固になった。
(2)理由の無い不安感にかられる。
(3)抑うつ状態になる。
(4)睡眠障害になる。
(5)幻視や妄想が重なる。
(6)人や物の名前がすぐに出てこない。
(7)新しい覚えることができない。
(8)物の置き場所をすぐに忘れる。
(9)いつもしているはずのことがスムーズにできなくなる。

ほかに、(行き慣れた道で迷う、調理手順を間違えたり忘れたりする、駅で行き先への切符が買うことができない、何度も同じことを尋ねてしまう)」と。
以上、「健康インフォネット・HP」より
http://www.kenkouinfo.net/arutuhaima-shoki/

★「健康生活・HP」より

(1) 人や物の名前を忘れる等の記憶障害。
(2) 日付が分からなくなる、お金の管理が出来ない、薬の管理が出来ない等日常の生活に支障が出てくる。
(3) 自分がいる場所が分からなくなる、徘徊を始める、介護が必要になる。
(4) 自分の妻や子供など人物が分からなくなる。
(5) 寝たきりになる、施設介護が必要になる」と数年~十数年かけて進行するのが特徴。
(6) 人の名前や物の名前が出てこない等年齢の割に物忘れが目立つものの、料理が作れる、身だしなみを整える等認知機能に障害が無く、生活に支障がない場合は「軽度認知障害」と言い、「認知症」とは診断されない。
(7) しかし、放っておくと1年に10%が認知症に移行すると言われていますので、運動や食事を工夫して認知症への移行を遅らせることが大切。

 さらに……

(1) 最も初期の症状は学習能力が落ちて新しい事を覚えていられないこと。論理的な思考力がなくなると言われる。
最近のことをすっかり忘れて全く思い出せないのは、海馬が壊れて記憶が定着しないもので要注意。
(2) 物の名前や人の名前が出なくなる。
ただ、すっと出てこないだけで、ヒントを与えると思い出したりする場合は記憶機能は壊れていない証拠でこれは良性の物忘れのことが多い。
(3) 目標に対してプランを立てたり、スケジュールを立てたりすることが出来なくなる。
(4) 家事や仕事の段取りが上手く出来なくなるのが最初の徴候。
例えば、お皿をうまく片づけられない。
調理の手順を間違える。
冷蔵庫の管理が出来なくなる、(空っぽになったり、逆に、同じ物を重複して買ってきたり)、着物をうまくたためない。
字が下手になる。捜し物が多くなる。
ガス栓などの閉め忘れをする。
飲み薬の管理ができない。
身だしなみがだらしなくなり、おしゃれをしなくなった。
風呂に入らなくても平気。
駅で切符が買えない、いつもの道を間違える。
同じことを何度も言ったり聞いたりする。
置き忘れやしまい忘れが目立つ等々が初期に出る。
(5) 短気になる。
些細なことでもすぐに怒るようになる。
(6) 物をどこに置いたか忘れることが多くなった
(7) 相手の話を聞いている時に、同時に自分が言うことを考えることが出来なくなる。
(8) 他人との会話が上手く行かない。
(9) 好きな事でも関心がなくなる、日課をしなくなる。
(10) 元気が無く憂鬱な感じになる。
あちこち身体の不調を訴える。
料理を作るのが面倒になったり、品数が減る。
(11) お金や物品を盗まれたと言うようになる。
以上、「健康生活・サイト」より。
http://www.ne.jp/asahi/web/oki/health/arutu.html

 こうして各サイトの初期症状を読んでいると、この病気の概要が、おぼろげながら浮かんでくる。

●Hさんとの電話

 Hさん(前述)について言うなら、これらすべてが当てはまるから、恐ろしい。
が、それだけではない。

たとえば電話にしても、(1)話している途中で、話題がポンと飛ぶ。
(2)同じことを、繰り返し言う。
(3)心に余裕がない話し方をする。(いつもピリピリしている。)
(4)一方的にしゃべるばかりで、こちらの言うことを聞かない。
(5)ネチネチと、いつまでもグチを言う。
(6)途中で電話を切ろうとすると、突然、怒りだしたりする。
(7)解決策を示してやると、即座にそれを否定する。
(8)つぎに電話をすると、前回話した内容を、すっかり忘れている。
(9)批判は、タブー。批判したとたん、混乱状態になる。

●私の立場

 アルツハイマー病については、いろいろなサイトが取り上げている。
が、その周辺で苦しんだり、キズついたりする人については、ほとんど取り上げられていない。
もちろんその人がその病気とわかっていればよい。
が、ふつうはわからない。
「?」と思うことはあっても、わからないまま、その人に引き回されてしまう。
私のワイフもこんな経験をしている。
この話は、4、5年前のBLOGに書いたことがある。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●ワイフの友人

その女性は、65歳くらいから、おかしな言動を繰り返すようになった。
突発的に興奮状態になることもあった。
70歳をすぎてから、音信が途絶えたので、様子はわからない。
しかし何かの脳の病気になり始めていたことは、じゅうぶん疑われる。

●こだわり

 その女性は、ことあるごとに、弟氏の悪口を並べた。
「法事に来たが、タクシーに乗ってきた」
「夫が話しかけたが、形だけの返事しかしなかった」
「法事というのに、柄物の靴下をはいてきた」
「供養の袋だけで、供物を何ももってこなかった」などなど。

 まるでその場をビデオカメラか何かに収めたかのように、ことこまかく悪口を並べた。
が、そうした(こだわり)のほうこそ、大きな問題だった。
その女性は、それに気づいていなかった。

●3つの教訓

 最近では、脳の活動の様子を、リアルタイムでそのまま知ることができる。
それによっても、こだわりの強い人というのは、脳のその部分は活動しても、ほかの部分が休眠状態になることがわかっている。
このことは、私たちに3つの教訓を与えてくれる。

 ひとつは、(こだわり)はもたないほうが、よいということ。
脳はいつも、平均的かつ全体的に、活動していたほうがよい。

もうひとつは、(こだわり)を少なくするため、いつも新しいことに興味をもったほうがよいということ。
平凡は美徳だが、老後の平凡は、美徳でも何でもない。
警戒すべきは、単調な生活。
変化に乏しい生活。
へたをすれば、そのまま死の待合室に直行……ということにもなりかねない。

 そして3つ目は、こだわりが強くなったら、脳の変調を疑うということ。
老人性のうつ病の主症状は、(老人にかぎらないが)、こだわりと考えてよい。
うつイコール、こだわり。
こだわりイコール、うつ。

●脳の老化

 そうでなくても、脳の老化は、日常的に経験する。
記憶力の低下、集中力、気力の低下など。
好奇心の低下は、そのまま自分の住む世界を、小さくする。
来る日も来る日も、同じことを考え、同じことをするようになったら、脳の老化はすでに危機的な段階に入っていると考えてよい。

 それに(こだわり)が加われば、そのこだわっている部分はともかくも、ほかの部分が一気に老化する。
その女性については、こんなことがあった。

●ボケ症状

 ワイフのクラブの会費を、その女性がなくしてしまった。
その数日前まで、こう言っていた。
「会費は青い封筒に入れ、バッグの中にあります」と。
が、ワイフがその数日後に電話すると、こう言った。

「私、そんなお金、知りません」
「青い封筒など、知りません。そんな話をした覚えは、ありません」と。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●青い封筒

 この青い封筒の話は、私もよく知っている。
その電話のとき私は、ワイフの横にいた。
こうして文章にして書くと、そのときの緊張感がうまく伝わらないかもしれない。
ワイフは、相手のこの言葉に、かなりキズついた。
怒るというよりも、ショック状態になってしまった。

 その話を思い出しながら、Hさん(前述)について、ワイフはこう言った。

「その人や、家族の人たちもたいへんだということは、よくわかるわ。
しかしそうであるなら、周囲の人たちにも、それを知らせるべきよ」と。

 が、実際には、家族は、それを隠そうとする。
あるいは家族(配偶者や息子や娘たち)が、それ以上に無知であることが多い。
ある別の知人は、私にこう言って、怒鳴った。
「家内は、こだわりは強いが、頭はいい!」と。
私が「奥さん、だいじょうぶですか?」と言ったときのことだった。

●Hさんとの思い出

 昨日、ワイフとHさんの話になった。
いろいろ思い出してもらった。

(事例1)行き先をまちがえたHさん

 ある日の午後、ワイフのところに電話がかかってきた。
仲がよかったAさんが、突然、入院したという。
Hさんは、こう言った。
「湖西市のX病院に、入院しました。奥さんにお伝えください」と。

 そこで私は近くにあったメモ用紙に、その旨、書きとめた。
書きとめたあと、Aさんの病状についても、聞いた。
で、電話を切るとき、念のためにと思い、メモを復唱した。

私「湖西市のX病院ですね?」
H「……私、湖西市なんて言っていません。鷲津(わしづ)です」
私「エッ、先ほど、湖西市とおっしゃいましたよ」
H「おとといも病院へ行ってきましたから、まちがえるはずはありません」
私「でも、確かに……。メモも取りましたから……」
H「どうしてそういうウソをつくのですかア!」と。

 そのままHさんは、激怒、電話は、大混乱になってしまった。

(事例2)なくなった老眼鏡

 クラブでのこと。
帰るとき机の横に置いておいたはずの、ワイフの老眼鏡が消えていた。
みなで探してもらったが、見つからなかった。

 で、先に帰った人のだれかが、老眼鏡をまちがえて持ち帰ったのではないかということになった。
Hさんもその中にいた。
が、老眼鏡は必需品。
そこでワイフは家に帰ると、先に帰った人たちみなに、電話で問い合わせた。
みな「知りません」と答えた。

 で、その翌週のこと。
再びワイフが老眼鏡を話題にした。
が、みな、「知りません」と。
が、見るとHさんだけが、近くのゴミ箱の中を探していた。
ワイフは、そのとき、「そんなところにあるわけがない……」と思ったという。

 で、いつものように例会が始まった。
が、そのとき、外から声がした。
「ありましたよ!」と。

 見るとHさんが、会館の横にある生ごみ専用のごみ箱を、ひっくり返しているところだった。

H「ほら、こんなところに!」と。

 見ると老眼鏡は鼻の部分で2つに折れ、ティシュペーパーに包まれていた。
ワイフはHさんに感謝したが、そのあと、Hさんへの疑念がどんどんとふくらんでいった。

(事例3)ガスコンロ

 Hさんの家には、1人の老人が同居していた。
Hさんの実母である。
その実母(当時、85歳前後)が、ときどきガスコンロの火を消し忘れるという。
Hさんは、たびたびワイフのところに電話をかけてきて、それをこぼした。
「あぶなくて、外出もできません」と。

 そこで、つまりその話を聞いたので、私は、ネットで検索をかけてみた。
「消し忘れ防止付きのガスコンロ」というのが、市販されていることがわかった。
そこでそれをプリントアウトし、ワイフにもたせた。

 が、そこで奇妙なことが起きた。
ワイフがHさんにその書類を渡すと、Hさんは、こう言ったという。

「どうしてこんなもの、私にくれるんですか。あなたに頼んだ覚えはありません」と。
そこでワイフが、「だって、あなたお母さんの消し忘れに困っているとおっしゃったでしょ」と。
が、これに対しても、「私は、そんなことをあなたに話した覚えはありません」と。
ワイフはその書類をそのまま、私のところにもって帰ってきた。

(事例4)繰り返される内容

 Hさんは、もう1人、Hさんの実兄のめんどうをみていた。
Hさんの実兄は、郊外にあるグループホームに入居していた。
「週に1度の面会」が、義務付けられていた。
それでHさんは、毎週、週末に、そのグループホームへ足を運んでいた。
それについて、ある日、Hさんから電話がかかってきた。

「私、死にそうになりました。
車を運転していて、突然、気がスーッと抜け、道路脇の電柱にぶつかりそうになりました」と。

 Hさんは、自分の苦労をことさら大げさに訴えた。
ワイフはHさんの聞き役に徹した。
途中で電話を切ると、Hさんは、混乱状態になる。
当時、すでにワイフは、そのことをよく知っていた。
「そうですか、たいへんですね」「ごくろうさまですね」と。
それだけを繰り返した。

 が、Hさんは、しばらくすると、また同じ内容の話をする。
しかもことこまかく、ていねいに……。
「私、死にそうになりました」と。
こうして電話が延々と、1時間以上。
ばあいによっては、2時間近くもつづいた。

(事例5)

 しばらくすると、ワイフは、Hさんから距離を置くようになった。
電話がかかってきても、居留守を使うことが多くなった。
そんな矢先、例の「青い封筒事件」が起きた。
預かっておいたクラブの会費を、Hさんが、紛失してしまった。

 Hさんは、「青い封筒に入れてしまってあります」と言った。
しかしその翌週、「そんなお金のことは知りません」「青い封筒の話など、知りません」と。

 結局その会費は、全額、ワイフが立て替えることになってしまった。
が、その前に……ということで、夜遅く、Hさんの家に電話を入れた。
Hさんの主人が、電話口に出た。
そこでワイフが、クラブの会費のことを伝えた。
が、Hさんの主人は、ワイフの電話に逆ギレ。
「うちの家内は、こだわりは強いが、頭は利口だ。そういう言いがかりをつけるのは許さない」と。

 一事が万事。
万事が一事。
 こうしてワイフとHさんとの関係は切れた。
ワイフの心は大きくキズついた。

●ピック病※

 似たような病気に、ピック病というのもある。
こちらも、アルツハイマー病のような前兆症状を伴う。
わけのわからないことを言う……というよりも、わけのわからないことをし始める。
家人がそれを知っているばあいは、まだよい。
ふつうは、家人もそれに気づかない。
気づかないまま、周囲の人たちが先に、トラブルに巻き込まれる。

 ……実は、私の近所にも、それらしき老人がいる。
見た目には、「まとも」だが、行動がおかしい。
私もワイフも、トラブルに巻き込まれるのがいやだから、いつも遠巻きにしてその人を見ている。
が、その人のほうから、からんでくる。

 年齢は、現在、75歳前後。
男性である。
一応、他人とは、ふつうの受け応えができる。
ガスや電気の検針員さんたちとは、ふつうの(?)会話をしているよう。
が、突然、何をどう勘違いしたのかわからないが、私の家に怒鳴り込んできたりする。
「報復」と称して、窓ガラスを割られたこともある。
(そばに、「報復」と書いた紙が、張ってあった。)

 が、そういう人にかぎって、(先に書いたHさんも、そうだが)、病院へは行かない。
Hさんのばあいは、夫のほうがそれを拒否した。
近所の男性のばあいは、奥さんのほうが、認知症気味。

 ……というような例は多い。
この先、さらに多くなる。
老人の数に比例して、多くなる。

加害者になるのも、被害者になるのも、「明日は、我が身」。
私自身がそのアルツハイマー病になるかもしれない。
あるいはすでにピック病になっているかもしれない。
みなに迷惑をかけるようになるかもしれない。
けっして、他人ごとではない。

 要は、いかに自分自身を正常(?)に保つかということ。
そのためには、何をすればよいかということ。
方法がないわけではない。
その第一。
「社会との関わりを失わない」、である。
私が観察した範囲では、社会との関わりを失ったとたん、(あるいはその逆もあるが)、一般的なボケは、一気に進む。
あとはその悪循環の中で、ますます社会との関わりを失い、ボケ症状は進む。
アルツハイマー病やピック病は、「病気」。
早期発見、早期処置が重要と言われている。
社会との関わりがないと、それもできなくなる。
変化をとらえることが、できなくなる。

 ……ということで、今朝は「アルツハイマー病」について考えてみた。

(注※……ピック病)

日本大百科全書(小学館)には、つぎのようにある(YAHOO百科事典より転載)

「ピック病(ぴっくびょう)
Pick's disease
限局性大脳萎縮疾患。精神医学者アーノルド・ピックArnold Pick(1851―1924)によって1892年に報告された。
ピック病は大脳の萎縮性疾患だが、大脳の前頭葉や側頭葉が侵される「前頭・側頭型認知症(FTD:frontotemporal―dementia)」である。
アルツハイマー病が頭の後方から委縮が始まるため、後方型認知症とよばれるのに対して、ピック病は前方型認知症とよばれることもある」(以上「日本大百科全書」より)と。

(はやし浩司 教育 林 浩司 林浩司 Hiroshi Hayashi 幼児教育 教育評論 幼児教育評論 はやし浩司 はやし浩司 アルツハイマー病 ピック病 Hさんのケース)


Hiroshi Hayashi+++++++Feb. 2012++++++はやし浩司・林浩司




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