2011年6月23日木曜日

*Sho-hei-so Japanese First Class Inn in Izy Nagaoka

●伊豆長岡温泉・正平荘旅館にて(6月22日)

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梅雨も一休み。
昨日、久しぶりに、青空が見えた。
今朝も、天気はよさそう。

ウォーキングは30分。
さわやかな汗。
扇風機に当たって、体を冷やす。
近くの森で、リスが、コンコンと鳴いている。
ケンケンか?
キンキンか?
動物の鳴き声をカタカナで表示するのは難しい。
リスの泣き声は、さらに難しい。
様々な周波数の音が、混ざり合っている。

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●腰痛

 昨日、2か月ぶりにW氏(68歳)に会った。
見ると、腰全体を包むようなコルセットを巻いていた。
「どうしたの?」と声をかけると、「腰痛です」と。

私「原因は?」
W「老化現象です」
私「老化現象?」
W「医者はそう言いました」と。

 便利な言葉だ。
「老化現象」。
わかりやすく言えば、「もう治療方法がない」という意味。
この言葉ひとつで、老人はそのまま死に追いやられる。

 医者も少しは詩を勉強したほうがよい。
言葉の使い方を勉強したほうがよい。
たとえば「たそがれ腰痛」「ごくろうさま腰痛」「いたわり腰痛」「仲よし腰痛」など。
「要運動腰痛」「帝王腰痛」「晩年腰痛」でもよい。
何か未来に希望をもてるような言い方をしてほしい。
「老化現象」と言われると、「もう打つ手なし」と聞こえる。

●離婚

 数年前、私の知人が離婚した。
定年離婚である。
知人のほうが、ある日突然、妻から離婚届を突きつけられた。
この話については、すでに何度か書いた。

 で、この話にはつづきがある。
その知人、いわく。
「妻は、その数年前から、周到に準備していました。私はまったく気づきませんでした」と。

 心の準備だけではない。
モノの準備。
パソコン内のメール、アルバム、衣服などなど。
「壁にかけてあった結婚式の写真すら、いつの間にか、消えていました」と。

 未練があったら、離婚など、できない。
友人の妻は、数年をかけて、すべての未練を消した。

●原因

 原因は、友人の不倫。
会社の部下(女性、30歳)と、5年にわたって不倫をつづけていた。
最初は遊びだったが、そのうち、友人のほうが本気になってしまった。
よくある話である。

 が、女性のほうが遠ざかり始めた。
友人は、それに動揺した。
妻に、不倫がバレた。

 で、そのときは、妻は、「許してくれたはず」(友人談)。
しかし妻は、その直後から、準備を始めた。
少しずつ、少しずつ……。
で、ある日、突然、「離婚します」と。

●人格否定

 妻のほうはそれでよい。
しかし夫(友人)のほうは、そうでない。
それから受ける衝撃には、相当なものがある。
全人格の否定。
全人生の否定。
「今までのオレは、いったい、何をしてきたのだろうか」と。

 2人の娘がいたが、2人も嫁いでいた。
友人の妻は、その準備もしていた。
前もって、「私たちは離婚するから」と。
2人の娘は、母親側についた。
秘密を守った。

 ……と書くからといって、その女性が悪いとか、離婚が悪いとかいっているのではない。
それはそれ。
私が書きたいことは、つぎのこと。

●心の準備

 なにごとにつけ、心の準備は、数年かけて、する。
心というのは、そういうもの。
逆に、心の整理にも、数年かかる。

 一時は人生のドン底に叩き落された友人も、今は、立ち直っている。
好き勝手なことをして、自分なりに人生を楽しんでいる。
結果としてみると、一時はもてはやされた定年離婚だが、やはり、女性には不利。
経済的に自立していれば何とかなるが、そぅでなければ、やはり、女性には不利。
夫の退職金や年金を分離したところで、長くはつづかない。
結局今、妻は娘夫婦の住む家に、同居している。

 準備をするなら、「収入の準備」も、しておく。

●今日は、伊豆長岡温泉に一泊

 このところ講演を依頼されるたびに、その近くの温泉に一泊することにしている。
今日は、伊豆長岡温泉。
駅から歩いて5分ほどの、正平荘。
(実際には、「車で5分」だった。これは私の聞きまちがい。)
実名を出してしまったから、悪口は書けない。
まだ泊まってもいない旅館だから、感想も書けない。
しかし名前がよい。
「正平荘」。

 もしひどい旅館だったら、あとで、名前をアルファベットに置換する。
そういう手もある。
が、ネットで調べたところ、悪くなさそう。
口コミ評価も、高い。
楽しみ。

 昨夜も風呂に入ったが、「明日は温泉」と、軽く流しただけ。
温泉では、私は3度、入浴することにしている。
まず到着すると、すぐ1回。
食後、遅く、1回。
それに早朝、1回、計3回。

 私たちは料理には、あまりこだわっていない。
書き忘れたが、今回もワイフが同行してくれた。
ワイフも旅館に泊まるのを楽しみにしているよう。
講演依頼が入るたびに、「今度はどこ?」と聞いてくる。

 温泉記は、正平荘に着いてから、また書くことにする。

●講演

 実のところ、今日のコンディションは、あまりよくない。
頭は冴えているが、体がだるい。
眠い。
「こんな状態で、講演などできるか?」と思う。

 ところで、最近、ある知人がどこかで講演した。
仕事関係の、その研修会での講演だったという。
私は、その知人の話を聞きながら、「どうして?」と思ってしまった。

その人の経験や知識が、どうこうと言うのではない。
人格や性格が、どうこうと言うのではない。
会話そのものがおかしい。
ふだんしゃべっている日本語が、日本語になっていない。
言葉の使い方も、不適切。
「うん、まあ」「あっ、そう」「え~と」というよな言葉がつづく。
私たちの世界ではぜったいに使ってはならない禁止用語も、ポンポンと会話の中で飛び出す。

 そこで……というわけでもないが、私のばあい、こうして毎日文章を書くことで、自分の表現力をみがく。
またそれをしていないと、脳みそは、すぐ、さび付く。

 で、恐る恐る、その人に、こう聞いてみた。
「講演のための原稿を書くことはありますか」と。
するとその知人は、臆面もなく、こう言った。

「ぼくは、恥はカクけど、文はカカない」と。

 私は笑ったが、別の心ではこう思った。
「かえってこういう人の講演のほうが、おもしろいのかもしれない」と。
つまり私の講演は、おもしろくない。
自分でも、それがよくわかっている。
 
●政治家のトチリ

 よく政治家が、トチる。
少し前は、東京の石原氏(都知事の息子氏)が、こう言った。
「(今の日本は、原発問題で)、集団ヒステリーになっている」と。

 大問題になるかと思っていたが、そのまま沈静化してしまった。
平たく言えば、今は、それどころではない。
石原氏の言葉どころではない。
集団パニックになってもおかしくない。
つまりそんな言葉にいちいち目くじらを立てているばあいではない。

 夏から冬にかけて風向きが変われば、東京にさえ人はだれも住めなくなる。
そういう現実が、ヒシヒシとそこに迫っている。

 ……とまあ、石原氏は、言葉でトチった。
文を書いていないと、そういうトチリが多くなる。
言い換えると、そういうトチリと防ぐためにも、文を書く。

●伊豆長岡

 今、私は三島市での講演を終え、伊豆箱根鉄道の電車の中にいる。
ローカル線。
伊豆長岡で、もうすぐ下車。
今、「大場(だいば)」という車内アナウンスがあった。
「あと、(駅は)いくつぐらいかなあ」とワイフに話しかける。
ワイフは時計を見ながら、「あと少しね」と。

 電話で問い合わせたとき、旅館の女将は、「三島から20分くらいです」と教えてくれた。
もしそうなら、あと5分……。

 反対側の座席では、高校生らしい男女が、意味のわからないことを話しつづけている。
遠い昔、私もそうだった。
楽しそうだった。

今「伊豆仁田(にった)」という駅に停まった。
何人かの男女がおりた。
座席が、がらりと空いた。

西側から白い日差しが車内に流れ込んできた。
先ほどネットで知ったが、福井地方では33度を超えたところもあるという。
沖縄では、熱中症で死んだ人もいるという。
先日「沖縄へ避難しようか」という話もした。
しかし夏の沖縄も、考えもの。
寒いのもいやだが、暑いのもいや。

 なお、三島でタクシーの運転手に聞いたが、三島でも、原発事故は、どこ吹く風だそうだ。
「お茶? だれも心配などしてませんよ」と。
それを聞いて、私はへんに安心した。
事実を積み重ねれば、心配して当然。
しかしそれも限度を超えると、どうでもよくなってしまう。
運転手の話を聞きながら、『茹(ゆ)で蛙』理論を、私は、思い浮かべていた。

●伊豆長岡温泉・正平荘

 正平荘……まさに一級和風旅館だった!
京風割烹旅館とある。
これほどの旅館は、そうはない。
評価をつけろと言われたら、文句なしの5つ星、★★★★★。
料金の問題もあるが、この旅館に泊まって、文句をつける人は、まずいない。
つまり大満足!
来てよかった!

 「京風」とあることからもわかるように、「これが京都」と思わせる料理ばかり。
伊豆の長岡にいて、京風料理。
2倍、楽しめる。

 町中の温泉だから、露天風呂にしてもそれなりの制約はある。
が、昔でいうなら、武士が泊まるような旅館。
坂本竜馬でも勝海舟でもよい。
造りも本気度も、100点。
こだわり度も、100点。
男性トイレの前には、和紙まで敷いてあった。
和紙を敷いたトイレを見たのは、生まれてはじめて。

 ……露天風呂では、千葉市から来ていた家族といっしょになった。
「大都会ですね」と声をかけると、「浜松だって、大都市ですよ」と。

私「いやいや、千葉市と比べたら、田舎町。比較になりません」
男「ここへ、どうやって来ました」
私「新幹線で来ました」
男「私たちは車で来ました」
私「久々に、いい旅館に泊まりました」
男「そうですねえ。いい旅館ですね」と。

●夕食

 夕食はみな、「お食事どころ」という部屋でとった。
ひとつずつのブースが、色の濃いすだれで仕切られていた。
ローソクのような淡い光が、眠気を誘う。
そんなとき、ワイフがこう言った。

「京料理は、味が薄いのよ」と。

 本当のところ、私は京料理というものを、知らない。
生涯にわたって、舞妓さんがいるような部屋で食事をしたのは、ただの一度だけ。
商社マンのときのことだった。
が、何を食べたか、覚えていない。
当時の私は、今でもそうだが、料理にはあまり興味がない。
腹がふくれれば、それでよい。

 が、正平荘の料理は、おいしいというより、珍しかった。
ワイフと2人で、ああでもない、こうでもないと言っているうちに、2時間半も過ぎてしまった。

 2時間半!

 時計を見て、驚いた。

●朝食

 朝食は9時からという。
いつもの旅館だと、7時前後~から。
正平荘から伊豆長岡駅まで、タクシーで5分。
そこから三島駅まで、電車で20分。
三島駅から浜松まで、新幹線で、1時間30分。

 昼間での仕事に間に合うか?
やや心配になってきた。

 こういう時期だから、この長岡温泉も、不景気とか。
旅館の皆さんには申し訳ないが、客の私たちには、うれしい。
今朝も、広い浴室で、たった一人、のんびりとくつろぐことができた。
気持ちよかった。

 近く、隣町の韮山町で別の講演会がある。
そのときは修善寺温泉に泊まる予定。
伊豆の踊り子でよく知られた、修善寺温泉!
たびたび行ったことがあるが、いつも旅館でハズレ。
が、今は、ネットで口コミを調べながら、宿を選ぶことができる。
この正平荘にしても、口コミ評価は、4・5(Jサービス)。
4・5というのは、めったにない。

 「京風料理」を楽しむなら、この正平荘がよい……?

●地震(6月23日)

 明けて、6月23日。
テレビのニュースでは、岩手県沖の地震の速報を流している。
近くの町で、震度5弱の震度を観測したとか。
マグニチュードは、6・7。
午前6時51分ごろだったという。
そのとき私は1人、温泉につかっていた。
揺れはまったく感じなかった。
 
 ネットで調べると、福島原発での汚染水処理は、進んでいないという。
心配というより、不安。
ジワジワとした不安。
心の壁に張り付いた不安。
がん検診で結果を待つときのような不安。
イヤ~ナ気分。

 昨日もワイフとこんなことを話し合った。
「もし風向きが変わり、放射線物質がこちらに向かうようになったら、逃げよう」と。  
私たちは何もできない。
ただひたすら逃げるだけ。

●中国経済

 ここにきて中国経済が、急速にきしみ始めている。
ご存知の方も多いと思うが、あの国では、地方政府まで住宅投資に狂奔している。
その住宅価格が、今年に入ってからだけでも、20%近く急落している(主要都市)。
が、日本のバブル経済のときもそうだったが、こういうばあい、「慣性の法則」(経済用語)が働く。
ブレーキが利かなくなる。
政府の抑止政策は無視。
そのままの状態で、民衆は「行け、行け」心理で、突っ走ってしまう。
これがこわい。
バブル経済がはじけたとき、被害を大きくする。
莫大な不良債権が残る。

 オーストラリアの友人(中国研究専門)は、こう言っている。
「古い家のように、やがて崩壊するだろう」と。

 が、今ここで中国経済が崩壊すれば、その影響は、ドバイショックのときの1000倍になるとも言われている(某経済誌)。
「1000倍」と聞いてもピンとこないが、たいへんなことになる。
日本にもたいへんな被害が及ぶ。
こういうときだから、余計に心配。
そうでなくても、日本経済は青息吐息。

●伊豆長岡温泉

 せっかくこんなすばらしい温泉に来ているのだから、もう少し伊豆長岡温泉の話をしたい。
泉質は、透明。
手でこすってみると、ヌルヌルした感じ。
このあたりの温泉は、みな、そう。
海の水が深くしみこんで、そこで温泉となって、再び陸に噴きあがってくる。
私は勝手に、そう想像している。

 若いころは食事がすむと温泉街へ繰り出したもの。
が、今は、そんな元気はない。
部屋でテレビを観たり、ビデオを観たりして、過ごす。
私のばあいは、こうしてパソコンで文を書いて過ごす。
だからというわけでもないが、通りのみやげもの屋は、元気がない。
この温泉街にかぎらない。
どこの温泉街も似たようなもの。
愛知県のN温泉では、ほとんどのみやげもの屋が、シャッターをおろしていた。

 となると、やはり料理と温泉。
この2つで旅館のよしあしは決まるということになる。
が、ここでまた問題。

 若い人には、京料理のよさはわからないだろう。
一方、私たち中老人には、量が多すぎる。
そのあたりのかねあいが、むずかしい。

●中老人

 たった今、「中老人」という言葉を使った。
英語では、「ヤング・オールド・マン(Young Old Man)」という。
老人というほどの老人ではないが、しかし老人予備群。
ほどほどに健康だが、しかしみな、何らかの故障をかかえている。
旅行をする元気は残っているが、観光地を歩き回るほどの元気はない。
中途半端な老人だから、「中老人」。
年齢的には65歳前後~70歳前後か。
日本人のばあい、自分を老人と自覚するようになるのは、75歳前後と言われている。

 その75歳まで、あと12年。
おとといも、市内で金融業を営んでいる知人と話した。
私と同年齢(?)だが、その知人もこう言っていた。
「どう生きるかということよりも、どう死ぬかということのほうを、先に考えてしまう」と。
暗い話だが、それは事実。

知「放射能なんて、こわくありませんよ」
私「そう、死ぬのはこわくない」
知「もういつ死んでもいいですよ」
私「でもね、放射線障害は、即、骨に入りますから、痛いそうですよ」
知「……?」
私「ふつうの痛さではないらしい」
知「それもいやだな。やはりピンコロかな?」と。

●講演

 メールを開くと、昨日の講演会の主催者の方から、メールが届いていた。
「大好評」という文字が、大きく私の目にとまった。
うれしかった。
私としては、時間が足りなく、中途半端な講演会だった。
あちこちを端折った。

 が、そういうときというのは、そのつど罪の意識を感ずる。
どうしてもまちがった印象を与えてしまう。
本来ならじゅうぶん時間をかけて説明しなければならない。
それを途中で、切り上げてしまう。
その無念さは、たぶん、ほかの世界に住んでいる人たちには、理解できないかもれない。

 I校長、Wさん、みなさん、どうもありがとうございました。
たいへん気持ちよく講演をすることができました。

●正平荘の中庭

 9時からの朝食を待ちながら、中庭に面したテラスで、今、この文を書いている。
日本庭園がすばらしい。
左横には、小さな池があって、銀色の鯉が泳いでいる。
その池から左へ順、よく手入れされた庭木が、ずっと右側につづいている。
苔の生えた大きな岩、10層近くもある石灯篭。
ツツジ、サツキ、山法師、万作などなど。
目の前にはしだれヤナギが、長い枝を下へ垂らしている。

 風呂から出たばかりで、風が心地よい。
空は厚い雲でおおわれているが、その下の隙間から、ひんやりとした風が、左から右へとかけぬけていく。
横にいるワイフはこう言った。
「やはりここは京都ね」と。

●睡魔

 うっとりとした睡魔が襲ってきた。
目を閉じれば、このまま眠ってしまいそう。
……どこかで横になりたい。
ふとんの上がよい。
このけだるさ。
この静けさ。

 ……
 ……

 眠い。
ただひたすら眠い。
朝食まで、あと10分。
先ほどワイフがタクシーの予約をすませた。
あとは朝食を軽く取って、帰るだけ。
そうそう義兄とNさんに、みやげを買わねばならない。
どうしようかと迷ったとことで、思考停止。

●新幹線の中で

 みやげは、駅前のコンビニから送った。
その間にワイフは、何か、飲み物を買った。
よい講演会だった。
よい旅行だった。
ほんわかとした満足感が、心地よい。

 旅館を出るとき、仲居さんに「YOUTUBE」に動画を載せますよ」と言うと、みなが、うれしそうに笑ってくれた。
手を振ってくれた。
「宣伝しておいてくださいね」と、Hさんという仲居さんが言った。
若くて、美しい人だった。
目が印象的だった。
ハーフかな?

 どういうわけか、伊豆へ来るたびに、伊豆の踊り子がダブる。
学生時代に、川端康成の『伊豆の踊り子』を読んだ。
それが、それほどまでに強烈だったということか。
それが60歳を過ぎた今も、そうだ。
脳裏から離れない。
だからタクシーに乗って手を振ったときも、Hさんという仲居さんが、その踊り子に思われた。
ふと、切なさが、身にしみた。

●不完全燃焼

 ……こうして日々は、何ごともなかったかのように流れていく。
と、書くと、今回の旅行記は、おしまいということになってしまう。
しかしまだ何か、名ごり惜しい。
すべてを書いていない。
書きたいことは、そこにある。
が、それがうまく吐き出せない。
何だろう?
どうしてだろう?
脳みそが不完全燃焼を起こしている。

 あんなすばらしい旅館に泊まりながら、書くことといえば、ありきたりなこと。
もったいないというより、自分が情けない。

 満ち足りたときというのは、そういうものか。
あるいはただ単に、眠いだけなのかもしれない。
あえて言うなら、こういうこと。

 恨みや怒りは、人間性を腐らす。
「人間性を崩壊させる」と説く人もいる。
免疫細胞がカイトサインというホルモンを分泌する。
それが脳内ストレスを引き起こす。
それがあらゆる部分に影響する。
「八つ当たり」という言葉も、ある。
が、それだけではない。
脳内ストレスは、免疫力を低下させる。
精神を腐らすだけではない。
肉体をも腐らす。

 今回の講演旅行は、そういう点では、たいへんよかった。
気分を刷新することができた。
恨みも怒りも消えた。
消えたというより、それ以上に強い力が、私を前向きに引っ張り始めている。
「くだらない人間は、相手にするな}と。

●心の整理

 冒頭で、知人の定年離婚について書いた。
が、この問題は、離婚だけの問題ではない。
私たちはいつも、似たような選択に迫られる。
似たような行動を取る。
心の整理をするときは、いつもそうだ。

 少しずつ、ひそやかに、かつ一歩、一歩、準備する。
とくに「死」を意識しているわけではないが、それでも準備する。

 数日前も、息子に、ラジコンの戦車をあげた
その前には、生徒たちに今までもらったバッジやメダルをあげた。
どんどん身の回りから、モノが消えていく。

 そう、モノには、不思議な魔力がある。
物欲にとらわれると、ときとしてニコチン中毒やアルコール中毒に似た症状を示すことがある。
線条体に受容体ができると、反射運動的に、それを求めるようになる。
買い物症候群もそのひとつ。
ためこみ屋の人が、モノを家にためこむのも、そのひとつ。
物欲には、そんな魔力がある。

 その物欲と闘う。
そのもっとも簡便な方法が、「くれてやる」ということになる。

 人生は短い。
時間がない。
できるだけ早く物欲と決別しなければならない。

●浜松

 結局、たいしたことは書けなかった。
つまらない旅行記。
このまま家に帰ったら、1時間ほど、昼寝。

 横を見ると、ワイフは寝息を立てて眠っていた。
「あなたも座ったまま眠る練習をするといいわよ」と。
勝手なことを言っている。

 正平荘。
すばらしい旅館でした。
タクシーの運転手もそう言っていた。
「正平荘は、このあたりでも上級です」と。

(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 BW はやし浩司 正平荘 伊豆長岡温泉 伊豆長岡 正平荘)


Hiroshi Hayashi+++++++June. 2011++++++はやし浩司・林浩司
 

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